鈴木馨祐法相は5日、産経新聞のインタビューに応じ、不法滞在者の強制送還を進める出入国在留管理庁の計画「不法滞在者ゼロプラン」について「執行を進めており、これから結果が出てくる。そのための予算も万全を期す」などと語った。主な一問一答は次の通り。
「秩序ある共生社会」めざす
――現在、外国人を巡り国民の中に不安や不公平感が指摘されており、先の参院選でも一定の民意が示された形だ
「少子高齢化、人口減少の中で、活力ある強い日本を実現するためには、自由で開かれた日本、外国人との秩序ある共生社会が不可欠だ。それには国民の理解と支持が欠かせない。国民が安全・安心や公平感を持てる状況をどう作っていくことができるのか、そこをどう死守できるのかが絶対的な条件だ」
「欧州などでは外国人の増加により、社会の分断や政治の混乱が起きていると指摘されている。社会統合に成功している国は、残念ながら、ほとんどないと思う。現在の日本は2・7%だが、さまざまな社会的な摩擦が指摘されている。外国人の社会統合について今から真剣に考える必要がある。極めて大事な局面だと認識している」
起訴率、外国人の方が高い
――国民の間には不法滞在者の強制送還や外国人犯罪など法令の厳格な運用をめぐって不安や不公平感が広がっている
「ルールを守らない外国人には国外退去していただくのは、国として当然の主権の行使だ。5月から不法滞在者ゼロプランを実施し強制送還などの執行を進めており、これから結果が出てくると考えている。そのための予算も万全を期し、国民の不安に対応できるよう全力を尽くしていく」
「外国人犯罪では、よく起訴率の話が出るが、当然、法と証拠により裁かれており、起訴率でいえば外国人のほうが高いのが事実だ。こうしたこともしっかり発信して不公平感を持たれないようにしていきたい」
土地規制、政府全体で議論必要
――埼玉県の大野元裕知事がトルコ国籍者の短期滞在の査証(ビザ)免除の一時停止を外務省へ要望した
「国会でも与野党からそうした声が出ていることは重々承知している。適正化を図っていくためにあらゆる努力をしていく。個別の国名は控えるが、外務省にも常々さまざまな要請をしている」
――外国人が増える中で、安全保障上、重要な土地の取得規制をどう考えるか
「安全保障上の懸念は、全ての外国人にあるわけではなく、日本人の中にもある。安全保障を確保するために、規制を含めさまざまな対策を講じていくことを、政府全体で議論していくことが必要と考えている」
生活の場での社会統合が課題
――地方自治体からも要望が相次いでいる。外国人の社会統合をどう実現していくのか
「これまでは外国人も『会社』という働く場所で長い時間をすごし、徐々に日本社会へ統合していく道筋があった。これからは『特定技能2号』の在留資格など家族帯同もでき、生活の場での社会統合が課題となる。これは職場単位よりも難しくなる」
「また、外国人の方は集住するケースがかなり多い。集住した場合の摩擦をどうやって避けていくのか。集住した場合にどう開かれたコミュニティーを作っていけるのか。そうしたことも社会統合では非常に大事だ。きちんと考えて、早め早めに手を打っていかないと、取り返しのつかないことになりかねない。そういう問題意識でやっている」
外国人人口、15年後に総人口の1割 鈴木法相の私的勉強会試算「国民の安全が絶対条件」