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新説: 最後の審判 1. ギミックの解説

概要編の続きです。

いきなり打ち歩詰めや千日手の詳細ルールの解説に入ろうかと思ったんですが、よく考えたらそもそも最後の審判の何が面白いのかを説明してなかったので、ざっくりとした説明から入りたいと思います。(buildersconの登壇を見て来てくださった方は、そこで説明した内容と100%重複するので、この章は読み飛ばしていただいてOKです)

このエントリは、将棋や詰将棋を知らない人でも最低限分かるレベルに簡略化しています。より詳細に手順を理解したい方は、作者ご本人による解説をぜひ読んでください。

将棋とは

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将棋は、対戦する2人が交互に自分の「駒」を動かしながら、最終的に相手の王を「詰み」の状態にすることが目的のゲームです。まず、真ん中の「盤」の中に駒が並んでいて、駒の動きのルールにしたがって交互に動かします。自分の駒を動かす先に相手の駒があるときは、その駒を取ることができます。とった駒は、右下の「駒台」に置き、この駒は再度自分の駒として盤の上に置いて使うことができます。

王手と詰み

次にこの「詰み」について説明します。

まず、王手(おうて)とは、相手が何もしなければ、次に自分の駒で王を取ることができる状態です。詰みは、王手がかかっていて、さらに相手がどう動いても次に王が取ることができる状態です。

以下、部分図での例をあげます。(玉(ぎょく)が出てきていますが、将棋において、玉は王と同じです)

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「王手」の状態です。金という駒はまっすぐ上に動けるので、つぎに相手の王を取ることができます。


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「詰み」の状態です。王手がかかっています。さらに、次に相手の王がどう動いてもこちらが王を取ることができます。
(具体的には、相手の王はいま1一マスにいて、1二, 2一, 2二というマスに動けます。1二に動く(金を取る)と、歩で王を取れます。2一, 2二に動くと金で取れます。)

詰将棋

詰将棋(つめしょうぎ)というのは、パズル (クイズ) のようなものです。将棋のルールの上に成り立っています。攻める側(手前側)が毎回王手をかけつづけて、相手は最善の逃げ方をした結果、相手の王を詰みの状態にできるような手順を探します。

今回取り上げている「最後の審判」は、詰将棋です。詰将棋は攻める方が毎回王手をかける必要があるということを覚えておいてください。

将棋の対局が終了する条件

「将棋ガイドブック」によると、将棋の対局が終わる(終局)条件は5つあると定められています。

・王を詰ます (詰ませた方が勝ち)
・投了 (投了を宣言した方が負け)
・相入玉 (点数で勝敗が決まる)
・千日手 (引き分け)
・反則 (禁止事項。反則をしたほうが負け)

王を詰ます、は上で説明しました。投了は敗北宣言なので自明です。相入玉は今回説明しません。残りの2つ、千日手と反則について説明します。

千日手

文字通り、同じ局面が繰り返されてしまいいつになっても対局が終わらない...という状況です。これについて明確な規定があり、「4度同じ局面が出現したら引き分け」とされています。(盤と駒台の駒の配置が全く同じで、手番も同じ)

ただし、4度同じ局面が出現する中で、片方がずっと王手をかけ続けていた場合は、王手をかけていた方が反則負けになるという規定があります(連続王手の千日手)。

反則負け

駒の動かし方を間違える、などが典型的な反則負けです。駒台の駒を打つときに間違えて裏返して打っても反則負けになります。厳しいですね。

その他、いくつか特別に定められた反則が存在します。ここでは、今回のテーマに重要な「王手放置」と「打ち歩詰め」について説明します。

王手放置

王手がかかっているのに王が逃げないとか、自分から王を相手の駒の効きに動かすなどで、相手に自分の王が取られる状態にしてしまう局面にしてしまうと、反則負けになります。

よく子供の将棋などでは相手の王をとって高らかに勝利宣言したりしますよね。実は、将棋のルール上、「相手の王を取る」ということは起き得ません。なぜなら、王が取れるということは、その局面は相手の反則負けになっているからです。

打ち歩詰め

駒台にある歩を打って「詰み」にしてはいけないというルールです。

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部分図です。駒台には「歩」があります。この歩を、1二のマスに打ってみましょう。

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歩はまっすぐ前に進めるので、次に相手の王を取ることができます。つまり、これは「王手」がかかっている局面です。さらに、相手は次にどうやっても王が取られてしまいます。つまり、これは「詰み」と言えます。

しかし、このように歩を打って「詰み」の状態にしたときは、特別に「打ち歩詰め」という反則で、歩を打った方が負けとなります。これが「打ち歩詰め」ルールです。

このルールは非常に複雑です。詰みは勝ちだと言っているのに、歩を打って詰ますのは負けだと言っていて、再帰的な構造に見えます。プログラマーだったらバグが出そうな予感がするところですね。

「最後の審判」の解説(簡易版)

これまでで準備ができたので、いよいよ「最後の審判」の解説をしていきます。

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これが図面です。局面は広く、全てを解説するとかなり専門的になります。今回は、丸で囲まれた「自分の王」「相手の王」「自分の駒台の角」に注目してください。

詰将棋なので、王手をかける必要があります。いろいろな王手がありますが正解は5六に角を打つ王手です。

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角はナナメに動けるので、次に相手の王を取れるのでこれは王手です。相手の王は逃げるしかありません。

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さて、ここからの手順はしばらく専門的なので中略します。20手くらい進めると、次のような局面になります。

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角はナナメにずっと進めるので、これも王手になっています。ここで、相手は相手の駒台の「歩」を利用して、角と王の間を遮る手を繰り出します。

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これは、角の王手をさえぎっただけでなく、この歩自体がこちらの王に対する王手になっています。(逆王手、と言います。)こちらは、この歩の王手を解除しながら相手に王手をかけなければいけません。この歩は角で取ります。

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これでまた王手がかかっています。ここで、この局面は、1手目に角を打った局面と同じです。相手はまた逃げます。

そして、この手順を3回繰り返します。

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さて、この局面で、また同じように角で歩を取ってみましょう。

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1手目に角を打ったのと同じ局面がまた出現しました。4回目の出現です。千日手として引き分け、になるのでしょうか。

いや、違います。これは詰将棋なので、こちら側が王手をずっとかけつづけています。ということは、連続王手の千日手により、こちら側が負けになるのです!

ということは、この角で歩を取るのは反則になってしまうので、違う手を考える必要があります。1つ前の局面に戻りましょう。

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角で歩を取る以外の手を考えます。相手の歩で自分の王に王手がかかっているのでした。実はこの局面、角で歩を取る以外の手では、相手の王手を解除することができません。(角以外では歩を取れないし、どう王が逃げても相手の駒に王が取られます。)

角で歩をとったら反則負け。しかし、角で歩を取る以外のことをやっても同じく王を取られてしまう。

つまり、この局面は「詰み」なのではないか。

そして、ここからが重要です。もしこの局面が「詰み」なのであれば。相手は歩を打って王手をしています。歩を打って詰みにするのは、「打ち歩詰め」として反則負けになります。

つまり、相手はこの歩を打つことができません。

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かくして、この局面で相手は歩を打つ以外の手を選択するしかありません(王を4四に逃げる)。以下、(専門的ですが)別の手順に入り、王を詰めることができます。

「最後の審判」の衝撃

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この局面の歩打ちが打ち歩詰めであるというのは、将棋を指す者たちの直感的にはかなり反するものです。詰みといえば普通は「どう指しても次に王が取られる」ことであって、それは確かに「どう指しても反則負けになる」と言い換えられるのかもしれませんが、それにしてもこんなことが起きることは誰も考えなかった。こんな打ち歩詰めが有り得るのか!?と。

案の定、侃侃諤諤の議論になりました。そして当時の最終的な結論では、この詰将棋は成立するのか、つまりこの局面が打ち歩詰めなのかどうかは「不定である」。公式のルールが未整備のため、確定することができない、という結論になったようです。

次章からは、この詰将棋のあとに出版された「公式のルール」を読み解いていきます。

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