千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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扉間達側の結婚式視点。

書いてるんですが、ゼツってどれぐらい頑丈なんですかね。


君はいつの間にか大人の階段を上っていた。

 

「兄様、見てください!母様の着た花嫁衣装なんですが。仕立て直さなくてもいいですね。」

 

目の前で、にこにこと笑う妹。

化粧もせず、ただ、試しに着てみたらしい母の形見である花嫁衣装である白い着物を纏った妹にうちはマダラはゆっくりと目を細めた。

 

ああ、大きく、そうしてすっかり綺麗になったのだなあ、と。

 

 

 

うちはと千手の結婚式。

そうであるとするならば、その面々は非常に盛大だった。いくら、千手と言えどもここまで他の氏族を呼ぶことはない。

他の氏族はここまでの一族が集まることのない現状で、何よりも警戒しているのは、噂のうちは一族だ。

血継限界を持つ一族は滅多に他の氏族と関わることはない。その中で群を抜いて他との交流のないのがうちは一族だ。

幻術、火遁を得意とし、黒い髪をした忍の一族。そうして、何よりも恐れられたのが写輪眼だ。見ただけで術をまねてしまえる血継限界。

何よりも、まるで刺すような冷たい空気を纏った彼らは非常に恐れられていた。

今回の花婿と花嫁と直接宴の場に座る各氏族の長達はどきどきしていた。

千手一族が安全と太鼓判を押されていたとしても不安は残る。

 

(あれが、うちはの頭領の・・・)

 

ざわざわと婚姻の席でざわめきが広がった。花嫁側に座った偉丈夫に目が行った。伸びっぱなしの黒い髪は当人の纏う空気のせいか猛獣の鬣のようだった。そうして、その横顔もまた男にしてはなんとも美しいものだった。

そうして、その隣に座る弟もまた男にしては美しい顔立ちをしていた。

けれど、しかめっ面で祝いの席だというのに、そこだけ空気がやたらと重い。そのために花嫁と花婿に挨拶に行くとき、どきどきしていた。

花婿はまだいい、けれど、うちは兄弟の姉妹であるらしい花嫁はどれだけのものなのか。

 

「こんにちは!今日はわざわざ来ていただきありがとうございます!」

 

にこっ!

と音が聞こえてきそうな笑みを浮かべた花嫁は、思った以上に愛らしかった。白無垢を纏ったそれは、化粧を施されて、きちんと座っていた。

もしも、無表情でそこにいたのならば、等身大の人形か何かなのかではと勘違いするほどに麗しい見目をしていた。

けれど、その、幼子のような屈託のない笑みを見ていると、あら可愛いなんて思ってしまう。もう、にっこにこでその女は微笑んできていた。

その顔は、確かに下手な女ならば裸足で逃げ出しても可笑しくなさそうだった。けれど、そんな見目に比べて、なんともまあ気の抜けるような朗らかな笑みを浮かべるのだろうか。

うちはの兄弟たちは何くれと気を遣い、他の氏族からの酒を飲み干しているのを見て、さぞかし大事にされているのだろうと思えた。

そうして、件の噂の千手扉間と言えば。

 

「イドラ、酒はあまり飲むな。」

「ほら、これでも食べていろ。」

「それについては。」

 

もう、せっせと世話をしている。

それこそ、ひな鳥の世話をしていると言われてもおかしくないほどの甲斐甲斐しさだだ。

噂だけで、千手扉間や千手柱間から話を聞いていたとしても、あまり信じられていなかった部分もあるが、目の前にしてみれば確かにそうだ。

 

花嫁の美しさを褒めれば殺気染みた眼で睨み。

酒を飲ませようとすればうちは兄弟と威圧してきて。

花嫁が困っていればしかたがねえなという態度で世話をする。

 

これは、ベタ惚れなのでは?

これはもう、噂自体、それこそあの噂は本当なのでは?

 

そんなことを考えるが、けれど、一つだけ疑問も残る。

プライドがそれはもう、この世で一番高い山ぐらいに高いと噂のうちは一族が頭領の妹を手込めに、とまではいかないが密かに寝取られて黙って赦す物なのだろうか?

ちらりと見たうちは兄弟は、お世辞にも友好的とは言いがたく、黙り込んでいる。若干酒を飲んで、顔を赤らめているが、変わらずに無表情のままだった。

千手柱間は、なぜ、あんな無表情の男に絡んでいけるのだろうかと皆でびびっていた。

そうして、酒の席も暫くして花嫁が奥に引っ込んだ。

 

それを見送った後、うちはイズナは部下達のことが気になると、千手とうちはの人間達が宴会をしている広間の方に向かった。

 

そうして、うちはマダラは、唐突に号泣しだした。

 

「どうした!マダラよ!」

「うるせえ、柱間!弟しかいねえお前にゃ、俺の気持ちなんて、妹を嫁に出す兄の気持ちなんてわかんねえよ!」

 

酒の酔いが回ってきたのか、それとも何かきっかけがあったのか、マダラはおいおいと泣き始める。それに他の氏族たちは、どんな反応をして良いのかわからずに、黙って酒を飲み干すしかなかった。

 

そんな中、マダラはおいおいと泣きながら話を続けた。

 

「あいつがなあ、母親の形見の花嫁衣装を着てるのを見てたら、大きくなっちまったなあと思ってよ。あんなに小さくて、あんなに、俺の後をずっと追ってたってのによお。」

「わかるぞお、自分の後ろをひょこひょこ付いてきた弟がなあ、こんなに、こんなに大きくなってなあ!!」

 

何に感化されたのか、柱間までおいおい泣き出した。それを、扉間は死んだ眼で眺めている。何を言っても無駄だと察したのだろう。

 

「ああ、昔はなあ、もう、兄様兄様って俺の後をついて回ってなあ。誰よりも、イドラが好きなのは俺だったんだ。」

「そうだなあ、イドラ殿はマダラのことが大好きよなあ。」

「ああ。本当に懐かしい。まぶたを閉じれば、思い出す。イドラが初めて立ったとき、初めて忍術を使ったとき、それにはしゃいで納屋の一つを燃やしたとき、遊びに行った山で熊を捕ってきたとき、気に入ってた猫を追って迷子になって大泣きしたとき、初めて戦に出たとき。」

 

なんか、幾つかろくでもないのが混じってませんか?

そんな疑問が浮かんだが、皆は黙り込んだ。

 

「なのに、なのに!なんで、お前があいつの花婿なんだよ!!」

 

そう言ってマダラは扉間に飛びかかり、首に手を回して、絞め技を繰り出した。それにその場にいたものは息をのむが、柱間はけらけらと笑っている。

 

「うおおおおおお!!元々、貴様のせいでもあるだろうが!イドラが結婚できなかったのは!」

「うるせえよ!んなもん、可愛い妹に理想の結婚相手を聞いて、兄様ぐらい強い人、なんて言われてみろ!誰にもやりたくねえだろうが!」

「そのせいで同胞に厳しくしすぎて距離置かれてる時点で終わりだろうが!」

「ちくしょおおおおおお!むかつく!」

 

マダラは扉間を離し、そうして、だんと畳に拳を叩きつけた。

 

「それはそうとして、てめえに文句がつけるのが難しいのがむかつく!!」

 

それに他の氏族は黙り込んで、それを見つめた。マダラは鼻を啜りながら吐き捨てた。

 

「能力だけをいやあ上等だ!顔も悪くねえ!地位もある!浮気しそうだが、したら殺す!」

「せんわ!」

「・・・・俺みてえにつええ奴なんてなあ、柱間ぐらいしかいなかったんだよ。だからといって、柱間に嫁に出したくねえし。」

「えーなんでぞ?」

「おめえは尻に敷いてくれるぐれえの女がいいぞ。」

「なんでだ!?」

 

それに扉間も思わず頷いた。柱間という男は、善人であるし、優しい男ではあるが少々だらしない部分があるのは承知の上なのだ。

 

「ほんとにね!!」

 

すぱぁあんと障子を開けながらうちはイズナが入ってきた。そうして、どさりとマダラの隣に座った。

 

「さっきもさあ、うちの奴らと、千手の奴らが飲んでるとこに言ってきたんだけどさあ。揉めてたんだよねえ。誰かの仇だって。」

 

それにその場が静まりかえる。けれど、イズナは気にすることもなく、じっと扉間を見た。

 

「兄さんと、柱間がやってる隣でさ、俺、こいつと散々やりあったんだよ。殺しそうになったことも、殺されそうになることもあったし、部下をやられたこともある。その、憎しみは消えないよ。でもさあ。」

 

イズナはじっとその男を見た。

きっと、きっと、誰よりも千手扉間という男を知っているのは案外イズナであったりもする。

殺し合って、相手がどんなときにどんなことを考えるのか、散々にやってきたものだから。

 

ああ、腹立つ、腹立つ、こんな陰険な男に姉は嫁いでしまって。もう、彼女はうちはであるけれど、千手でもあるのだ。

それでも、イズナは口を開いた。

 

「お前達は強かった。それを誰よりも知っているのは俺たちだから。だから、姉さんを頼める奴がお前しかいないことぐらいもわかってるんだよ。」

 

先ほどの、千手とうちはの酒の席、憎いと叫んだ者に、誰かが言ったのだ。

 

ああ、そうだ。我らを殺せるのは、お前達だけ。ああ、そうだ、恨めしき仇よ、宿敵よ。

そうだ、お前達は強かった。

恨みの中に、怒りの中に、それでも、強いという自負の元に、思っていた。

ああ、誰よりも、強いお前達へ。そんなお前達だからこそ、認めてもいるのだと。

 

イズナと、それに少しだけ遅れてマダラが深々と頭を下げた。

 

「どうか、愛しい姉を。」

「どうか、愛らしい妹を。」

よろしく頼む。

 

「ああ、賜った。」

 

その言葉に、その景色に、氏族の人間はああと思うのだ。

誇り高く、そうして、恐ろしいうちはの人間とも、案外上手くやっていけるのではないのかと。

 

 

 

初夜。

字にして初めての夜であるが、なんだか素敵な響きを持っているように扉間は感じていた。

酔っ払い共を捌き、ようやく訪れた平穏に扉間は足早に歩いていた。

その様は、はっきり言おう、ご機嫌の一言に尽きた。下手をすれば鼻歌まで歌ってるんじゃないかというご機嫌ぶりは、赤毛の姉貴分が見れば、思わず気持ち悪いと言われるぐらいの様子だった。

 

いいですか、扉間。

あなたと彼女はなんだかんだと同衾の経験があるでしょうから口うるさいことを言う気はありません。

ですが、彼女も初めてのことが多く、疲れているでしょう。なので、手荒に扱ってはいけませんよ。必要なものは、あなたなら用意できるでしょうが。

まあ、楽しみにしていなさい。うちはと千手、両氏族で滅多にないほどぴかぴかに磨き上げてやろう!

 

扉間の脳裏にはくどくどと己に言いつのる姉貴分のことが思い浮かんでいた。

そんなもんはどうでもいいのだ。

 

(ようやく、ようやく、あの駄犬に思い知らせてやれる!!)

 

扉間の脳裏には、手も出していないのに散々に言われまくった記憶が思い浮かぶ。

ああ、そこまで言うのなら、好き勝手、散々に、手を出しまくってやろうじゃねえか。

そんな、聞いている者がいれば呆れていただろう考えがあった。

だが、それも仕方が無い。扉間もなんだかんだで男であるのだ。散々に、弄ばれ(主観)、お預けを食らい(主観)、我慢しまくったのだ。

腹を空かしまくった男には、ようやく待てが終った瞬間が嬉しくて仕方が無い。

 

(あれのことだ、どうしているのか。)

 

寝室でかの駄犬がどうしているのかを想像しているだけで、ぶっちゃけ楽しい。

 

(おろおろしているのか、落ち着かずに正座。いっそのこと寝ているのか。)

 

とうとうたどり着いた寝室。扉間はどれが正解だと、るんるんで障子を開けた。

 

正解、空。

 

「あ゛?」

 

 

 

「イドラが消えたのか!?」

「どこを探してもおられずなんですよ。」

 

その場にいたのは、酔いを冷ましてくると宴会を抜け出してきた柱間にマダラ、そうしてイズナ。

裏方に徹していた千手アカリもその場にいた。そうして、あ、これから人を殺すんですか?なんて聞きたくなる殺気混じりの扉間がいた。

 

「ともかく、ワシは飛雷神の術でイドラの所に飛ぶ。兄者たちは他の氏族にばれんように後のことを。」

「え、お前、イドラ姫のどこに印なんて。私の知る限り、着物にも、どこにもそんなものは・・・」

 

アカリがそう言っていると、思い出した。確か、簪などはつけていないが、思えば左手の薬指に装飾品をつけていたはずだ。

 

(あれか・・・)

 

扉間はそれから逃れるように術を発動しようとしたが、その腰にマダラとイズナがくっついた。

 

「・・・・何をしとる。」

「俺も連れてけ。」

「姉さんが危ないんだろ!」

「あのな!」

 

そこに柱間も同じようにくっついた。それに扉間は呆れるが、どうせ飛べるのは己だけと術を使った。

 

「は?」

 

だというのに、何故か、イドラの居場所であるそこには己だけでなく、他の三人もいた。何故か、そんなことを考えようとしたが、それよりも重大なことが目の前に転がっている。

 

正直に言えば、イドラにそっくりなために構いたくてたまらないちび助をつり上げている真っ黒なそれ。

そうして、その足下に転がる、泥だらけで、おまけに襦袢も乱れまくって、諸諸が見えそうなイドラ。

 

その黒い存在は、どう見ても自分たちを見て、やっべという顔をしていた。

 

それに扉間は何のためらいもなく、その腕を握った。

自分でさえも、まだ見ていないイドラの乱れまくった姿に扉間はひどく怒り狂っていたのだ。

 

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