検 索 無料配信 番組表

ザ!世界仰天ニュース

毎週火曜 よる9時00分~9時54分 放送

口から果物が腐ったような臭いが…医師が疑った症状は

2025.07.22 公開

2007年8月、沖縄県名護市の病院に40代の男性が風邪の症状で診察を受けにやってきた。「2週間前ぐらいから風邪っぽくて、食欲もあまりなくて。喉も渇くんです。体を動かすのも辛くて」という。

大濱俊彦医師は「夏バテによる脱水症状かもしれませんね。点滴をしましょう」と判断したが、その時ある事に気が付く。男性の口からまるで果物が腐ったような甘酸っぱい臭いがしていた。大濱医師は「採血をさせてください」と提案。甘酸っぱい匂いからある症状を疑ったのだ。

採血後、看護師から「血糖値の数値が異常に高いです」と報告があった。健康な男性の血糖値は100前後だが、この男性は1150と平均の約10倍以上だった。

血糖値とは、血液中に含まれているブドウ糖の濃度を表している。健康な人と比べ10倍以上も高いというのは、つまり血液中に糖分が溢れた状態。血管に負担がかかり、体のバランスが崩れ、放置すると命に関わる。

大濱医師は「糖尿病かもしれないからすぐにインスリンの準備を」と指示。人は食事から得た糖をエネルギーにして活動しており、その糖を体内へ取り込む役割をしているのが膵臓から分泌されるインスリン。糖尿病になるとインスリンが働かなくなり、糖をエネルギーとして利用することが困難になる。

「肥満体型だったから、2型の可能性が高い」と考える大濱医師。糖尿病は1型と2型で原因が全く異なり、90%以上を占めるのが2型糖尿病で、その主な原因は食べ物や運動不足などの生活習慣と言われている。

しかし、血中のケトン体の量を示す数値も平均の10倍だった。ケトン体とは血液中の糖をエネルギーに変えられない時に、生命を保つため脂肪を分解してできるエネルギー。2型糖尿病の場合、ここまでケトン体の量が増えることは考えにくいという。

大濱医師は「あの時の臭いもこれが原因だったのか」と判断。ケトン体が増えると口臭や尿から甘酸っぱい匂いが出ることがあったのだ。

こういった状況から、1型糖尿病の可能性と診断。1型糖尿病は生活習慣ではなく、なんらかの原因で自己免疫細胞が膵臓を攻撃して破壊するため、インスリンの分泌ができなくなってしまう病気。これは生涯にわたりインスリンを使用しなければならない大変な病気で、男性はすぐにインスリンが投与され、そのまま入院することになった。

もしこのまま血糖値が順調に下がらない場合、何かの感染症を引き起こしている可能性があり、一刻を争う状況だった。

翌日、1000を超えていた男性の血糖値は半日で改善していた。さらに看護師から「昨日の検査結果なんですが、抗GAD抗体が陰性でした」との報告が。他にも検査結果に目を通すと、男性は1型糖尿病ではなかった。

となれば、この男性は一体何の病気なのか?それはある食べ物が原因だった。

大濱医師の頭によぎったのは、当時世の中ではあまり知られていなかったペットボトル症候群という病名。ペットボトル症候群とはここ数年注目されるようになった病気で、スポーツドリンクや甘い炭酸飲料などを大量に飲むことで血糖値が異常に高くなり、倦怠感や意識障害を引き起こす症状。

ペットボトル症候群を発症したケースとして、真夏の炎天下で会社のソフトボール大会に参加していた男性の例がある。熱中症対策のためスポーツドリンクをガブ飲みしていたところ、その夜喉が渇きスポーツドリンクを飲み続け、1日で8リットル飲んだ。その後も体がだるく数日間スポーツドリンクを飲み続けていると、急性の糖尿病を発症、意識を失い病院に救急搬送。この男性は事なきを得たが意識がない状態が2日間も続いた。

このようなペットボトル症候群は最近では耳にすることが増えたが、大濱医師がこの患者を診た2007年はまだほとんど知られていなかった。

すぐに男性患者に「何か甘い飲料など飲んでますか?」と確認すると、男性は「水かお茶くらいですかね」と答えた。そこで「最近は何か甘いものを食べたりしてませんか?」と聞くと、男性は「みかんの缶詰を食べてました」と答えた。「2週間くらい前から、毎日です」という。

実はこの男性は風邪気味で食欲がなかったので、何か栄養を摂らなければと思い、大好物のみかんの缶詰とキンキンに冷えたアイスクリームを食べていた。

食欲がなくてもこれなら食べられるとバクバク食べ、さらにシロップも飲み干していた。これを朝昼晩の3食、しかも2週間続けていた。大濱医師はこれが原因だと確信した。

大濱医師によると「みかんのシロップにも糖分がかなり含まれている。大量に長い期間摂取してしまったサイクルが、悪い状態を起こしてしまったと考えられます」とのこと。

みかんの缶詰は長期で保存するため、高濃度の糖分が入ったシロップに漬けられていることが多い。今回番組でも実験を行うと、みかんの缶詰のシロップにはスポーツドリンクの3倍近くの糖分が入っているとわかった。

この高濃度のシロップを過剰に摂取したことで、ペットボトル症候群を発症した男性。インスリン治療を施し約1週間の入院となったが、半年後にはインスリン治療がなくても血糖値のコントロールができるようになったという。

熱中症予防のため、炎天下にスポーツドリンクなどを飲むことが多いが、過剰な飲み過ぎには注意が必要だ。

この記事を
シェアする

TVer 視聴ランキング(日テレ)

2025年8月6日 時点

※TVer内の画面表示と異なる場合があります。

おすすめ記事
©Nippon Television Network Corporation