総務省の偽誤情報対策における方針転換:制度WG中間取りまとめ案を読み解く①「情報区分の変更」
総務省のデジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会(以下、諸課題検討会)から中間取りまとめ(案)が出された。
この報告書案は、2つのワーキンググループの報告書から構成されている。
① デジタル広告ワーキンググループ 中間取りまとめ(案)
② 制度ワーキンググループ 中間取りまとめ(案)
ここでは偽・誤情報対策に関わる②の「制度ワーキンググループ中間取りまとめ(案)」を扱う。
取りまとめ案の詳しい内容に立ち入る前に、制度ワーキンググループ(以下、制度WG)の前身である「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会ワーキンググループ」(以下、健全性検WG)とは情報の分類方法が異なっていること、そこに方針転換が反映されていることを指摘しておきたい。
“検討すべき情報”の分類変更
健全性検討会での分類
2024年9月に出された健全性検討会のとりまとめでは、検討対象となる情報が以下の三つに分けられていた(p. 92-94)。
①他人の権利を侵害する違法な偽・誤情報
② 行政法規に抵触する違法な偽・誤情報
③ 権利侵害性その他の違法性はないが有害性や社会的影響の重大性が大きい偽・誤情報
この三分類を図解したものが以下の図である。
上半分の図で左右が重なり合う部分(A、B、C)が、健全性検討会で検討課題とされた情報区分であり、これを抽出したものが下半分の表である。健全性検討会では、違法ならびに有害情報であり、なおかつ偽誤情報であるものを検討対象としていた。さらに言うなら、偽・誤情報を大分類とし、違法性の有無で小分類に分けていたという方が実態に近い。先行する寄稿記事で解説したように、健全性検討会のとりまとめは偽・誤情報一色であった。
諸課題検討会での分類
今回公表された諸課題検討会制度WGの取りまとめ案には、情報の分類は健全性検討会を踏襲していると書かれている(p. 6)。たしかに大枠は踏まえているものの、重要な部分に変更がある。下図を参照のこと。
※この図は何度か変遷を経ているが、別の寄稿記事であらかた解説したのでここでは詳述しない。健全性検で「違法ではないが有害な偽誤情報」とされたCのカテゴリ名が「公序良俗に反する情報」を経て最終的に「有害情報」に着地したことを指摘するにとどめておく
A・B・Cの範囲が広がっていることが、おわかりいただけるだろうか。上半分の図でのA・B・Cは、健全性検討会の図では中央の重複部分に限定されていたのだが、この図では左側全体まで拡大している。つまり、偽・誤情報かどうかに関わりなく、違法情報と有害情報を全般的に検討対象とすることを意味しているのである。このようにしてA・B・Cから「偽・誤情報」という区分を取り払って一般化し、検討対象の拡大が図られた。この変更については以下のように言及されている。
本WGにおいて検討対象となる情報の種類は、健全性検討会の際に整理された分類を踏襲し、権利侵害情報、その他違法情報(法令違反情報)及び有害情報とした。いわゆる偽・誤情報も、基本的には、この3つのカテゴリのいずれかに分類することが可能であり、それぞれの項目における検討に包含されるものである(図表1参照)。
健全性検討会で最重要のアジェンダであった偽・誤情報が、違法情報と有害情報に包括され、背景化している。最前列のレイヤーであった「偽・誤情報性」が違法性レイヤーの後ろに退いていることから、優先順位の転換が起こっていることが見て取れる。
優先順位の逆転に見る方針転換
諸課題検討会の親会では早い段階で、違法性のある情報を優先的に扱う方針が示されていた(第3回議事録を参照)。2024年後半から闇バイト問題が深刻化し、政府として対処が急務となったためである。これに対しては、健全性検討会からの偽・誤情報優先の流れを尊重すべきという意見も出された。しかし、闇バイト募集投稿を通じて集められた者による強盗事件など、違法情報による被害が大きかったことから、違法情報優先の方向性で検討が進められた。偽・誤情報から違法情報へ焦点が移っているのである。
闇バイトの犯罪募集情報をはじめとする違法情報、情プラ法の適用を受ける権利侵害情報の陰に隠れて、有害情報(偽・誤情報)の影が薄くなったかのように見える。ただしこの取りまとめ案では、有害情報の違法化についてやや踏み込んだ記述がなされている。健全性検討会で活発化した「違法性のない有害な偽誤情報」の制度的対応を求める動きは途絶えていない。これについては次稿以降で詳しく取り上げる。
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1サムネ写真は自分で撮影したものです