視聴者も若手社員もテレビから離れていく…「民放テレビ局が2つしかない県」が抱える想像以上の苦悩
■待遇は良いはずなのに、社員が辞めていく では、3局クロスネット局のメリットはいったい何なのか。榎木田社長が真っ先に挙げたのは「人脈」だ。 「3局それぞれの系列の会議や交流、番組販売などを通じて築く人的つながりは、言ったら3倍なんです。ビジネス上の知見も増え、得られるものは多い。喜び3倍は苦しみ3倍を大きく上回る価値があると思っています」 “人”に目を向ける理由はある。テレビ宮崎の社員・スタッフを合わせると約170人。中小企業規模のこの人数を現状維持することに今は苦労を伴う。 「とにかく人が集まりにくいんです。テレビ局そのものが今は選ばれなくなっていることが大きい。全国的な人材不足も原因にあります。昔は新入社員の内定を多めに出すことなんてあり得なかったのですが、今は違う。もう選ばれなくなっているという体感があります。ウチに限らず、テレビ業界全体で人材確保が厳しい時代です」 離職率も上昇傾向にある。離職者の中で多いのは20代、30代。県内の平均給与額を上回り、安定した収入を得られ、条件は悪くない。しかしだ。 「やっぱり放送業界の将来に対して不安を感じている方が多いということだと思います。特に若手社員の方はテレビに対するイメージが下がったことに影響を受けています」 ■社長室はミーティングルーム兼用部屋に改装 策はある。足りなかったのは“会話”だ。 「管理職と若手社員が互いに会話を控えていたように思うんです。管理職がパワーハラスメントを意識しすぎて教育指導ができなくなってしまうと、受ける側の権利主張がある日から上回る。そうすると、小さな会社でもガバナンスが効かなくなってしまいます。一方で、若手社員の方が意見を言いやすい環境を丁寧に作る必要もあります。150人ぐらいの規模の会社ですから、会話をしましょうということです」 本社にある社長室を訪れると、前々任の社長が2002年に設置したままの重厚感のある皮のソファーやダーク色のテーブルが並べられていた。これを改装して、今どきのビビットな色を取り入れたミーティングルーム兼用の部屋にアレンジしようというのだ。目指すは社員の誰でも気軽に相談できる場だ。