短めです。ちょっと、長くなりそうなのでキリの良いところで。
あ?俺か、俺はウツシキ、時空間移動宝具、いいや、今はカメラップの伝導亀、と言っておこうか。
時空間移動宝具?
そうか、そこから話をしなきゃならねえのか。
俺を作ったのは、大筒木って一族だ。知らねえ?
へえ、そうかい。まあ、なら、それでいいさ。
含みがあるって言われてもなあ。俺も、そこまで知らねえからなあ。
からくりの俺はやれと言われたことをやってただけだからな。
そんで、俺は時空間の移動のために作られた宝具ってわけだ。なぜって?あそこまで複雑な術式を、人間程度の頭脳じゃ処理し切れなかったからだな。
まあ、俺はただのからくりなんでな、なぜ自分が生み出されたのかは知っていても、過程については知らんさ。
繰り返される試行、行使できる術の正確さ、耐久性。
俺は忍具として試作品だったからな。徹底的にいじめられた。そんなときだ、俺は、俺は、時空の彼方、果ての、その果て、観測されるはずのない一つの可能性。
俺は、これ以上無いほどの、ハジケを、見ちまったんだよ!
カメラップ、天恵だった。まさしく、神が俺に与えた指針だってな!
俺はそのまま連中の手から逃げ出した。当たり前だろ?
神からの使命だ!それを優先すべきだろう!?
・・・まあ、結局燃料不足でぶっ倒れたところを坊に拾われたわけだがな。
それで坊と俺がここにいるわけだが。
「ちょっくら逃げてたんだよ。」
「・・・何からだ?」
ウツシキと名乗る忍具だというそれに、千手扉間は並々ならない興味を持っていた。それも当たり前の話で、それは生き物ではなく、からくりであるというのだ。
自意識を持ったからくり、それは扉間にとって興味をそそるには十分な物だった。
どうにか解体できないかと考えていた。
現在、部屋の中には、うちは兄弟と千手兄弟、そうして子どもの世話をしている千手アカリにうちはイドラがいた。
うちはの人間は別室で待機となったのだ。ともかく、主要な人間だけで話を聞くこととなったのだ。
子どもについては軽く調べたものの、変化などの術はないようだった。
亀、ウツシキはそう語っている間、子どもはアカリの手から離れてマダラの膝の上でごろごろと転がっている。その様に、うちはイズナは感心した。
大抵の子どもは兄を怖がるのだが、その不躾さと肝の据わりように普段からのマダラへの慣れを感じた。
マダラと言えば、口先では叱っても内心ではものすごく嬉しかった。
ここまで堂々と自分に懐く子どもはいないために、やっぱり嬉しいものは嬉しいのだ。
マダラのそれにウツシキは少し言いにくそうにその華奢な首を動かした。
「変質者。」
「・・・・へん、しつ、しゃ?」
部屋の中の誰ともしれない人間のそれに、ウツシキは頷いた。
「そいつはな、これまた警戒心がなくてなあ。俺が見つけたときには、下半身を露出させようとした男がいて・・・・」
そこでウツシキは言葉を切った。それは当たり前で、戦国のこの世で、五本の指に入る人間だけで構成された者たちからの一斉の殺気はウツシキを黙らせるので十分だった。
「どこの」
「馬鹿が」
「うちの」
「砂利にてえ、出そうとしたって!?」
イドラは泣きそうだった。イドラとて、甥っ子に何かしようとしていたらしい存在に怒りはあったが、そんなものが引っ込む程度に雁首そろえた野郎共のそれが怖い。
慌ててイドラとアカリで四人を落ち着かせた。
感心すべきなのは、子どもはけろっとした風貌で変わらずマダラの膝の上に乗っていることだろうか。
それを見た柱間は、これは姉の子だと納得した。
「うっほん。ともかく、里が出来たら変質者は徹底的に排除するぞ!」
「任せてよ、うちの特に目のいい人間を派遣するから。」
「・・・・治安維持に貢献してやろうじゃねえか。」
「徹底的に調べ上げてやろう。」
それを横目にアカリはウツシキに言った。
「それで、この子は未来に帰れるのですか?そちらの私やマダラ殿はさぞかし心配しておられるでしょう?」
「・・・まあ、チャクラが溜まりゃあなんとかな。ただ、時間移動なんて代物は相当の燃料を必要とする。」
「俺ならばどうだ?」
「あんたから貰えりゃいいが。残念ながら俺は試作品なんでな、一気にため込むのは無理だ。」
「なら、どれぐらいかかるんだ?」
「わからん。」
ウツシキはあっけらかんと言い切れば周りの人間はがっくりと肩を落とした。
「わからんて、お前なあ。」
「仕方がねえだろ。俺は試作品で、本来なら使い捨てなんだよ。」
「なら、こいつのことは預かる必要がある訳か。にしても、女にしちゃあ腹が据わってるな。」
マダラが思わずそう言えば、それはきょとんとした顔をした。それにウツシキが言った。
「おい、そいつ男だぞ。」
「はあ!?」
皆の視線が子どもに行く。それにアカリが近づき、子どもの着物を解いた。
「あ、本当だ。ついてる。」
何がとは言わずともわかる話で。
柱間は不思議そうに言った。
「これまた、愛らしい男の子だなあ・・・・」
「お、お前、男なのか!?」
「てっきり、姉さんそっくりだし女の子かって!?」
「わあ、私の男の子版か・・・・」
扉間は子どものことをじっくりと観察した。今は確かに言っては何だが駄犬の叔母の振る舞いをしているが、アカリのしつけを受けるならば相当の子になるだろう。そうして、この肝の据わりよう。
(・・・・なかなか、使えるようになるやもしれん。)
現在のイドラの風貌から考えて、人目を引く若者になるはずだ。見目がいいというのは一種の長所だ。それに、アカリからのしつけで駄犬感を抜くことが出来れば。
(今のうちにつばでも付けとけんか。)
そんなことを扉間は考えていた。
がやがやと言っている中で、ふと、気づいたかのようにイドラはウツシキを見た。
「えっと、あの、聞きたいことがあるんですがウツシキさん。」
「なんだ?」
「この子の眼のことです!変わった瞳術を持っているようですが?」
「瞳術?知らんぞ?」
それに扉間も同意した。
「マダラが言っていたな。写輪眼ではなかったのか?」
「ああ、まったく違うもんだったぞ。」
「・・・のお、ワシにもみせてくれんか?」
扉間のそれに子どものは、少年はきょとんとした顔をしていた。けれど、すぐに扉間の前まで這いずっていき、眼を瞬かせた。
周りの人間も同じように子どもに注目する。
片目に浮かんだ、紫の、それ。
それに扉間達は顔を見合わせた。
「・・・・これに覚えのあるものはいるか?」
「なんかの書物で見たな。」
「本当か?ならば、うちはの瞳術か?」
「まって、万華鏡写輪眼以上のものなんてあったの!?」
「わからん。ただ、うちに書物があったはずだ。一旦は帰らねえと。」
「にしても、なぜ、開眼を。」
「千手とうちはが混ざったせいか?」
イドラは知っている。この瞳術がどれだけ特殊で、そうして、異端であるのか。
未来で何かあったのか?
誰が、この子に、輪廻眼を託したのか?
(でも、聞く上では未来は平和そうだし。不審者は出ても。)
それ故に、イドラは子どもに聞いた。
「おめめ、どうしたのかわからない?」
「うんっとね、おじいしゃまにもらったの。」
「おじいしゃま?」
扉間は子どものそれに首を傾げた。この子にとって祖父に当たる人間はとっくに死んで久しい。ならば、おじいさまと呼ぶほどに親しい人間なのか?
「もらった?」
「あい、あのねえ、かめしゃんがね、つれてきてくれてたねえ、きらきらしたところでねえ。まいご?って、いってね。いたの、あたましろくてね、つのがあるの。」
「きらきらした所ってのは、俺たちの通ってきた時空間の移動の穴だな。」
「お前は見てないのか、それを。」
「すまねえ、天啓が下りてて聞いてねえんだ。」
「もう、こいつ解体した方がよくない?」
イドラは冷や汗をだらだら流していた。だって、その容貌には聞き覚えがあるのだ。
だって、あれだ。
完全に、「り」で始まって、「ん」で終るあの人ではないのか?
なにしてんの?
何を、こんな子どもにそんなものを託してるの?
「時空間にいるような、存在?やはり、調べた方が・・・」
扉間にイドラは、今だと思って顔を向けた瞬間、子どもが膝に乗ってきた。
「おばしゃま、おにーしゃまは?」
「え、お兄ちゃん?」
「あい、おにーしゃま。」
「・・・・どんな顔の人だい?」
「えっと、といらまおじしゃまとおんなじ。」
それにそこにいた人間は悟った。どうも、イドラと扉間の間には、扉間そっくりの息子が生まれるらしいと。
「・・・この年なら、従兄なんてわからないから、お兄ちゃん呼びなのか。」
「かーしゃま、おねーしゃまは?」
「・・・なるほど、息子だけではなく娘もいると。」
未来でのこれからの家族計画を見てしまい、若干の気まずさを覚えつつイドラは言った。
「うーん、今はいないんですよ。」
「いるよ?おばしゃまいるもん。」
「え、私がいるって。」
「だって、おばしゃま、げんじゅつだもん。」
それにイドラは、いいや、部屋の人間さえも固まった。子どもの言葉は、やけに不吉に聞こえて。それに柱間が甥っ子の顔をのぞき込んだ。
「幻術とは、どういうことだ?」
「うんとね、かーしゃまともね、おばしゃまともね、あったことがないからね。だから、おにーしゃまと、おねーしゃまはね、みたことがあるからってね、みせてくれてるの。」
どこか、要領を得ないような子どもの言葉は、それでもしっかりと皆の中にしみこんだ。
イドラは顔を青くした。
(待って、これって、もしかして。)
私とアカリ様、未来で死んでんじゃねえか、と。
おねーしゃま
子どもの知る中で誰よりも強い。子どもと顔がよく似てた。
他人の人生をよくめちゃくしゃにするが、責任は取ってくれるので良心的。
父親の誇り高さと、母親の女傑らしさを受け継いだ、そうしてリアリストなおねーしゃま。
死ぬと覚ったら今日は死ぬにはもってこいだと笑える側の人間だった。
大人たちは明朗快活だったといういうが、子どもの知る限り、快活に笑うことはあまりなかった人だった。
おにーしゃま
強いのは強いが、多方面に頭が上がらない。父親に瓜二つ。
おねーしゃまに人生をめちゃくちゃにされかかったが、とある一件で仲違いした。
父親から頭の良さを、母親から他人から愛される部分を受け継いだ、ヘタレな人。
死ぬと覚ったら、全力でやるべき事をやる人だった。
大人たちは優しい子だったというが子どもの知る限り冷たく振る舞う人だった。