広間君の使わないえげつない忍術を考えるのけっこう楽しいです。キノコって植物じゃないけど、木遁も生命創造みたいな部分があるので許してください。
「扉間様!!お願いします!!」
「お願いします!!」
「どうか!」
夜のことでマンネリ解消する方法を教えてください!
うちはの姫君も口説かれたんですから。扉間様ならいけますよね!
その日、千手扉間の目は見事に死んだ。
初夜のやりなおしの折り、結局本懐って遂げられたの?
答えは是ではあるのだが、まあ、そこにたどり着くまでが酷かった。無意味に体術だけは際立った女を扉間はなかなか捕まえられなかった。
狭い部屋の中を縦横無尽に動き回る妻の捕縛は困難を極めた。
が、それを許す扉間ではなかった。
フェイントを重ね、影分身を使い、見事にイドラの捕縛に成功したのだ。
我に返れば、何をやっているんだろうと思う。何故、自分は妻と一夜を過ごすためにこんな捕獲イベントをこなさねばならないのだろうか。
「やだあああああああ!!」
「やだではないわ!すでに音が漏れんように結界は張っておる!以前のように助けが来るとは思わんことだな!!」
端から見れば完全に弱い女を手込めにする野郎の発言なのだが、それを聞くものは幸いなことにいなかった。
「みいいいいいいいいいいい!!」
もう、最終的には獣同士のマウントの取り合いのようになった。
勝った!という満足感はあれど、終った後、ズタボロの体を引きずって心から何してるんだろうと思った。
完全に初夜の後ではなくて、決闘した後の疲れ具合だった。
当たり前で、影分身を複数使い、狭い部屋を動き回ったのだ。そちらのほうで疲労が溜まった。
ちらりと、布団にくるまる女を見た。安らかそうなそれに扉間はいつものようにもちもちとしたほっぺたを引っ張った。
それにほにゃほにゃと笑みを浮かべ、よだれを垂らす女に扉間は昨日の怒りを忘れて微笑んだ。
扉間は妙に晴れやかな気分で、仕事のことを考えた。
「・・・・機嫌良いな。」
「いいのお。」
「今日って、あれでしょ?」
その日、千手柱間、そうしてうちは兄弟は顔を寄せ合ってひそひそと言い合った。三人が居るのは、もりもりにはえた木の上だ。
その上から、数人に囲まれた千手扉間を見下ろしていた。
結婚式の後、千手とうちはは里の予定地の開墾を早急に行った。
何を言っても、他の忍を受け入れるのも、その受け皿の土地が必要なのだ。生い茂った木の伐採には風遁使いと、そうして最終兵器の柱間を使った。そうして、伐採した木はそれぞれで加工し、余った分についてはうちはの火遁で燃やした。
そのほかに、伐採した木をそれぞれの一族で運んだりと忙しくしていた。
ただ、それぞれの里に帰るのも効率が悪いと、野営地のようなものを作り、交代で開拓をしていた。
千手とうちはでいきなり野営地を一緒にして大丈夫なのか?
そんな疑問もあったが、案外二つの氏族は上手くやっていた。
それはまず、互いの族長の仲がいいというのがある。
基本的に柱間がマダラにうざがらみしては怒られるというのを繰り返していた。けれど、それはそれとして、親しい野郎同士の独特な雰囲気に察せられる物がある。
そうして、扉間という今のところ、うちはの人間の好感度をバク上げしている存在のおかげでもあった。
え、扉間様?
ああ、いい人だ。一途で、情熱的な方で。
千手からすればうちはのその評価に頭にはてなを浮かべるものもいる。
えー、そんなに評価たっかいの、あの人?いやあ、さすがにかんざしに飛雷神の術はきも、あ、情熱的で良いの、そうなの。
どんなひねくれ者たちが来るかと思えば、何だろうか。扉間に対してぱたぱたと振られる尻尾が存在するのだ。
何よりも、彼らはイドラという存在の名前を出すと饒舌になった。
まあ、殆どが子どもの頃のやらかしで、いったい扉間はどんな女を娶ったのかとざわついていた。
そうして、その日、千手一族の男達はざわついていた。
なんでも、野営地に物の補給が来るのだが、そこに千手アカリが、イドラを連れてくるというのではないか。
ようやく、イドラという存在を見ることが出来る!
イドラが扉間の人生をめちゃくちゃにした瞬間に立ち会っていなかった千手の人間はうきうきしながら仕事をしていた。
「・・・・イドラ、大丈夫ですか?」
「ええっと、はい!体調は大丈夫ですよ!」
イドラはその日、里の開墾のために野営地にいる一族のためにと物資を運んでいた。多くの荷車に積まれた食料は圧巻であった。その荷車を守るように寄り添うイドラはため息を吐いた。
それを見て、アカリは不思議に思う。
今日、物資の補給の日程を組んだのはアカリであり、そうして、イドラを連れていくと決めたのは彼女だ。
アカリはイドラがてっきりそれに跳びはねるぐらいの様子を想像していた。きっと可愛いと内心で思っていたのだが、イドラは跳びはねてくれずに、どこか気まずそうな顔をしていた。
(・・・・扉間に会いたくないのだろうか?)
そのアカリの予想の通り、イドラは道を歩きながら悩んでいた。
(あああああああああああ!!会いたくなーい!山賊出てきてうやむやになったりしないかなあああああああ!!)
端から聞くと非常にどうなんだという思考なのだが、イドラとしては仕方が無かった。
何故って、扉間に会うのは非常に気まずい。
イドラが最後に扉間に会ったのなんて、初夜の数日後に里の予定地に向かったときを見送った折のことだ。その時も扉間は忙しくイドラと会話があまり出来ていなかった。
(気まずすぎて、扉間様の忙しさに甘えて避けてたのが徒に。こんなことなら、さっさと話せば良かった!)
だって、箱入りのイドラにとって、最初の夜の後なんて気まずさがひどかった。
というか、諸諸の発端である自分が、初夜を拒否したという手前、どの面を下げてと言われるともうどうしようもない。
わんころであったのならば、今にもきゅーきゅーと泣きそうなほどに沈んだ顔でイドラは道を歩いていた。
(・・・・どうしよう。というか、もう最後の方は殆ど乱闘でしたし。いえ、だってえ、マジギレの扉間様複数人に追いかけられるのはさすがに怖すぎますもん。)
脳裏に浮かんだのは、フェイントを重ねて、完全に拘束にかかる扉間の姿だ。その理由は分かりはするが、もう少し配慮をして欲しかった。
自業自得?
あ、はい、それはそうです。
なんというか、初々しい初めての夜の照れとかよりも、まぶたを閉じれば思い出すマジギレの扉間(数人)の存在が見事に全てを打ち消していた。
最悪だ。
「・・・イドラ、やはりどうかしたのか?体調が悪いのか?それとも、うちの愚弟が何かしたか?」
そんなことを、もう義理とは言え姉妹だからと名前を呼び合うようになったアカリが気遣って言ってくれたが、イドラはそんなことを聞き逃す。
というか、頭の中は後悔で一杯だった。
(こんなことなら、怖がらずにぶつかればよかったああああああ。)
「・・・・でも、扉間様も、影分身まで使ってあんな。初めてだったのに。」
ぼそりと、そんなことを思わず呟いてしまった。
それに、ぴしゃりとアカリの動きが止まった。というか、周りにいた複数の人間達もまた動きを止めた。
(初めてだったのに?)
(影分身?)
(え、待って。)
扉間様、初夜って名目で複数プレイに及んだんですか?
ガーンと降り立ったその答えに周りの人間が震えた。それは、ちょっと、その、マニアックすぎませんか?
女達は引いたし、男達はちょっと扉間を称える奴までいた。
そんな仲、アカリから燃え立つような殺気があふれ出したことを理解して、皆の動きが止まる。
イドラもまた何故かわからないが己の隣でマジギレしている義姉を見上げた。
「・・・・イドラ、それは本当か?」
「え?え?」
イドラは何故、アカリがそんなにも怒り狂っているのかわからずに返事をした。
「えっと、ほ、本当というと?」
「・・・・扉間が初夜に影分身を使ったことです。」
イドラはそれに顔を青くした。
(どうしよう!ばれてる!!)
いや、考えれば、あの日寝室は散々に暴れたせいでふすまとか穴が開いてたりした。それについては、とっくにアカリにばれていた可能性もある。
それにイドラは目を全力でうろうろさせた。
「ええっと、その。」
なんて言い訳しよう?
だって、自分たちは熱愛の上で結婚したという設定なのだ。そこに愛は、ないのだ。強いて言うなら、妥協とかもろもろあるような現実的な部分しか無いとイドラは思っている。
「で、でも、仕方が無かったというか。」
「仕方が無い?」
「わ、私も、あの、怖かったんですが。」
「あなたが拒否をしたというのに?」
「い、いいえ、普通のことです!扉間様も仰ってましたし!」
イドラの脳内には、追いかけている最中に、お前のやったことを考えればこれぐらい普通だと叫ぶ男の姿があった。
いや、完全に自分のやらかしのほうが大きすぎる。
それを傍目から聞いていた他一族の人間は思う。
(い、いたいけな箱入りの姫に、なんつうことを常識として教えてるんだ、あの男!)
そんな思考が分かりもしないイドラにアカリは完全に夜叉と化した表情で言った。
「・・・あれが無体を強いたのですね?」
(うえ!?待って、これ、私が扉間様を拒否したと思われている!?)
これは解いておかねば、また扉間様に迷惑を、とイドラは決心した。
「いいえ!色々と大変でしたが!普通のことです!頑張ります!!」
それは悪い大人に教えられたことを素直に信じる健気な女にしか見えなかった。それにアカリの目にぎらつく光がともった。
その日、扉間は心底機嫌が良かった。
何故って、久方ぶりにイドラに会えるのだ。正直、指示を出すことの多い扉間は、どこらへんを開拓するのかなど、細かい調整を行うために非常に忙しい。
もっぱら実働部隊にかり出されている兄たちを尻目に、うちはイズナと計測をして作った地図とにらめっこをしていた。
そのために手紙を送る暇も無く、里にもろくに帰ってこない日々が続いた。
兄やマダラ、イズナは帰らなくて良いのかとも言ったが、今は早さが求められる。ならば、さっさと終らせて住処を作り、共に住めるようにした方が良いだろう。
(・・・少しは二人で過ごせる時間も取れよう。)
そうしたら、あのもちもちとしたほっぺたを引っ張り、猫吸いならぬイドラ吸いをしようと扉間は考えていた。
イドラは、女の甘い匂いと、子どものようなお日様の匂いが混ざったような体臭をしている。非常に癒やされるそれはこの頃激務であった扉間にとっては非常に楽しみな物だった。
できるなら、あのぱやぱやとした空気も堪能しよう。
なんてことを、朝は考えていたのだ。
「アカリ姫!お静まりを!」
「あ、あの、その!武器を下ろしてください!!」
千手の人間が泣きながら据わった瞳で、何故か刀を携えたアカリを止めている。その腰には、泣きじゃくるイドラの姿があった。
悲しいかな、千手の人間はアカリに一喝されてすごすごと止めることを放棄する。
「・・・・扉間、私が怒っている理由がわかるな?」
扉間はひどい既視感を感じなら、思わず叫んだ。
「ワシは何もしとらんぞ!?」
今日も今日とて、本当に何もしていない扉間はそう叫んだ。