千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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願いが叶うのがいいが、叶う形ってものがある

 

 

その時、イドラは熱を出して体がだるく、動くのも億劫だった。けれど、それはそうとしてお腹もいっぱいで幸せだ。

この時代、色々と貴重品は多い。その際だってのものは、卵だ。

雄鶏と雌鶏を飼ってもきちんと産んでくれるわけではない。どうして、鶏をきちんと管理するにも手間がいる。

そのため、卵はお祝い事に食べられるものだった。

なのに、月見うどん!おまけに、油揚げに甘い味付けをするという手間のいるきつねうどんを出してくれたのだ。

 

(扉間様、私の好きなもの、覚えててくれたんだ。)

 

嬉しいなあ、よかったなあ、嫌われてなかったんだ。そっかあ、よかったなあ。

好物を出されてうちはイドラはにっこにこだったのだ。それを平らげて、薬を飲んでイドラはすやすやと眠った。

風邪なんてなったこともないし、どちらかというと看病をする側だったのだ。

 

(・・・・看病されるの、いいなあ。)

 

大人になって、久しく忘れた目一杯に甘ったれていいという状況。熱のせいで、ただでさえぽやついた思考は加速していた。

そうして、熱が下がったその日。

ふと、思った。

 

自分、もしかしてゼツに殺されそうになったんじゃねえのか、と。

 

 

 

(やっばい。)

 

イドラは熱のせいではない汗を大量にかきながら布団に寝転がっていた。時間帯として、おそらく早朝だろう。

そんな中、イドラはぐっすり寝て爽快な気分のまま、冷や汗を滝のように流しながら天井を見ていた。

どうやら看病のための人間は席を外しているらしい。

 

今回、毒が盛られた可能性があるとして、千手とうちはは除外していた。今回の宴に扉間と柱間がどれほど気を遣っていたのか理解はしている。

なら、千手側につけいる隙はない。そうして、うちはもない。

これでも、イドラとて、うちはの人間に大事にされてきた自負がある。何よりも、自分に何かあった場合、マダラとイズナに追いかけ回されるのだ。その恐ろしさを知らぬうちははいないだろう。

 

それで自分を殺そうとするのなんて、ゼツしかいないだろう。

 

(そろそろ、ゼツのことを話さないと。)

 

・・・・いや、何を、どうやって。

 

考えてみて欲しい。

実は兄たちの転生前のごたごたに絶賛巻き込まれてて、うちはが闇墜ち予備軍、兄が色々あって世界を救おうとして、その方法が間違ってて世界が滅ぶかもしれへんのです。

 

どう考えても意味がわからん。というか、説明をしようとしている自分も事態が複雑すぎて、意味がわからないものになっている。

というか、この事態を説明する場合、忍者の成り立ちから説明しなくちゃああかんのではないだろうか。

 

(ぜってえ信じてもらえない・・・・)

 

あの、壮大な諸諸を?いや、ざっくり話せばただ単に妄想話以外の何ものでもない。

 

どうしよう?

頭の中でぐるぐるとそんなことを考え込むが、悲しいかな、それを証明する術なんて欠片だって思いつかない。

 

(大体、証明しようにも私の夢だけだし。ゼツだって見つける術もないし・・・・)

 

現状、なんとかゼツだけでも封じることが出来れば御の字なのだが。

 

(カグヤさんの存在を証明してくれる、扉間様達が信用してくれる存在さえいれば、そんな都合の良い存在、いるはずないしなあ・・・)

 

いや、証明が出来ないのなら、ゼツが飛び出してくるような餌になる物があればいいのだが。

 

(そんなものが、手に入るはずもないですし・・・」

 

イドラはそう思いつつ、眠ろうとした。熱も下がったようなので、起きたらすぐに毒の諸諸について聞こうと思ったのだ。

 

 

 

もぞもぞと、何か、己の足に触れてくるものがあった。

イドラはそれに眠りと現の境を漂いながら、うーんとうなった。

勘違いしないで欲しいのは、これでも忍をやれている程度には意識を張ったり、切り替えたりも出来ていたのだ。

ただ単に、千手の屋敷での居心地が良すぎて完全に気を抜いているだけで。

いや、それでもあまりにも警戒心がない気がするが。

それでも、イドラはふああと欠伸をしながら起き上がった。普段ならば起きているが、熱を出していたこともあり、起こしはしなかったようだ。

部屋の中には、イドラ以外誰もいない。

見れば、布団が少しだけ盛り上がっている。どうやら、イドラの足の間に何かが潜り込んでいるらしい。

 

(ねこ?)

 

イドラはよく柱間の屋敷の庭先を闊歩している猫が潜り込んできたのだろうかと思った。

 

(そんなに懐かれてたのかな?)

 

そんなことを思いつつ、ばさりと布団を捲った。

 

「え?」

 

そこには、毛玉がいた。いや、毛玉というのも妙な表現だっただろうか。そこには、子どもがいた。

真っ黒な髪のそれは、見た限りでは幼児といって差し支えのない年だった。その年にしては珍しく、腰まで髪を伸ばしている。その髪も、手入れをしているのか艶々としており、柔らかそうだ。

イドラの頭の上には、数多くのはてなが浮かんでいた。

 

誰?いや、どこの子?

 

聞いた限り、千手の屋敷には安全上限られた人間しか入れないはずだ。そうして、こんな年の子を千手扉間が招き入れるとは思えない。

 

「僕?」

 

イドラはそっと幼子に声をかけた。それに幼児はぴくりと動いた。猫のようなごめん寝をしているせいで容貌がわからなかった、イドラの声にゆっくりとそれは手を突いて起き上がる。

 

(・・・・うーん、この紺の着物。生地自体はいいものみたいだし。いいとこの子なんですかね?もしかして、千手の上位のところの子?)

 

イドラは可能性として、千手柱間の子の可能性を考えた。彼の妻であるミトが初婚の相手だとは明記されていなかったし、時代が時代なため二人目である可能性がないわけではない。

 

そう思いつつ、イドラは子どものことを見つめた。そうして、起き上がった子どもの顔がようやくイドラには見えた。

 

「え?」

 

思わず声を漏らした。

晒されたその、風貌。

さらさらとした黒い髪、細い眉、真っ白な肌、黒い瞳。

イドラは目を丸くした。

だって、その顔は、イドラと瓜二つだったのだ。

 

「え、私?」

 

そこには、自分を少し縮めたような子どもが一人。子どもは無表情に自分のことをじっと見てくる。

イドラの頭の中には多くのはてなが浮かんでいた。幻術にかかったのかと印を組むが別段変わりは無い。

もちろん、自分の顔を細部まで覚えているわけではないのだが、それはそうとして、記憶の中の自分とそっくりだ。

拘束するかと指先が動くが、目の前のそれに危害を加える気になれなかった。

 

「ええっと、あの、どなたでしょうか?父や母はどこにおられますか?」

 

馬鹿みたいな質問であるとわかりはしても、そう聞く選択肢しかイドラにはなかったのだ。幼子はじっとイドラを見た後、にっこりと微笑んだ。

それは、妹を溺愛していたうちはマダラならばすぐに陥落していただろうほどに、イドラに似て、かつ愛らしい笑みだった。

イドラもまた幼子のその様子にほっこりして笑みをこぼした。

 

「ええっと、それで、あなたはどなたなんでしょうかねえ?」

 

それに子どもはまるでおもちゃのように首を左右に傾げた。そうして、ゆっくりと瞬きをした。

 

「え?」

 

その子どもの右目、そこには、紫色に、渦巻き状の紋様が現れた瞳が出現した。それに思わずイドラが叫んだ。

 

「あらま、立派な輪廻眼!?」

 

それを叫ぶと同時に、どうやらイドラの看病をしていたらしい女衆の一人が異変に気づいて飛び込んできた。

 

「どうされましたか!?」

 

女は部屋にいるイドラと、そうして、子どもの姿に驚愕した。

 

「え、隠し子!?」

 

んなことはあり得ないが、あまりの幼子とイドラの瓜二つぶりにそう叫ぶことしか出来なかった。

 

「いや、ええっと・・・」

 

イドラはなんと申し開きをしたものかと悩んでいると、子どもはぴょんと跳びはねて、開けられた障子の隙間から外に飛び出していく。

 

「え、あ、待って!!??」

 

イドラはそのまま部屋の中から飛び出した。それと同時に、女も正気に戻り、屋敷の人間にことを知らせようと動き出した。

が、なんて言えばいいんだ?

女は叫ぶ言葉について悩んだ。

子どもだ、イドラそっくりの、子どもだ。完全に血縁以外の何者でもない。が、何故、そんな存在がこの屋敷にいる?

いいや、子どもの存在自体にはそれほど動揺していなかったような気がする。

そこで、導かれる正体。

 

(ま、まさか、すでに扉間様とイドラ姫のお子は生まれていて。世間から隠されていたのでは!?)

 

なにそれ、知らん。

イドラと扉間がいればそう言っていただろう騒動の中で、女はともかく誰かに知らせねばと廊下を走り出した。

そんな中、女の中でどんどん考えが浮かんでくる。

子どもはどう見てもうちは一族の顔立ちをしていた。千手の里に来るには、絶対にうちはの人間が連れてこなくてはいけない。

連れてくる理由があるとして、顔立ちから考えてあの子どもはイドラの子であるはずだ。

けれど、すでに子が生まれているのならば、うちはの人間はもっと早くに怒り狂うか、それとも密かに処分をしたはずだ。

ならば、あの子どもはうちは側も知らない可能性がある。

なら、あの子どもの出所は?

 

そこで女は、イドラと話していて、聞いたことを思い出す。

 

一度、そうだ、一度、うちはでは一年もの間、長引きまくった戦いがあったそうだ。

 

「当時、兄も弟も、ずっと出ていて。私が主になって一族を切り盛りしてたんですよ。」

 

イドラはその当時、すでに写輪眼を開眼していたそうだ。そこで、女の中に一つの確信が生まれてしまう。

実は、その時すでにイドラと扉間の間に子が生まれていたのではないか?

そうして、子は、ある程度自由が利く扉間に引き取られたのでは?

 

事実、この屋敷の構造を女は知らない。そうして、柱間さえも知らない隠し部屋の可能性がないわけではない。

そこに、隠された存在が、いたとしたら。

そんなことを考えていたとき、廊下の向こうから柱間が歩いてくるのが見えた。

 

 

その日、柱間は夜遅くまでマダラや扉間、そうして、千手アカリにうちはイズナと話し込んでいた。ひとまず、代表として扉間としたためた書状をもって、アカリやイズナ、そうしてマダラと大名の元に行くことになったのだ。

朝早くではあったが、トイレのために起きて、廊下を歩いていた。

 

「柱間様!!」

「おお、どうした?」

 

慌てて走ってくる女衆に柱間は立ち止まる。そうして、女衆は先ほどの光景を柱間に伝えた。それに、彼は苦笑した。

 

「何を言っている。寝ぼけたのか?」

「そのようなことはございません!私とて、長く千手にいるのですよ!?こんなことを報告するほど愚かではありません!」

「だがな。この屋敷は厳重だ。うちはの人間が来たときも、調べたんだぞ?さては、二人の子どもが待ち遠しすぎて・・」

 

その時だ、柱間の背後に何かが迫ってくるのがわかった。殺し切れていない足音は、軽く、子どものものでしかない。

柱間はそれに無意識のように振り向き、そうして、抱き留めた。

 

「は?」

 

思わず声を上げた。柱間の胸に飛び込んできたそれは、女衆のそれから聞いた通り、イドラにそっくりだったのだ。

いいや、そっくりというのは語弊がある。確かに、それはうちはイドラにそっくりだった。

けれど、一つだけ違うことがある。

イドラは、どちらかというと垂れ目であるのだが、その子どもはつり上がった猫のような目をしている。

そうだ、その目元は、柱間の弟である扉間によく似ていた。

柱間は叫んだ。

 

「扉間がやらかしおった!」

 

どちらかというと、やらかしていたというほうが正しいのだろうか。

 

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