3月4日に投票が行われた、トーゴの大統領選挙で、ニヤシンベ現大統領が、60%超の約124万票を獲得して再選された。6日、選挙管理委員会がそう発表した。得票数は、次のとおりである。
(当選)フォール・ニヤシンベ候補(トーゴ人民連合(RPT)): 1,243,044票
(次点)ジャン・ピエール・ファーブル候補(変革への結束党(UFC)): 692,584票
(3位)ヤオヴィ・アボイボ候補(革新行動委員会(CAR)): 60,388票
投票率は64%強だったという。村落などで交通にも不便がある地域があることを勘案すれば、ほぼ満足できる参加率であったといえるだろう。少なくとも、野党側による選挙のボイコットはなかった。この選挙結果は、これから3日間の異議申し立て期間を経て、さらに憲法院の8日間の審査を得て、3月半ばには正式な選挙結果であると認定されることとなる。
トーゴの大統領選挙では、誰が当選するか、ということは勿論ながら、果たして平穏無事に選挙が行われるだろうか、ということがもっと重要である。2005年に行われた選挙では、選挙結果を不満とする野党側の示威行動と、警察部隊とが衝突を起こし、多くの死者が出る騒ぎになった。国連の推定で3百人から4百人が死亡したという。そして、この事件が再び南北対立と暴力の連鎖を呼ぶことを恐れた人々が、大挙して国外に逃げるという余波を生んだ。そういう先例があるから、今回も再びそういう騒動になるか、心配をしてきた。もちろん、すでに2007年には国民議会選挙を、これは極めて平穏無事に行っている。選挙というと必ず荒れるというわけではない。とはいえ、今回は大統領選挙である。人々の思い入れは大きく異なるだろう。
まず、選挙戦の期間は、実に静かであった。この静けさは、野党の「変革への結束党(UFC)」で、ジルクリスト・オランピオ党首が立候補できず、内部で立候補者をめぐって混乱があったことにも起因していたかもしれない。ともかく、暴力沙汰はなかった。さて、投票日当日は、これも秩序立って特に大きな混乱もなく、投票が進んだ。テレビの放送で見ていると、野党のファーブル候補も、にこやかに笑みを浮かべながら投票している風景が映っていた。今回の選挙には、野党も堂々と参加しているのだ。
投票が終了した直後、全く開票が始まっていないのに、ファーブル候補が「勝利宣言」をした。こういうことはよくない。野党がこの宣言で盛り上がると危険だ。敗北の結果が出てしまったときに、落胆のあまり不満が爆発して混乱が起こりかねない。無責任な発言だと感じる。2005年の選挙で多くの死傷者が出たのも、野党候補が「不正選挙」を理由に結果を受け入れず、支持者に「決起」を呼びかけたことがきっかけとなっている。
そして2日後の3月6日に投票結果の発表。ファーブル候補は、ニヤシンベ候補に、半分ちかくの差をつけられて敗北している。これで、街々で乱闘騒ぎが起こるのだろうか。トーゴは兼轄国なので、私自身が現地にいるわけではない。情報は限られているだけに、聞き耳をしっかり立てておかないと、事態の進展に対応が遅れかねない。通信社の送ってくる情報や、フランス系の海外放送を丹念に追う。そして、現地に予め作ってある情報提供者から伝えてくる情報は、たいへん頼りになる。そうした情報源を追って、現地に大きな混乱が起こらないか、注意深く監視する。
大統領選挙には、欧州連合(EU)から選挙監視団が行っている。大統領選挙が、民主的かつ公正に行われたかどうかを、第三者の立場から検証する、という役目である。その欧州選挙監視団が、3月6日の投票結果発表の直後、早速に暫定的な報告を発表した。それによると、今回の選挙には、「不規則な点があった」というのだ。
「ニヤシンベ陣営は、自分の選挙活動に、役所などの公的機関や、国家公務員を事実上動員した。」
「ニヤシンベ陣営は、国営放送の放送時間の96%を独占し、野党候補には意見表明の機会を与えなかった。メディアの公平性を監視する役割の当局も、これを黙認した。」
「ニヤシンベ陣営は、市場価格の3分の1から4分の1の値段で米を販売し、これをニヤシンベ米と宣伝した。」
それはそれ、叩けば埃も出よう。でもこの時点で、当選した候補の不正行為を示唆することは、落選した陣営を徒に怒らせて、選挙結果の受け入れに支障を来たすかもしれないではないか。悪くすれば、野党のデモを勢い付かせて、大きな衝突を導くかもしれない。民主選挙の手順が守られているか否かは確かに大切だろうけれど、ヨーロッパと同じ厳格な尺度をあてはめたら、このアフリカでは問題ばかりが浮き上がる。ここで大切なのは、まがりなりに民主選挙が行われ、その結果を国民全体が平穏のうちに受け入れることであろう。ヨーロッパの潔癖主義は、小さな綻びを見つけて増幅し、往々にして「角を矯めて牛を殺す」結果を生む。
と思っていたら、アフリカ連合(AU)が声明を出した。アフリカ連合も、同じく選挙監視団を出していたのである。
「ニヤシンベ大統領が当選したことを、アフリカ連合も確認する。落選した候補の陣営は、平静に選挙結果を受け入れるように。」
そう、これが大切なのだ。さすがアフリカは、アフリカのことが分かっている。欧州の代表団も、まずこれを言うべきだった。選挙結果はまず受け入れなさい、その上で民主選挙としての逸脱を問題にしよう。
私の心配を裏付けるかのように、野党陣営は熱くなってきた。選挙に不正があった、選挙結果は不満であるとして、3月9日に決起行動をとることを呼びかけた。人々に街に出て、政府に抵抗するように、と。2005年のときと、同じ展開だ。この決起行動が、警官隊との衝突などを招いたら、流血の事態など、騒ぎが拡大する可能性がある。私の心配は、政府側が、この街頭行動は違法であり、警察により排除すると宣言したのを聞いて、ますます募った。衝突は必至である。私は当日、一日、じっと見守った。混乱と暴力の様子がテレビに放映されるのだろうか。
ところが3月9日、ロメ市内でも、街頭行動に出た人は少なかった。約400人ほどの若者が繰り出し、警官隊は棍棒を振り回して彼らを追い払った、と報道されただけである。それ以上の大きな騒動には繋がらなかった。多少の不正があったとしても、倍近い得票の開きでは、勝ち負けははっきりしている。さすがに野党も、民衆の示威に訴えて政権を取ろうなどとは考えなかったようである。
それで、私は胸をなでおろした。このあと、憲法院による異議申し立ての審議を経て、正式の選挙結果が発表される。そうなれば、ニヤシンベ大統領は、順当な手続きを経て再選を決めた大統領となるだろう。これで、昨年以来の日・トーゴ関係の蓄積を継承できる。それより何より、トーゴは民主選挙で政権を選ぶ国であることを、内外に証明した。それはトーゴへの評価を、民主主義の定着した国として、決定的に高めるだろう。さらに、必ずしも政治が安定を見せない西アフリカにおいて、大変勇気付けられる成果でもある。私は早速、ニヤシンベ大統領への祝意表明を検討し始めた。
(当選)フォール・ニヤシンベ候補(トーゴ人民連合(RPT)): 1,243,044票
(次点)ジャン・ピエール・ファーブル候補(変革への結束党(UFC)): 692,584票
(3位)ヤオヴィ・アボイボ候補(革新行動委員会(CAR)): 60,388票
投票率は64%強だったという。村落などで交通にも不便がある地域があることを勘案すれば、ほぼ満足できる参加率であったといえるだろう。少なくとも、野党側による選挙のボイコットはなかった。この選挙結果は、これから3日間の異議申し立て期間を経て、さらに憲法院の8日間の審査を得て、3月半ばには正式な選挙結果であると認定されることとなる。
トーゴの大統領選挙では、誰が当選するか、ということは勿論ながら、果たして平穏無事に選挙が行われるだろうか、ということがもっと重要である。2005年に行われた選挙では、選挙結果を不満とする野党側の示威行動と、警察部隊とが衝突を起こし、多くの死者が出る騒ぎになった。国連の推定で3百人から4百人が死亡したという。そして、この事件が再び南北対立と暴力の連鎖を呼ぶことを恐れた人々が、大挙して国外に逃げるという余波を生んだ。そういう先例があるから、今回も再びそういう騒動になるか、心配をしてきた。もちろん、すでに2007年には国民議会選挙を、これは極めて平穏無事に行っている。選挙というと必ず荒れるというわけではない。とはいえ、今回は大統領選挙である。人々の思い入れは大きく異なるだろう。
まず、選挙戦の期間は、実に静かであった。この静けさは、野党の「変革への結束党(UFC)」で、ジルクリスト・オランピオ党首が立候補できず、内部で立候補者をめぐって混乱があったことにも起因していたかもしれない。ともかく、暴力沙汰はなかった。さて、投票日当日は、これも秩序立って特に大きな混乱もなく、投票が進んだ。テレビの放送で見ていると、野党のファーブル候補も、にこやかに笑みを浮かべながら投票している風景が映っていた。今回の選挙には、野党も堂々と参加しているのだ。
投票が終了した直後、全く開票が始まっていないのに、ファーブル候補が「勝利宣言」をした。こういうことはよくない。野党がこの宣言で盛り上がると危険だ。敗北の結果が出てしまったときに、落胆のあまり不満が爆発して混乱が起こりかねない。無責任な発言だと感じる。2005年の選挙で多くの死傷者が出たのも、野党候補が「不正選挙」を理由に結果を受け入れず、支持者に「決起」を呼びかけたことがきっかけとなっている。
そして2日後の3月6日に投票結果の発表。ファーブル候補は、ニヤシンベ候補に、半分ちかくの差をつけられて敗北している。これで、街々で乱闘騒ぎが起こるのだろうか。トーゴは兼轄国なので、私自身が現地にいるわけではない。情報は限られているだけに、聞き耳をしっかり立てておかないと、事態の進展に対応が遅れかねない。通信社の送ってくる情報や、フランス系の海外放送を丹念に追う。そして、現地に予め作ってある情報提供者から伝えてくる情報は、たいへん頼りになる。そうした情報源を追って、現地に大きな混乱が起こらないか、注意深く監視する。
大統領選挙には、欧州連合(EU)から選挙監視団が行っている。大統領選挙が、民主的かつ公正に行われたかどうかを、第三者の立場から検証する、という役目である。その欧州選挙監視団が、3月6日の投票結果発表の直後、早速に暫定的な報告を発表した。それによると、今回の選挙には、「不規則な点があった」というのだ。
「ニヤシンベ陣営は、自分の選挙活動に、役所などの公的機関や、国家公務員を事実上動員した。」
「ニヤシンベ陣営は、国営放送の放送時間の96%を独占し、野党候補には意見表明の機会を与えなかった。メディアの公平性を監視する役割の当局も、これを黙認した。」
「ニヤシンベ陣営は、市場価格の3分の1から4分の1の値段で米を販売し、これをニヤシンベ米と宣伝した。」
それはそれ、叩けば埃も出よう。でもこの時点で、当選した候補の不正行為を示唆することは、落選した陣営を徒に怒らせて、選挙結果の受け入れに支障を来たすかもしれないではないか。悪くすれば、野党のデモを勢い付かせて、大きな衝突を導くかもしれない。民主選挙の手順が守られているか否かは確かに大切だろうけれど、ヨーロッパと同じ厳格な尺度をあてはめたら、このアフリカでは問題ばかりが浮き上がる。ここで大切なのは、まがりなりに民主選挙が行われ、その結果を国民全体が平穏のうちに受け入れることであろう。ヨーロッパの潔癖主義は、小さな綻びを見つけて増幅し、往々にして「角を矯めて牛を殺す」結果を生む。
と思っていたら、アフリカ連合(AU)が声明を出した。アフリカ連合も、同じく選挙監視団を出していたのである。
「ニヤシンベ大統領が当選したことを、アフリカ連合も確認する。落選した候補の陣営は、平静に選挙結果を受け入れるように。」
そう、これが大切なのだ。さすがアフリカは、アフリカのことが分かっている。欧州の代表団も、まずこれを言うべきだった。選挙結果はまず受け入れなさい、その上で民主選挙としての逸脱を問題にしよう。
私の心配を裏付けるかのように、野党陣営は熱くなってきた。選挙に不正があった、選挙結果は不満であるとして、3月9日に決起行動をとることを呼びかけた。人々に街に出て、政府に抵抗するように、と。2005年のときと、同じ展開だ。この決起行動が、警官隊との衝突などを招いたら、流血の事態など、騒ぎが拡大する可能性がある。私の心配は、政府側が、この街頭行動は違法であり、警察により排除すると宣言したのを聞いて、ますます募った。衝突は必至である。私は当日、一日、じっと見守った。混乱と暴力の様子がテレビに放映されるのだろうか。
ところが3月9日、ロメ市内でも、街頭行動に出た人は少なかった。約400人ほどの若者が繰り出し、警官隊は棍棒を振り回して彼らを追い払った、と報道されただけである。それ以上の大きな騒動には繋がらなかった。多少の不正があったとしても、倍近い得票の開きでは、勝ち負けははっきりしている。さすがに野党も、民衆の示威に訴えて政権を取ろうなどとは考えなかったようである。
それで、私は胸をなでおろした。このあと、憲法院による異議申し立ての審議を経て、正式の選挙結果が発表される。そうなれば、ニヤシンベ大統領は、順当な手続きを経て再選を決めた大統領となるだろう。これで、昨年以来の日・トーゴ関係の蓄積を継承できる。それより何より、トーゴは民主選挙で政権を選ぶ国であることを、内外に証明した。それはトーゴへの評価を、民主主義の定着した国として、決定的に高めるだろう。さらに、必ずしも政治が安定を見せない西アフリカにおいて、大変勇気付けられる成果でもある。私は早速、ニヤシンベ大統領への祝意表明を検討し始めた。
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