およそ30年まえ。

俳優を志した19歳の頃のわたくしを思い出してみます。


大谷翔平選手の目標ノートほど立派なもんじゃありませんが、わたくしもいろんな目標やビジョンを掲げてました。


まずは、たくさんの舞台経験をする。そこで演技の基礎を固め、度胸をつける。とにかく鍛えてもらいながら、そのつど必ず人脈を自分で作る。いろんな演出家に出会って揉まれる、もうグッチャグチャ。それぞれの言ってくれることの整合性が間に合わない。だから、こんちくしょー、と思いつつ、しっかりした台本の読み方を教わる、

ありがとうございます。

日本舞踊の稽古はマスト。爺ちゃんに影響されて大好きになった時代劇にいつか出るため。

一度ご一緒になった監督や演出家にまた声をかけてもらえるように努める。どうすればそうしてくれるか、答えはないが考え続ける。うまくいかないこともあるが挫けない。

徐々に仕事が軌道にのっていき30歳になる頃にはアルバイトしないでも生活できるようにする。

ドラマや映画の仕事もどんどん挑戦していく。その時注意するのは演劇の演技をそのまま持ち込まない。


大河ドラマや朝ドラなどの国民的なドラマに出演する。ここでのキャリアもこつこつ積んで、いつか朝ドラヒロインのお父さん役ができるくらいの俳優になる。


とまぁお恥ずかしいですけど、情熱だけの青臭い勢い&したたかさの両眼でたくさん目標を掲げて、脳内では現実と理想の狭間でモヤモヤしたりイライラしたりドキドキしたりしてました。ちなみに今でもイライラしてます、たぶんずっと。


そしてこのだび、50歳の節目に朝ドラのヒロインのお父さん役を挑戦させていただくことになりました。

嬉しくもあり、そしてなんだかホッとした心持ちでもありましたが、油断せず浮足立たず、米田聖人という人物が何者なのかを考えながら楽しく演じさせてもらいました。

今回朝ドラで、こんなにも長い期間に同じ役を演じてきたからでしょうか、物語の中盤以降では時折聖人が降りてくるような瞬間がありました。その思いもよらない心の機微や衝動をしっかり掴みつつ、『聖人、おまえそんなに辛かったんだな…、おー、よしよし』と僕が聖人を慰めたり、励ましたり、…なんだか言葉で説明しづらい状況ですが、僕と聖人は大親友になってました。

こういう現象がたまにあるんです、

役の愛着が溢れると。

その感触に触れることができたことが、とにかくよかったなぁと今は静かに思っております。

こんな素敵な心持ちをさせていただいた、スタッフ・キャストの皆様に感謝致しております。


そしてあらためて、


朝ドラ『おむすび』をご覧くださった方々に心から御礼申し上げます。


本当にありがとうございました。


有起哉拝

AD