千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想、評価、ありがとうございます。感想いただけましたらうれしいです。

扉間の妊娠時の反応は次になります。

イドラのイメージ画、えんがちょ様よりいただきました!あらすじにあるので、見てみてください!
頑張って投稿していきます!


人間というのは変わる者、それはそれとして変わりすぎ

 

「おーい、イノヒト、チョウギ!」

 

その日、奈良シカノは代々、同盟を組んでいる山中一族と秋道一族の頭領を訪ねていた。秋道に行くと、丁度、山中の家にチョウギが向かったことを知り、そちらに足を向けた。

奈良家の頭領であるシカノが向かうと、素直に部屋に通された。

そこには、見知った昔なじみであるイノヒトとチョウギが部屋の中で向かい合わせに話をしていた。

 

「ああ、シカノか。どうしたんだ?」

「何って、相談があってな。お前らも同じだろうが。」

「ああ、お前もか。」

 

三人は顔を合わせて困った顔をした。

 

「・・・・・イドラ様への贈り物、何にすべきか。」

 

呟いたそれにはあと、彼らはため息を吐いた。

 

 

彼らにとって、代々同盟、といってもどちらかと言えば主従のような意味合いのある猿飛一族から、千手とうちはによってなる忍連合への加入の話があったのは大分前のことだ。

 

現在の猿飛の頭領である猿飛サスケは歴代でも実力者として名高い。そんな彼から忍連合への加入について相談があったとき、本格的にそれについて思考しているということだと察せられた。

シカノは加入については考えていいと思っていた。

というのも、千手とうちはの禍根はそれこそ忍の間で有名で、脈々と受け継がれた憎しみはそれこそどちらかが滅ぶまで続くだろうと思われていた。

そんな彼らが同盟を宣言し、おまけに火の国の大名への支援を願い出たのだ。その本気度は計り知れない。

シカノはそれについて、出来るならば今のうちに加入をし、里の創設メンバーに加わることで重要な地位を確保する必要性を感じていた。

大国である火の国の後ろ盾と、最強と名高い千手とうちはの名が連なる忍連合は必ず、成功するだろう。

 

ただ、どうしても懸念事項があった。

 

「・・・・あの、扉間殿が。」

「それは。」

「なんとも言えませんな。」

 

さて、そんな忍連合についての話を聞けば、どういった経緯で同盟がなったのかということなのだが。

 

「それがなあ。何でも、交戦中に扉間殿がうちはの姫君と愛し合っているから、もう戦いたくないと、戦闘を放棄されたそうでな。」

 

キセルを咥えた猿飛サスケのそれに、その場にいた猪鹿蝶は目が点になった。

もちろん、それは噂が尾ひれが付きまくった結果で、実際の所、イドラの特攻と扉間への軽蔑が妙な一体感を持った勢いでの結果なわけだが。

そんなことを彼らが知るわけない。

 

「扉間殿が、ですか。」

「ですが、いくら扉間殿の言葉とは言え、そこまで簡単に同盟が?」

「何より、同盟を突っぱねていたのは、うちはでは?」

 

それに猿飛は肩をすくめた。

 

何でも、その、扉間と密通していたといううちはの姫は、一族でも相当に可愛がられていたのだという。

それをシカノは意外なことだと思った。交流が無いために、そこまで知らないが、うちはといえば誇り高く、秘密主義の血継限界持ちの家だ。

そんな彼らが、いくら一族単位で可愛がっているとは言え、密通した姫を赦すのか?

けれど、調べれば調べるほどにどうやらその話は真実のようなのだ。

というか、扉間についての、なかなかにスケベな話も出てきたりもした。

ちなみに、改めて自分についての噂を知った扉間は疲れ切った目で川釣りをしているのが目撃されている。

 

憎み合っていた一族のその行動に、奈良家の進言も有り、猿飛一族は連合への加入が決められた。そうして、封印術を得意とする志村一族もまた同盟に加わることを聞いた。

 

木の葉隠れの里と名付けられた里に向かえば、なるほど、千手とうちははギクシャクしている部分があったが、よくやっているようだった。

 

そこで話題に上がるのが、同盟の核になったイドラという女だった。

けれど、うちはの姫君であり、千手の二男に嫁いだ身だ。そうそう会えないだろうと思っていたが。

 

「わあ、もしかして、奈良家の方ですか?こんにちは!」

「こ、こんにちは。」

 

普通に、町を歩いていた。普通に、買い物をしただろう野菜を抱えてにこにこしている黒髪の女に話しかけられた。見た目からして、うちはの人間であることはわかったが、一族の人間から見て、あまりにも雰囲気が違いすぎた。

 

「こんにちは!扉間様や兄様がお世話になってます!」

「い、いえ、そのようなことは・・・・」

 

てっきり、つんとした高飛車そうなお姫様かと思っていたが、なにやらそんなことはない。

 

「そうなんですか?奈良家の人は皆さん、優秀だって聞いてますよー、あ、あと、猿飛一族の、サスケ様もすごいって!兄様も、ものすごい強いって認められてましたー!」

 

うちはの姫君はシカノの周りを嬉しそうに笑いながら忙しなくうろうろしている。今にも、ぴょんぴょんと跳びはねそうなほどにはしゃいでいる。

 

「そ、それは光栄で・・・」

 

そんなことを言いながら、目の前の、確かに目を見張るほど美しい娘であるのだが、脳内で完全に人に全力で懐いている犬と重なって仕方が無い。

わふんと言いながら、尻尾を振り回す真っ黒な犬。

想像と、目の前のそれとではなんというか、ひどく混乱してしまう。

 

「そうですよー。」

 

大荷物を抱えてにこにこと笑うその様は、完全にお使い帰りの幼子のようだった。

 

「そ、それは・・・」

「イドラ!」

 

その声に視線を向けると、そこには、慌てた様子の扉間の姿があった。

 

「ワシから離れるなと言っただろうが!」

「あ、扉間様!奈良家の方です!すごいです!お庭に鹿がたくさんいるんですよね!」

「ああ、そうだな。よかったな。わかったから、ワシから離れるなよ?」

 

扉間はそう言って、必死の形相でイドラの持っている荷物をかっさらい、空いた片手でイドラの手をがっちりと握った。

その様は、迷子を見つけた親の形相だった。

 

「すまんな、シカノ殿。うちの妻が困らせたか。」

「い、いえ、特別には・・・・休暇ですか?」

「ああ、少し立て込んでいたことが終ってな。シャバの空気を、いや、外の空気を吸ってこいと言われてな。」

 

疲れ切った顔で自分の握った手をぶんぶんと振り回す妻を見る扉間に、休暇になっているのかと疑問に思う。

シカノはそんなことを思いながら、嬉しそうに扉間の手を振り回すイドラを見た。

 

何か、こう、想像していた全てからかけ離れた女だ。

あー、こういうのが好みなのかあ。

ふわふわしてて、言い方が悪いが、何にも考えていなさそうと言うか。

 

(・・・・確かに、これが好みなら、そうそうなあ。)

 

シカノは、千手と近づきになりたいと、頭領である千手柱間は無理だが、扉間ならばと縁談が数多く舞い込んでいるのは知っていた。

が、全てについてけんもほろろで断っていることも知っている。

それは、こんな、干したての布団の匂いがしそうな女、そうそういるはずもない。

というか、よく、これで戦場に出て生き残っていたものだと驚く。

 

シカノは手を振り回すことに飽きたのか、扉間の腰に抱きついてにこにこしながら自分を見るうちはの姫を見た。

そんなとき、扉間はイドラから手を離した。そうして、そのまま彼女の頬に手を回し、そうして、そのほっぺたをむいむいとさわり始める。それにうちはの姫はにっこにこで嬉しそうな顔をする。

シカノは何か、口からは砂糖が出てきそうな気分になった。

それと同時に、イドラの、えへへへへ、撫でてくれるんですか?嬉しいです、と文字が浮んできそうな満面の笑みに、何か、ご機嫌な犬を見ている気分になって笑みをこぼした。

そんなとき、シカノは自分に向けられる視線に気づいた。

 

(やべえ!)

 

視線の先にはジト目で自分を睨む扉間がいた。それにシカノは顔を青くする。

そうなのだ、あの話が本当なら、扉間は相当その姫に入れ込んでいるのだ。

なんてシカノは考えていたが、実際の所、扉間はまたイドラが何かをやらかしたのかとどきどきしていた。

気分としては、散歩中に逃げ出した犬に追いついた飼い主の気分だ。傍目からいちゃついているように見えても、手を繋いだり、体に腕を回すのも、イドラがどこかに行かないように確保しているに過ぎない。

じと目も必死さによって鬼気迫るものになっているが、嫉妬なんて欠片もない。

シカノが驚くような甘い空気は無く、扉間はどこまでも保護者の必死さだけだ。

が、傍目から見れば完全に妻に絡んだ男に牽制する男の様だ。

 

「な、なんでもありません!」

「そうか?ならば、ワシらはこれで暇する。ほれ、イドラ、挨拶を。」

「はーい!さよなら、シカノ様!今度、鹿、見に行ってもいいですか?」

「・・・・はあ、すまんが、暇があれば頼む。」

「は、はい。家の者には伝えておきます。」

 

それにイドラはそのまま扉間の腰に抱きついて、とことこと歩いて行く。シカノはそれを見つめながら、何やら熱く鹿について語っているらしいイドラを見送った。そうして、それを優しげな瞳をして見つめる、扉間の姿にも。

 

 

「・・・・女性なのだから、着物だとかのほうがいいのか?」

「まあ、子どもに必要そうなのは一族で送るだろうしなあ。」

 

そんなにも皆でイドラというそれの機嫌を取ろうとしているのは、彼女の存在は非常に重要視されている。

千手一族の頭領にも可愛がられ、その弟である扉間からも熱愛されているのだ。

おまけに、あのとっつきにくいうちは一族も、彼女の話をすると態度が軟化するのだ。

おまけに、里内の女達のコミュニティにおいて絶大な影響力のある、うちはに嫁いだ千手アカリや千手ミトからも可愛がられているのだ。

まさしく、彼女から覚えめでたければ、里の中核とも交流が生まれるのだ。野心がなくとも、機嫌を損ねたくないと思うのが当たり前だ。

そのために、彼女の妊娠には、里全体で高い関心を集めている。

 

「あー・・・止めといた方がいいぞ。」

 

そんなことを思い出していたシカノは思わずと口を開いた。

 

「なんか、もっと、こう消耗品みたいなのがいい気がするなあ。そういうのは、止めといた方がいいだろうな。」

「なんでだ?」

 

それにシカノは肩をすくめた。

 

「馬に蹴られそうでこええんだよ。そうだ、シカの角でも送るか。」

「鹿の角?薬にもなるけど、なんでだ?」

「よくわからんが、でけえ鹿の角がうちはで流行してるらしいんだよ。あと、鹿の革もいいかもな。うちはの頭領は確か、鷹狩りが趣味だから、餌掛けでも作るだろうし。」

 

他の二人の顔を見て、シカノは自分をにらみ付ける扉間のことを思い出した。馬に蹴られて死ぬのは勘弁だと思ってだった。

 

(・・・・猿飛殿にも、もう少し詳しく報告しなくちゃな。)

 

 

 

「きょーの、ご飯は、煮物でーすう。」

 

柔らかな鼻歌交じりのそれに、周りにいる人間はにっこりと笑った。その視線の先には一人の女がいる。

それは女だ。

真っ黒な、カラスの濡れ羽のような髪に、同じような夜のような黒い瞳に白い肌。顔立ち自体はまるで猫のようなものなのだが、その輝かんばかりの朗らかな空気と、顔に浮んだ幼子のような無邪気な表情のせいか、人好きの犬のような印象を受けた。

何よりも、目立つのはその腹が丸々と膨らんでいることだろう。

それは鼻歌交じりにとある店に向かった。

 

「おじさーん!お野菜ください。」

「はいはい、イドラ様、今日は何を?」

「今日のご飯は煮物なので、大根ください。」

「はいはい、良い物を選びますからね。」

「ありがとうございまーす!」

 

元気に愛らしい声でそんなお礼を言えば、店主であるらしい男はまるで孫でも見るような顔をする。そのまま女はてとてとと道を進んでいく。

そんな店に後からまた客が来る。そうして、そんな客が世話話程度に口を開いた。

 

「おやじさん、そういえば、さっきえらくべっぴんさんが来てたね。どこの人?」

「あれ、あんた知らないの?」

「有名な人?」

「そりゃあね。ありゃあ、うちはのおひいさんで、いや、今は千手の扉間様に嫁がれてるから、千手イドラ様だね。」

「ああ、千手の弟君の?へえ、でも、そんなおひいさんがわざわざ一人で買い物に?」

「ああ、身分は良いが、人好きの人でな。俺みたいなのともよく話してくれるよ。ここら辺のじいさんばあさんなんかとは顔見知りなんじゃないのかねえ。」

「それはまた珍しい。そういう人は屋敷に引きこもっているものかと。」

「ああ、火影様の奥方はなかなか出てこられないからな。まあ、イドラ様の場合、戦場出身で腕っ節に関しては勝てる者はいないのもあるが。あれを見てみろ。」

 

店主の言葉に視線を向ける。そうすれば、向かいの建物の屋根の上に人影があった。

 

「あれはな、警邏のうちはの人だよ。」

「・・・なるほど、確かにこれなら安全だ。」

 

うなずく客に店主はそれと、と付け加える。

 

「あとな、あの方は扉間様からそれは寵愛されてるからな。下手なことをするんじゃないぞ?」

「そ、そうか。にしても、千手とうちはの夫婦に子が出来るのか。めでたいねえ。」

「ああ、争っていた氏族の間に子が出来るんだ。めでたいよ。本当に。」

 

店主は心の底から嬉しそうに目を細めた。

それに客はおおと、びびりながら頷いた。そんな中、客人は屋根の上の忍に、なんとなく己の縄張りを見て回る黒猫の姿が重なって見えた。

 

 

 

「・・・・・なんだ、冬眠明けの熊にしては季節違いじゃないか?」

「ああ、アカリ様。いえ、まあ、イドラ様が買い物に行かれてからあれですよ。」

 

その日、千手アカリことうちはアカリは弟である千手扉間の家を訪れていた。懐妊し、腹の膨れたうちはイドラこと千手イドラのために荷物を持って訪れた。

表から声をかけたが、残念ながら返答はない。そのため、アカリはおそらく手伝いの人間がいるだろう勝手口のある台所に向かった。

そこには、勝手口付近でそわそわとする弟がいた。

それに、手伝いに来ていた千手の女衆の一人が答えた。

扉間自体、体格が良く、おまけに体の厚みもあるため無意味にうろつく様がまさしく熊のごとしだ。

 

「ずっとか?」

「ええ、水を飲みに来たと言ってからずっと。」

 

アカリはなんとも言えない顔をする。

うちはイズナと話をした後、イドラを医者に担ぎ込めば、妊娠の事実に気づいた。その後、アカリはイドラを自宅に送り届け、扉間に知らせたわけだが。

 

「おい、扉間、子が出来たぞ!」

「誰のだ?」

「お前な、そんなものお前のに決まってるだろうが。」

「今度は誰だ?また調べごとが増えた。」

「イドラの腹に、お前の子が、だ!!」

 

執務室に飛び込み、そう叫べば、扉間は疲れた顔をする。

以前のことが相当の傷になっているらしい扉間は、またどこの馬鹿がと死んだ目をする。それにアカリが言えば、扉間はかっと目を見開き、消えた。

 

「・・・便利だなあ、飛雷神の術。」

 

そんなことを思わず呟いた。その後に、アカリはひとまず千手柱間と、そうしてイズナに知らせねばと自宅に戻った。

そこには寝癖の付いた頭をかきながらうちはマダラとイズナと話をしている、柱間がいた。

 

「おかえりなさい、マダラ殿。」

「ああ、帰った。にしても、イドラに何かあったのか?」

「おお、姉上、どこにいっていたのだ?」

「・・・柱間、お前、寝癖までつけやがって。ほら、火影がそんなんじゃ示しが付かんぞ。」

 

マダラは渋い顔をして柱間の髪についた寝癖を手ぐしで整える。それを見たアカリは懐に収めている櫛を取り出す。

 

「おい、止めろ。他人の櫛を使うのは縁起が悪いだろう。」

「ああ、そうだな。にしても、柱間、お前の髪にしては頑固な寝癖がついたな。」

 

そんな風に言われながらマダラやアカリに世話を焼かれて柱間はなんだかふくふくとしている。それにイズナはうわあという顔で眺めている。

 

「そういえば、アカリ殿はなんで姉さんのことを連れていったの?」

「そうだ!実はな、扉間に子が出来たんだ!」

 

それに三人は目つきを鋭くさせた。正直、寝癖の付いた柱間と、それを整えてやろうとしている最中のマダラが顔をきりっとさせても何かしまらない絵面だ。

 

「今度はどこの奴だ?」

「うちの奴らを出すか。」

「まったく、姉さんまた家に入れちゃったの?」

「私も言葉が足りなかった自覚はあるが、皆、傷がでかいな。違うわ!イドラの腹に、扉間の子がいるんだ!」

 

その言葉にようやく三人は目を見開き、一斉にアカリに詰め寄った。

 

「本当か!?」

「医者にも診せた、はっきりと。ただ、初期だから安静にしているようにとだけ言われた。」

「・・・・そうか、ようやくあの子に子が。」

 

マダラは少しだけ涙ぐみ、胸の内で幼い頃になくなった母親に少しだけそれを報告する。小さかったあの子もすっかり大きくなったのだと、改めて理解した。

 

「一人目は流れちゃったし。もしかしたら、とも思ってたけど。」

 

イズナはそう言えば、皆でよかったとほっとしていた。

イドラ達がいれば、そんな設定ありましたねと後ろめたそうな顔をしたことだろうものだった。

 

「なんだ、皆、冷静だな。」

「まあ、元気な息子が産まれてくるのは確定していたからな。」

「その前に起こった諸諸が酷すぎて、そこまでの衝撃が少ない。嬉しいし、おめでたいけどね!?」

 

その言葉に男達の脳裏に一人の青年の姿が思い浮かぶ。

イドラのようなふわふわとした空気を纏った、扉間に瓜二つの青年だ。そこまでなら別にいい。

それぞれ身内の子だ。何の間違いか、バグなのか、成長した彼に会った身としてはなかなかに可愛い奴だと思えた。

けれど、マダラとアカリの娘に見る、何か、恍惚とした視線。そうして、オビトの言葉を思い出す。

 

大丈夫か?

 

そんな唐突な不安に襲われた。

 

「兄さん、やっぱり、互いに子どもが産まれたら会わせるの?」

「いや、それは、いとこになるだろうからな。会わせないってことはないだろう?」

「まあ、どうなるかについては神のみぞ知るとしか。」

「にしても、扉間に子とはなあ。何をして遊ぼうかのお。そうぞ、マダラの子も生まれるしのお。綺麗なべべでも買ってやろうかのお。」

 

アカリとうちは兄弟が若干の未来への不安を話している中、柱間は己の甥っ子と姪っ子への期待感を膨らませていた。

うっきうきの柱間はふと、と思い立つ。

 

「そう言えば、扉間には伝えたのか?それに、イドラ殿は?」

「扉間になら誰よりも先に伝えたぞ。そのまま飛雷神の術でイドラの所に飛んだ。イドラは普通に自宅に置いてきた。そうだ、後で手伝いの女を選出せねば!」

「うちはと千手、どっちで選ぶの?」

「・・・・・うーん、イドラは両家に人気があるからなあ。まあ、両家から交互に選ぶってことにしようか。」

 

そんな話をしていると、扉間が塀を越えて顔を出した。

 

「なにしとるんだ!?」

 

柱間のそれに扉間はそのまま庭を突っ切り、縁側に駆け寄ってきた。

 

「飛雷神の術を使うほどの距離ではないだろう。」

「だからって、塀を越えてくる奴があるか!?ああ、髪に葉っぱまでつけて・・・・」

 

近づいてきた扉間にアカリは呆れたような顔でそう言って、葉っぱを取ってやる。それをイズナはじっと見つめる。

 

「扉間よ、おめでとうぞ、息子が出来たとはな。」

「兄者、別段、息子とは決まっておらんが。」

「諦めろ、たぶん、産まれてくるのはおそらく、あれだ。」

 

そんな会話を聞いていたアカリの視界に、何故か普段から一つ結びになっている髪を解いているイズナが入り込んだ。

 

「髪を解いたのか?」

「・・・紐がちぎれちゃって。」

「そうなのですか。」

 

イズナはそれにじっとアカリを見る。アカリはどうかしたのだろうかと、イズナを見返した。それにイズナは不機嫌そうな顔をしてマダラに近づいた。

 

「兄さんに結んで貰う!」

「はあ、わかりました。」

 

アカリはイズナの不機嫌の理由がわからずに首を傾げた。

 

「家でか?」

「ああ、あれが出産するまでは仕事はできる限り、家でするからな。持ち出しの出来ん分はどこかでまとめてするからな!」

「それについてはまあ、調整次第だろ。どうせ、家と火影邸が近いんだ。何かあればすぐに来れるしな。」

「おお、構わんが。お前がそこまでするとはな。」

 

柱間は妊娠について喜びはしても、そこまでイドラの側にいたがる扉間を意外に思う。人の目などいくらでも入れられるし、飛雷神の術でどうにでもなるはずだ。

それに、扉間は叫ぶように言った。

 

「兄者はイドラをなめておる!」

 

ぴしゃりと言い捨てて、扉間はわなわなと手を震わせた。

 

「いいか、あやつが千手に嫁ぐことが決まってからどれだけのもめ事を起こしたと思う!?」

 

それに柱間とマダラに、髪を結って貰っているイズナは思い出す。それこそ、思い出してごらんと何か、歌うように聞こえてくる気がした。

 

キノコにあたって血を吐き、ぶっ倒れ、よくわからないが未来から子どもが来て、誘拐され、未来が見えたということが発覚し、よくわからん隠し子騒動を起こし、大名の家系をたぶらかし(語弊がある)。

 

「子が出来たんだぞ!?もっとすごいことが起こっても驚かんぞ!?」

 

それにマダラは思わずというように扉間の肩を掴んだ。

 

「よーし!扉間、柱間の監視と、その他の補佐は俺とイズナがなんとかする!お前はイドラから離れるな!わかったな!?」

「マダラ、貴様も任せた!ただ、人との交渉は兄者と姉者に、イズナの誰かと一緒にしろ。貴様はそういった所で主導権を握ろうと頑張りすぎて、人から誤解を受ける傾向がある。」

「これって軽い暴言な気もするが。扉間、諸諸のことと、女衆のことは任せなさい。お前は、イドラについておやり。あの子も、最初の子が流れて不安だろう。」

「・・・・・ああ。」

「なんで急にすんってなんの!?怖いんだけど!」

 

 

「ただいまでーす!あ、扉間様!」

 

アカリは明るく、朗らかな声に視線を向けると、勝手口からひょっこりと顔を出したイドラがいた。

 

「ああ、帰ったのか。」

「はい、扉間様は?」

「喉が渇いてな。水を取りに来た。」

「そうなんですか、偶然ですね!」

 

アカリと女衆はそれをしらっとした目で見る。

偶然のぐの字もない。

ただ、扉間の気持ちもわかる。さすがに、四六時中嫁さんにひっつきぱなしも辛かろうと、イドラの一人の外出を許可したことと、仕事がある手前、付いては行かない理性はあれど、心配は心配なのだ。

ちなみに、扉間のその様子のせいで周りは非常に冷静だ。一人が動揺していると、周りは不思議と冷静になるものだ。

 

「今日はですね、お魚とお野菜の煮物ですよ。」

「そうか、わかったから。荷物はこっちによこせ。疲れただろう、休むぞ。」

 

扉間はそう言ってイドラから買い物してきたものを奪い、女衆に渡す。

 

「あ、アカリ様!来られていたんですか?」

「ああ、すぐに帰るけれどね。」

「そうなんですか。また、来てくださいね!」

「ほら、イドラ、こっちに来い。」

 

過保護にイドラを連れて行く扉間にアカリは遠い目をした。

 

「見てください、奥さん。あれが、一生結婚もしない、一族の子がワシの子だとか抜かしてた男の末路ですよ?」

「・・・・本当に、人って変わりますねえ。」

 

はあと、アカリは扉間の後ろ姿を見つめた。

 

 




ああ、門番の。
その門番のっていうの止めてくれよ。うちはの兄さん。あれ、なにそれ?
これか?これは、奈良家の方から貰った鹿の角だ。薬になるが、大量になって処分に困っていたそうでな。
ふうん?それで、なんでそんなの持ってるんだ?
この頃、うちはでは、大きな鹿の角を探すのが流行っているんだ。
(何その流行・・・)
イドラ様がそれは立派な牡鹿の角を貰ってこられてな。見事でな、一族内で流行ってるんだ。
(やっぱ、うちはって変な奴ら・・・・)
そうだ、お前にもこれをやろう。
なに、これ。仏像・・・・?
ああ、鹿の角は彫り物に適していてな。拾ってきたもので、彫り物をするのも流行っている。黙々と一つのことに集中すると、悩みも整理できていいしな。
(な、なんだ、この仏像。ちいせえくせにめちゃくちゃ彫り込みがすげえ。執念つうか、何か、重いものを感じる・・・)
あー・・・・なんか、悩みでもあるのか?
・・・別にない。お前がそんなことを気にすることなどない。
(これは、警戒されてるな。うちはがこういう態度をしたときは、下手に出た方がいいって、柱間様が言われてたなあ。誇り高いから、弱み、見せたがらないって。)
いいや、ただ、悩みがあるって彫り物をしてるって今、言ってただろう?もちろん、お前が悩んで、解決できないことを俺が解決できるとは言わないが。まあ、話せば整理が出来ていいかと思ったんだ。不快だった、すまんな。
・・・・実はな。


その後、うちはが執拗に手作業をするようになったら何かしら抱えているサインであると里で周知されるようになるのは近い未来の話である。
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