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「柱間!そんなこと赦されるはずがないだろう!?」
「そうだ!なんで、姉さんを辱めたような奴に!」
「違うと言っておるだろうが!」
「扉間、くどいぞ!」
嫁にくれという発言に、マダラたちはもちろん、うちは一族からも盛大な野次が飛ぶ。
けれど、千手柱間の喝に千手扉間を含め、うちはマダラたちは思わず黙った。
そうして、柱間の喝に少々怯えてしまい、思わず扉間の腰に抱きついたイドラに柱間は穏やかに微笑んだ。扉間はうっとうしそうに、イドラを遠ざけるように彼女の頭を掴んで押そうとしたが兄の目に思わずそれをとめた。
「それで、イドラ殿。扉間の嫁の話、どう思う?」
「よめ?」
イドラの頭の上には盛大にはてなが浮かんでいる。何故、自分に扉間の嫁という話が出てきているのだ?
自分はうちはで、そうして扉間は千手だ。そんな自分たちが結婚なんて無理だろう。
その発言にマダラとイズナが待ったをかけるが柱間は首を振る。
「だが、どうするんだ?今回の件は全面的に千手が悪い。ならば、ここですべきなのは扉間への処罰だが。」
「だ、だめです!!」
イドラは何が何やらわからないが、扉間を巻き込むことだけは出来ないと腰に巻き付けた腕の力を強くしてぶんぶんと首を振る。
「と、扉間に処罰を受けさせるのはイドラ殿が反対している。そうして、このまま扉間を処罰しても、イドラ殿の名誉はどうなる?」
それにマダラとイズナは黙り込む。そうなのだ、こうも一族、そうして千手にさえも知られてしまった現状ではイドラへの処罰は厳しいものになる。
いいや、本当を言うのならば、処刑されても文句は言えないのだ。せめて、メンツとして扉間だけは殺さねばならないが。
けれど、その腰にはしっかりとイドラが張り付き、心の底から憎い扉間を庇っているのが事実である。
(わかっている。)
マダラは頭領として、イドラを処分せねばならない。けれど、なんとか生き残った家族なのだ。身内の中で唯一の妹。誰よりも、守ると決まったそれのことを、殺す?
マダラは己の息が上がるような感覚がした。だらりと、背中を汗が伝い落ちる。
殺せ、誇り高きうちはの人間として、頭領として敵を、そうだ、自分は。
かたかたと、マダラの手が、持った武器が震える。
その手を、柱間が掴んだ。冷や汗を浮かべたマダラに柱間は穏やかに微笑んだ。
そうして、声はなくとも口だけで吐き出した。
(あん、しん、しろ?)
全部、任せろ。
それに、それに、マダラ。その男は穏やかな笑みに、武器を、下ろしてしまった。張り詰めたそれに、何か、何かが確実に、変わることを察して。
「ならば、扉間に責を取らせるのが一番であろう?」
本心を言うのならば、柱間は、この場の中で誰よりも静かに、けれど、高揚していた。
イドラ。
その名前を柱間は知っていた。幼い頃、マダラと密かに会っていた頃、少しだけ聞いた。妹、優しくて、愛らしい、妹。
実際にあったのは戦場で。
見目麗しい女だった。けれど、マダラから聞いた天真爛漫さは遠く、酷く、静かな目をしていた。ひどく、静かな眼で、冬のように佇む女だった。
けれど、そんなことはどうだっていい。
柱間は真実、扉間に怒っている。もちろん、忍として汚いことはするし、色事などで情報を引き出すこともある。
けれど、絶対に触れてはいけない部分は存在するだろう?
そうだ、叱責は後だと考えを切り替える。
柱間はイドラを見た。黒い髪、黒い瞳。それは、どこか、彼の愛した親友に似ていた。
(彼女が、扉間に嫁げば。そうして、子が出来れば。)
マダラと自分は家族になれる。
柱間はイドラという存在が、まるで天から下りてくる蜘蛛の糸に見えた。何よりも、お家騒動はごめんだと結婚をしようとしない扉間にこんなに可愛い娘が嫁に来る。
そうして、男兄弟で育った柱間は妹というものが欲しかった。それがマダラの妹である。
何よりも、この婚姻は現在争っている千手とうちはの架け橋になってくれる可能性があるのだ。
そうだ、家族になれば。そうすれば、もう、争わなくていい。
柱間は、珍しく、全力で頭を働かせてイドラに微笑んだ。
そんな柱間の思想などわからないイドラは背中に宇宙を背負っていた。
嫁?
なんでそんな話になってるんだ?え、まって、誰に嫁ぐの?
そんなの、柱間は確かうずまき一族の人と結婚するのだ。ならば、残っているのなんて、たった一人。
イドラはちらりと、己の頭上を見上げた。そこには絶対零度の眼で自分を見下ろす扉間がいた。
(む、無理無理無理無理!!!)
待って、結婚話が出てる方、くっそ切れてるんですが?いいですねえなんて言った日にはこの場で飛雷神斬りされるのではないだろうか?
「でも、わたし、うちはで。」
「・・・それならば、イドラ殿と扉間の婚姻を、二つの氏族の和解の証にすればいい。」
「柱間!」
柱間の勝手な一言に、イズナが噛みつくように叫ぶ声がした。それに被さるようにうちはの人間からも野次が飛ぶ。それに答えるように千手もざわつき始める。
そんな中、イドラは頭にはてなを浮かべながら、それでも柱間の言葉をかみ砕いた。
(結婚?この、めっさ怖い人と?いやあ、あ、でも浮気とかはしなさそうですね!?その前にちゃんとした婚姻生活送れるんでしょうか?)
頭をぐるぐるさせていた。そんな中で、ふと、思い立つ。
(もしかして、今、すっごいターニングポイントにいるのでは?)
うちはと千手が和解したのは、イズナが死に、一族ももう滅ぶんじゃねというぐらいにズタボロになってのことだ。そうして、兄弟全てを失った兄は狂った。
ならば、今、イズナも自分も生きてる今。うちはもそこまで没落しかけていない今。
今なら、まだ、取り返しが付くのでは?
イドラは、泣きじゃくり掠れた声で、鼻水でぐちゃぐちゃの顔で、それでも、口を開いて、柱間を見た。
きっと、違う言葉を吐こうとした。けれど、自分の口から出たのは。
「もう、こどもの、おそうしきを、しなくてよくなりますか?」
それは、泣きすぎてかすかすで、ささやかな声で。でも、確実に、その場にいた人間に聞こえた。
その、血反吐を吐くような、声音に二つの氏族は黙り込んだ。
それは、そうだろう。
その言葉は、今まで散々、葬式を取り仕切ってきた女の血反吐を吐くようなそれで。
(ああ、そうだ。)
今は、前世と言える何かを思い出したせいでそちらに寄ってしまっているけれど、その言葉は己自身が抱え続けた思いだった。
口から、ぼたぼたと、言葉が、吐き出される。
小さな棺桶を用意しなくていいですか?
増えた墓を数えなくて良いですか?
母と父の嘆きを聞かなくて良いですか?
大人になった彼らを夢想して、空しくなることは減りますか?
「にいさまに、もう、ぜんぶ、せおわせなくて、いいですか?」
それは、イドラという女が吐瀉物のように吐き出した、誰にも言えなかった、むき出しの本音だ。
それに、何も言えなくなった。うちはも、千手も、何も言えなくなった。
幼い子どもを見送る気持ちも、増えた墓を数えるのも、彼らは同じぐらいに知っていたから。
だから、一人、むき出しの女の本音は何か、野次を噤ませるものがあった。
イズナさえも、女のその言葉に、家族であるからこそ、むき出しにされた言葉に黙り込んだ。
自分の、うちはとして、戦い続ける意思が姉をずっと苦しめていたという事実。
「・・・・そうだなあ。葬式は、あげたくないなあ。」
柱間の、思わず漏らしたというそれにイドラは頷いた。
「します!結婚します!扉間様と結婚します!」
「よし、ならば、決まりだな!マダラよ、どうだ?ワシは、お前の妹君を殺したくない。」
「・・・それは。」
マダラはどうしたものかと悩む。その時。
「いい加減にしろ。」
地獄の底から聞こえてくるような、怒り狂った声がした。その方向には、青筋を立てた扉間がいた。
「いい加減にしろ!兄者!何を良い雰囲気を出して勝手に話を進めておる!ワシとこれはまったくと言っていいほど関係はない!」
それに千手とうちはの人間の心が一つになる。
は?今更責任逃れする気か?
一世一代といえる心を一つにするのが頭領の弟の女がらみだ。最悪だ。
「「「とびらまあ!!!」」」
たぶん、これが最後であろう、イズナとマダラと柱間のそろった声に扉間はたじろいた。けれど、ゆらぐこと無く言い返す。これを逃せば自分はものすごい不名誉を被ることになる。それだけはさすがに避けたかった。
非道だとか、そう言った評価をされるのは構わない。己自身忍だ。それぐらいの覚悟はある。けれど、まさか、情報を引き出すとか理由も無く、ただ、ただ、女を孕ませて責任逃れをしたなんて称号はごめん被りたかった。
「言うが、兄者!ワシが情報を引き出すだとか、そんな理由も無く女に近づくと!?大体、うちはの女なんて存在にワシが手を出すほど愚か者か!?」
その言葉に千手の中で、確かにと同意が入る。
あの扉間がそんなリスクのあることをするだろうか?いいや、というか、扉間ほどの男が避妊に失敗するのか?
そんな疑問が広がる。その風向きに、扉間は今のうちにとたたみかけようとした。けれど、腰に張り付いていたそれがまた泣きじゃくる。
「う、うええええええ。ごめんなさい!あ、あの、川魚取ってきて、火遁で焼きますから!」
誤解が頂点に達したことを含めて、扉間が怒る。イドラは扉間のそれにびびりながら、なんとか機嫌を取ろうと彼の好物を口にした。
それに、千手の中でどよめきが起こる。
千手柱間の好物はそこそこ知られている。彼の趣味や、なによりも頭領への機嫌取りによく知られた情報として出回っている。
けれど、扉間は違う。
元々、個人的な趣味嗜好などは足を掬われる原因になると明かすこともないし、釣りが好きと言われているが川魚自体が好物であると知るものは少ない。
魚が好きであると知っているものはいても、川魚と限定で知っているものは一族ぐらいで外部には出回っていないはずだ。
なのに、彼女はそれを知っている?
そんなどよめきの中、柱間は思わず口元を手で覆っていた。
(と、扉間!お主、そこまで彼女のことを!)
扉間の兄である柱間は弟がイドラに好物まで教えていた事実に、彼女を本当の意味で好きではないのかという思考に至る。彼が最も嫌う、個人的な弱点になり得るそれを、わざわざ教えていたのだ。
扉間もまた目を見開いた。何故、一族でも知るものが少ないその事実を知っているのか。
「貴様!どこでそれを!?」
それにイドラも慌てた。確かに何故、自分が扉間の好物を知っているのだ?
それにイドラは慌てた。慌てて、有る事無い事口走る。
「え、えっと!言ってなかったんですが、私は狐うどんが好きです!」
「聞いとらん!」
二人の言い合い、そうして、千手のざわつきにうちはも今の状況を悟る。
そうして、その場にいた人間にとある考えが閃いた。
今まで散々にイドラとの関係を否定してきた扉間。もしかすれば、この男はイドラを庇っているのではないか?
千手のNo.2というべき扉間とうちはの頭領の妹であるイドラの関係は不祥事以外の何ものでもない。それゆえに、イドラの言葉を否定することで、彼女の乱心を示し、せめて命だけは助けようとしたのではないか?
が、子が流れたイドラはそんなことまで頭が回るような精神でない。
何よりも、イドラの発言からして、扉間は彼女の好物さえも知らなかったのでは?
(だ、だというのなら、惚れているのは扉間?)
扉間が自ら好物を教えて、そこまで庇い立てているというなら、もうそれはベタ惚れと言っていいのでは?
最低最悪な勘違いである。
「…扉間様が避妊に失敗するとかあり得るか?」
千手の人間の呟きに、柱間の中で繋がってしまった。
そうだ、扉間が避妊に失敗するなんてあり得ない。つまりは、だ。
(子供ができてくれれば、そこまで思い詰めていたのか!?)
柱間は弟の純愛に頬を赤めてはわわしていた。
扉間が聞いていればその顔面にコークスクリューを決めていただろう考えに柱間は至っていた。
そうして、周りの人間もそれと同じような考えに至っていたし、扉間だって、周りがどんな考えに至ったのか容易く理解できた。
わかっていないのは当事者だけである。
もう、小説書こうぜというレベルの妄想なのだが、完全に多方面でピースが揃ってしまった。
扉間はなんとかその場を切り抜けようとしたが、全てが遅い。いつのまにか、目の前に立っていたマダラが扉間の肩に手を置いた。
「そこまで、イドラを思っていたのか。」
「ち、違っ!」
「うちはマダラは、うちはイドラと千手扉間の婚姻を認める!そうして。」
くるりと柱間を見た。
「この婚姻を機に、うちはは千手との融和を受け入れる!」
それに一族のうおおおおお!という歓声が広がった。もう、今までの因縁だとか関係なく、あの扉間の純愛を前に叫んでいた。
それに崩れ落ちていたのは、イズナとそうして。
「あ、あの、扉間様。」
話の中心でありながら全てから置いてけぼりにされた扉間だけだった。
Qここで誰よりも得してるのは?
A柱間さま