国際交流基金は、全世界から、毎年おおぜいの中学・高校教員を日本に招待している。世界各国の中学・高校の先生方は、日本に来て、日本の文化社会についての講義を受け、また視察や体験旅行を通じて、知識や理解を深める。そして国に帰って、日本での見聞をもとにして、生徒たちに日本について語ってもらおう、そういう交流事業である。
アビジャンにあるサントマリ女子高校で教鞭をとる、ノノゴ先生とアンガマン先生の二人は、この国際交流基金の招待に応じて、昨年(2009年)の10月に日本を訪れた。それで、日本での3週間におよぶ研修期間を終えて、コートジボワールに戻ってきた。私は、両先生を公邸に昼食に招いて、研修の成果を訊ねた。
先生は二人とも、見ること聞くこと驚きばかりでした、と言う。何にびっくりしたのですか。
「掃除の時間です。」
掃除、ですか。
「そう、一日の授業が終わったら、生徒たちが当番を決めて、教室を毎日掃除する。自分たちで掃除をし、机と椅子を片付けてから、教室を閉めて帰宅する。これを見て、驚きましたね。」
何故そんなことに驚くのだろう。こちらの学校では、教室の掃除をしないのだろうか。
「身障者の学校を訪ねたのです。そうしたら、そこでもやはり、授業の後に掃除の時間でした。体が不自由でも、掃除はちゃんとしなければならない。感心しました。」
日本では、何もかも予定通りに行われる。事前に決まったことは、必ず実行される。
「ある学校視察の日に、なんと運悪く、関東に何十年に一度かの台風が来ました。これは当然中止だろうな、と思っていたら、雨風にもかかわらず、視察が予定通りに行われました。生徒は登校していなかったのですけれどね、先生方はみなさん揃って、私たちを迎えてくれたのです。とても感激しましたよ。」
人が集まると、知らない人同士でも自然に秩序ができる。
「店に行きますとね、勘定台の前に順番に並んでいるのです。みんなきちんと列を作って。それだけでなく、次のお客さんは、前のお客さんの勘定が済むまで、きっちり1.5メートル離れて待っている。どこの店に行ってもそうです。感心しました。」
学校ではクラブ活動があるのが、すばらしいという。
「放課後にスポーツや音楽を、生徒たちが一緒に力をあわせてやる。これは、チームワークを学ぶ、貴重な機会です。そして、そのスポーツや音楽の大会があって、学校対抗で競うでしょう。これもすばらしい。生徒たちは、相手を意識して自分の力を試す、ということを学びます。」
たしかにクラブ活動というのは、フランスでもなかった。フランス系の教育では、そもそも集団活動を学ぶ科目はない。
「こちらでは親たちは、自分の子供が卒業資格試験に合格するか、ということにしか関心がないのです。音楽やスポーツなど、時間の無駄と考えています。でもほんとうは、子供たちにとっては、チームワークや競争を学ぶことが、学校教育の中で一番大事なことなのです。」
地方旅行で、長野県の温泉旅館に宿泊した。研修ではじめて知り合った他の国の先生方と、3人1部屋だ、と言われた。
「生まれて初めてですよ。家族でもない人と、同じ部屋で寝るなんて。」
それは、さぞかし落ち着かないことで、ゆっくり寝られなかったでしょう。
「そう、寝られなかったですね。布団に3人転がって、話す話す、夜通しいろんな話をしました。他人と一緒に、ひとつの部屋で寝るというのが、あんなに面白いとは思いませんでした。」
先生方は、広島を訪れて、原爆平和記念館を視察した。熱線で融けた石を見て、絶句した。この街を襲った原子爆弾の悲劇に、言い知れぬ衝撃を受け、涙が出たという。それでも、今の広島は、日本で見た街のなかでは一番美しかった。
一人一人分かれて、日本の一般家庭に宿泊体験した。受け入れ先のご家庭との国際交流である。たいへんよく歓迎してもらい、楽しく充実した思い出になった。コートジボワールからのお土産を持っていくということで、いろいろ考えて、アチェケ(キャッサバ芋を加工した主食)とカカオの実を持参した。どちらももの珍しくて、皆見たことも聞いたこともなく、たいへん喜ばれたという。
それで、研修を総括して、日本についてどう思いましたか。
「木があって実がなる、ということです。」
その意味は。
「日本というと、自動車があり、電化製品があり、ハイテク産業があり、子供たちにはゲームがあり、そういう工業製品で見るじゃないですか。でも、それらは実の部分であって、ほんとうの日本は、そういう実を実らせる木のほうにある。」
どういう木ですか。
「それは第一に、規律です。社会の規則や道徳を守って行動することです。第二に、他人のことを考えることです。自分が行動するとき、常に他の人を意識することです。他の人への影響がないか考えたり、他の人との共同作業を考えたり。国民が皆、これを実践していることが、日本の真の強さです。」
先生方は、サントマリ女子高校で、日本での研修の成果を展示し、またもうすでに、授業で日本を語っているのだという。それはぜひとも、生徒たちに真の日本を教えてやってほしい。お二人を、サントマリ女子高校での日本大使に任命します、と私は言った。
アビジャンにあるサントマリ女子高校で教鞭をとる、ノノゴ先生とアンガマン先生の二人は、この国際交流基金の招待に応じて、昨年(2009年)の10月に日本を訪れた。それで、日本での3週間におよぶ研修期間を終えて、コートジボワールに戻ってきた。私は、両先生を公邸に昼食に招いて、研修の成果を訊ねた。
先生は二人とも、見ること聞くこと驚きばかりでした、と言う。何にびっくりしたのですか。
「掃除の時間です。」
掃除、ですか。
「そう、一日の授業が終わったら、生徒たちが当番を決めて、教室を毎日掃除する。自分たちで掃除をし、机と椅子を片付けてから、教室を閉めて帰宅する。これを見て、驚きましたね。」
何故そんなことに驚くのだろう。こちらの学校では、教室の掃除をしないのだろうか。
「身障者の学校を訪ねたのです。そうしたら、そこでもやはり、授業の後に掃除の時間でした。体が不自由でも、掃除はちゃんとしなければならない。感心しました。」
日本では、何もかも予定通りに行われる。事前に決まったことは、必ず実行される。
「ある学校視察の日に、なんと運悪く、関東に何十年に一度かの台風が来ました。これは当然中止だろうな、と思っていたら、雨風にもかかわらず、視察が予定通りに行われました。生徒は登校していなかったのですけれどね、先生方はみなさん揃って、私たちを迎えてくれたのです。とても感激しましたよ。」
人が集まると、知らない人同士でも自然に秩序ができる。
「店に行きますとね、勘定台の前に順番に並んでいるのです。みんなきちんと列を作って。それだけでなく、次のお客さんは、前のお客さんの勘定が済むまで、きっちり1.5メートル離れて待っている。どこの店に行ってもそうです。感心しました。」
学校ではクラブ活動があるのが、すばらしいという。
「放課後にスポーツや音楽を、生徒たちが一緒に力をあわせてやる。これは、チームワークを学ぶ、貴重な機会です。そして、そのスポーツや音楽の大会があって、学校対抗で競うでしょう。これもすばらしい。生徒たちは、相手を意識して自分の力を試す、ということを学びます。」
たしかにクラブ活動というのは、フランスでもなかった。フランス系の教育では、そもそも集団活動を学ぶ科目はない。
「こちらでは親たちは、自分の子供が卒業資格試験に合格するか、ということにしか関心がないのです。音楽やスポーツなど、時間の無駄と考えています。でもほんとうは、子供たちにとっては、チームワークや競争を学ぶことが、学校教育の中で一番大事なことなのです。」
地方旅行で、長野県の温泉旅館に宿泊した。研修ではじめて知り合った他の国の先生方と、3人1部屋だ、と言われた。
「生まれて初めてですよ。家族でもない人と、同じ部屋で寝るなんて。」
それは、さぞかし落ち着かないことで、ゆっくり寝られなかったでしょう。
「そう、寝られなかったですね。布団に3人転がって、話す話す、夜通しいろんな話をしました。他人と一緒に、ひとつの部屋で寝るというのが、あんなに面白いとは思いませんでした。」
先生方は、広島を訪れて、原爆平和記念館を視察した。熱線で融けた石を見て、絶句した。この街を襲った原子爆弾の悲劇に、言い知れぬ衝撃を受け、涙が出たという。それでも、今の広島は、日本で見た街のなかでは一番美しかった。
一人一人分かれて、日本の一般家庭に宿泊体験した。受け入れ先のご家庭との国際交流である。たいへんよく歓迎してもらい、楽しく充実した思い出になった。コートジボワールからのお土産を持っていくということで、いろいろ考えて、アチェケ(キャッサバ芋を加工した主食)とカカオの実を持参した。どちらももの珍しくて、皆見たことも聞いたこともなく、たいへん喜ばれたという。
それで、研修を総括して、日本についてどう思いましたか。
「木があって実がなる、ということです。」
その意味は。
「日本というと、自動車があり、電化製品があり、ハイテク産業があり、子供たちにはゲームがあり、そういう工業製品で見るじゃないですか。でも、それらは実の部分であって、ほんとうの日本は、そういう実を実らせる木のほうにある。」
どういう木ですか。
「それは第一に、規律です。社会の規則や道徳を守って行動することです。第二に、他人のことを考えることです。自分が行動するとき、常に他の人を意識することです。他の人への影響がないか考えたり、他の人との共同作業を考えたり。国民が皆、これを実践していることが、日本の真の強さです。」
先生方は、サントマリ女子高校で、日本での研修の成果を展示し、またもうすでに、授業で日本を語っているのだという。それはぜひとも、生徒たちに真の日本を教えてやってほしい。お二人を、サントマリ女子高校での日本大使に任命します、と私は言った。
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