千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

ちょっと、いいとこで切ります。


覚悟を見せろよ、純愛だろ?

 

 

千手扉間は頭を抱えていた。

目の前には変わらない鉄仮面のまま己を見つめる、母親代わりであり、姉貴分だった千手アカリがいた。

そうして、目の前に突き立てられた短刀。

それは冗談か?

いいや、絶対的に本気だ。

マジと書いて本気だ。

 

扉間がアカリのことを苦手になったのは、もちろん黒歴史の生き字引状態であるのに加えて、その決まり切った覚悟のせいだ。

厳しいのはもちろんあるが、それはそれとして甘やかされた記憶もある。その、恩と恨みの合わさったアカリを前にすると、さすがにリアリストであり続けることは難しい。

アカリという女は、扉間が感情的であった、リアリストに成る前を知る数少ない女だったからだ。

それに加えて、アカリには色々と借りがあるのも事実だった。

 

(兄者のせいで、飛雷神の術について知られた・・・・)

 

また輝かしく姉貴分の記憶に刻まれた黒歴史をどうするかと悩みながら、扉間はアカリを見た。

 

(姉者の奴、いつまでイドラの髪を触っているんだ・・・)

 

ちなみに、未だにアカリの膝の上で爆睡こいてる駄犬ことうちはイドラは女に髪を梳かれて安らかな顔をしている。

 

本音を言えば、イドラとアカリを会わせたくなかった。

イドラのような可愛げのある愛らしい女なんて世話好きのアカリが放っておくはずないのだ。

自分さえもろくにしたことのないイドラへのそれに扉間は眉間に皺をよせる。唐突に己の領域に踏み込まれたかのような不快感があった。

 

「・・・・ワシはまだ死ねん。大体、姉者も、このまま兄者一人を残していけんだろうが。」

「・・・うずまきのことは構わん。あちらはすでに私から、お前の名を使ったが黙らせた。いいだろう。その程度の権限は貰っている気だ。ただ、な。扉間、お前もわかっているだろう。女や子への不誠実さを私が嫌っているのも。」

 

それに扉間は黙り込んだ。その言葉は扉間にも効いた。

利害関係があったとはいえ、彼女にとって最も嫌がる役割を頼んでいたという自覚もある。

 

「扉間、お前はこの子をどう思っているんだ?」

 

しんと部屋の中に沈黙が広がった。背中に降り注ぐ視線が痛い。

先ほど背中にビンタをかましてやった千手柱間や、三人の話し合いを黙って聞いているうちはマダラと、うちはイズナ。

 

(・・・・わかっている。)

 

本当は扉間としても、この場を収めるというか、目の前のアカリを納得させる方法なんてとっくにわかっているのだ。

けれど、言いたくない。

とんでもない巻き込み事故のために嘘でも言うかと思っていた。大体、自分がその女に思う理由はないし、言えば、その目の前でのんきして眠っている馬鹿の思うつぼでしかない。

だが、おそらく、言わなければこの場が収まらないのも理解していた。

 

くそだ。まじで、この世はクソだ。

幼い頃に認識したそれを扉間は改めてそう思った。

 

が、それでも言わなければ、いけない。

現実主義者の扉間は、憤怒のためにか真っ赤になった顔で、顔をうつむかせて、蚊の鳴くような声で言った。

 

「わ、ワシは、その女を。」

「その女?」

「う、うちは、イドラを。」

 

あいして、おる。

 

静まりかえった部屋の中に、確実に、扉間のそれが響いた。それに、柱間は口元を手で覆い、この頃すっかり慣れてしまった仕草をした。顔は淡く赤らみ、目が潤んでいる。

そうして、イズナは驚きの顔で固まって、扉間の赤く染まった耳を見た。

 

あの、扉間が?

あの、現実主義者で、合理的で。

人に感情があるのはそうだとしても、いつだって必要なことしか口にしないような、この男が?

 

愛してる??????

 

柱間は目をうるうるさせて、扉間を見た。

 

(扉間よ、そこまで、お前。そんな言葉を吐くほどに、イドラ殿のことを!!)

 

もう、感無量で柱間はどばあと涙腺を崩壊させる勢いで感動していた。イズナはイズナで、仇敵が姉への愛を叫ぶという珍事を前に宇宙を背負っていた。

 

「・・・・おい、そろそろ赦してやれよ。」

「なんのこと、兄さん?」

 

扉間の震え具合を哀れに思ったマダラはそっと助け船を出す。それにマダラに視線が集まった。

放心していたイズナもマダラに問いかければ彼は呆れたように肩をすくめた、

 

「アカリ、だったか?お前、完全に笑ってるだろ。」

 

その言葉に全員がアカリの顔を見た。そこには変わることの無い、鉄仮面があるだけだった。

 

「ああ、ばれたか?」

「ばれたって、完全に口角上がってんぞ。」

「すごいのお、マダラ、姉上の表情わかるのか?」

「よくみりゃわかるだろ。」

「・・・・表情が変わらないと油断していた私の失態だな。」

 

アカリはそう言って畳に突き立てられていた短刀を抜いた。そうして、懐にしまう。

 

「お前の態度によっては本当にそうする気だったんだが。間違っていないか、正論しか口にしないお前さんがわざわざそんなことを言うのならば覚悟があると言うことだろう。今回は保留だ。」

「これを言わせるためだけに、か?」

「ああ、事前にイドラ姫にはお前には何もしないでと縋り付かれているからな。ただ、はいそうですかと言えないこともわかっているだろう?これについてはけじめ云々だ。時として、面子を命よりも慮る者もいる。」

 

アカリからは先までの威圧感と言えるものが霧散し、それに扉間は今までのそれが完全な芝居であったことを理解する。

 

「うずまきに関してはこちらでなんとかする。あと、これもな。」

 

アカリはそう言って、懐から手紙のような物を扉間に差し出した。それを扉間が受け取ると、彼女はイドラの肩を揺すぶった。耳栓も取った。

 

「イドラ姫、兄君達が到着しましたよ。」

 

さすがにそれにはイドラも眼を覚ました。そうして、起き上がり、目の前で正座する扉間をじっと見た後、ニコォォ!と勢いのある笑みを浮かべた。

 

「扉間様だあ。」

 

甘ったれたその声と心の底から自分を見るぱやぱやなそれに扉間は、なんだか、今までの理不尽が少し報われた気分になった。扉間はそのままイドラの脇の下に手を入れ、抱き上げた。そうして、それのことを抱きしめた。

 

「ああああああああああ・・・・・」

 

なんか、疲れた人がペットの腹に顔を埋めた時みたいな声を出していた。それにさすがのイズナやマダラも、疲れてんなあと哀れみの目をする。

そうして、無言でイドラのことを引き離すと、思いっきりそのもちもちのほっぺたを引っ張った。

己の頬に走る痛みに、イドラはこれが夢でないとようやく覚る。

 

「この馬鹿者がああああああああ!!」

「みいいいいいいい!?」

「いくらうずまきと言えども、貴様は何をのんきに初対面の女の膝で昼寝をかましとるんだ!?いくら何でも忍としての自覚はないのか!?」

 

まあ、それはそう。

扉間の正論でしかないそれにマダラもイズナも、柱間も庇うことなく頷いた。

 

「だってえ、昨日、寝れなくて・・・」

「それは貴様のせいだろうが、ワシは知らん!」

「・・・おい、扉間、てめえまたイドラに無茶させたんじゃあねえだろうな?」

「ええい!話をややこしくするな!」

「扉間、イドラ姫を離してやりなさない。」

「姉者、これについては何かを言われる筋合いはない!」

「彼女が眠ってしまったのは、私のせいだ。」

「姉者の?」

 

扉間はイドラの頬から手を離した。それにイドラはべそをかきながら、己の頬が伸びていないかとさすった。

 

「私が彼女の写輪眼を見たいとねだったせいですから。」

 

しんと、見事にもう一度静寂が訪れる。それに、うちは兄弟はもちろん、柱間さえも度肝を抜かれた。

 

「・・・悪い冗談か?」

「兄様、本当です、見せました。」

「おいおい、正気か?」

 

扉間は目の前で繰り広げられている会話の意味が理解できずに固まった。

待て、この女達、何言ってんだ?

かたや、写輪眼の恐ろしさをよく知る千手の女であり、かたや、誰よりも写輪眼の性能を理解しているだろううちはの女。

 

え、待って、マジで意味がわからん。自分たちが部屋に来る前に一体どんな会話が繰り広げられていたんだ?

まって、いっそ、今の状態が幻術なのか?

このぱやぱやの駄犬がアカリに幻術を!?

もう、扉間の思考の中はぐっちゃぐっちゃになっていた。

 

そんな扉間の思考など知ることのないマダラはじっと目の前の女を見た。変わらず、ほとんど表情なんて無いに等しいが、淡く笑っていることはなんとなく察せられた。

正気だ、もう、まごう事なきまでに正気だ。

そんな千手の女が、写輪眼を見たがった?

何を企んでいるんだ?

 

「・・・・残念ながら、正気ですよ。」

「へえ、なら、どんな考えで?写輪眼について興味があるようだけれど。」

「知っておられますか、千手にとって、うちはとの死合いに連れて行かれることは一種の名誉なんですよ?」

「名誉?」

「ええ。」

 

それに柱間も軽く頷いた。

外戚の多い千手も、千手という一族の特徴を受け継ぐ、多量のチャクラの主やタフな忍者はそこまで大量というわけではない。

それ相応に、血の濃さというものは出ている。

多量のチャクラと、恐ろしい写輪眼という武器を持ったうちはとの死合いに連れて行けるほどの実力者は限られている。

血の濃さ、実力、それらがあわさってようやくうちはとの死合いが可能となる。

 

それゆえに、それ故に、だ。

千手の一族は、死や怪我のことをおいておけば、うちはとの死合いに参加したものを一種、英雄視している。そうして、それはうちはという一族への、恨みを抜きにした賛美が混ざっている。

 

正直に言うと、千手の人間はうちはというそれが非常に気になるのだ。

恨みがある。積年の敵であると、思っているものは多い。ただ、そこには燃えるような憎しみがあるかと言われると悩む。

大事なものを奪われたという恨みと、強者への賛美を千手はうちはに抱き続けている。

恨みながら、惹かれずにはいられないのだ。

その、燃えるような赤い瞳に。

 

「・・・私は、残念ながらうちはの死合いに参加したことがないのですよ。なので、写輪眼を見たことは無いのです。」

 

それは千手の人間にとって、己は弱く、力不足であると言うのと同じであるのだ。

 

「なので、一度見てみたかったのです。私たちを殺し、私たちを屈服させる。その、高みの証というものを。」

 

もう、私とあなたが戦場で相まみえることはないのですから。

 

その女は変わること無く、淡く笑っているように見えた。そうして、うちはというそれへの畏怖と、興味、そうして、鉄仮面の中に隠れた何かがあった。

マダラは落ち着かなくなった、

アカリというそれは何のためらいも無く、マダラの瞳をのぞき込んでくる。今にも、写輪眼に成るかもしれない、その瞳を。

恐怖も、恨みも、畏怖も、何も無いまっさらな瞳はマダラの万華鏡写輪眼を期待するように見つめてくる。

それが、たまらなく落ち着かない。

そうして、アカリはぽんと手を叩いた。

 

「そうだ、マダラ様。冥土の土産によろしければ、万華鏡写輪眼を見せていただけませんか?」

 

アカリの心底楽しそうな声音に、イドラ以外の人間の目が点になった。

 

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