ちょいシリアス目。次こそギャグとゼツを入れたい。
あと、読者の反応スレみたいなのも書きたいな。
何言っとるんだ、この女。
千手アカリのそれに度肝を抜かれた四人は固まってその女を見た。変わること無く無表情のままたおやかに正座をした女は話を続けた。
「万華鏡写輪眼は、人それぞれで模様が違うとイドラ姫に聞いたのですが。負担が無いのならば、是非ともお願いしたいのですが?」
アカリのそれに千手扉間は立ち上がり、引きずるように部屋の隅に連れて行った。そうして、うちはマダラとうちはイズナの目の前の千手柱間が回り込むように躍り出た。
「幻聴ぞ!!」
いや、誤魔化すにしては雑すぎないか?
そう思わないわけではないが、けれど、そんな力業に出てくる気持ちもわかりはするが。
「いや、無理だろ。」
「そこをなんとか!」
そんな会話を聞きながら部屋の端でもう、顔を青くしたり赤くしたりしながらアカリに詰め寄っていた。
(ば、は、な、姉者!!???)
「慌てすぎて完全に発言が飛んでいるな。」
何をのんびりしとるんだ?
待って、この女何言った?
は?万華鏡写輪眼?
え、何言ってんの?
マジで何言ってんの????
思考はもう、意味のわからなさでパニックになっていた。どうして、そんな考えになったんだ?
「姉さん、写輪眼見せたの?」
「見せましたー」
なんとものんびりとしたうちはイドラのそれにうちはイズナは肩をがっくりと落としたくなった。
そっかあ、見せちゃったかあ。
いや、そんなことでは少々、赦せないような状態なのだが。
なんで見せた、見せて欲しいといった側も側だが、見せる側も側なのだ。
(姉者もわかっておるだろうが!今、どれだけ繊細な時期なのか!だというのに、うちはに写輪眼を見せて欲しいなどと!)
「だが、何がダメなの?別にイドラ姫の写輪眼を見たところで問題はないだろう。幻術にかけられてもいないだろう?」
「それとこれとは話が別だ!身内の首元に刃物があれば止めるだろうが!?」
ひでえ言いようであるが、まあ、言いたいことは理解できるため何も言わない。というか、今回のことはうちはとしても身内が関わっているため強く言えない。
「といってもな。今更、私に幻術をかけてもなあという感覚もあるんだが。」
「それとこれとは別に決まってるだろうが!」
「それにおかしなことを言うなあ。うちはと千手は和平ができたんだろう。」
ならば、なぜ、ただ持っただけの力に怯える?
それに部屋の中の人間が黙り込んでしまった。
静かな、赤い瞳はうちはの人間の持つ美しいまでの凶器に似ていた。
恐ろしいまでに、似ている気がした。
「それに、写輪眼を見せて欲しいなんて最初は冗談だったからな。」
「・・・ならば、何故、見た?」
うちはマダラのそれに、アカリはちらりとイドラを見た。
「・・・・イドラ姫に口説かれたので?」
それに四人の瞳がイドラにむいた。イドラはそれに、えーんと内心で泣きながら全力でびびり倒す。
「姉さん、いったい、何を言ったの!?」
イズナのそれにイドラは少しだけアカリと話したことを思い出す。写輪眼を見せる前に交わした、少しだけの会話だ。
え、私、何言ったっけ?
「ええっと、その。」
冷や汗を流しながら、イドラは口を開いた。
「私は、受け入れられたいのでは無くて。ただ、受け入れたいの、ですと。」
イドラは落ち着かないというように両手を組んで、にぎにぎとした。
「はらわたを、見せたとしても。相手が何を考えているのか、本音を晒したとしても。それでも、わかり合えないのだと思います。人は、きっと、育ったあり方で何か、細部が異なって。それがいつか、ねじくれて、伝わって。本当が曇った目の中で、違うものになってしまうから。」
とつとつと、悩みながら、イドラは言葉を紡いだ。そうして、ちらりと扉間を見た。
ああ、ああ、ああ!
(私は、あなたを憎みたかった。)
心のどこかで思っていた本音。
ねえ、扉間様。
兄様はね、優しいんだ。優しいから、だから、救われるなら、みんなじゃないといけないと、そう思って間違えたんだ。
間違えたんだ、そうだよ、悪いことなんだよ。
ああ、それでも、私たちはあの日、里に受け入れられたかったんだ。
仕方が無いのだ、柱間こそが異端であるのだ。
けれど、筋書き通りのことを知っているイドラは、思うのだ。
柱間様、共に夢を叶えたいと、それだけのエゴでけっきょく兄様の味方になってくれなかったのなら。
そうであるのなら。
里も全部、何もかもを任せて、兄様と牙を抜かれるのを選択できないのならば。
(兄様のことを、何もかもをなくした兄様のことを、私は殺して欲しかった。)
イドラの知る兄は、兄だった。ずっと、万華鏡写輪眼という力のために、絶対者であることを求められて、一人のままの兄だった。
全てを背負った兄だった。我が儘も言えなくて、傲慢なようで、誰かのためにしか生きられない兄だった。
イドラの瞳から、ぼたりと涙が零れた。啜った鼻水の音が情けなく響いた。
扉間様、扉間様。
私たちはだって、それでも、心があるんです。疑われ続けるのは苦しいのです。手を広げてくれなければ、その腕に飛び込むことだって出来ないのだ。
でも、それはきっと、うちはだって同じだ。
うちはマダラもまた、両手を広げることも無く、変わりゆく世界を見つめていただけだったから。
マダラはずっと、呪われ続けていた。何も守れなかったその事実に。
守れた柱間と、守れなかったマダラ。
あの日々は、どちらが悪かったわけでは無いのだとわかっている。ただ、ただ、きっと互いに望まれた在り方と、見える世界が違っただけで。
「もう、孤独に戦い続けるのは疲れました。独りで立ち続けるのが苦しいと思ってはいけませんか?うちはの人間は、誇り高いです。だから、必死に立派なものでなければいけないと、弱みを見せてはいけないと、歯を食いしばりながら耐えるのです。でも、でも、私は、もう、いやです。」
兄様とイズナが全てを背負って、孤独に戦うのを見るのは嫌です。
涙がぼたぼたと、イドラの瞳を流れていく。それは、弱い人間が、強者しか赦さないうちはで我慢し続けた咆吼だった。
叫ぶ覚悟さえも持てずに、ここまで歩いた人間の血反吐だ。
「うちはが変わるかは、わかりません。ずっと、誰とも関わりも無くて。強いから、孤独で。でも、私は胸を張って言えます。私たちは、敬意には、敬意で返す誇りがあります。だから、だから。」
愛させてください。どうか、私たちの愛しい誰かの面影をもつ幼子達のゆりかごになる場所を。守りたいと、思わせてください。思いたいのです。
どうか、どうかと、その女はいつもの日だまりのような笑みなんて忘れて悲痛のそれを抱えて言った。
「私たちが、弱くても、赦してください。誰かに寄りかかってもいいのだと、思わせてください。」
それは、誰に向けたものだったのだろうか。
扉間は己を見つめる黒い瞳に、何を言えばいいのかわからなかった。
うちは、うちは、強き氏族。
千手と永遠に殺し合うのだと、そんなことを考えていた時もあった一族。
扉間はまるで無理矢理に酒でも飲まされたかのような気分になった。酩酊をするように、その女の焼くような感情に圧倒された。
最初に会ってから、幼子達への哀れみ以来、晒したことの無い本音。
扉間は思わず、口元を手で覆った。
いつかに、兄が言った。
はらわたを見せ合うのだと。それに扉間は呆れた。本性を見せたところで、それは、きっと憎しみも、悲しみも多くの感情がある。
本音とは、見せることで指し示すこともあるだろう。それのさらけ出した本性に優しさであるのならばなおさらに。
けれど、見せれば拒絶のきっかけになるものだってある。
誰だって、憎しみも、怒りも持っているのだから。
女は、今、はらわたを晒したのだ。
それは優しさでは無い、それは、憎しみでは無い。
それは、この戦国の世で、何よりも悪である弱さだった。
これはダメだ。なるほどと、少しだけわかる。
何故、柱間がマダラに執着するのか。何故、マダラが柱間を切り捨てられないのか。
あの、川辺で二人がどんな話をしたのか、わからない。
ただ、彼らはきっと互いのはらわたを晒したのだろう。
強者の晒す、その弱さは、その縋り付くような目はあまりにも甘美で、酒に酔ったかのような気分だった。
そうか、そうか、と扉間は少しだけ納得した。
うちはの姫君。うちはの、万華鏡写輪眼ではなくとも写輪眼を宿した誇り高いはずの女。
強者であるうちはの、弱さは、あまりにもその哀れな嘆きはあまりにも。
どろりとした優越感と、守ってやろうという庇護欲を湧き上がらせた。
扉間は静まりかえった部屋の中で立ち上がった。立ち上がって、持っていた手ぬぐいで女のぐしゃぐしゃなそれを拭った。
「泣くな。」
扉間は湧き上がった感情を押し殺した。そうして、残ったのは、ひたすらなまでに、多くの死を見た女への哀れみだった。
「泣くな。ああ、わかっている。わかっている。だから、泣くな。ワシも、子どもの葬式をあげるのは勘弁だ。」
そうして、それにアカリはイドラの横に座った。そうすれば、アカリの前の前にはマダラとイズナ。
アカリはじっとマダラとイズナを見た。そうして、扉間に子どものように抱きしめられてぐずぐずに泣く女を見た。
変わらず冷たいまでの無表情ではあるけれど、隣にいるイドラの頭を撫でる手はどこまでも優しい。
「まあ、私自身の欲がないと言えば嘘ではないのですが。ただ、彼女の願いに同意したくなっただけのこと。」
「でも!」
「・・・・いいだろう。」
イズナはそれでもと口を開けた。
不安が残る。これは、何か、自分たちがはめられているのでは無いのかと、姉が幻術にでもかかっているのではないのかと。
けれど、兄はそれに頷いた。
「お前のさらした首を、切らんと誓おう。」
「私も、あなたに首をさらして見せましょう。」
マダラは万華鏡写輪眼で女を見た。女は震えることも無く、そうして、体を遠ざけることも無い。
その、赤い瞳を、見た。
それをイズナと、そうして、柱間は茫然とみた。
あり得ない光景だった。イズナはいい。彼は同じ万華鏡写輪眼を開眼したものとして、そうして、弟として同じようなことを出来る。
けれど、その女はどうだろう。
うずまきの血を引いているというのならば、チャクラの量は多いだろう。けれど、くのいちが珍しくない千手でさえも戦場に殆ど出ていない程度の女が。
何のためらいもなく兄の、我らの、赤い瞳をのぞき込んでいるのだ。
「お、俺も見ていいかの?」
「兄者!?」
「・・・・好きにしろ。」
それに柱間は扉間が止めるまもなくアカリとマダラの近くに座った。そうして、赤い瞳を見た。戦場で幾度も見た、赤い瞳。幾度も、幾度も、己の命を刈り取ろうとした、その瞳。
おかしな気分だった。それを、弱い姉貴分とまるで、月見のように眺めているのが、なんだか可笑しくて。
マダラもまた落ち着かなかった。
柱間に瞳を見つめられるのは、まだいい。彼は戦場でいくども繰り返してきたことだ。
けれど、目の前の女は違う。
マダラが瞳を見せることを是としたのは、偏に女のそれが妹のはらわたをさらすという覚悟によってなったものだったからだ。
けれど、信じていなかった。
すぐに目をそらしでもすると、そう思っていたのに。
女はゆっくりと目を細め、本当に美しいものを見るようで。
落ち着かない。
己の手の中に、命がある。そんなものは幾度も経験した。けれど、その女は今までと違った。
自分の敵ではない。信頼を置く部下や一族でも無い。
ただ、ただ、無防備に、己の前に命をさらす弱者のそれ。
女はダメだ。弱いから、すぐに死んでしまうから。きっと、イドラにさえも劣る女。
けれど、その女は、イズナやイドラ、そうして、柱間以上にマダラの瞳をためらいも無くのぞき込んでくる。
その、今の己と同じ、赤い瞳。
それには、憎しみは無かった、恨みは無かった、怯えは無かった、遠慮も無かった、甘えも無かった。
ただ、ただ、いっそ無垢なほどに喜びに満ちあふれた瞳で、女は自分を見てきたものだから。
マダラは落ち着かない気分だった、今、自分がどんな感情を持っているのか、わからなかった。
どくどくと、心臓が鳴っている。
それは、動揺なのか、焦りなのかわからない。
アカリはひどく不躾に手を持ち上げ、そうして、マダラの頬に添えて目尻を撫でた。
それは、幾度もクナイを握ったのだろう、荒れた指先だった。
けれど、それと同時に、ひどく、女の指先だった。
「ああ、やはり、あなたたちは。」
柱間も、扉間も、目を見開いた。いつぶりだろうか。
本当に、いつぶりかに、アカリは淡い、それでも柱間にだってわかる程度に笑みを浮かべた。
アカリは微笑んでいったのだ。
うちはのあなた。やはり、あなたたちは本当に美しい生き物ですね。
その言葉に何と言えばいいのかわからずに、マダラは押し黙ることしか出来なかった。