千手扉間に責任を取って欲しいうちはイドラの話   作:藤猫

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感想、評価、ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。

長くなりそうなので、良いとこで切りました。


ソースになるうちはの人格例がイタチとサスケだから、なんかうちはの人間は天然の気があるように感じてます。


美人なお姉さんは好きでも覚悟の決まったお姉さんは怖いです。

 

 

ちっちゃい頃に明日、ものすごい楽しみなことがあると非常に早く起きてしまう子っていなかっただろうか?

うちはイドラとはそういう子だった。

 

(兄様と、イズナ、早く来ないかな?)

 

もう、夜も明けない内から起きたイドラはその日は家事などはせずにそわそわとしていた。本音を言うならば玄関で待っていたかったぐらいだが、さすがにそれははしたないと周りに却下された。

そのため、渋々であるが、己の自室というか荷物置き場にしている部屋で待っていた。

いつも通り、うちはの独特の首の部分を覆った外套を着ていた。

千手に来た時とは違うのは、その長い髪をまとめた月の意匠が施されたかんざしだった。

 

(扉間様に選んで貰いましたし。兄様達に自慢しましょう。)

 

兄たちの顔を考えて、イドラはうきうきしていた。ただ、千手柱間がいなくなったと慌てて追いかけていった千手扉間を心配していた。

その時だ、廊下の方がにわかに騒がしくなった。

 

「アカリ姫!お待ちを!」

「私たちが扉間様に叱られます!」

「お待ちを!」

 

なんだなんだなんだ????

 

イドラは何かあったのかと廊下に面した障子を開けようかと思って立ち上がろうとした。それと同時に、障子が勢いよく開いた。

 

やたらどえらい美人が来た。

 

それがイドラが女を見たときの感想だった。

 

「・・・・あなたがうちはのイドラ姫か?」

「は、はい。」

 

イドラは思わず頷いた。圧されるほどに女は迫力があった。

まず、女は非常に美しかった。千手にしては珍しい、鋭い赤い瞳は彼女の凜々しい顔に、鋭利な印象を受けさせた。真っ白な肌は、それこそ姫と呼ばれるにふさわしい。

何よりも、紅蓮のように赤い髪はバラのように華やかな印象を受けさせる。

そうして、何よりも目が行くのは、その、凍り付いたような無表情だろうか。

何よりも、女にしては長身で、迫力は抜群だった。

 

(赤毛のスレンダー美人、いいですね!)

 

何が良いのかは置いておくとして、イドラはうんと頷いた。

 

「姫様!」

「・・・・お前達は下がりなさい。」

「で、ですが!」

「扉間と柱間には私から言っておく。行きなさい。」

 

迫力抜群のその声音に、屋敷の手伝いをしてくれている女衆はすごすごと、けれど、不安そうにイドラを見ながら下がっていく、

女は、部屋の真ん中に座っていたイドラの前に座った。そうして、変わること無い無表情でイドラを見た。

はっきり言おう、めちゃんこ怖い。扉間と通ずる圧を感じて、イドラはめしょめしょしながら、なんとか賢そうな顔を保ち、女の言葉を待った。

何かあれば、忍術使ってとんずらをこく気だった。

女は深々とイドラに頭を下げた。

 

「お初にお目にかかります。イドラ姫。このように挨拶、そうして、謝罪が遅くなったこと、誠に申し訳ありません。」

 

それにイドラは目の前の存在が何であるのか、理解した。

イドラは必死に賢そうな顔を保った。そうして、口を開いた。

 

「こちらも、ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。アカリ姫。」

 

それに千手アカリは静かに頷いた。

 

「・・・・・・・・・・」

(ねえええええええ!せめて、なんか喋ってくださいよ!!)

 

イドラは二人の間に広がる沈黙に心の中でえーんと泣いた。目の前の焔のような女は沈黙を保ち、じっとイドラを見ている。

気まずい。いや、元許嫁と、結婚予定の相手なんて気まずい以外のことなんてないだろう。

というか、この状態で何を言えば良いのだろうか。

 

(あなたの許嫁、寝取っちゃいました、とか殺されても文句言えませんし。扉間様は、利害関係と言ってはいたけど。)

 

けれど、利害関係だけの女がわざわざイドラを訪ねてくるだろうか?いいや、それはない。ならば、何故か。

 

(もしや、アカリ様、扉間様に本気で?)

 

イドラの中には、弟のように慈しんでいる扉間に健気に恋する赤毛のスレンダー美人の想像で一杯になった。

 

(そ、そんな!いい!やっぱり、扉間様、私が頑張ってキューピッドになってみせますので!)

 

また勝手な暴走をしようとしていたイドラにアカリが話しかける。

 

「・・・・イドラ姫、突然の来訪を驚かれたと思います。ですが、今回、私がこちらを唐突に訪ねたのは理由があるのです。」

「え、あ、はい?」

「私は、扉間とは、あの愚弟とはまったくと言っていいほど関係もなければ、好意もありません。というか、まったくと言っていいほどタイプではございませんので。そこら辺を言っておかねばと思い、はせ参じました。」

 

ぽくぽく、ちーん。

 

そんな音がイドラの中で響き渡る。

 

「は、はあ?」

「扉間とは、あくまで弟で、宗家という血筋上許嫁の地位にあっただけで、まったく、これっぽっちも男として意識さえもしておりませんので。どうか、誤解無きように!」

 

めっちゃ力強く言ってくるやん。

 

「は、はい、わかりました。」

 

イドラは固まって答えた。その、アカリのそれになんて答えて良いのかわからなかった。その赤毛の女は、全ての台詞を見事な無表情で言ってくるのだ。

そのくせ、声音だけはやたらと感情豊かで、視覚と聴覚の落差にバグが起きる。

イドラの頭の上でにはてなが浮かんでいるのを察したのか、アカリはああと頷いた。そうして、己の頬をむにむにと揉んだ。

 

「すまない。この鉄仮面は昔からなんだ。子どもの頃に色々あって、そのままだ。気にしないでくれれば良い。」

 

何があったんですか、とは聞けなかった。

この地獄には、悲劇なんてまるで石ころのように転がっている。ならば、目の前の、綺麗で、怖そうな女性にも地獄があるのだろう。

うちはイドラにはうちはイドラなりの地獄があったように。

 

「・・・などと言っても、怖いだろうな。申し訳ない。」

「い、いいえ。怖いなどとは。綺麗だと、思います。」

 

それはイドラの素直な言葉だった。それに、本当に微かにアカリの眉が動いた。イドラはそれに相手を不快にさせただろうかとじっと見た。それに、アカリは本当に微かに、口元をほころばせた。

 

(ミリ単位レベルの、その違い。ツンデレのうちは生まれの私じゃ無いと見過ごしてましたね。)

 

イドラはなんとなく、少々ため込む性質のうちはの中で育ってきたためか。目の前のそれが自分の敵ではないと感じ取ることが出来た。

伊達に数十年、可愛がられていないのだ。

 

「・・・・イドラ姫のように可愛い子が、なぜ扉間になんて引っかかってしまったんだ?」

「え、か、可愛いですか?」

「ああ、十分に可愛いと思うが?」

 

イドラはアカリのそれに顔を真っ赤にした。綺麗とか、美人とか言われたが、可愛いなんて初めて言われた。顔の系統のこともあるだろうが、ちょっとかっこいい目の美人なおネイサンに可愛いと言われるのはなかなかドキドキしてしまう。

そんなイドラにアカリはそっと、手を伸ばした。そうして、見事な鉄仮面であるとは言え、やたらと美人なお姉さんの顔面を間近で見るのは違う。

扉間との、あれやこれやで迫られたのはまた違うドキドキだ。

というか、扉間よりもドキドキしてるかもしれない。

 

「・・・イドラ姫。それで、私としても聞いておきたいことがある。」

「は、はい。何でしょうか?」

「今回の婚姻、本当に望んでのものなのか?」

 

それにどきーんと、今までの比ではないぐらい心臓が跳ねた。

 

「ど、どういう意味でしょうカ?」

「私が今回、帰省を知らせずにだまし討ちのように来たのは、あなたの真意を知るためだ。私も宗家の娘だ。ある程度、婚姻には諦めもついている。だが、あなたの状態は特殊すぎる。もしも、扉間に無体をされ、そうして、家の状態のためだけに無理に婚姻するというのなら。私が何に代えても、あなたを守ろう。」

(あー!お客様!いけません!いけません!そこそこ真意を抉られると私もなんて言えば良いのかわからなくなります!)

「・・・・イドラ姫。」

 

イドラは思わず視線をそらしたが、その、心の底から心配げな声に思わず反応してしまう。

そちらを向くと、そこには、変わらない鉄仮面であるとは言え、目をうるうるさせたアカリの姿があった。

 

「大丈夫か?その、もしも、あの馬鹿がつくような現実主義者に脅されているのなら、全力で柱間と仕置きをするが。」

「仕置きというと、何を?」

「・・・そうだな。イドラ姫にした無体は本来なら赦されることではない。ただ、千手でもあそこまでの判断能力を持ち、為政者として特化した人間も他にいないからな。命を捧げるというのも、難しい。イドラ姫も、和平を望まれているのだものな。」

 

アカリは少し沈黙した後、ぼそりと言った。

 

「・・・潰す、か。」

(何を!?)

 

いや、ナニを!?

イドラは扉間のそれが潰されようとしていると察して、アカリに縋り付く。

 

「い、いえ!私、扉間様大好き!本当に、心から、大好きなので!なので、大丈夫です!それに、今回の和平に亀裂も入りますし!」

「そうか?扉間も子を欲しがっていなかったし。それに、イドラ姫。」

 

アカリは澄んだ瞳でイドラに言った。

 

「あれらの母君に後を頼まれていたというのに、こんな不祥事を犯したのだ。おば様に合わせる顔も無い。本当の意味で、そういった償いを望んでいるというのなら。あれらの母に代わって、私がそれをするべきだ。覚悟も決めてきたのだが。」

 

そう言ったアカリは己の胸元の、着物の袷を撫でた。それに見てしまった。どう見ても、切腹用の短刀があることを。

 

(と、扉間様が殺られる!!)

 

力量的に殺られるのかはわからないが、目の前のその人には殺ると言ったら実行するすごみがあった。

待って、この人、覚悟を決めてきたという一言で本当に腹を切る気なの!?

イドラはアワアワと慌てながらどう言おうかと悩んだ。

 

「・・・すまない。本当なら、もう少し早く来るべきだったんだが。ただ、覚悟を決めるだけでは実行することもできない地位でな。家のことについて、最低限、ミトに託す必要もあったし。」

「い、いいえええええええええ!もう、こんな綺麗なお姉様が出来るなんて感激です!!昔から、お姉さんが欲しかったので!嬉しいなあ!!」

「・・・こんな、唐突に現れた女に姉なんて。だというのに、扉間はあなたのような子に無体を強いて、最初は責任から逃れようと。いいや、もしや、イドラ姫。あれにあくどい手を使われた?それとも、もしや、高度な幻術を使って手込めに?」

やはりと、アカリはそっと胸の短刀に手をやった。それをイドラはいやあああああと慌てる。

やる、なんか、この女は殺ると言ったらやる。

 

「あ、あの、アカリお義姉様!あの、何か、あれです!私に聞きたいこととかありませんか?せっかくお会いできたんですから!ぜひ、ぜひ、友好を深めませんか!?」

「友好?」

「は、はい。せっかくなので!」

 

その言葉にアカリは少し黙った後、ちらりとイドラを見た。

 

「・・・・それならば、申し訳ない。冥土の土産に、お願いがある。」

「い、いいえ!冥土に渡ることはないので!ですが、お願いとは?」

「恥ずかしい話、私は戦場を経験したことは数えるほどしかない。そのために、一つ、死ぬ前に写輪眼を見たいと思っていたんだ。見せて貰えないだろうか?」

見せて貰えないだろうか?

 

それにイドラは驚いた。この瞳を見たいと望む千手の人間がいるなんて、と。

けれど、自分を見るアカリのその目は、ひどく真摯に見えた。それ故にか、イドラはこくりと頷いた。

 

「・・・・これが、写輪眼。」

「私のはただの写輪眼で、万華鏡写輪眼には至っておりませんが。」

 

写輪眼をのぞき込むアカリ、そうして、それを許しているイドラ。

それは傍から見れば、非常に怒られる絵面だった。普段ならば、さすがのイドラもそんなことはしない。

ただ、何故か、見せて欲しいと思うアカリの様子が気になってしまった。酷く、切なる願いがあるように見えたものだから。

イドラはそれを許してしまった。

アカリは食い入るように、どこか、切なそうに写輪眼を見つめていた。

 

「・・・美しいなあ。」

 

その言葉をイドラは場違いだと思った。この、人殺しの道具に等しい瞳に、死を見つめ続けた赤には不相応に聞こえた。

けれど、その声音は、心底そう思っているように聞こえた。

 

(・・・・眠い。)

 

そこでイドラは段々と眠気に襲われる。元より、今日の兄たちの来訪にはしゃいでした、驚くほどの早起きと、そうして改めて写輪眼を開いているための疲労感から来るものだった。

それにイドラのまぶたが重くなる。

 

「すまない、無理をさせて。扉間たちが帰ってくるまで眠るか?」

 

眠気に耐えられなくなったイドラはそれにこくりとうなずき、そうして、写輪眼を閉じた。

 

「・・・皆が来るまで、膝を貸そう。」

「でも・・・・」

「気にしなくていい。あんなにも美しいものを見せてくれたお礼だ。」

 

それにイドラは誘われるがままに柔らかなアカリの膝の上に頭を載せた。柔らかくて、良い匂いがした。

 

「・・・兄様と、イズナの、目の方がきれい、なので。」

「そうなのか?」

「はい、なので、ふたりにも、みせてもらいましょう。わたし、おねがい、するので。」

 

そのままイドラはすやあと眠りのそこに墜ちていった。

 

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