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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

新外相に会う

2010-03-19 | Weblog
今回、第二次ソロ内閣において、何人も新顔が入閣した。大使としてはもちろん、どういう人が外相になるのかに、最も大きな関心があった。バカヨコ前外相は、選挙管理委員長に転出したので、外相ポストが空席になっていたのである。

新しく外相に任命されたのは、カク・ジェルベ氏(Jean-Marie Kacou Gervais)であった。カク・ジェルベ外相は、71歳。職業外交官出身で、アンゴラ大使(1982-92年)、国連代表部大使(1992-96年)、フランス大使(1997-2000年)を歴任していた。そして、彼の履歴を調べて、私は少なからず興奮を覚えた。今を去る40年前、東京に在勤、となっていた。そして彼は、当時、臨時代理大使として、東京にコートジボワール大使館を開設した、立役者だったのである。新しい外相には、日本に特別の思いがあるはずだ。

私は、早速カク・ジェルベ外相と会っておこうと考えた。表敬訪問を申し込んだら、すぐに返事が来た。翌日に会いましょうという。それでさっそく、私は外務省にでかけた。執務室に通されると、外相は手を広げて私を迎えてくれた。握手して、応接椅子に座る。

「いやあ、久しぶりのアビジャン生活で、喉をやられましてね。」
いきなり、喉の話ですか。どうしました、風邪ですか。
「引退してずっとこのかた、農園に引っ込んで、農夫をやっていたんですよ。稲作とか、養魚場をやったり、ゴム農園も作っています。それで、きれいな田舎の空気に馴染んでいたもんですから。アビジャンの空気はずいぶん違います。」
違うのは空気だけでないはずだ。農夫から外相とは、生活の変化もさぞかし大変だろう。それにしても、のっけから農園の話題で、ずいぶん気さくな人である。

「それで、先週は準備でばたばたしていたので、今週からやっとまともに、外相としての仕事を始めたようなものです。在アビジャンの各国大使の方の表敬訪問を受けるのは、日本大使が初めてです。」
そうでしたか。それは大変光栄です。日本への特別のご配慮であると受け取ります。そう言って、私から、改めて外相就任の祝辞を述べ、日本と関係の深い方が外相に就任されるとは大変嬉しい、と話す。

「そうそう、私は日本には思い入れが深いですよ。1969年に、私が大使館を開設したのです。3年にわたって、北沢に住みました。いい所でしたね。楽しい思い出ばかりです。日本はコートジボワールに対し大変多くのことをしてくれました。1999年まで日本からの経済協力は拡大の一途だったのですが、危機が発生してそれは失われました。それでも、日本は引き続き様々な有益な協力をしてくれています。改めて、感謝を申し上げます。」

私は、日本との二国間関係について説明する。コートジボワールが大統領選挙を終え、危機脱出を果たすことを心待ちにしてきた。それがなかなか実現しないので、私としても日本との関係増進に、とても困難を感じている。経済協力も貿易投資も、本格的に再開する目処が立たない。日本から閣僚などを呼ぶこともできない。できるだけ早く大統領選挙を行うことを期待している、と述べる。

「コートジボワールは、大統領選挙を実施して、とにかくまず信頼を回復しなければならない。そのことは、十分心得ています。暫定的な政府のままでは、国際社会に相手にされません。国際社会からの信頼があってこそ、開発を進め、建設を進めることが可能になります。だから、大統領選挙をまずきちんと行う必要があるというお言葉は、まったくそのとおりです。」
外相も、大統領選挙が行われないと、本格的に二国間外交が出来ないことを認めている。

私は、外相として仕事を始められるにあたって、一つ考えてみていただきたいことがある、と述べる。日本は先進国でありながら、欧米ではなく、アジアである。アフリカ諸国とは、そういう立場から一緒に考えられることがあるのではないか。特に、国際社会がかかえるいろいろな課題に、日本とコートジボワールとで、共同して取り組めるものがあるのではないか。今日はご挨拶にだけお伺いしたけれど、次にお会いするときは、そういう問題について、二人で一緒によく話し合ってみたい。

カク・ジェルベ外相は、それは重要な問題提起である、と応じた。
「国際的な問題の中で、両国が手を携えることができる課題が、たくさんあり得るというのは、まったくそのとおりです。私は、以前に国連大使をしていたので、日本と様々な場面で協力できたことを覚えています。日本は、国連安全保障理事会に入るべき国だということは、私の確信でもあります。だから、国連大使の当時、日本の安保理入りを一貫して支持しました。それから、今やアジアの力は重要で、コートジボワールとして、アジアとの連携を強化していきたいと考えています。」

さすがにベテラン外交官である。いろいろな論点に、打てば響く答えが返ってくる。日本とコートジボワールが、一緒に協力して取り組める課題がある、と偉そうに言ったけれど、私自身もどういう課題があり得るかまだ模索しているところだ。だから、知識と経験の豊かな外相を迎えて、そういう課題を一緒に探していけるのではないか。ある予感を得て、私は外務省をあとにした。

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