千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想いただけましたらうれしいです。


節目というものがやってくる、良いことかは別にして

 

 

「・・・それで、おかしな術にあったと。」

「うちはの頭領が情けない。」

「そんなんだから千手に入れ込んで、こんなことになるのだ。」

「うちはの者たちの仇はどうする。」

 

うちはの里に帰り、そうして出迎えた古参連中のそれにうちはマダラの眉間に青筋が浮かんだ。そうして、怒鳴りつけた。

 

「ジジイ共、んなこと宣うぐれえならちび助離してから言えや!!」

 

「「やじゃ。」」

 

マダラの怒鳴り声をものともせず、ちび助と呼ばれたそれはうちはの古参達の真ん中でせんべいを暢気にかじっていた。

 

「おい、ちび助、来い!」

「あい!」

「おお、坊、あんな愚か者のところにいかなくていいですからね。」

「ああ、そうだ、ほれ、じいがまんじゅうをやりましょう?」

「せんべいもまだありますよ?」

「おしぇんべえ!」

「おお、せんべい好きか?」

 

せんべいという単語に子どもはきらきらとした眼でふらふらと老人達を見た。差し出されたそれを未練たらしげに見ていたが、幼子はマダラの元に向かう。

それにマダラははっとどや顔をした。

それに老人達からブーイングが上がった。けれど、マダラはすんと息を吐きながら、ちび助と呼んでいる少年を抱きかかえた。

 

「ほら、もう終わりだ。」

「なんですか!もう少し遊んでも良いでしょう!」

「老い先短いわしらをいじめおって!」

「いじめてねえよ!!つーか、俺がガキの頃、もっと雑に扱ってただろうが!親父が死んで、すぐに小頭にして、前線に放り込んだくせによ!」

「当たり前でしょう。お前が死ぬような玉か。」

「それに比べて見てみなさい、このちっちゃい手を。前線に出したらすぐに死んでしまいますよ。」

 

マダラはその老人達の話を聞きながらため息を吐いた。何故、こんなことになっているかというと簡単だ。

イドラと扉間の婚姻を早めるために一旦帰ってくることになったのだが、さすがにこれぞうちはと言える容貌の子どもを千手に置いていくことは出来ない。

そのため、子どもはマダラがおかしな術にかかって出てきた分身体と言うことにしたのだが。

曰く、二人の対象の間に子が出来た場合どうなるか、そんなとんちきな術があるのだと偽って。

もう、あれだけ千手との婚姻に大反対だった古参達はちび助の存在にフィーバーした。

それは可愛かったのだろう。

ちび助の存在を見たものたちは大抵、イドラの幼いころを思い出す。

 

「大体、そいつだって一応千手なんだぞ!?」

「あほか、孫は別に決まってるでしょうが!」

「千手の女と俺が婚姻しないと、そいつ生まれねえんだぞ。」

 

それに黙り込む古参達にマダラはため息を吐きたくなった。用事で一旦席を外しているイズナに早く帰ってこいと必死に願っていた。

 

 

 

「・・・・ほお。」

 

その時、うちはイドラは千手扉間の、思ったよりも平淡なそれに顔を向けた。その時、イドラは心底、その場から逃げ出したくて仕方が無かった。

無表情だった。それ自体は、別におかしなことはない。扉間は基本的にそこまで表情豊かなタイプではないのだ。

けれど、イドラは覚えている、知っている。

イドラは、扉間が戦場でそういう眼をしているのを見たことがある。

それは、人を殺すときの眼だ。それは、何か、滅ぼすのだと決めたときの眼だ。

 

イドラは思わず、怯えるように甥っ子であるらしい子どもを抱きしめた。甥っ子は変わらずきょとりとした顔をしていた。

いや、皆が無表情だった。その部屋にいた、千手柱間に千手扉間。そうして、うちはマダラにうちはイズナ。

それらが無表情にじっと子どもを見ていた。

そこで千手アカリが口を開いた。

 

「亀殿。あなたは、知っていますか?私たち二人がどうなったか?」

「それを聞く時点でわかってるんじゃないのか?」

 

それに豪快な、マダラの笑い声が聞こえてきた。それにイドラは理解する。兄が、本当に怒っているのだと。

 

「なあ、聞いたか?」

「ああ、聞いたな。」

「そうだな、聞いたな。」

「ああ、どうやらワシらは、相当の間抜けらしい。」

 

びりびり肌を刺す殺気、怒り、憎悪。

それが誰から出ているのかなんて関係ない。イドラはそれに慣れている。けれど、ちらりと見た隣のアカリは少しだけ気分が悪そうだった。

 

「俺たちの家族は。」

「ああ、俺の可愛い妹と、家族は。」

「姉さんは。」

「妻と、姉はむざむざ殺された、らしいな。」

 

ああ、寒気がする。久しぶりに感じた、その段違いの殺気。アカリが気分悪そうに、イドラの背中に体を預けた。

そうして、そこで、ようやくなのか子どもが泣き始める。

 

「え、あ、よしよし!」

 

子どもの押し殺すような泣き声に我に返ったのか、全員が慌てて甥っ子に駆け寄る。

 

「おお、すまんのう。お前さんに怒っとったわけじゃないんだが。」

「ああ、ほら、泣かないで。怖かったかな?」

「おお、眼がまん丸に・・・」

 

アカリはイドラから子どもを受け取りあやすが、子どもは泣き続ける。幼子には似合わない、押し殺したようなそれにマダラが怒鳴った。

 

「泣くな!!」

 

びりびりとしたそれに、皆がマダラの方を見た。

 

「俺の息子なら、この程度で泣くんじゃねえ!!」

「マダラ、厳しすぎんか?」

「いいや、俺の子だ。なら、この程度で泣いてられたら困るんだ。」

「でも・・・」

 

そこで子どもがしゃっくりを上げながら、必死に涙をこらえようとする。そうして、ぐっずぐずのままに言った。

 

「ながない!ぼく、ながない!」

 

ぷるぷるとしながらそれは、必死に涙をこらえようとしていた。それにマダラは満足するように微笑んだ。

 

「よし、よくやったな。」

 

マダラがそう言って手を差し出すと、子どもはぴょんとそこに飛び込んで、ぐずりと鼻を啜った。

 

 

 

それから亀からの話を詳しく聞くと、どうもイドラとアカリは本当に亡くなっているようだった。

それに特別イドラは動揺しなかった。現状、自分を殺したい存在は山ほどいる。そうして、それは本命のゼツである可能性は高いだろう。

イドラはぼんやりとそれを受け止めた。

怖いとは違う、嫌だともまた違う。ただ、聞く限り、兄と弟は里にいつき、うちはは普通に暮らしているようだった。

ならば、別段、それだけでイドラは満足してしまっていた。

そうか、よかった。

ゼツのことはわからなくても、それでも、兄たちはそこで暮らしているのなら。こうやって、甥っ子が笑っているのならば、それで、それだけで、自分は。

嬉しいと、そう。

 

もちろん、これで終るわけにはいかないのはそうなのだが。

 

柱間とマダラは、今後の方針を早めることにした。

それは、大名達への支援の交渉と、そうして扉間とイドラの婚姻を早めることだ。

 

なんでも、前々から坊の母親と叔母殿への襲撃はあったらしいぞ。

 

亀のそれだった。

イドラとアカリの死んだ時期がこれから大分先ではあるらしいが、それでも襲撃については幾度も起こるというのだ。

おまけに、殺した存在も未だ見つかっていないらしい。

今回の同盟を邪魔したい存在は多くいる。ならば、同盟と里作りの外堀を先に埋め終えることにしたのだ。

そのため、もう少し準備をするはずだった二人の婚姻を早めることにしたのだ。

イドラと子ども、名前がなければ不便だからとちび助と呼ばれるようになったそれについても一旦うちはに連れて帰ることになった。

 

その日、千手の里で過ごす最後の日。

イドラはぼんやりと、部屋の隅で考え事をしていた。

考えることは多くあった。未来で自分を殺した人間の存在。そうして、子どもの輪廻眼。

なぜ、六道仙人はあの子どもに輪廻眼なんてものを渡したんだ?

いくら考えてもまったくわからない。

 

(・・・これから、どうなるんだろう。ゼツには、あの子の瞳のこと、ばれてるのかな?)

 

そんなことを思っていると、部屋に入ってくる存在に気づいた。目を向けると、扉間が障子を開けて入ってきていた。

それにイドラはさっさと寝ようかと瞳を閉じた。そこで、声をかかる。

 

「イドラ、布団をこっちに寄せろ。」

「え?」

 

イドラが驚いている間に、扉間はさっさと彼女の寝ている布団を引きずり、そうして、自分の隣に引っ張ってきたのだ。

ぴったりとくっついたそれに、イドラは千手の里に来た最初の日以来の珍事に驚いていた。

 

「えっと・・・」

 

扉間はそんなイドラのそれを気にすることもなく布団に潜った。それにイドラも倣う。そうして、どうしたものかと扉間を探っていた。

 

「イドラ。」

「あ、はい・・・・」

 

返事をすると、扉間はどこか醒めた声で言った。

 

「お前は自分が死ぬことに戸惑いは持たないか?」

 

イドラはそれに何と答えれば良いのかわからなかった。けれど、答えねばならないだろうと口を開く。

 

「・・・他人が死ぬよりも、己が死ぬ方が気楽だと思っています。」

 

それはイドラのシンプルな答えだった。それに扉間はふんと息を吐いた。

 

「お前らしいな。」

「そうでしょうか?」

「ああ、昼間の時でさえも、ワシらの息子が生きているのなら十分だと思っていただろう。」

 

それにイドラは隠れるように布団に潜り込み、そうして、蚊の鳴くような声ではいと言った。

イドラは、自分が写輪眼を開眼した日のことを覚えている。それは、父の死んだ日だ。

優しい人だった。厳しい人だったけれど。たくさんの人を殺して、憎いというそれに囚われた人だったけれど、それでも、優しい人だった。

イドラの中に、怒りはなかった、憎しみはなかった。

ただ、ただ、悲しいと思う心しかなかった。

己の子どもが生きているのならば、兄や弟にはこう言っておけばいい。幾度も、幾度も、呪いをかけるように。

この子を頼みますと。

そうして、隣の夫になる人には不安を感じていない。

そうだ、この人ならば。

 

(私が死んでも、やることをやってくれるから。大丈夫だ。)

 

死んだ後のことで安心は出来ている。ならば、戸惑いはあまりない。

 

「イドラ、お前は何かを殺したいと思ったことはあるか?」

 

眠りの淵で今日はたくさん聞くなあとイドラは珍しい気分で扉間を見た。彼は、どこか遠い目をしていた。

それにイドラは答えた。

 

「・・・・いいえ。」

 

それに扉間はふっと笑った。そうして、そっと、女のイドラの頬を撫でた。

 

「お前は本当に似ているなあ。」

 

誰にだろうか。わからない。ただ、ただ、扉間はそう言った。そうして、イドラを己の布団の中に引きずり込み、そうしてそっと頬をすり寄せた。

イドラはばくばくと心臓がなる気がした。その様が面白いのか、扉間はくっくっくと笑う。

 

「お前、ワシと婚姻するなら今後はもっとすごいこともするんだぞ?」

 

からかうようなそれにイドラは、それもそうだと一瞬冷静になった。

そうして、意を決して、イドラはまた扉間の唇に自らのそれを重ねた。少しだけカサついたそれはすぐに離れていく。

 

「い、今はこれでご勘弁。」

 

イドラは恥ずかしさのあまり、布団の中に潜り込んだ。その一瞬の間の後、だんと何かを殴りつけるような音がした。

それにイドラが驚いて布団から顔を出すと、扉間はいつの間にかイドラとは反対の方に向いていた。

 

「・・・・お前、覚えておけよ。」

(何を!?)

 

イドラは扉間の機嫌を損ねたのかと、怯えながら一夜を過ごしたのだった。

 

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