千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたらうれしいです。

元々湿った文章書いてるので、段々素が出て切る。ギャグに舵を切らねば。


ここのマダラさんは、基本的に諸諸のことに対して寛容。
自分の次の子は、素直で兄の言うことを聞く子だったが、次に産まれたイドラが伝説をうち立て過ぎて、人生も、人間も、そんなに思い通りには行かないし、理想は理想だよなあと思っているため。
無理なときは本気で無理だよねの精神をしている。


お前が死んでも

 

「大丈夫ですか?」

「え、あ、はい・・・・」

 

うちはイドラこと、千手イドラはとある崖の上にまで駆け上がり、そうして、背負っていた少年をおろした。

それに、まどかテンチは正直、ゲロを吐きそうになりながらふらふらと立ち上がった。そうして、イドラを見た。

 

イドラは、ぽすんと、崖の淵に座った。着ているそれが汚れるのも忘れたのか、まるで幼子のように足を揺らした。

テンチはそれに、恐る恐る近づいた。さすがに崖に足を投げ出すのは恐ろしかったため、イドラの斜め後ろに屈み込んだ。

 

「・・・いい眺めでしょう?」

 

弾んだ声でイドラは言った。それにテンチは頷いた。その言葉は事実で、崖からは里が一望できた。まだ、全ての開墾が済んでいないため、森が目立つが確実に人の住処が存在する。

テンチはちらりとイドラを見た。彼女は、自分が道をそれることに了承するとテンチを背負って思いっきり飛んだ。

さすがは忍、というべきか、イドラはまさしく飛ぶように屋根を歩き、森を駆け、そうして崖をそのまま登り切った。

美しい着物は動きにくいだろうに、伸びやかにそれは動いて見せた。

 

「あ、護衛が・・・」

「あ、置いて来ちゃいましたねえ。でも、大丈夫です!私、これでも強いので!」

 

むふんと鼻から息を吐くイドラにテンチは笑ってしまった。そうして、恐る恐る聞いた。

 

「・・・何故、ここに?」

 

それにイドラは少しだけ悩むような顔をした。そうして、うんと頷いた。

 

「テンチ様、私はお恥ずかしながら、こう、上手い言い方出来ないので、直接に言うのですが。先ほどの、私を護衛として召し抱えるという話は、お断りさせていただきます。」

「な、何故だ!?うちもうちはを個人的に雇えるというのなら、報酬も十分出す!木の葉としても有益のはずだ!」

「うーん、それはどうしても、だめというか・・・・」

「立場の、せいか?お前が、千手扉間の妻だから、か?」

「うーん、まあ、私が扉間様と離れたくないというのもありますが。」

 

震えるような声にイドラは苦笑した。苦笑して、そうして、彼女は里に視線を向けた。

 

「・・・・私はですねえ、いつか、この里のために死にたいと思っているんです。」

 

それにテンチは思わず、イドラの横顔を見た。その顔は、どこまでも、満ち足りていて、己の言葉を欠片だって疑っていなかった。

それが、その、日だまりの匂いのする女にはあまりにも、不釣り合いに見えて。

 

「どうして?」

 

掠れた声でそう言った。それに、イドラはやっぱり微笑んだ。

 

「この景色、綺麗でしょう。ここが私の故郷で、兄様たちの生きる場所になるんです。だから、見ていただきたかったんです。私の愛したもの、私の、守りたいものなのですよ。」

 

 

幼い子どもが、きっと、明日も遊ぼうね、なんて。

そんなたわいもない言葉を吐くときのような、そんな声で、その女は言うものだから。

 

「イドラ姫は、死ぬのが怖くないのか?」

「おかしなことを仰られる。我らは、産まれたときより、誇りがために死ねと言われる身であるのに。」

 

やっぱり、その声は弾むように楽しげで。はしゃぐ子どものようで。

 

「戦に出て、柱間様や兄様の攻撃をかいくぐって、生き残って。それで、ふと、周りを見るんです。そうしたら、誰かが死んでるんです。それを見るたびに、思うんです。何のために戦っているんだろうって。自分よりも、遅くに産まれて、私よりも幼い子どもが死んで。あーあって、何がしたいんだろうって。」

 

だからと、イドラは心底嬉しそうに言うのだ。

 

「ここなら、私、守るために戦えるんです。子どもが行くべき地獄に、私が代わりに行って上げられるんです。ねえ、テンチ様、それがどれだけ幸いなのか、わかりますか?」

 

イドラはそう言って、目下の里を見下ろした。そこは、いつかに、己の一族の牢獄になるはずだった。

 

(柱間様達が生きてるときから、ナルトたちまでは八十年ぐらいらしいから。そうかあ、うちはは百年も満たずに滅びたのか。)

 

今は、どうだろうか。己の起こした騒動は、うちはの命をつないだろうか?

恐ろしい、と思う。

己の内で、嘆く女の声がする。

 

信じるな、信じるな。それは、いつかに、お前達を信用できぬと手を振りほどくのだと。

 

けれど、それをイドラは振り払う。

何かが変わってしまった。ゼツは封じられて、兄と柱間と、扉間とイズナはなんだかんだでやっている。

なら、変わったのだと思うのだ。それがイドラは嬉しい。

 

「私はですねえ、テンチ様。死ぬときに、呪いをかけて死にたいんです。」

「の、呪い?」

 

唐突に出てきた不穏な単語に、イドラは頷いた。

 

「この里には、私の愛した人たちがいて、私の愛した人たちの大事なものがあって。もしも、それを守るために死ぬとするなら。私の死で、それが守られるなら。私、きっと、死ぬときに思うんです。ああ、よかったなあって。」

 

イドラは笑う。本当に幸せそうに、本当に、それ以上のことがないように、里を愛おしそうに見た。

彼女の脳裏には、幾人もの誰かの顔が浮んでいた。

 

それは、千手の顔や、里に入ってから仲良くなった人間の顔。

そうして、同族の顔。

それは、物語の中ではただのエキストラだ。彼らの末は、名前さえも出ないままに、一人の同族の少年に殺されただけの、脇役達。

 

(死んだ理由も理由だから、きっと、里の公式の記録には載せられてないんだろうなあ。)

 

イドラは知っている。皆、生きていて、赤ん坊が産まれて、妻を愛した男がいて、それに微笑む妻がいて。

誰もがどうしようもなく、生きていて。

それが、イドラは愛おしいから。だから、そのために死ぬのなら、イドラは笑って死ぬのだろう。

イドラは、テンチを見た。彼は、なんだか、泣きそうな顔をしていた。

 

「それで、残された者はどうなるんだ?そんなこと、望んでなどいないだろう。なら、それは。」

「それを覚悟しているのです。覚悟して、後を頼むと願ってここにいる。そういうものでしょう?信じて、きっと大丈夫だと願っているんです。例え、私がいなくても、きっと何かは残るでしょう。」

 

 

扉間は、きっと、イドラを選んでくれないのだろうなあとわかってから、彼女はよくよく考えた。

なんだか癪だ。なんだか、自分だけが追いかけているようで大変に癪だ。

 

(・・・いいえ、でも、私が死んだら、イズナも悲しむでしょうし。)

 

そうして、浮んだのは、一人の男だ。己を愛してくれる、優しい兄だ。

きっと、彼は自分が先に死んだらとっても、とっても、苦しむだろう、悲しむだろう。

だから、そうだと思ったのだ。

 

己が、例え、火にくべられるとするのなら。

どうか、その煌々とした火を愛してくださいと。どうか、そのくべられた火を囲んで、私を思い出してくださいと。

 

私の愛したものが詰まったこの、小さな箱庭を、どうか守って、愛してくださいねと。

呪いの一つでも残していこう。

 

 

そうしよう、ああ、そうしよう。

名案だと、イドラは胸を張った。イドラはちゃんと、うちはの人間が自分を愛してくれると知っている。我が儘だって聞いてくれる。

だから、ねえと、甘えたようにいつも通り我が儘を聞いてくれと願うのだ。

 

どうか、どうか、あなたの愛する誰かのいるこの場所を、そうして、私の愛したものをどうか、守ってくださいね。

 

(それが、きっと、扉間様の願うことでもあるから。)

 

共に生きていくと決めたのだろう。共に、その地に根を張って生きていくと決めたのだろう。だから、どうか己の影に呪われて、ずっと生きて欲しいのだ。あんな、あんな、惨めに死なないで欲しいのだ。

 

(・・・あの子が、一人にならないように。)

 

目を閉じれば、少年の顔が思い浮かぶ。可愛い弟にそっくりの、生意気そうな、家族が好きだった少年の顔が。

 

いつか、どこかで聞いた。

とある場所では、あなたの人生の汚点になりたいなんて口説き文句があるらしい。

それがいいなあと思う。

悲しいことに、自分の好きな人は、自分を傷にはしてくれそうにない。なら、汚点ぐらいには、呪いを残せないだろうか。

 

笑う、笑う、女が笑う。

それにテンチは改めて、ああと思う。

この世は地獄であるらしい。この世は、その、幼子のように無垢なる女にそんな生き方を押しつける。

 

「それは、とても、ひどい話だ。」

「そうですか?」

「・・・だって、そう言われたらそうせざるをえない。」

「ええ、でも、いいじゃないですか。例え、呪われても、生きてくれればじゅうぶんですもの。」

 

テンチの、茫然とした顔を見てイドラは少しだけ苦笑して、そうして、彼の顔をのぞき込んだ。

 

「テンチ様、ええっと、こういうのってたぶんそんな端的に聞くのって悪いことだと思うんですが。テンチ様は、私のことが好きって本当ですか?」

 

本当なら、顔を真っ赤にして違うと叫んでいただろう。けれど、その時のテンチは泣きたいような気分でこくりと頷いた。

それにイドラは照れ照れと顔を淡く赤くして、えへへへと笑った。

それは、まるで、血の臭いだとか、そんなものを知らない少女のようで、それに、テンチはああと思う。

なんだか、素敵なものに会えた気分で、もっと知りたいと、もっと話をしてみたいと思って。

笑うそれは、やっぱりとても綺麗なものに見えた。

 

膝を抱えて笑う女は、ひどく愛らしかった。

テンチは何を言えばいいのかわからなくて。想いが遂げられないことが悲しいとかではなくて、ただ、切なくて。

そんなことを、笑って言う女のことが切なくて。

それを見たイドラは、うーんと唸った。彼女は振られたことが悲しかったのだと思ったのだ。

 

「よし!テンチ様、なら、こういたしましょう!」

「なんだ?」

「いいですか、テンチ様!これから、テンチ様はどんどん大きくなられて、立派な若者になるでしょう!そうしたら、私よりももっと綺麗な人を好きになって、また会いに来てください!私が逃した魚は大きかったって悔しがるぐらいに立派に成ってください。」

 

私、待っていますから。

 

女は、死を望む言葉の後に、あっさりと、それを覆してテンチを待っているというのだ。

その矛盾に、テンチは少しだけ笑った。

 

「それまでに、お前は死んでいるかもしれないのにか?」

「そ、それに関しては、頑張って生きて見せますよ!それに、兄様たちが今、平和になれって頑張ってますしね!だから、テンチ様が大人になるまでは、私、ここにいますよ。だから、とびっきりにいい男になってまた、会いに来てください。それで、悔しがらせてくださいね!」

 

それは完璧な、テンチを振るための言葉で。

けれど、テンチはそれにぐすりと鼻を啜って、ちょっと笑った。

矛盾しているようで、それは、心底、テンチに生きて欲しいと思っているのだ。まだ、会って間もない己に。

それで、いい男に成って見返せなんて、ひどいことを言うもので!

けれど、散々に人を殺したはずの女がそんなにも、血の匂いがしないのはきっと、そうなのだからだろう。

それは、きっと、最後まで誰かに生きて欲しいと思うのだろう。それを、いいなあと思うのだ。

 

「千手扉間のことがそんなに好きか?」

「はい、大好きです。」

「相当スケベらしいが。」

「え、スケベじゃないですよ!?」

 

焦ってそんなことを言うイドラにテンチは笑った。なるほど、これが己の初恋なんてものの終わりで、そういうのなら、自分もまた呪われているのだろう。

また、生きて、誰かを好きになって、そうして会いに来いというのだ。

それまで、生きろと、死なないでと、そう言われているのだ。

でも、きっと、その感覚は悪くない。

 

いいなあと思う。素敵だなあと思う。

仇敵だった男を、千手一族の男を憎むわけでもなく、愛するという選択肢をとったそれのことを。

 

「・・・夫のどこが、そんなに好きなんだ?」

「うーん、そうですねえ。」

 

イドラはぱっと、花咲くように笑った。

 

「私が死んでも、当たり前のように生きて、幸せに成ってくれるような人だからです。」

 

ああ、それはなかなかに。

 

「・・・なるほど、それは確かにいい男だ。」

 

 

 

(・・・・怒ってるのかな?)

 

イドラは千手扉間に頭を拭かれながらどきどきしていた。

なんとか、まどかテンチという少年は自分のことを諦めてくれたようだが、それはそれとして、予定コースから思いっきり場外へと飛び出したことについては怒られるかもなあと思っていた。

けれど、驚くことに後ほど合流した護衛からの咎めはなく、扉間たちも特別怒ることは無かった。

ただ、何か、沈んだ空気を出していたので、自分が間違えたのかと戦々恐々していたのだが、別段叱られることもない。

というか、今日は頑張ったからと好物のきつねうどんを食べさせてもらえたし、扉間は早く仕事を片付けて自分と一緒にいてくれる。

こうやって、頭をてぬぐいで丁寧にぬぐってくれている。

イドラはねむねむと目をぱしぱしさせた。喉からごろごろと音が聞こえてきそうなほどのだらけっぷりだ。

けれど、扉間はなんだか眉間に皺を寄せて、黙り込んでいる。

大きく欠伸をしながら、イドラは今日着た衣服を洗わなくてはなあと考える。そこで、はっと気がつく。

 

(ま、まさか!あの衣装を汚したから、怒っているのでは?)

 

ようやくまともに貰った衣装は散々なやんちゃで砂埃だらけだ。自分で洗う気だが、確かに着て初っぱなであんだけでどろどろにしたのは自分でもどうかと思うのだ。

イドラはそれで扉間が怒っていると理解して、めしょっとした。

 

「・・・・ごめんなさい。」

「何を急に。待て、何か隠してることでもあるのか!?」

「今日、せっかくいただいた衣装を汚してしまったので・・・」

「ああ、それか。いや、今更な気もするが。別に構わん。あの衣装は捨てろ。」

「え!?でも、あれってお高いのでは!?」

「・・・お前、質の良い忍具へ金をかけるのにはためらわんくせに、そこで反応するのか。あのなあ、別の男との逢瀬に使った衣装など着てみろ。ワシが、お前のことをかわいがっとる爺どもに五月蠅く言われるわ。大体、本来なら、よそ行きのための衣装をもう少し仕立てねばならんのだからな?」

「・・・わかりましたあ。」

イドラはそう言いつつ、衣装をどこかに隠しておくことに決めた。だって、扉間から最初に貰ったものなのだ。

イドラは隠し場所を考えていると、扉間は髪を乾かすのを止めて、そっと、イドラの目の前に何かを差し出した。

 

「?これは・・・」

 

それは、古びたクナイだった。小さな、おそらく子供用だろうものだった。

イドラはそれを何だろうと両手の中でくるくると回してみる。そうして、くんくんと等々匂いを嗅ぎ出した。

扉間は最終的になめたりしそうで、イドラの手を止めた。

 

「・・・ワシが子どもの頃に使っていたクナイだ。」

「はあ?」

 

イドラは本当にそれの意味がわからずに頭の上にはてなが浮んでいた。それに扉間はイドラの顔をのぞき込む。

己の膝の上に乗ったそれに、扉間は静かに言った。

 

「・・・お前、言っていただろう。ワシがいないと生きていけないと。」

 

何か色々はしょっている気がするし、マダラとかイズナがいるならまだ保っていられる気もするが。

概ねそうかとイドラは頷いた。

それに扉間は盛大にため息を吐いた後、とんとんとクナイを指さした。

 

「もしも、本当に、ワシがお前よりも先に死んだとして。本当に耐えられんと言うのならそれで死ね。」

「扉間様、熱でもあるのですか?」

 

その言葉に扉間は、ぎちぎちに女の頭を掴んで締め上げた。

 

「みいいいいいいいい!」

「貴様、人が真剣に話をしておるときに・・・」

「扉間様、効率第一じゃないですか!なら、自害なんて無駄なこと、一番嫌いでしょう!?」

 

それに扉間は息を吐き、女の頭から手を離した。イドラは痛む頭をさすっている。

 

「イドラよ、お前、ワシに言っていないことがあるだろう。」

 

それにイドラはぎくりと体を震わせた。もちろん、ある。

ぶっちゃけ詳しい千手とうちはの因縁の話だとか、兄たちの前世だとか、後は大筒木が来るから六道仙人と相談してえなあと思いつつ、全然何も出来ていない。

 

(・・・六道仙人様のこと、いつ言おう。)

「大体、ワシに着せた濡れ衣のこととて本当に、こたびの同盟のための強行なのか?」

 

いいえ、未来でのあなたから始まる、あなた周りの人間のクソさへの怒りです。

が、これからあなたの弟子になる人間たちがクソだからです、なんて素直に言えるわけもない。イドラはそっと、全力で目をそらした。

それに扉間は息を吐く。

 

「貴様のあれのせいで、ワシの評判がどうなっとるかわかるか?開発する忍術は全てスケベ目的の色物ぞ?貴様を大事にしている愛妻家の触れ込みでなんとか均衡をたもっとるが。同族の女どもの視線の痛さといったら・・・・」

「も、申し訳ないです・・・・」

 

扉間の苦さにあふれたそれに、イドラは穴があったら入りたいと体を丸めた。それを見ていた扉間はイドラの脇に手を入れて、それを自分を向かい合う形で方向転換をさせた。

そうして、イドラの頬を片手で掴んだ。

もにもにと、いつも通りそれの頬を揉む。

 

「イドラよ、ワシはお前のことを愛しておる。」

「嘘だあ。」

 

それに扉間はなんのためらいもなくイドラの頭にチョップを送る。

 

「いだっ!」

「貴様は、本当に締まらん奴だな!これで頬の一つでも赤らめんか!」

「えー・・・だってえ、そんなこというひとじゃないじゃないですか!」

 

それに扉間はずいっとイドラに顔を近づけた。

 

「なら、貴様の中では、ワシがなんとも思っていない女のために、すけべの異名に耐え、子が出来たと言われて家に走って連れ帰り、わけもわからんうちはからの懐きを躱し、他の氏族から恋愛指導を頼まれている現状に耐えていると思っているのか!?」

「うおおおおおおお!その節というか、色々とご迷惑をかけてもうしわけありません!!」

 

イドラはそう言って倒れ込み、ずりずりと扉間から距離を取ろうとする。それに、扉間はそれの腰を掴んで己の方に引きずった。

 

「だから、だ。イドラよ。ワシは、どうも貴様を愛しているようだ。そうでなければ、こんなにも動きにくい状態に成ってなお、お前のことを消すわけでもなく、こうやって手元に置いているのだから。」

(・・・それは、私は可能性として、消されていた可能性があると?)

 

イドラは己が辿ったかもしれない事実にぞっとしながら、じとりと扉間を見た。

ほんまですか、あんさんと、言いたくなったのだ。

そこでふと、気づく。自分に覆い被さる男の耳が真っ赤になっていることに。

それにイドラは、その言葉が本当であることに気づいて、どんどん己の顔に熱が集まっていることに気づいた。

 

「・・・とびらまさまあ。」

「なんだ?」

「耳、真っ赤なんですが。」

 

それに扉間は少しだけ沈黙した後、無言でイドラの頬に噛みついた。

 

「みいいいいいいいいい!」

「ええい、五月蠅い!黙って事実を受け止めろ!」

「えーん、だってえ、今、私たちものすごい恥ずかしいことしてる気がするんですがあ!?」

「黙れ!ワシだって、何が悲しくて、己にスケベの異名を振りまくきっかけになった女に惚れねばならんのだと後悔しとるんだからな!」

「うおおおおおお!重ね重ね、申し訳しかないいいいいいい!」

 

そう言って、己の下でじたじたと、顔を真っ赤にしてのたうち回る女に、扉間は目を細めた。

 

 

他人のために死にたいと、呪いを背負わせてでも、生きて欲しいと聞こえたとき。

扉間は、それの中の何かをまた、のぞき込んだ気がした。

そうして、惚れた腫れたというくせに、本音を殆ど喋らずに、黙り込む女が憎らしかった。

千手は沈黙した。

そうして、うちははそれぞれでああと言って、そうして、頷いた。

マダラだけが、頷いた。

 

「ああ、そうだな。」

お前も、そうだろうなあ。

 

いつか、己はと扉間は思うのだ。

その必要があるのなら、その順番が己に回ってきたのなら、自分は命をくべるのだろう。

けれど、と扉間は己の下でじたばたとする女を見た。

 

そんなにも、耐えられないというのなら、これのことは貰っていこう。

いいだろう、いいはずだ。

自分の人生は、これにめちゃくちゃにされたのだ。それが、残されることに耐えられないというのなら、それの命一つぐらい、貰っていっても良いだろう。

 

(なにか、あったな。確か、お前が死んでも、寺にはやらん。)

 

続きはどこかぼやけている。だから、扉間はそっと胸の内で呟いた。

 

お前が死んでも、寺にはやらん。所詮は忍の一生だ。墜ちる地獄は、皆同じ。

なら、その地獄まで、付き合わせても良いだろう。

 





扉間、お前、イドラに与えたクナイのことだが。
うお!説教か!?
説教というか、お前、もう少し警戒しろと。あれのことをイドラがうちはに言ったら、うちはで自決用のクナイが流行ったらどうするだ?
・・・・口止めは。
した、自決用のクナイを貰って、あんなに嬉しそうなのもどうなんだろうな。
恩に着る、姉者。
嬉しそうだったよ。私の死、死に方を選ばせてくれて嬉しいってな。
姉者、何か、機嫌が悪いか?
・・・どちらかという、八つ当たりだな。私は、死ぬときに共に来いと言ってくれる人間もいないからな。
・・・・・。
あと、むかつくのもあるか。
むかつく?
戦場に出ることもろくに出来ん、弱い奴の戯言だ。弱いくせに、戦で死ねもせず、生き残った人間からすれば、先に行く人間をどんな顔で見ているのかなんて興味も無いと思っていたからな。
姉者、ワシは、ただで死なんぞ。
その前に、マダラ殿とイズナ殿、お前ら兄弟がいて死ぬ状況なんてないだろうけどな。なんだ、お前ら、国一つでも滅ぼす気かって過剰戦力だしな。お前は、私には死んでも良いとはいわんだろうし。
・・・・姉者と、共にはなあ。うん?待て、姉者、ワシがわる、うおおおおおお!?
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