千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたらうれしいです。

あんまり、話が進みませんでした。すみません。


お名前は何?

 

「・・・・何者だ?」

 

千手扉間のそれに、女は、ひどくうちはらしい女は、歪に微笑んだ。

美しい女であるはずなのだ。

けれど、それから、夜にするような湿ったにおいがあった。背負った、長く黒い髪はまるでそれこそ闇のようだった。

 

「・・・・何者ですか。ええ、そうです。何者なぞ、そんなもの。」

 

よく似ているはずだった。

その声までも、よく似ていた。なのに、なのに、吐き出した声音はまるで子を亡くして嘆き狂う女のようだった。

浮かべた嘲笑は、まるで刺すように禍々しい。その顔立ちが美しいが故に、そらすことを赦さない力があった。

 

「出来損ないでございましょう。言われたこと、一つとて、守れもせぬ愚かな娘でございます。」

 

やたら芝居がかった声音はわざとそうしているようだった。何か、口から零れだしそうなものをこらえるような仕草だった。

 

扉間は何か、喉の奥から吐き出しそうなものを感じてこらえるように口を噤んだ。

もちろん、普段の陽気な犬っぽいのもいいが、目の前の婀娜っぽい感じも悪くない、なんて考えてはいない。

 

「こ、今度は何だ!?」

 

女はうろんな瞳をゼツに向け、そうして黙らせるようにその喉を踏みつけた。潰れたような声音を出すそれを冷たい瞳で見下ろした。

冴え冴えとしたそのまなざしは、イドラよりもずっとマダラによく似ている。それに慌てて後ろにいた青年が止めた。

 

「姉様、おやめください!それについては下手に触らぬ方が!」

「・・・・何やら立て込んでいるようだが。それは俺たちの獲物だ。返して貰おうか?」

「どうせ、殺すのでしょう?」

 

吐き捨てるようなそれにうちはマダラは顔をしかめた。

なんだ、この女は。その一言に尽きる。

せっかく、己の可愛い妹に似ているというのに、その切れ味のよいナイフのような空気が不快だった。

まるで、昔の、扉間と会う前のあの子のようだった。

悲しみを怒りに、苦しさを沈黙に、変えてしまえばそんな女になる気がした。

止めろと言いたくなった。そんな顔をするのはやめろと言いたかった。

けれど、腐敗しきったその瞳が訳もなくマダラを刺す。

互いににらみ合っているとき、ばたばたと走り寄ってくる存在があった。

扉間がそちらに目を向けると、あ、生き別れの兄弟ですかと問いかけたくなるような男が己の妻を背負い、そうして慌てて近づいてくる。

そうして、ゼツをぐりぐりと踏みつけ、青年に止められる女の様に驚愕の表情を浮かべた。

 

「ちょ!おま!何してるんだ!?」

「・・・・うるさい。」

 

男のそれに女は吐き捨てるように言った。それに青年の方はおろおろと困り果てた顔をして男を見る。

それに男は慌てて背負ったイドラを扉間に渡した。そうして、男は慌てて女の方に走っていく。

扉間はようやく己の腕の中に帰ってきた女の存在にほっと息を吐いた。そうして、その女の首元に顔を埋めた。

 

「・・・・無事だな。」

「あ、はい。その、ご心配をおかけして・・・・」

「まったくだ。もう、二度と、こんなことはしてくれるな。」

 

柔い肌に、暖かなそれに扉間は女を抱きかかえた腕の力を強めた。それにマダラとうちはイズナが寄ってくる。そうして、千手柱間も合流した。

扉間はイドラの、殆ど胸と言っていい部分に顔を埋めて、もうこのまま寝ちまいたいなあと考える。

 

「扉間、さすがにイドラ殿の胸に顔を突っ込んで思考停止しとる場合じゃないぞ。」

「・・・・だるい。」

「すごい、扉間様が怠いなんて。」

「まあ、思考停止したくなる気持ちもわかるが。」

「それより、さっきの奴とか何!?扉間にそっくりだったんだけど。」

「えっと、何でも。私と扉間様の息子らしいんですが。」

 

それに全員で現在揉めている三人組に目を向けた。

 

「・・・・とうとう、ワシの子まで。」

「良い子であったぞー。」

「暢気なこと言ってる場合か!?」

「えーじゃあ、あの亀に連れてこられたのって。あれ、そう言えばちびは!?」

「あの子ぞ。」

 

千手柱間はそう言って半泣きで女の腰に抱きついている青年を指さした。それに扉間はイドラを抱えた片方の手で柱間の肩を掴んだ。

 

「ふざけてるのか?」

「ふざけてません、ふざけてません!!あの、うちの息子が言ってました!特殊な術で見た目を変えて、幻術で幼児の精神にしてたって。」

「俺たちにも見抜けねえ術だと?」

「・・・その話、信じて良いの?」

「まあ、確かにあちらをなんとかせんとなあ。」

 

 

「まって!?お願いだから、まっ!力つっよ!!」

「五月蠅い!離せ、広間!」

「離せと言われて離せるわけじゃないだろう!?まって、カグラさーん!ほんとにまって!色々と、こう、段取りがね!?」

 

カグラと呼ばれた女は己を背後から抱え上げる男、広間にそう叫んでいる。さすがにそのまま放ってもおけないために近づいたとき、半泣きだったちびこと青年がマダラの顔を見て顔を輝かせた。

 

「ね、姉様!そうです、あの、母様に会いに行きましょう!」

 

それにゼツを足蹴にしていたカグラの動きが止まった。そうして、青年を怒鳴りつけた。

 

「どの面を下げて、私が会いにいけるというんだ!?」

 

それに青年は悲しそうな顔をした。

 

「・・・母様は、嬉しいと思います。」

「母様は優しいからそういうだろう!父様だってそうだ!愚かな私を赦してくださった!だがな、私が耐えられん!」

 

カグラは唇を噛みしめて、泣きじゃくるように言った。

 

「あの日、あの日、私は愚かな子だった。父様の子だから、傲慢で!なんでもできると勘違いをして!ゼツのことだって疑いもせずに付いていった!それでどうなった!?母様と弟、

叔母様に腹の中にいたいとこ達だって、全員、瓦礫に押しつぶされて死んだんだ!」

「それなら、僕だってそうじゃないですか!」

 

カグラのそれに青年は噛みつくように答えた。

 

「あのとき、僕が、父様達を呼んでたら。そうしたら、こんなことに。こんな、ことに・・・」

 

互いに今にも泣きそうな顔で言い合っている二人に、広間は逃げ出すのを狙っているゼツを見下ろしていった。

 

「おい、カグラ!それなら、その元凶をともかく閉じ込めておけ!逃げ出そうとしているぞ!」

 

それにカグラは視線を下に向けた。そうして、ゼツを睨んだその瞳は瞬きのうちに赤く染まる。

 

「万華鏡写輪眼!」

 

カグラのその赤い瞳には、円の中に三角形が収まった模様が浮かんでいた。

 

闇御津羽神(くらみつは)・・・・」

 

掠れたようなその声と共に、ゼツは女の足下に広がった影の中に沈んでいく。まるで、水に沈むようにぼちゃんと。

黙り込み、影を見つめるカグラに広間は冷静になったのかとほっとした。そうして、伺うように扉間達を見た。

 

「・・・・何から、お聞きしたいでしょうか?」

 

それに扉間は周りにいた人間に目配せをした。

知りたいことならばいくらでもある。けれど、何よりも目の前のそれらは信用が出来るのか?

そんな最小限の条件の中で、マダラは口を開いた。

 

「そこの女がうちはであることは理解した。けれど、そのゼツって奴とお前らはどんな関係だ?」

「・・・・弁解、になるやはわかりませんが。俺は千手扉間とイドラの息子に当たります。そうして、この二人はうちはマダラ殿と千手アカリの子になります。ウツシキから聞いているでしょう。我らは、未来から来ました。」

「証拠は?」

「・・・・そうですね。この顔を見て、などとは言えないことは理解しています。ならば、あなた方の個人的な話ぐらいはわかっていますが。」

「未来から来たなんて言うくせに予言の一つもしないわけ?」

「それが証明されるまで時間が必要になるでしょう。俺たちには時間が。」

 

そんなことを言っているとき、扉間はふと抱き上げていたイドラがまったくと言っていいほど喋っていないことに気づいた。女の性格からして、扉間にそっくりの息子を気にしそうなのだが。

そんなとき、ぼそりとイドラが呟いた。

 

「ダメだ、もう・・・」

 

なんだ、と扉間は警戒したときだ。

 

ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。

 

「は?」

 

皆の視線がイドラに向く。それにイドラは顔を真っ赤にして体を縮こまらせた。

何の音か?

一発でわかる。

それは、イドラの盛大な腹の音だった。扉間は思わず怒鳴った。

 

「イドラ!」

「えーん!ごめんなさーい!!」

「お前、状況考えろよ!」

「そうだよ!今までの空気全部飛んでっちゃったよ!?」

「だって!お化粧崩れるからってご飯全然食べられなかったんですもん!一応、花嫁衣装着る前に食べたけど、少しだったからもう限界で!」

 

それにその場にいた人間はあーあと呆れた。

 

「我慢しようと思ってたんですけど!もう、限界で!」

「お前なあ!」

 

扉間は呆れた顔でイドラのほっぺたをつまんだ。それに柱間はちらりと己の甥や姪に当たるらしい彼らを見た。彼らは驚いた顔で、イドラのことを見つめている。

 

「よし!なら、ともかく一旦屋敷に帰るか!客人達を誤魔化しておる姉上も大変であろうしな!のう、カグラに、広間と言ったか?」

「え、あ、はい・・・」

「お主らも来い!どうも、積もる話があるだろうからな!」

「兄者!」

「まあ、ひとまず戻らんことには仕方が無かろう?それに、これらの話も聞きたいしな。」

「まあ、少なくとも、問題が起こったのは解決しなくちゃいけねえが。」

「兄さんも、いいの?」

「・・・・泣き虫をほって置くわけにもいかねえしな。」

 

そう言ったマダラはちらりと、未だ名乗ってもいない青年を見た。

 

「ガキに姿を変えてたらしいが。ここまで来たんだ、お前も名前ぐらい名乗れよ。」

 

それに青年はちらりと姉と兄を見た。それに広間はあーと息を吐いた。

 

「もう、俺も慌てて名前を叫んだから、お前も名乗って良いぞ。」

 

それに青年はこくりと頷いた。

 

「・・・僕は、その、うちはオビトと言います。」

 

その単語にほっぺたをつままれたまま、えっと固まった。

 





とんちき娘について出身一族内で一目置かれている部分

イドラ
普段は感情豊かだが、マジギレすると無表情で、ものすごい湿っぽい空気を出す。
普段は頑固なマダラも素直に謝るぐらいにこのときのイドラは苦手。うちはの人間はこの湿っぽい空気が非常に苦手。

アカリ
扉間もびびる殺気混じりの柱間が平気なところ。なんでも一度、そんな風に殺気を出していた柱間にビンタをして黙らせたことがある。千手の人間はどこかアカリに勝てない部分がある。
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