視聴者も若手社員もテレビから離れていく…「民放テレビ局が2つしかない県」が抱える想像以上の苦悩
■榎木田社長自ら“あけみママ”に 狙いはすでに着手した地域のハブ拠点「&Labo」にも通じる。地域住民との接点を増やそうと榎木田社長が取締役に就いていた時から肝煎りで立ち上げたものだ。JR宮崎駅から伸びる高千穂通りにある旧NTT西日本宮崎支店をデザイナー風にリノベーションした建物の一角に構える。この4月にオープンしたばかりの真新しい空間が広がっていた。 毎日のお天気コーナーはこの場所から中継している。足を運んだこの日の午後も、温度計を差しながら暑い夏日を伝える気象予報士の姿があった。 気軽に利用してもらうことも目指す。榎木田社長のアイデアで室内にはバーカウンターまで設置されている。榎木田社長自ら“あけみママ”となってトークを展開するテレビ宮崎の公式YouTubeチャンネルの企画「スナックあけみ」をイメージするもので、「スナックあけみ」のオリジナルステッカーやライターまで販売されていた。実際に席に座って、のどを潤す地域住民もいるという。面白がってもらうことで接点を増やすとは抜け目ない。 ■「街を元気に」はローカルテレビ局の使命 初期投資額は1000万円ほど。採算性が見えないから、スモールサイズの投資に留めているわけではない。意識するのは「未来への投資部門」だ。 「投資できる体力があるうちにチャレンジすることに尻込みしたくない。テレビ広告営業だけでビジネスを完結することなく、今ある貯蓄を運用して『&Labo』のような展開から利益を生み出すことにも目を向けると、新しいビジネスが生まれるはずです。公共事業にお金だけ出す時代も終わっているから、街づくりにも顔が見える向き合い方を選んで&Laboを立ち上げています。街を元気にすることもローカルテレビ局の使命です」 課題も挙げる。その1つがテレビ局の要にあるオリジナル番組の開発にある。かつてテレビ宮崎にはローカルの笑いを届けていた「さんさんサタデー」のような強力番組があった。宮崎県出身の人気漫画家・東村アキコさんが「笑いの原点」と言い切るほどの伝説の番組だ。 テレビ宮崎ではその東村アキコさんが初期に手掛けた自伝的漫画『ひまわりっ 健一レジェンド』を2020年にドラマ化し、これをきっかけにドラマ制作に力も入れるなど道筋は立てている。