千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想いただけましたらうれしいです。感想、評価ありがとうございます。


読者の知ってるうちはって基本的に大事にしたかったもの全部粉微塵で、追い詰められて、追い詰められての状態なんでまともなときって観測できてないような。

マダラの原作の柱間好きも、根本として柱間しか大事に出来るものが残ってなかったからだよなあと思う日々です。


家族で過ごす初めての夜、略して初夜。

 

初夜である。

結婚して最初の夜。扉間は布団に転がっていた。本来ならばここで、色々と雰囲気があったのだろう。

が、その場にはそう言った色っぽい空気は無い。それは、まだ生まれてもない子どもが未来から来たからだとか、よく知らなかった己の一族についての因縁だとか、人の子どもを泣かせて、嫁を殺した黒いのの処分だとか。

千手扉間には考えることが多くあった。

が、それはそれとして別個に考えるべき部分がある。

 

「うわあ、本当に扉間様そっくり。」

「・・・ええ、私は父上にそっくりなもので。」

 

何故、建前初夜の夫婦の寝室に息子が一人入り込んでいるのだろうか?

 

 

千手広間たちは明後日には元の時代に帰るのだという。

 

「ああ、チャクラの充電は十分だぜ?」

 

そんなことを言ったのは、今の今までうちはオビトの服の中で眠りこけていたウツシキだった。

息子達の目的は済んだのだからそれは仕方が無いだろう。

 

「明後日までなら一族の者を誤魔化すことも出来るでしょうし。うちはの人もいるだろうから屋敷にいればいい。」

 

アカリのそれにカグラとオビトがこくこくと頷くものだから広間もそれに頷いた。明後日の早朝まで彼らは千手兄弟の屋敷に滞在することになった。

食事も終わり、さすがに寝るかと思ったときだ。

 

「広間、あんたは今日は両親の部屋で寝なさいね。」

 

それにぶふりとそれぞれで口にしていたものを吐き出した。千手柱間がずざりと姉である千手アカリの元に向かって声を潜ませて言った。

 

(あ、姉上!さすがにそれはどうなんだ!?)

(何がだ?)

(いや、一応、扉間達はこう、夫婦だろ?)

(それはそうであるとして、もう寝るだけだ。)

 

以上!

その一言で広間は扉間達の寝室に放り込まれた。ちなみにアカリはちゃっかりとオビトとカグラを己の部屋で寝かせることにしていた。

柱間も混ざりたいとねだったがダメに決まっているだろうと却下されていた。そうして、独り寝が寂しいとマダラとイズナの部屋に布団を引きずって行くのが見えた。

 

 

 

時間は深夜。

正直、イドラと戯れている広間さえいなかったら、なし崩しになだれ込めた気もする。もう、そこら辺は殆ど意地の部類に入っている。

なら、広間のことを疎ましく思うか?

 

それがどっこい思わない。

 

見てくれだけならば己にそっくり、もう、可愛いとか以前にあれ、ワシって分裂でもしたのかと徹夜明けの馬鹿見てえな考えに至るほどそっくりだ。強いて言うなら、扉間の頬や顎にある赤い傷がないぐらいだろう。

けれど、表情の作り方が違う。ふにゃっと笑うのだ。完全に、表情の作り方、そうして、のんびりとした空気。

あー、お前、なんでそんなに顔は己そっくりなのに、そんなに雰囲気が嫁さん似なんだよ。

 

「広間の好きなものって何ですか?」

「私ですか?私は、油揚げを炙ってショウガ醤油で食べるのが好きですねえ。あと、魚料理も。」

「完全に好みが酒飲み。」

「白米の方が好きですよ。」

「私もご飯好きですよー。」

「同じですねえ。」

「同じだねえ。」

 

聞いてみろ、この馬鹿みてえな会話。

イドラ自身自分が死んだ話をされてもけろりとしている。それはまあ、性格上おかしくはないのだが。

 

(まあ、未来で死ぬと言われても実感なんぞ湧くわけないか。)

 

扉間はぼんやりと二人の馬鹿見てえな会話と、脳が溶けそうな空気に思う存分浸っていた。

なんか、疲労感みたいなものが引いていく気がした。

ちょこちょこ、申し訳なさそうな顔をして自分を見てくる広間の表情もいい。自分に気を遣うぐらいちゃんと育ってることを確認できていい。扉間の周りの自意識が強く、他人をぶん回す奴らに似なかったのかとほっとしている。

そんなことに気づかない駄犬のぱやぱやさを見ろ。

 

あの空間に自身をねじ込みたいが、混ざったらあの空気が霧散しそうで嫌だ。布団に寝転んで、この緩い空気に浸るのが心地が良すぎる。

そんなことを考えていると、イドラが欠伸をし始める。

 

「すみません、もう、寝ます。」

 

イドラはのそのそと布団に潜り込んだ。扉間はほんとにこのままこいつ寝るんだろうなあとそれを見つめる。

もう、諦めた。いや、さすがに今日は無理だと理解していた。

 

「ひろまー、あした、すきなものつくったげますからねえ。」

「・・・それは、楽しみにしております。」

 

そういって沈んだ広間の表情は、マダラとイズナが必死にイドラにさせる賢いお顔によく似ていた。

 

千手イドラはそのまますやすやと眠りの淵に沈みかけていた。

一番の懸念事項だったゼツは捕獲され、結婚式も無事に終った。式さえ挙げればこっちのもんだとイドラはほくそ笑んだ。離婚なんてできるはずもないのだし。

 

(・・・ん、でも、もう、扉間様の、こうかんど、きにしなくていいのかなあ?)

 

ただ、これからやってくる大筒木の辺りに関しては懸念があるが。

 

(・・・もう、いっそ、えどてん、かんせいさせて、オールスターでなぐりかかればいいのでは。)

 

うっつらうっつらしながらふと、イドラは気づく。

そういや、今日、初夜か。

 

扉間が散々に考えていたことにイドラはようやく思い立つ。もう、完全に寝ることしか考えていなかったのだ。

まあ、互いにやることはやってると思われているのだから、今更なんともないのだが。

それはそれとして、イドラはもう夢の世界に旅立ちかけていた。けれど、あ、そういや夫婦になったんだからせめて夫婦らしいことはせにゃならんと義務感でずるりと扉間に手を差し出した。

 

「とびらま、しゃま、ちゅーして・・・」

 

それに扉間は固まった。イドラは扉間の着物の袷の部分を掴んで愚図るように言った。ばっと思わず扉間は広間を見た。広間はそっと目を覆った。

 

「見てませんので、どうぞ。あ、長引くようなら言っていただけると。」

「余計な心配せんでもいい!」

「ちゅー!」

 

愚図るように袷の部分を揺すぶられ、扉間は何となしに気づいた。たぶん、これはやらなくては終らない奴だと。

扉間はもうやけくそで、そっとその柔いほっぺたに唇を押しつけた。それにイドラは満足したようにふへりと笑い、すやすやと眠った。

扉間はどさりと布団に沈んだ。

 

・・・何してるんだ?

 

その一言に尽きた。なんとか収まった諸諸が、こう、ぐわっときてしまっている。息子の前なのに、息子の、結構年がいってしまっている息子の前のなのに。

自分の父親を思い出せば、もう少し威厳があった気がする。

 

「・・・夫婦で、仲が良いのはよいことかと。」

「慰めとるんか、それは。」

 

控えめなそれに扉間は起き上がった。そこには、困った顔で正座する広間がいた。それに扉間は不思議な気分になる。

面立ちは自分そっくりで、纏う空気はイドラに似ていて、けれど下がり眉になって困った顔をしていると、少しだけ弟にも似ていた。

弟が、大きくなれば、こうであったのだろうかと、そんなことを思わせる。

そこで広間が口を開く。

 

「・・・・私に、聞きたいことがあるのでは?」

 

それに扉間はゆっくりと微笑んだ。

未来の己はそう、悪くない育て方をしたらしいと。

 

元より、抵抗は出来た。アカリもまた、広間から扉間が情報を聞き出すのが最短であることを察して、自分たちの部屋にそれを放り込んだのだろう。

 

「あのゼツという存在がなんであるのかはわかっていないのか?」

「・・・・もう少し詳しい話をするのなら、ゼツは何かの封印を解くことを目的としていたようです。」

「それはどこから聞いた?」

「六道仙人より。」

 

それに扉間は顔をしかめた。六道仙人、その単語についてはよく聞いている。けれど、何故、今更になってとも思う。

所詮は、忍宗などというものを広めても、忍術なんてものができあがってしまった時点でだめなのだ。

宗教も悪くはない。人の倫理感や善性の方向性、そうしてタブーをすり込む上ではそれ以上のことはないが。

人を抱き込むなら、実利があってこそだろう。

 

何よりも気にくわないのは、どうもその仙人の好みがイドラであることだ。

 

「すけべじじいだろうが。」

 

それに広間は、あなたも未来では似たようなこと思われてますよ、とは言えなかった。ただ、愛想笑いを浮かべた。

 

そうして、広間が六道仙人より聞き出したことを伝えた。

ゼツというそれは何かの封印を解こうとしていること。

その封印を解くために輪廻眼と呼ばれる特別な瞳が必要なこと。

その瞳は写輪眼より成ること。

そして、もう一つ、尾獣の存在もまた必要であること。

 

「何故、六道仙人はその詳細を言わない?六道仙人もその封印を解かれては困るのだろうが。」

「・・・仮に我らや父上達の代は大丈夫であろうと、次の代や、その次がどうなるかはわかりません。そうして、何よりも、輪廻眼と言われる瞳は相当強力だそうで。それを欲しがる存在が出てくるのではと懸念されておりました。」

 

言いたいこととして、理解できなくもないが。

 

「その瞳を、よく渡したな。」

「最終的にはカグラとオビトに詰め寄られておりましたから。」

 

はははははと苦笑を浮かべるそれに、扉間は息を吐いた。

 

「・・・・あのゼツについてはこちらでなんとか処分するか、それとも封じよう。たっぷりとしたいこともあるからな。輪廻眼がそれほど強力なら、こちらでも眼をかけておこう。持つモノによっては警戒せねばならん。」

「・・・・・オビトのこと、気になっておられますか?」

 

それに扉間は笑みを深くした。察しが良いのは好きだ。

 

「そう聞こえたか?」

「オビトについては安心してください。真面目な奴ですし、元々は明るく、優しい子です。他の氏族の子どもとも良好な関係を築いています。」

「姉の方は、どうなんだ?」

 

それに広間は少しだけ、目を伏せた。そうして、息を吐く。

 

「・・・・父上にはどう見えましたか?」

「不安定だな。危うさを感じる。」

「今、だけのことです。あれは、どちらかというと、柱間様のような女だ。理想家で、傲慢で、自分よりも弱い存在を庇護すべき者とし、そうしてこの世界が優しいだけではないことも重々わかっておりますよ。」

「あれでか?」

 

扉間の嘲笑混じりのそれに、広間は息をもう一度吐いた。

 

「マダラ様が、里を出て行かれました。」

 

それに扉間は目を丸くして、広間を見た。広間は疲れたように息を吐いた。そうして、目を覆った。

 

「最後にあったのは、カグラです。そこで何を言われたのかは、未来の柱間の伯父上と、父上、そうして、イズナの叔父上だけしか知りません。まあ、伝え聞いてはいます。マダラの伯父上は、カグラに言ったそうです。母に会わせてやると。」

 

広間はすやすやと眠りこけている母を見て、少しだけ微笑んだ。

 

「・・・・あの事件以来、カグラは私を過剰に拒絶していましてね。それの理由もわかります。父も、伯父である柱間様たちも、あの子を責めなかったのです。だから、私ぐらいには責められたかったのでしょう。」

「父がいなくなった程度で、あの有様か?」

「いえ、マダラの伯父上が里を抜けたことよりも、カグラが追い詰められたのは、慕う父がそこまで追い詰められていたというのに気づかなかった己自身でしょう。それに、ああいった態度を取るのはどうせ私だけですからいいんです。」

 

広間は落ち着かないというように両手を合わせて握り込んだ。

 

「・・・・カグラは、木遁使いです。そうして、私も。」

 

それに扉間の目が見開かれた。

 

「兄者の子には!?」

「発現は、しませんでした。おかげで、千手で私を押す声もありましたが。私を頭領にするのなら、絶対に子はなさないと宣言して黙らせました。」

 

それに扉間は顔を覆った。扉間が本来ならば子をなそうとは思わなかった懸念事項。これから、里を作っていく上で、その中心になる千手が内で揉めるわけにはいかないというのに。

 

「木遁使いの、万華鏡写輪眼などと、化け物が生まれたか・・・」

「まさか、あれは化け物ではありませんよ。」

 

扉間のそれに広間は嘲笑するように言った。

 

「あれは、今、追い詰められている。父であるマダラが抜けうちはの地位はゆらいでいます。ですが、それと同時にカグラは、次世代において最強の忍でしょう。そのプレッシャー、慕っていた父を理解できていない己、母を奪ってしまった幼い弟への罪悪感、里への責任感。私の前でぐらいしか、駄々をこねることもできないのだから。」

「ワシや兄者は何をしておる。」

「上が、何を言っても、民衆や一族の期待はどうしようもないでしょう。事実、カグラは優秀だった。」

 

言葉を切った広間は扉間に言った。

 

「もしも、今後、私が生まれるようならば殺してくださってもかまいません。」

 

それに扉間は思わず、イドラを挟んで真向かいに座っていた広間の袷の部分を掴んだ。それに広間は静かな目をして、扉間を見ている。

 

「木遁の性質が、受け継がれるかはわかりません。ですが、柱間の伯父上以外の血統の木遁使いは千手に置いて邪魔だ。けれど、カグラは、父上とて惜しいでしょう?万華鏡写輪眼と、木遁使いの二つの在り方を持つ存在は。」

 

扉間は眠っているイドラを見た。よほど疲れていたのか、すやすやと未だに夢の中だ。忍者としてどうなのだろうか。

その間抜け顔を見ていると、少しだけ冷静になれた。扉間はそっと広間から体を離した。

 

「・・・そうであったとしても、うちはだけに木遁使いがおるなど、そちらの方が不満が上がる。なら、互いに一人ずつそうあったほうがましだ。養子の話はでんかったのか?」

「木遁使いであることがわかったのは、互いにそこそこ大きくなってからでしたので。」

「広間よ。」

「はい。」

「ワシらが里を作ったのは、子に死ねと言うのではなく、建前でしかないとしても生きろと願うためだ。」

 

それに広間は視線を床に向けた。

 

「・・・・もう、しわけ、ありません。」

「大体、そんなことをして見ろ。ワシが兄者や姉者に殺されるわ。」

「それは、そうですが。」

 

しょげた顔に扉間は睨むように広間を見た。

 

「そこまであの女を押すのか?」

「・・・・父上も、見ればわかりましょう。今は確かに陰っております。ですが、カグラは太陽のような女なのです。」

 

広間の脳裏には、体術などで勝てずに、いつも吹っ飛ばされて見上げた少女の姿があった。

 

広間は弱いね。まあ、いいわ。なんたって、私は強いから。誇り高いうちはの子で、情深き千手の子だもの。広間のことも、里のことも、全部、私が守ってやるわ。

 

「ええ、輝かんばかりの、存在で。」

 





一方その頃

「ずるいぞ!枕投げで写輪眼なんど勝てるわけ無い!」
「うるせえ、てめえだって影分身使ってんじゃねえよ!」
「ねえ、これ普通に怒られる奴じゃないの?」
「姉上にばれたら殺されるの。」

「わかってやってるんじゃない!」
「げ、アカリ!」
「あ。姉上!」
「柱間、普段なら怒るが。今日は無礼講。助っ人を連れてきたぞ!」
「カグラに、オビト!?」
「ねえ、二人とも明らかに動揺してない?」
「これで勝った人間に、明日の朝食の献立を決めさせてやる!」
「待って!?カグラの瞳にハイライトが・・・」
「ちょ、おま!枕投げで万華鏡写輪眼の力使う奴があるか!?」
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