はわわしてる柱間様が一番書いてて楽しいです。扉間様をここまで追い込んだ奴が今までいただろうか。
うちはイドラは兄であるうちはマダラの宣言の後、色々と衝撃を覚えて茫然としている間にうちはの里に連れて帰られた。
その後、もちろん、一族全体に和平の話が広まった。
「兄さん!どうして、和平なんて!いいや、姉さんを嫁に出すなんて決めたんだ!?」
そのイズナの言葉を皮切りに、古参を中心に非難の声が上がる。
「そうです、頭領!なぜ、イドラ様を!」
「ならば、あのまま我が妹を捨て置くというのか!?」
「でも!」
「あの場で、千手扉間に責任を取らせる。それ以外の選択肢が何か、お前にもわかっているだろう?」
それにイズナは黙り込む。そうだ、あの場であの選択肢以外は無かった。敵との密通者の末路は、死以外にあるのか?
うちはの人間の殆どがほっとしていた。すでに戦局はぎりぎりの状態で、戦いの中で亡命を考える者さえいた。
そんな中に現れた戦いを止めたイドラの存在を非難する者は、いなかった。ほっとしていた、そうだ、本当は、ほっとしていた。
もう、あの、荒ぶる竜のような木を前にしなくていいのだから。
(もしかすれば。)
誰かが思った。いいや、多くが思った。もしかすれば、イドラはこのために千手扉間に身をさしだしたのでは無いのか。
一族の人間が集まった、頭領の家の大広間。
そこで、頭領の隣に静かに座る、うつむいた女。ぼんやりと、蝋燭の火に照らされた美しい女。
そっと、誰かが密かに手を組んだ。手を組んで、静かに祈った。
贄の女。一族のために、その純潔を、敵に捧げた哀れな女。
(どうか、どうか、お許しください。)
誰かが思った、多くが考えていた。
その贄をくべて、安寧をむさぼる、我らの罪深さを、どうか、お許しください。
ああ、その、愚かな優しさに報いましょう。
ああ、あなたのその献身を、我らはけして忘れません。
続く地獄を終らせた、優しいあなた。
(私たちは、それを、けして、忘れません。)
まあ、そんな事実などないわけだが。
(・・・・どおしよおおおおおお!?)
イドラは目の前の扉間を前に視線をうろうろさせていた。
イドラは連れて帰られたその後、自分を置いてけぼりにして話されるそれにようやく気づいた。
あれ、とんでもねえ勘違いが起きてねえか?
気づいた瞬間、冷や汗が滝のように流れた。いや、そりゃあ結婚まで持ってくわ。自分、乱心扱いじゃなくて、密通容疑で殺される寸前だったのだ。
(マダラ兄様のおかげで首の皮一枚繋がったのかあ。)
ほっとしたのもつかの間、よくよく考えた。
勘違いに巻き込まれた張本人、それもとんでもねえレベルの汚名を着せてしまった人間と結婚するのだ。
どうしよう、ほんとにどうしよう。
イドラは頭を抱えた。まず、本来起こるべきことについては話せない。なぜ、そんなものが見えたのか、それが起こると確信できるのか説明が出来ない。
(せ、せめて、私が万華鏡写輪眼に目覚めてたら!)
残念ながら写輪眼について開眼していても、そこまでの高みには至っていない。
ならば、どうする?
言い訳を考えなくてはいけないし、何よりも、黒ゼツについての対策は扉間ぐらいにしか相談できない。というか、対策できそうな人が扉間しかいない。
里では婚姻の話がどんどん進んでいる。それと同時に、里の引っ越しの準備も。
うちはの人間から和平について、そこまで反発は出ていない。
そんな中、イドラはずっと思い悩んでいた。イズナやマダラに心配されてもなお、その動揺を隠しきれなかった。
このままでは扉間と顔を合わせるのは、結婚式当日ぐらいの勢いだ。手紙を書くにも、中身を見せられるようなものではない。
(ともかく、扉間様と話をしなくては。)
そのためにイドラは嫁ぎ先の雰囲気をあらかじめに知りたいとマダラに頼み、意気揚々と扉間の元に来たわけだが。
(うん、怖くて無理。)
めっちゃ怖い。笑ってるのが怖い。ぜってえそんな爽やかな笑みを浮かべるタイプでは無いとわかっているが故にめっちゃ怖い。
「それで、どうなんだ?」
声音が上機嫌そうであるからこそ、その裏にある怒りの深さがわかる。
(えーん!バチ切れしてる!)
「あ、あの、その・・・」
何かを言おうとした。言い訳を考えても、結局思いつくことも無く、なんなら無意味な時間を過ごしてきた自覚がある。
額に浮かんだ青筋に、イドラはびびり散らしてしまった。
戦いだとか、そこら辺には慣れていても、残念ながら基本的にいい子である彼女は怒られ慣れていなかった。
思わず、イドラはずるずると、座ったまま後ろに下がる。扉間はそれに、眉間に皺を寄せて見つめる。
「・・・おい。」
「ご、ごめんなさい!!」
部屋の隅、そこでイドラは綺麗に土下座をして見せた。
「それだけですませられると?」
「・・・いいえ。でも、その、言えなくて。」
イドラは最後まで、どう説明して良いかわからずに、そう言った。
それに扉間の眉間の皺がより深くなった。それと同時に、扉間がイドラに飛びかかる。が、身体能力だけならば太鼓判を押せるその女。
ひょいっと扉間のことをイドラは避けた。
「貴様!ワシが周りになんて言われとるのかわかっとるのか!?」
「わーん!わかってます!ものすごいことになってますよね!?」
「当たり前だ!敵対しとる一族の姫君を孕ませたあげくすっとぼけた最低男だぞ!」
「もっと酷い悪名だって抱えてるじゃないですか!?」
「貴様!悪名の種類が違うわ!大体、犯した非道を背負うのならまだしも、指一本触れとらんというのに、なんでこの悪名を背負わねばならん!」
さすがは互いに、戦国最強と名高いものたちの戦場を生き残った忍だ。無駄に良い動きで部屋の中を飛び回る。ただ、互いにマダラと柱間にばれることは避けたいために、できるだけ音は抑えていた。
そうしていれば、二人で汗だくになっていた。ぜえぜえと息を荒くしている中、とうとう、イドラの上着を扉間が掴んだ。
「さあ、何をどうしてああなったか、話してもらおうか?」
それにイドラは、ずるりとうちは特有の上着から脱皮した。
元々、忍具などを隠しておくためにゆったりとした作りの外套は頑張れば、幼子のごとく頭を抜けて離脱することも出来た。
だが、扉間もその隙を逃すはずがない。扉間は逃げるイドラの足を掴み、その場に膝を突いて、彼女を引き寄せた。
「観念せい!」
互いに普段使うことの無いタイプの力を使ったせいか、それだけで汗だくで互いに荒い息を吐いた。
「うううううう・・・」
「今回の千手に来たのもお前自身が望んだことだろうが。なら、話す覚悟は出来ていたはずだ。」
扉間はこれ以上逃してなるものかと、イドラに覆い被さった。それにイドラは暴れたせいで乱れた衣服を不安のために握った。
(なんて言うの!?あのことについては、もう少し、信用ができてから言った方が。今だけ、今だけ、あれについて納得できるものを。いや、出来るのか?あんなとんでもない狂言について?)
イドラは必死に頭を働かせた。が、上手い言い訳なんて思いつくはずが無い。だが、己の上でガチ切れた扉間にびびっていた。
そのために、口から出たのはでまかせで。
「あ、あなたのことが好きでした!」
ちーん。
もしも、効果音が存在していたのなら、そんな音が辺りに響いたことだろう。
好き?
この女、言うに事欠いて、何を言ってるんだ?
だん、と扉間はイドラの顔の横、畳の上に拳を叩きつけた。
「貴様、ワシのことを相当舐めておるみたいだなあ?」
「ほ、本当です!一目惚れだったんです!」
もう、イドラも必死だった。もう、なるがままよ。あんなことをした理由づけで今のところ良い言い訳が思いつかない。
「なんですか、ダメですか!?好きだったんです!殺し合いして、言葉を交わした事なんてなくて!でも、ずっと好きだったんです!」
まあ、嘘じゃ無い。事実、イドラは扉間という存在を以前から目で追っていた。
自分もあんな風に兄を支えられる者であれたらと、そんな微かな憧れを持って。
イドラはフル回転で言い訳を考える。ええい、ままよ。もう、後戻りなど出来ないのだから。
「・・・・う、うちはは疲弊しています。でも、皆、止めることが出来なかった。だから、何か、止めるためのきっかけが必要でした。それで。」
「今回の狂言を?」
「・・・・はい。どうせなら、失敗するとしても思い人がいいと、そう。」
ちらりと扉間を見れば、ああ、懐かしい。あの騒動以来の絶対零度の視線。
あー、信じてませんよねえ、そりゃあそうです。自分でも酷いと思います。もう、その視線だけで死にそうです。
「遺言がそれか?」
(でっすよねえ!)
もうイドラは死を覚悟した。あ、死にましたわと短い人生を儚んだ。
そんなイドラの心情など興味も無い扉間はどうしたものかと考える。
イドラの本心は他にある。だが、今は言う気は無いようだ。こんな嘘だとわかりやすい発言などなぜするのかわからない。
「・・・どれほどのリスクがあるのか、わかっているのか?下手をすれば、ワシと貴様、両方、一族に殺されていたはずだ。」
それにイドラは息をのむ。いや、何にも考えてなかったので。というか、この状況自体が予想外すぎて泣きたいのですが。
が、それでも返答はしなくていけない。そのため、素直な言葉を口にした。
「・・・・私はともかく、扉間様については処分はされることは無いと確信していました。あなたは、必要とされている方です。それに、もしも、私が処断されたときは、うちはの中で揺らぎが起こります。それで、現状に不安を持ってくれれば戦いを放棄する可能性もあります。」
「死ぬことにためらいはないのか?」
それにイドラは苦笑した、素直に、自然にそれが零れ出た。
「私は救われなくていいのです。私は、いつかに子どもたちが報われるのなら、それこそが私の死への報酬です。」
それは素直な、イドラという女の言葉だった。
自分たちで全てが救われるなんてあり得ない。そう願うには、あまりにも自分たちは業を背負いすぎているから。
「背負った業だけは私が地獄まで背負っていきます。私は、誰のことも呪いたくないのです。」
それに扉間は驚いた顔をした。それは、なんて、愚かなまでの献身だろうか。己の救いをいらないと、それはあまりにも綺麗事で。
けれど、その女はあまりにも本心のようで。まるで、何のことも恨んでいないように笑うものだから。
その時、扉間は家の奥で何かが近づいてくることに気づく。それがマダラと柱間であることに気づいた。
「・・・・その話はもういい。ともかく、だ。ワシの悪名について。」
扉間はそう言って改めてイドラを見た。そこには、上着を脱ぎ捨て、汗だくで、息荒く、胸元がはだけて白い肌が晒された女が床に座り込んでいた。
扉間は己の姿を思い出す。暴れたせいで着衣は乱れ、そうして、汗をかき、息も荒い。
扉間は素早くイドラの上着を掴み、彼女に着せようとした。
「早く着ろ!」
「え?え?なんですか?」
状況を理解しておらず、驚いて、距離を取ろうとする彼女を扉間はなんとか引き留めようと腰に手を回した。
が、全てが遅い。
「扉間、やけに遅いがどうか・・・・」
デリカシーなんて言葉が存在しない柱間は何のためらいもなしに部屋のふすまを開けた。その隣には、マダラもいる。
さて、二人の目の前の広がっている光景とは何なのか。
汗だくで、息も荒く、女は上着を脱いで着衣も乱れている。そのおまけで、男の方はまるで迫るように女の腰に手を回していた。
端から見れば、おっぱじめる寸前だった。
マダラは固まり、柱間は弟の閨ごとを見てしまったと顔を赤くした。はわわと両手で口元を覆った。
弟の初めて見る情熱的な部分に胸がドキドキしていた。
「と、扉間、さすがにこんなに明るいうちに!マダラもおるのだぞ!」
扉間は屋敷に星でも降ってこないかと切実に願った。というか、兄のその口をいますぐに縫ってしまいたかった。
「ち、違う!」
扉間は思わずそういうが、そんなことなどわかるはずも無いマダラが扉間に飛びかかった。
「貴様あ!妹に、妹に、もう少し我慢できんかったのか!?」
「我慢もくそもないわ!」
マダラは扉間の胸ぐらを掴んでぐわんぐわんと揺する。それに扉間も抵抗する。
「何もしとらんとは言わせんぞ!?いや、もしや、すでに済ませて!?」
「どんだけワシのこと早いと思っとるんだ!」
「そうだぞ、マダラ、扉間はけっこう遅・・・・」
「あんたは黙れ!」
イドラは目の前で起こるそれに混乱した。話している内容はよくわからないが、ともかく、扉間を庇わなければと止めに入る。
「に、兄様、扉間様を離してください!」
「イドラ、こんな奴の事なんて構わなくて良いからな!?お前のことを、こんな乱雑に!」
「ええっと、乱雑なんて!扉間様は私のことを丁寧に扱ってくれますよ!?ほら、今だって、すっごく優しかったんですから!」
イドラはそう言いながら、うんうんと内心で頷いた。確かにはたから見れば乱暴だが、それはそうとしてイドラのやらかしを考えれば、扉間は自分に対して優しいと思うのだ。
それにマダラは雷に打たれたように思う。
(優しく?つまりは、あれか、丁寧に前戯をしようと?)
「やはり、おっぱじめようとしてたんじゃねえか!?」
「どこをどう聞けばそうなるんだ!?」
そこで今まで弟の情熱的な恋愛に心をときめかせていた柱間も止めに入った。
「待て待て、マダラ!だが、二人の仲が良好なのはいいことだろう?」
「柱間、でもな、こいつ、少し前に体に負担があったばかりなんだぞ?」
「それもそうだな。」
柱間はマダラとつかみ合いになっている弟の肩に手を置いた。
「扉間、お前も年頃だ。やりたい盛りなのもわかる。そうして、ようやく赦された解放感もあるだろう。」
ただ、ほどほどにな?
慈愛に満ちた柱間の眼に、扉間は殺意で人が殺せるのなら、自分はきっと兄を殺していたと後に振り返った。
これ、最終的に二人の子ども何人になるんだろう。