千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたらうれしいです

すみません、亀と子どものことは次の話です。


外堀が埋まっていく音がする

 

 

その場にいた人間は、唖然とその亀を見つめた。よくある口寄せが出来るような、忍犬の類いなのだろうか。それは幼子の肩の上から飛び乗り、地面に降り立った。

 

「おうおう、てめえら。もう少し盛り上がりってものを見せてみろよ!」

 

盛り上がりと言われましても。

突然現れた意味のわからねえ亀に茫然とそれを見つめた。ただ、幼子だけがきゃーと体を揺すっている。それにだけ、現実逃避のようにほっこりと数人が笑みを浮かべていた。

 

「まあ、いいさ!それじゃあ、いくぜ!よ、がっ!!」

 

ウツシキがマイクを構え、何かを言いかけた瞬間、本能のようにうちはイズナはその亀を踏んだ。地面にめり込む勢いでそれは倒れ込み、そうして、哀れなほどにじたばたと暴れている。

 

「おい!止めろ、止めろよな!?」

「かめしゃん!?」

 

亀のそれに幼子はイズナの足に縋り付いた。

 

「やー!おじしゃん、かめしゃん!めっ!」

 

それにイズナは幼子を抱きかかえて、叫んだ。

 

「めっじゃないよ!ダメだろ、これは!いや、だめだろ!!??」

「お、おい、イズナ。どうしたんだ?」

「忍術の類いか!?」

 

イズナのそれに正気を取り戻したそれぞれがウツシキから距離を取った。イズナは何故か、サブイボの立つ肌をさすりながら子どもを抱きしめる。

 

「だめだよ兄さん!こんな、こんな、呪われた言葉を兄さんや姉さんが聞いたら耳が腐る!」

「まだ一言も発してないのに!?」

「発して無くてもわかるよ!」

 

イズナはぞわぞわと肌に走る寒気に戦いた。先ほど、亀がマイクに口を向けた瞬間、本能で覚った。

これは、この世に生まれさせてはならないものだと。

 

「てめえ!亀を禁術使いみてえに言いやがって!こちとら、時空間の移動しか出来ねえ、善良な忍具だってのに何言いやがる!」

「時空間の移動?」

 

ウツシキのそれに千手扉間が反応した。そうして、イズナの足の下にいるそれに話しかける。

 

「おい、時空間の移動と言ったな?どういうことだ?」

「だーかーら!俺はウツシキ、チャクラを燃料に、時間移動を可能にする忍具だ。まあ、今は偉大なるカメラップの伝導を行っているがな。」

「あ、あの、なら、この子はあなたが未来から連れてきた?」

 

うちはイドラがイズナに抱かれている幼子をさしてそう言うと、亀は踏みつけられているために顔を上げられなかったが手に当たるだろう前ひれを揚げて言った。

 

「あー、それは言えねえ。」

「何故だ?」

「いいか、過去に未来の人間が干渉するって事はこれからの事ががらっと変わっちまいかねん事だ。なもんで、はっきりと明言は出来ねえな。」

「もうすでにばれとるが。」

 

千手柱間のそれにウツシキははあと息を吐いた。

 

「坊、あれほど自分のことは隠さねえとって言ったのになあ。」

「かめしゃん?」

「いや、無理だろ、この年齢なら。」

「あの、イズナ。そろそろ足どかしたげて。絵面が、ひどい・・・・」

 

それにイズナは渋々ウツシキから足をどけた。それに幼子はほっとしたように亀を持ち上げた。

 

「かめしゃん、だいじょぶ?」

「おお、坊、このウツシキはカメラップを広める前には死なねえんでな。」

「んなもん広めようとしてんじゃねえよ。」

 

うちはイドラはそこまでしてウツシキが執着するカメラップの存在が気になった。けれど、何か、自分の前世と言えるものが必死に首を振っていた。

それには決して触れてはいけないと。

 

「ともかく、だ。家にいったん入ってそのウツシキの話を聞くぞ。その子どものことを詳しく聞かねばならん。変化でもないのか一応調べるぞ。」

 

扉間はなにかぐだついてきた空気を感じてそう言えば、それもそうだと頷いた。イズナはいったん、幼子を地面に下ろした。そうすれば、ウツシキのことを持ち上げて、千手アカリの元に走って行く。

 

「かーしゃま、かめしゃん!」

「ああ、亀だな。」

「よう、見知りおきを、お嬢さん。」

「別段、お嬢さんと呼ばれる、年齢ではないんだが。」

 

そんなことを言って子どもの視線を合わせるように屈み込んだアカリに、うちはマダラは妙に落ち着かない気分になる。

見れば見るほどに、確かに目元がよく似ている。

 

とーしゃま!

 

あの子どもや亀の言う事が確かであるのならば、自分はその子どもの父で、そうして、あのアカリというそれは自分の妻になるわけで。

頭に巡るのは、まだ会ってまもないその女のことだ。

 

(・・・・まあ、弱くはあるが。精神面は悪くねえ。何かあってもぎゃーすか言ったり、泣いたりもしなさそうだしな。)

 

などとつらつら考えていると、視線を感じた。そこにはじっとりとした眼のイズナがいた。それに、マダラはびくりと体を震わせた。

 

「な、なんだよ?」

「・・・兄さん、鼻の下が伸びてた。」

「の、のびてねえよ!」

「いや、のびとった。」

「柱間、お前まで!」

 

そんな話を横目にしつつ、イドラはともかくと部屋の用意のために女衆の元に向かった。扉間もアカリと子どもに近寄る。

 

「姉者、その子どもを連れて部屋に入れ。」

「ああ、ありがとう。」

「にしても、何があって姉者とマダラがそんなことになるのか。」

 

扉間は見れば見るほど、少なくともアカリや己の血筋を感じる子どもを見てそう言った。歪曲したあいまいな言い方であるが、それに子どもは察したのか扉間に言った。

 

「とーしゃまが、かーしゃまにいたたしたからだよ。」

 

いたた?

 

全員の頭にその幼児語が何を意味するのか悩んだ。

その中で一人の頭の中でかちゃんとかみ合う。

 

(いたた、痛い?痛い、された。痛いことをされた・・・)

「傷物にされた?」

 

それに皆の顔がばっとマダラに向いた。

それにマダラの背中に、また、冷たい汗が広がった。

 

「い、いや、違う!待て、俺は何にもしてねえぞ!?」

「でも、これからするんだよね。」

 

マダラは思わず弟を見るが、彼はひやっとする視線をじっとりと兄を見ていた。うちはの人間と、そうして柱間はまったく同じ仕草で両手を口に当てていた。

 

「そんな、頭領にそんな情熱があったなんて・・・」

「すげえ、そんな情緒あったのか。」

「・・・古参連中への説明は。」

 

そんな中、一際瞳をきらめかせているのは柱間だった。

 

「お、おい。お前ら・・・」

「マダラよ!」

 

犬のように飛びついてきた柱間を受け止め、マダラはそれを見た。柱間は頬を赤らめて、もじもじし始めた。

ぶっちゃけキモい。

マダラは嫌な予感を覚えつつ、恐る恐る、柱間に言った。

 

「なんだよ、お前まで!」

「いやのう、そのだな。」

 

あにうえと、呼んでもいいか?

 

それにマダラは白目を剥きそうになった。いや、そりゃあ、目の前の親友と、そうして好敵手と言っていいそれと離れるのは辛かった。

辛すぎて、写輪眼を開眼したんじゃねえかと思うほど辛かった。

けれど、これは違う。こう言った方向性を望んでいたわけじゃない。

そこで、ばたんとイズナがうつ伏せにその場に倒れ込んだ。

 

「あああああああああああああああ!!!」

「ど、どうした、イズナ!?」

「うっさい!兄さんも、姉さんも、嫌いだ!!」

 

その場にイドラはいなかったが、実際に聞いていたマダラはぴきーんと固まった。

嫌いって、あの、己のことが大好きなイズナが嫌いって!

 

「な、なんだ!?どうした、イズナ!?」

「姉さんも兄さんも、二人とも千手に垂らし込まれて情けない!なんだよ、俺にはなーんにも言ってくれないし!全部、蚊帳の外かよ!!」

 

その光景に扉間は呆れたが、まあ、気持ちがわからないこともないため、申し訳ない気分にはなった。

 

「つーか!なんでヒカクたちも受け入れムードなのさ!」

 

その言葉にうちはの人間はそっと視線をそらした。

 

ヒカクたちはぶっちゃければマダラが怖い。戦闘が大好きで、無愛想な彼を尊敬はしていても、恐ろしいのだ。

正直、イドラが今の今まで婚姻もなくやってきたのは、マダラの義弟という立場を担える人間がいなかったこともある。イズナには優しい兄でも、部下達にとっては恐ろしい当主なわけで。

 

そこで現れた、アカリという女。

うちはの人間も見てきたが、はっきり言おう、この女ならもしかすればマダラと自分たちの間のクッションになれるのでは、という思いもある。

あの腹の据わりようも気に入られているようなのだ。

結婚すれば、少しは落ち着いてくれねえかなあと言う思惑もある。

マダラは素直な弟の滅多にない拒絶にオロオロしていた。それを見ていたアカリは立ち上がる。

そうして、イズナに近づいた。その後ろをぽてぽてと幼児について行く。

 

「いずなおいしゃん?いたい?」

 

イズナは己の後頭部に伝わる温かな体温に顔を上げようか悩んだ。けれど、上げなかった。

 

(絶対、かわいいもん!)

 

ちっちゃな手が己の後頭部をなで回して、らいじょうぶと、舌っ足らずに言っているのだ。絶対に可愛い、もう、全部赦してしまう。

何と言っても兄の子どものなのだ、そうして、姉にそっくりの。

千手のことさえなければ可愛がっていただろう事は自覚している。だからこそ、赦せない。

 

(・・・いいや、赦してはいけないんだ。)

 

敵、という文字が頭で躍っている。赦せない、赦さない、いいや、赦してはいけない。

それを、ずっと、教え込まれてきて。

父は、千手との戦で死んで。

イズナは今でも、赦していいのかと、これでいいのかと、己に問いかけ続けている。

 

「・・・イズナ殿。」

 

頭に降り注ぐ、その静かな声にイズナは返事をしなかった。

心のどこかで、イズナは何故か、その女を嫌いになりきれない部分があった。何故か、わからないけれど、嫌えない何かがそれにはあって。

けれど、嫌うべきなのだ。そうなのだ。でなければ、自分は。

 

「そんなに深刻に考えなくとも、この子が生まれる上では、別にマダラ殿と婚姻を結ぶ必要はないでしょう。」

 

それにイズナは思わず起き上がった。そうして、アカリに噛みついた。

 

「何言ってんだよ!お前、父親のいない子どもなんて赦されるはずもないだろ!?」

「別に、今更周りに何を言われても痛くもかゆくもありませんよ。」

「俺が心配しているのは、兄さんとこの子の名誉で、お前のことなんて何にも言ってない!」

「ですが、あなたは未だ、千手への感情を割り切れないのでしょう?」

 

それにイズナは黙り込む。事実だ、そうだ、事実だ。

姉も、兄さえも、千手に肩入れをしている。これでは、うちはのこれからはどうなるのだ?

それが不安だ。今までなんとか守り切ろうとした何かが消えてしまいそうで、恐ろしい。

 

「・・・お前は、うちはが憎くないのか?」

 

それに、アカリは、小さく微笑んだ。微かに、口角を上げてそっとイズナに囁いた。

 

「私は、千手のことが嫌いなので。」

 

それに目を丸くして、イズナはアカリを見た。そこで、ウツシキがからかうように言った。

 

「にしても、いいのか?このまんまだと、坊の存在がなくなるかもしれねえのに。」

 

それにイズナがぎっと亀を睨んだとき、アカリはあっけらかんと言い放った。

 

「まあ、それはなんとかしよう。」

「いや、あんたの旦那の様子からして難しくねえか?」

「この子の年齢と、生まれた日はわかりますか?」

「そりゃあ、わかるが。」

 

それにその場にいた、それこそアカリの弟たちは嫌な予感がしたのだ。しかしアカリはあっさりと言ってのける。

 

「ならば、その期間で逆算して、やることやれば少なくとも生まれてくるでしょう。」

「「「ああああああああああああああ!!!」」」

 

なんとかアカリの発言をかき消そうと、扉間とマダラ、そうして柱間とイズナが大声を上げた。

 

「なんですか、五月蠅い。」

「お、おま!女のくせになんつうこと言ってんだよ!?」

「仕方が無いでしょう?こんなにもはっきりと姿を現されては私とて、未練が生まれる。愛がなくとも子は生まれますし。」

「だからといって、そんなことを赦すはずがないだろうが!?」

「そうぞ!姉上の結婚なのだから、俺が全力で助けるから、そんなことを言わないでくれ!」

「お、おま、ば、ばか!!」

 

四者四様のそれに、アカリは子どもを抱き上げて言った。

 

「ならば、マダラ殿。私のこと、口説いて見せてくれますか?」

 

ゆらりと、鉄仮面の中に生まれたたおやかな微笑みに、マダラの胸がばくばくとなる気がした。

その場にいた全員が、アカリに対して目が釘付けになる。

けれど、彼女はあっさりと皆から子どもに視線を変えた。

 

「まあ、そこら辺のことはこの子と、そうして、亀殿の話を聞いてからですね。ついでに、朝食も食べましょうか。」

「まんま?」

「そうですね、あなたもお腹が空いただろう。」

 

アカリはそのままさっさとその場を後にした。それを男共は雁首そろえて見送った。柱間が呟いた。

 

「やはり、姉上は、すごいなあ、いつ話しても。」

「・・・頭領、女にあそこまで言わせては。」

「どうかと。」

 

イズナは思った。

確かに、千手は嫌いだ。けれど、あの女は、なにを思って自分にあんなことを言ったのだろうか。何か、交渉でもしたいのだろうか?

ただ、あの腹の据わりようは見事だと思った。イズナという、うちはの二番手を前にしても揺るがぬ在り方。

千手は嫌いだ。

けれど、あの女については、嫌いではないと認めることが出来る。

 

そうして、マダラと言えば、ばくばくとなる心臓を抱えて、頭の中にはてなを無数に浮かべていた。

 

なんだ?

あの女は本当になんなのだ!?

颯爽と自分を置いて、家に入った女の後をともかく追おうと、顔を上げた。

そうして、自分に突き刺さる、あそこまで言わせたんだから、という視線。

 

「お、おい、お前ら・・・」

「マダラ、皆まで言うな。」

 

柱間はこれ以上無いほど、爽やかに笑った。

 

「扉間の次はお前らぞ!」

「・・・そうだね。」

 

イズナは腕を組んで頷いていた。

 

「悪くない女だ。」

 

何か、自分を蚊帳の外に、ものすごい勢いで埋まっていくものがある。そこで、肩を叩く存在がいた。

振り返ったその先には、やはり、これ以上ないほど爽やかに笑う扉間の姿があった。

 

「これで同類だな?」

 

それにマダラは思わず言った。

 

「俺は何にもしてねえんだよ!」

 

それに扉間は、んなもんこちとらも同じだよ、と言葉にしなくともそう崩れ落ちるマダラを見ながら嘲笑った。

 

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