卑猥様のせいで、四代目が飛雷神の術を、これだけは使いたくなかったんだがって言って使った瞬間に、他の忍がそれは二代目の卑猥な術とか言ってるシーンが頭から離れないんですがどうしてくれます?
扉間さん、さすがに三大欲求はありますよね?
千手扉間は死んだ眼で寝室に向かっていた。
その日、イドラを襲っていたという容疑についてまったくと言っていいほど弁解が出来なかった。
というよりも、完全に自分への疑惑が固まってしまった。事実、先ほどまで兄である千手柱間と、義兄になってしまううちはマダラに延々と絡み酒をされながら説教染みたそれを聞かされた後なのだ。
「いいかあ!扉間!今回は、ただ一時的な花嫁修業みてえなもんだ。今回みてえなことは御法度だからな!?」
「何もしとらんわ!」
「まあまあ、まだらあ、扉間とてあんな場面を見られたのならば、恥ずかしかろうぞ。」
「わかってるがなあ。でもなあ、これから婚儀もあるんだぞ?膨れた腹じゃあできねえだろう?母様の嫁入り衣装も綺麗に、してなあ。」
「そうかあ、マダラの妹ぞ、綺麗だろうなあ。」
「・・・・ああ、あんなに、小さかったのになあ。」
護衛としてやってきたうちはの人間は別の部屋で食事をしていた。そのため、その場には柱間とマダラ、そうして扉間だけだ。二人は肩を組んでベロベロに酔っ払っていた。
その間、マダラは扉間への昼間の文句ばかりを並べ、それを柱間がなだめていた。
扉間はそんな説教なんて聞き流してやった。まあ、何もしてないのだから当たり前なのだが。
扉間は二人がくだを巻きながら話をするのを眺めていた。
それは、本来ならばあり得ない光景だった。けして、けして、考えられないような光景で。
それでも、内心で扉間はそれを悪いものではないとも感じていた。
その日、結局酒に酔って爆睡した二人を布団に放り込み、扉間も寝ることにした。イドラは千手の空気を知りたいと、一族の者に混じって台所に立つと言ったために飲みには不在だった。
マダラが反対するかと思いきや、彼はそれを気にしなかった。
曰く、イドラの決めたことだからと言うことらしい。
扉間が屋敷に手伝いに来ていた一族の女に聞いたが、よくよく彼女は働いているらしい。
台所を預かっていた女達もどんな姫君が来るのかと緊張していたが、イドラはくるくるとよく働いた。
多少、うちはと千手での料理の味付けなどの違いはあっても十分な戦力になったらしい。
「・・・扉間様、いいたかないですが、あの子への責任はちゃんと取ってくださいね?」
取るような責任など存在しないのだが、女はそう言って扉間に頭を下げた。それに扉間の眉間に皺が寄る。
頭ではわかっている。現状の維持こそがもっとも消耗が少なく、里を作ることが出来るのだと。
が、納得いかねえ、その一言に尽きる。
この、超が付くリアリストである扉間、今の状態がどれほど好条件かは理解している。だが、悲しいかな、その汚名を背負うのは感情が赦していなかった。
非道であると、非情であると、そう言われるのはいい。己自身でそれを選択したのだから。
だが、これは違うだろう。確実に違う。
(・・・確かに現状を維持するのが一番ではある。だが、そうであるとしてもあの女の本心がわからん。)
それが扉間にとっては何よりも気がかりだった。
うちはの人間が何かを企んでいる。そう考えるにしても、扉間が探る限り、なにも出てこない。というよりも、イドラを嫁がせることに関して一族内で揉めたという話もある。
どんなに巧妙に隠したとしても企みというのは尻尾がどこかに出るものだ。けれど、現在、そんな尻尾さえも見つかっていない。
ならばイドラだけで何かを企んでいるのか?
そうであるとしても、いったいなにが目的なのか。
(わからん。なら、あの女を側に置いて動向を監視するのが手か。)
だが、それで悪名を背負うことだけは納得が出来なかった。女の手のひらの上で踊らされている感が否めないのが本当に納得できなかった。
(ともかく、さっさと今日は寝るか。)
扉間がそう思いながら部屋に入った。行灯の光に照らされた部屋の中には、布団が二組敷かれていた。
それに扉間の眉間に皺が寄る。それに扉間は思い出す。柱間が寝室を一緒にしておくという話を。
思わず額に手を当てると、障子が開けられた。
「あ・・・」
後ろを振り向けば、薄い寝間着に着替え、うっすらと赤みを帯びた肌をしたイドラがいた。
イドラは思わずというように障子に半身を隠した。
「あ、あの、他の方に今日はここで寝るようにと、言われて。」
それに扉間はイドラに他の部屋に行くようにと指示を出そうとした。けれど、ぴたりと動きを止めた。
今まで、散々に酷い目に遭い続けた扉間もなんとなく察していた。このままイドラを追い出せば、さらにとんでもねえ目に遭うだろう。
酷い話なのだが、なんとなく扉間は全てを察した。
「と、扉間様、私、他の部屋に・・・」
「構わん。」
「え?」
「ここでワシが貴様のことを追い出せばまた五月蠅くされる、どうせ寝るだけだ。ここにいろ。」
扉間はそう言って、さっさと床につき眠ってしまおうとした。
「あ、あの!」
それに後ろを振り向けば、そこにはイドラがおり、彼女は今までの怯えた様子など忘れて扉間を見上げて潤んだ瞳で花のように微笑んだ。
「ありがとうございます!」
何をそんなに嬉しがるんだ?自分が拒絶しなかったことがそんなにも嬉しいのか?
見目麗しいイドラの潤んだ瞳は、大抵の男をぐらつかせるには十分だった。いいや、体の線がはっきり出る衣装に、湯に入ったために淡く赤らんだ頬だとか、結構な人間がぐらりときそうな状態だった。
扉間はそっと彼女から目をそらして、そのまま布団に入った。もう、全てを忘れたかった。
イドラからすれば自分のしたとんでもねえことに怒りを見せず、今回も兄であるマダラに酷いことをされてなお、受け入れてくれた扉間に感謝の念しか無かった。
(なんとか、扉間様の信頼を得て、ゼツの話が出来るぐらいの関係にならないと。)
イドラはそんなことを考えながら行灯の灯を消し、小さく扉間にお休みなさいと言って布団にもぐりこんだ。
扉間はそのままイドラに背を向けていたが、すぐに寝息が聞こえてきた。それに扉間が後ろを振り向くと、それはそれは健やかに寝入っているイドラがいた。
(この馬鹿、たたき起こしてやろうか?)
自分の現状と、その女の安らかな寝息に扉間は殺意さえ込めて、その寝顔を見た。
扉間は自分を追い込んでいる女を眺めた。
美しい女である。それは、扉間も客観的な事実としても同意できる。けれど、なんだろうか、この間抜け顔。何か企みごとをしているなんて考えられないような寝顔だ。
が、扉間はため息を吐いて、天井を見た。
この女に下手に手を出すとろくな目に遭わない。今はとにかく、この女を観察し、本心がどこにあるのか理解することだ。
扉間はともかくさっさと寝ることにした。
その時だ、くしゅんと小さなくしゃみの音がした。それに扉間はイドラがくしゃみをしたことを理解した。それを無視して、扉間はまぶたを閉じる。
「さむい・・・・」
寝ぼけているのか、イドラがそんなことを呟きながら、扉間の布団に入り込んでくるまでは。
「は?」
扉間は何が起こっているのか理解できず、固まった。その間に、イドラは扉間の布団に入り込み、その胸に潜り込んだ。
色仕掛けか?
そんな疑問が出てくるが、イドラはそのままもぞもぞと居心地のいい場所を見つけた後、すやすやと寝息を立て始めた。
は?待てこの女、このまま寝る気なのか?
扉間は固まった。
イドラからすると、まったく悪意も無ければ、企みなんてものはない。
彼女はうちはの里では一人で眠っていた。千手の里はうちはよりも寒く、彼女は純粋に暖を求めていた。
普通ならば、隣に布団など無い状態で、ちょうど存在していた扉間を彼女は兄であるマダラだと勘違いした。寝ぼけ、夢見心地である彼女は幼い頃の記憶のまま兄の布団に潜り込んだつもりに過ぎない。
どうする?
扉間はその女の行動に固まった。全てが意味がわからない。まだ婚姻もしていない男の布団に潜り込み、すやすやと眠るこの馬鹿女は何がしたいんだ?
扉間の丁度、横っ腹だろうか。柔っこくて、そうして、温かな何かが押しつけられていた。それが何かわからないほどうぶでは無い。
イドラは普段、サラシを巻いているが、寝るためにそんなものは解いてしまっている。彼女が纏っているのなんて薄めの寝間着だけだ。
もう、殆ど、そのものが扉間の横っ腹に押しつけられている。というか、暖を求めているイドラは足を扉間の足に絡めてきていた。
すべすべとした肌が己に絡みつく感覚を直に感じて、扉間は目を見開いた。
イドラを見ても、彼女はすやすやと安らかに寝ている。
もう、殺意が湧いた。
これが色仕掛けなどならば意識を切り替えられるのだが、完全に爆睡している女の思想がわからずにもう、色々思考がバグり始める。
風呂に入ったせいなのか、甘い匂いがする。温かくて、柔らかな体を押しつけられて、扉間はなんかどうでもよくなりそうだった。
扉間はリアリストだ。けれど、三大欲求が死んでるわけでは無い。人並みかはわからなくとも、ある程度の欲はある。彼はただ、それを抑制することに長けていただけだ。
事実、昼間の柱間の発言は、そう言った店で女達からの評判を聞いたが故のものだ。
(この馬鹿、悪名を本当にしてやろうか?)
殺気混じりに、もう、腹が立つと言うことを越えて、そんなことさえ考える。ここまで無防備な態度をされて安穏と寝ている女に本当に腹が立っていた。
この悪名を広げるのが本望なら、実行してもいいんじゃないのか?
状態は据え膳と言っていいのだから。
あー、この馬鹿。もう、手を出してもいいんじゃないのか?誰も彼もからそう思われてるのなら、今更という話だ。
というか、この女、自分が何してるのかわかってるだろうか?
こんな美しい女が自分の布団に潜り込んできてるのなら、もう、それだけで合意だろう?
やわっこくて、温かな感触にそんなことを考えるが、扉間はどこまでも理性的だった。
(・・・寝るか。)
振りほどくことも考えたが、また誤解に誤解を産み、とんでもねえ目に遭うのが嫌で、扉間は腹をくくってそのまままぶたを閉じた。
もちろん、一睡も出来なかったのだが。
朝、快眠で早めに起きた女にドスの利いた声で離れろと言えば、まるで驚いた猫のように跳びはねて、布団から這いだした。
「あ、あの、その・・・・」
驚きすぎてきわどい部分まではだけた衣服を、扉間は最後の気力を振り絞って直すと、寝ていないせいで冴えた視線で見た。
「・・・朝の支度に行くのだろうが。」
「は、はい!朝ご飯出来たら、起こしに来ますので!それまで、お休みください!」
イドラは半泣きでそう言って己の分の布団を素早く畳み、部屋を飛び出した。
扉間はそれにふらふらと己の眠っていた布団に潜り込んだ。
ようやく、寝れる。そう思ったが、布団には見事にイドラの甘い匂いが残っていた。それに、目が冴えてきた。
(何しとるんだ、ワシは。)
扉間は少し、泣きたくなった。