激辛ポテトチップで14人の生徒が救急搬送 生徒の症状とその理由は
去年7月、都内のある高校に何台もの救急車が殺到。中には大規模災害などで出動する特殊な救急車もあった。実は14人もの生徒があるものを食べて救急搬送されたのだ。
男子生徒の1人が激辛の粉がたっぷりとふりかけられた激辛のポテトチップを持ってきていた。
そのポテトチップには、ブートジョロキアと呼ばれる唐辛子の一種の粉がたっぷりと使われており、「18歳未満の方は食べないでください」という注意書きが大きく書かれていた。この激辛ポテトチップには多くの人気YouTuberたちが挑戦し、悶絶するほどの辛さが話題となっていたのだ。
男子生徒が食べると悶絶。たった1枚でも、口の中が焼けるような痛みだった。しかし、この悶絶っぷりにどれほど激辛なのかと逆に志願者が続出。女子生徒も挑戦し、その後も次々と挑戦者が。結局33人の生徒で1袋を食べ切った。
ポテトチップを食べて3時間後、次々と生徒に異変が。意識がフラフラになる生徒が現れ、多くの生徒が頭痛や吐き気を訴え始めた。
保健室は体調不良を訴える生徒で溢れかえり、その数10人以上。この事態に、学校は119番通報。
ポテトチップを食べた33人のうち14人もの生徒が病院に救急搬送され、その連絡は搬送先の病院にいた谷川智之医師のもとにも届いた。
谷川医師はまず生徒たちが食べたものの成分を確認。すると、唐辛子などに含まれるカプサイシンと呼ばれる辛味成分が含まれていた。カプサイシンは摂取しすぎると、胃や腸の粘膜を刺激して炎症を起こすことがある。その結果、食べてから1時間以内に腹痛などの症状を引き起こすとされる。
しかし、搬送された生徒の中には意識が混濁としている生徒もいた。その女子生徒はたった一枚食べただけだったが、一体なぜこんなことに?
迷走神経反射という、辛い物などの刺激に対して身体が過剰に反応すると、多くは15分以内に血圧が急激に低下してめまいや失神を引き起こすことがある。
その生徒も辛さで急激な血圧低下を起こしたと思っていたが、生徒たちがポテトチップを食べたのは3時間も前。つまり、彼女の症状は迷走神経反射によるものではない。
実際に生徒の診察を行った谷川医師は「カプサイシンが吸収されたことで、カプサイシン中毒になったんだと思います」と語った。
カプサイシンは感覚神経を刺激する他、胃や腸から吸収されると交感神経を刺激して、副腎からアドレナリンが分泌される。
適量であれば疲労回復や食欲増進などの効果があり問題はないが、大量に吸収されると、アドレナリンが過剰に分泌され頭痛、冷や汗、めまいなどを引き起こすことがあるという。そのため、心臓に疾患のある人や血圧の高い人は、心臓へ過度の負担がかかる恐れがあり、注意が必要とされる。
谷川医師は「お子さんの場合自律神経の発達が途上にあるため、大人よりも反応が強く出てしまったかもしれません」と語った。高校生は身体が未発達なため、大人よりもカプサイシンに対して過剰に反応したと考えられるという。
吸収されてしまったカプサイシンは、強制的に取り除くことはできず、自然と体外へ出るまで待つしかない。女子生徒はその後、症状は改善。他の生徒たちもその日のうちに回復した。
実はこの5年前にも、長野県の高校の文化祭で激辛のものを食べて救急搬送された事態が起きていた。生徒たちが、6人中4人が激辛ソースに当たるというロシアンルーレットを実施。6つのトマトジュースのうち、4つに激辛ソースを入れていたのだ。
激辛ソースの入ったトマトジュースを飲んだ学生12人のうち9人が腹痛や嘔吐を訴え救急搬送。回復はしたものの、5人が入院する事態となっていた。
激辛ブームの今、辛いものを口にする機会は少なくないが、もし異常な辛さを感じた場合は、水よりも、牛乳やヨーグルトなどを摂取すると辛さを和らげることができるという。特に若い人はご注意を。
