視聴者も若手社員もテレビから離れていく…「民放テレビ局が2つしかない県」が抱える想像以上の苦悩
■「プロバーから社長を出すべき」という思い 実はこのドラマ「ひまわりっ」は榎木田社長と深い関わりがある。当時、アナウンサー職に徹しながら開局50周年記念プロジェクトの総合プロデューサーとして旗振り役も担い、ドラマ化の実現に大きく貢献したのだ。東村アキコさんに密着取材し、ドキュメンタリーを作ったことをきっかけに自ら直接交渉しに行った。その時の様子を東村アキコさんが後日、漫画にし、榎木田社長は猪突猛進に進む“榎木田アナ”として登場している。 それから5年。前社長の寺村明之相談役から社長の任命を受けて、現在の榎木田社長がいる。寺村相談役はテレビ宮崎の筆頭株主であるカンテレ出身者。「テレビ宮崎の将来を見据えて、今こそテレビ宮崎のことを本気で考えることができるプロパーから社長を出すべき」と考えた末、白羽の矢を立てたのが榎木田社長だった。そんな思いも引き継ぐ。 「若い社員にも自分がUMKだと思ってもらいたいんです。自分こそUMKだと。そう思ってもらえるようなムードを作っていかなければならない。ネガティブな欠片があると、どんどん浸食していってしまうので、全員がポジティブである必要はないのですが、県民とUMKのこれからを思って丁々発止が生まれるような環境を作りたいです」 そう語る社長、榎木田朱美さんにはゆるぎない決意が宿っているように見えた。 ---------- 長谷川 朋子(はせがわ・ともこ) テレビ業界ジャーナリスト コラムニスト、放送ジャーナル社取締役、Tokyo Docs理事。1975年生まれ。ドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、国内外の映像コンテンツビジネスの仕組みなどの分野で記事を執筆。東洋経済オンラインやForbesなどで連載をもつ。仏カンヌの番組見本市MIP取材を約10年続け、番組審査員や業界セミナー講師、行政支援プロジェクトのファシリテーターも務める。著書に『NETFLIX 戦略と流儀』(中公新書ラクレ)などがある。 ----------
テレビ業界ジャーナリスト 長谷川 朋子