番外編です。
この世界戦の未来に当たります。時系列はあまりおきになさらず。
自来也の施行を考えてたら、なんかエロとはって哲学に陥ります。ちなみに、そこまで原作通りにはいかんやろって幾つか変わっているところがあるのかと思ってます。
とある晴れた日、自来也はうんうんと唸りながら文机に向かっていた。目の前には、これまた真っ白な紙が広がっている。
腕を組み、そうして、大きく息を吐いた。
「・・・・・ダメだ!!」
文机に肘を突き、そうして、頭を抱えた。
「何も浮かばん!!」
絶賛、男はスランプだった。
イチャイチャパラダイスシリーズの新刊の執筆に勤しんでいた自来也はどうにも文章が浮かばずに悩んでいた。
話の構想自体が浮かばずに、取材をしようにも方向性を決められずに悩んでいた。
そこで自来也は自宅の二階にて、外を眺めながら憂いを称えた目で空を眺めた。そうして、机の上に置かれたとある本を手に取った。
「・・・・未だ、扉間様の足下にも及ばんのお。」
自来也ははあとまた息を吐いた。
自来也が尊敬できる人間として名を挙げるとするには、まず師である猿飛ヒルゼンの名前が挙がる。それに続いて、千手扉間の名前が挙がる。
千手扉間、初代火影の弟にして、木の葉隠れの里の政治面を支えた男だ。が、それはあくまで歴史書に刻まれる部分でしかない。
彼はある意味で一般的に一二を争うほどに有名な忍であるだろう。
うちは一族、美麗な顔立ちは多いが血継限界を持つ故に秘密主義で有り、警戒心が高い氏族だ。
その一族の、族長の妹であり、そうして皆から溺愛されていたイドラ姫を口説き落とし、あまつさえ婚姻前に体の関係を持ち込んだという剛の者だ。
何よりも、彼の考える忍術は素晴らしいと自来也は考える。
戦闘で使えば恐ろしいの一言に尽きる。事実、彼の弟子に当たる波風ミナトの飛雷神の術は運用は難しいが強力だ。
だが、蓋を開ければどうだろうか。
その強力な術が姫との逢瀬に使われていたなんて。というか、夜這いに最適すぎないか、この忍術。
(影分身を使った複数プレイ、結界術を使った逢瀬における隠蔽。わしには、まだ、ここまでの発想に至れん!)
自来也とて女と男の物語をそれ相応に書いてきた身だ。そうして、取材という名目で多くのおなごと戯れ、エロというものを探求してきた。
が、自分は扉間ほどの情熱を持ってそれを探求できているのか?
自来也は悩む。
敵対している一族の姫に惚れ、それを口説き堕としたときの高揚感、そうして、それによって高められる愛欲。
スケベとはもちろん欲望であると自来也は考えている。けれど、その欲望を本当に気持ちよく発散するには相手への好意が必要なのだ。
扉間は生涯妻一人を愛したそうだ。いや、イドラ姫の背後関係からして浮気した日には本当に殺されていたため出来なかった可能性もあるが。
ここまでのスケベ野郎で有りながら一途であったことから、そうとう妻を愛していたのだろう。
そうだ、扉間というそれはたった一人の妻を満足させるためにスケベを探求したのだろう。
(わしは、そこまで執拗にスケベを探求しているのか?)
いくら小説を書き、スケベな話を書いても扉間という頂に触れているのか自来也にはわからない。
聞こえてくる伝説を聞けば聞くほどに、自来也は悩む。
自分は扉間を越えられないのではないか?もっと、彼の人はすげえことをしていたんじゃないのだろうか?
「・・・・わしは、未熟だ。」
「・・・・いや、自来也のじいさん、あんた何をそんなに悩んでるんだよ。」
自来也はそれに頭を上げた。開いた窓から一人の忍が顔を出している。顔の半分に引きつりがあるのが気になるが、それを引いても愛嬌のある人好きのする顔立ちが。
真っ黒な髪に、真っ黒な瞳。
「なんだ、オビトか。何のようだ?」
「なんだ、じゃねえよ。」
呆れた顔の青年は、うちはオビトはそのまま窓の外の屋根に腰掛けて自来也を見た。
「あんた、ナルトと約束してたんだろ?修行見てやるって。」
「あん?今日は執筆作業があるから無理だと伝えたぞ。」
「まじか、ナルトの奴すねてたぞ。」
「・・・・まあ、急に断ったからなあ。」
自来也の脳裏には生意気ではあるが、ひどく愛らしい少年の顔が思い浮かんだ。が、悲しいかな、そろそろ締め切りも迫っているのも事実。
目の前のうちはオビトとは長い付き合いだ。
うちはマダラのひ孫である彼は、なんでも祖父と同じ名前であるらしい。
マダラの鶴の一声で、まだ同じ名前の祖父が生きている間に名付けられたそうだ。
いいのか、それはと思うが、オビト曰く、彼の家系は非常にマダラに曾祖父に甘いためあり得るのだそうだ。不便もなかったという話を聞いている。
自来也は目を見開き、そうだと思い立つ。
「のう、オビト。お主、何かアイデアはないか?」
「あいであ?」
「なんだ、ないのか。うちはマダラ先生のひ孫だ。なにかないのか?」
それにオビトは心底嫌そうな顔をした。
自来也にとって尊敬している人間の名前に上げる存在はそう多くない。が、その中でも食い気味に名前を挙げるのはうちはマダラである。
彼もまた有名な忍だ。木の葉隠れの里の二代目の火影であり、そうしてうちは一族の族長だ。けれど、マダラにはそれよりも人に知られる功績がある。
それが、作家としての部分である。
一部では戦好きとも言われる彼ではあるが、文化人としての造詣は非常に高い。特に、文筆面では目を見張る物がある。
そんな彼の著作の中で有名なのは、敵対する一族の男女の恋愛を書いたものである。
察せられるだろう。そうだ、彼の書いたうちはイドラと、そうして千手扉間をモデルにしたこの話は非常に受けた。
実在のモデルがいる面とそうして有名な彼らの話はスキャンダル的な面でも人々の興味をそそった。
何よりも、だ。マダラという男の書く文章はそれだけ人を引き寄せた。
自来也は覚えている。
猿飛ヒルゼンの家に招かれた折、暇つぶしにと適当に読んだその本は彼に衝撃を与えた。
のめり込んでしまうような心情表現、はらはらとするチャンバラシーン、ほろりとさせる人情、人の醜さ。
何よりも、その文章はあまりに艶やかだった。濡れ場など一切ないというのに、妙なほのくらい色気を感じさせる文章。
自来也は感銘を受けた。
そうだ、物書きとしてあまりにも自来也にとって完成された憧れを持ってしまったのだ。
「・・・幼かったわしはマダラ先生の文章に、そりゃあ感動してなあ。未だ生きておられたマダラ先生に弟子入りを望んだが。忍としての手ほどきはしてくれたが、作家としては何も教えてくれんかった。」
「ヘエ、ソウナンダ・・・・・」
オビトは知っている。自来也が感銘を受けたそれは、当時、外貨稼ぎをもくろんでいた千手広間がマダラに媚びを売りまくって書かせたもので、当人達への承認は行っていないことを。
(・・・おかげで、財産がえげつねえことになってるんだよな。)
そんなことを黄昏れたくなりながら、オビトは息を吐いた。
「まあ、それならいいんだけどな。」
「なんだ、オビト。お前が手ほどきをしてやればよかろうに。」
「そうしてもいいんだけど、うちのサスケがそのまま修行に誘ってな。イタチが稽古をつけてやってたよ。」
「イタチ、ああ、うちはの宗家の長女か。」
そのまま二人は雑談染みたものを続けた。なにはともあれ、自来也はネタを探していた。
「にしても、狭間の奴、なんとかならねえのかなあ。」
「なんだ、また変な術でも開発したのか?」
狭間とは、三代目火影のうちはカグラの長男だ。父親に似たせいか猿飛や志村ダンゾウたちも甘い対応を取る。
この男がくせ者で忍術の開発を趣味としているのだが、開発するのが全てとんちきなのだ。
「最近開発したのはなんだったか?」
「人に猥談しか喋られなくする忍術だよ。あれんとき、まっじで大変だったんだよなあ。」
まあ、上忍の一部が猥談しか喋られなくなる事態ははっきり言って阿鼻叫喚だった。持続時間が短かったせいでなんとかなりはしたが。
「ああ、アスマと志村んとこの長男が収束に当たっておったのお。」
正直言って、その時の狭間のやらかしに関しては怒られるというレベルを超えているのだが、毎回、猿飛アスマと、そうして志村トビが何かと走り回っている。
止めればいいのにと一度話を振ったこともあるのだが。
二人とも顔を見合わせて首を振った。
曰く、もうそこら辺は諦めているそうだ。
「あれだ、なんだろうな。全力で振り回されるのも悪くないってか。」
「・・・天才なんです。それが分かっているから、めちゃくちゃした後に、全部が繋がった瞬間が気持ちいいというか。」
自来也は狭間というそれを思い出す。父親似の外見に、母親譲りの明朗快活な性格は刺さる人間には刺さるのだろうなあと思う。
「あれよなあ。何というか、初代や二代目、あと、三代目の周りの人間に人生めちゃくちゃにされとる奴多くないか?」
「そういうあんたも人のこと言えなくないか?」
それに自来也はそっと目をそらした。
「ああ、そう言えば、カグヤの奴は元気か?」
「ああ、昨日任務から帰ってきたぞ。ナルトやサスケと遊ぶって張り切ってたけど。」
話を思いっきりそらしたなあとわかったが、オビトはそう返信した。
カグヤというそれは三代目火影であるうちはカグラの末娘に当たるのだが。
皆が太鼓判を押して、誰よりもイドラに似ていると語る少女だ。
容姿もさることながら、醸し出す空気がそっくりであるらしい。ただ、その女は誰よりもマダラの戦闘力まで引き継いでいる部分もある。
ぱやぱやしているのだが、警戒心が非常に高く、あまり人前には姿を見せない。気質として猫に近いのだが、一度懐くと犬のように纏わり付いてくる。
(あれもあれで独特よな。)
カグヤというそれはどこか相反した印象を受ける。
黒い髪に麗しい顔をしており、忍者としても優秀だが、言動というか振る舞い方は幼く見える。けれど、瞳をのぞき込むと、まるで深い闇を見ている気分になる。
無表情で、まるで人に媚びることを放棄した猫のような、闇の中で狩りをする獣のような印象を受けるのだが。
けれど、親しい物の前では花開くように可憐に笑うのだ。というか、喋らなければ完璧な闇を抱えた美少女なのだが、口を開くと途端に幼児に成り下がる。
自来也はこの前、ナルト達と採ったのだと特大のカブトムシを見せられたことを思い出す。
「あれの片思いはまだつづいとるんか?」
「ああ、アカデミーのイルカ先生だろ?まあ、男を見る目はあったと確信は出来たけどな。それで・・・」
「いた!オビト兄さん!」
オビトと自来也の世間話の間に、割り込んでくる存在がいた。それは、オビトと同じ黒い瞳に黒い髪の、精悍な顔つきの青年だった。
「なんだよ、シスイか。」
「自来也様、失礼します。お話の途中に!」
「いや、かまわんぞ。」
「はい、それで、オビト兄さん。急いで猿飛邸に来てくれないか?」
「はあ、どうしたんだよ、突然?」
オビトのそれにシスイは気まずそうに視線をそらした。
「その、猿飛様と、志村様の孫自慢が白熱して、喧嘩に・・・・」
「はあ?またかよ!肝心の孫は?」
「呆れて遊びに行ってて。他のうたたね様とかはいつものことだから放っておけと言うし。」
「カガミ様は?」
「・・・俺の自慢をし始めて。」
それにオビトは天を仰いだ。
「・・・いや、待て。広間のじいちゃんやカグラのばあちゃんは、いや、そうだ湯治に行ってるのか。綱手のばあちゃんも留守だし。狭間は任務か。後の面々も、そうだな、確かちょうどいないのか。俺だけか。わかった、行くぞ!」
「はい、あ、カカシさんも連れてきますね!」
オビトは覚悟を決めたように頷いて自来也を見た。
「それじゃあ、ここでお暇するわ。話のネタに困るなら、うちの書庫の鍵貸すし。」
「おお、ありがたい。」
そのままオビトとシスイは慌ただしくその場を去った。
「・・・・オビト、お前も自分は違いますみたいな顔をしとるが。カカシも大分こじらせとるんだがなあ。」
それを見送った自来也ははあと改めて真っ白な原稿を眺めた。
「・・・・ネタがないのう。」
そう言ってぼやくように呟いて、その日もまた過ぎていった。