「全てを話せば当然、有罪となっていたでしょう」不起訴になった大物地面師が55億円詐欺「積水ハウス事件」の裏側を告白 浮かび上がった“本当の黒幕”の存在
しかし、北田も事件後、自宅とは別に借りていたマンションに隠した現金を何者かに奪われたという。 「7000万円ほど入った金庫ごと持ってかれました。犯人は大体、察しがついています(笑)」 北田は“身内”の誰かの犯行だと言いたげな様子だった。金の奪い合いが事件後も起きていたとすれば驚きである。 話題が今年6月、大阪・ミナミで起きた被害総額14億円の地面師事件の話におよぶと、北田は地面師たちの狙いに西も東も関係ないのだと言う。 「基本的に人が考えたシステムは人が破れる。したがって、今後も同じような事件は起こるでしょう。私はいつもクラブで女の子と笑いながら、頭の中で『物理的ではなく法的に逃げるためのルートをゴールから探る詐欺』を考えていた」 そう笑う北田。今もまた新たな詐欺について思案しているのだろうか。そう水を向けると意外な言葉が返ってきた。 「詐欺はもういい。かつての集中力も思考力もないですし。それより世のために少しでも良いことをしたい。ただ、不動産に関わると悪い気を起こしちゃいそうなので不動産からは離れます。現在は行政書士の試験を受けるために勉強中です」 もちろん、虚々実々の駆け引きをしてきた地面師の言葉を額面通りに受け取ることはできない。何より、最大の疑問は、“なぜ今になって自らが事件に関与したと明かす気になったのか”だ。それを尋ねても、「河合さんの取材に微力でも役立てればと思って」などと返ってくるだけで、納得のいく答えは得られない。 北田が本当に積水事件で他の犯人たちを操ったのであれば、今回の告白にも何らかの目的があり、記者である私を操ろうとする意図があると考えたほうが自然かもしれない。そうした疑心暗鬼にも苛まれる。それでも、多くの謎が残された事件の当事者の言葉を報じることには意味があるのではないか。北田の告白の意図も含めて、取材を続けなければならない。 【プロフィール】 河合桃子(かわい・ももこ)/1977年、東京都生まれ。ライター。事件取材のほか社会の性風俗に関する最先端を取材してきた。 ※週刊ポスト2025年8月15・22日号
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