goo blog サービス終了のお知らせ 

コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

大事な局面を迎えた

2010-02-15 | Weblog
雲行きは確かに怪しかったけれど、ここまで急に天候が崩れるとは思わなかったのである。まず、前日にとつぜん国連(UNOCI)から連絡が来た。翌2月12日に、国連の本部ビルで、チョイ代表の説明会を行うから、大使連中は集合してくれ、という。チョイ代表は、ときどきコートジボワール側との調整の現状や、国連での動きなどを、こうして教えてくれる。なんだか急な招集だな、とは思いながら、いつも通りの現状説明だろうと考えて出席した。

チョイ代表は、大使連中を前に、話し始める。今日は、1月28日に国連の安全保障理事会で、コートジボワールに関する新たな決議(決議1911)が採択されたこと、最近、マンベ選挙管理委員長の「詐欺」問題をめぐって選挙準備が不透明になっていること、などをお話ししようと思っていますが、と前置きで述べる。
「私からそうしたお話はしますが、本日夜のバグボ大統領の声明で、事情が大きく変わるでしょう。」

何の話だろう。今夜にバグボ大統領が何か声明を出すというようなことは、全く聞いていなかった。
「大統領は、今夜8時に制度上の措置について発表すると、先ほど伝えてきました。各大使方は、テレビの前で放送を聞いてください。」
その「制度上の措置」とやらの内容が何だかは、チョイ代表は語らない。「制度上」というのだから、おそらく選挙管理委員会の組織を変更する、といった内容であろうことは予想がつく。マンベ委員長が更迭されるのだろう。

国連での説明会を終え、事務所で仕事を片付けて、私は公邸に帰宅した。夜8時になったので、国営テレビ放送をつけた。最初のニュースで、バグボ大統領が画面に現れた。手元に置いた原稿を辿りながら、声明を読み上げる。

「過去2ヶ月にわたって、選挙委員会に重大な危機が訪れています。検察庁によって調査した結果、マンベ委員長が、不法行為を行い、43万人の不正な登録者を、選挙人名簿の中に潜り込ませようとしたことが分ったのです。大統領選挙に向けた最後の段階において、この事件が起こってしまった。選挙管理委員長は、期待に沿った行動、すなわち公正中立な行動を取りませんでした。そうした中で、地方の選挙管理事務所や、県庁などが焼き打ちにあいました。」
例の「43万人」の未審査者リストの問題である。今回は、大統領ははっきり、マンベ委員長が「不法行為」を行ったと明言し、公正中立ではなかったと断定した。やはり、マンベ委員長の更迭は避けられない。

「危機は、選挙の段取りを越えて、ワガドゥグ合意による和平の枠組み、つまり「新勢力」(注:旧反乱軍)側と共和国大統領側との間で成立した合意自体に、及んでいます。この枠組みは、他のいずれの方法でも実現できなかったような、和平への道を開いてきました。この枠組みを失ってはならない。それどころか、この枠組みの実施にかかわる、あらゆる障害を取り除かなければならないのです。」
そうは言っても、微妙な政治調整の上に機能している選挙管理委員会に、今さら手を加えるというのは、ワガドゥグ合意の履行を実際には大きく後退させるだろう。

「これまでに多くの成果を上げてきたにもかかわらず、今、平和の枠組みは故障してしまいました。それでも、今日なお昨日と同様、わが国に平和を取り戻すための例外的な態勢が引き続き必要であります。そこで、私は、憲法第48条の規定に従い、次の措置を取ることにしました。」
そうして、大統領は「制度上の措置」を発表した。

「第一に、選挙管理委員会を解散する。首相は、7日以内に、公正で透明性のある選挙を実施していくことができるような、新しい選挙管理委員会の構成を決めて、私のところに提示するように。」
やはり、マンベ委員長は辞めさせられた。それだけでなく、選挙管理委員会が丸ごと改組されるということだった。

「第二に」と大統領が言った。
「内閣を解散する。ただし、ソロ首相は首相職にとどまり、2月15日には新内閣の閣僚を私に提示するように。」
続けて、コートジボワールに神のご加護があるように、と大統領が締めくくりの言葉を述べたら、画面が切り替わってコートジボワールの三色旗が翻り、国歌演奏になった。

私はテレビの前で、呆気にとられる。選挙管理委員会はまだしも、内閣まで潰れてしまった。ああ、あの大臣とこういう話を進めているのに、この大臣とのあの約束はどうなるのだろうか。そういう戸惑いが一瞬心をよぎる。いや、そういう話よりも、いったいこの「制度上の措置」はどういう意味を持つのだろう。バグボ大統領は、何を目的に、積み木箱をひっくり返すようなことをしたのだろう。

声明では、「ワガドゥグ合意を守らなければ」という言い方をしていたけれど、この内閣の構成こそが、ワガドゥグ合意の「扇の要」であった。つまり、元反乱軍の「新勢力」から首相を任命し(ソロ首相)、大統領派の人民党(FPI)から、ベディエ元大統領の民主党(PDCI)から、ウワタラ元首相の共和連合(RDR)から、すべての政党から閣僚を出して内閣を構成するという、特殊な選挙管理内閣だったのだ。それを、大統領の一存でご破算にしてしまった。これは、ワガドゥグ合意の和平路線そのものを壊すことになるのか。

ソロ首相が、新内閣をどのように作り、新しい選挙管理委員会を、どういう構成で編成するのかが、まず重要だろう。もし、この「制度上の措置」が、これまでと同じような、全政治勢力の受け入れるような政治体制を作ることができれば、多少の遅れは仕方ないとしても、これまで通り物事を進めることが出来るだろう。

しかし、この「制度上の措置」に対する、他の政治勢力の反発から、皆が合意するような政治体制を築くことができなければ、もう大統領選挙は当面、絶望的になる。それどころか、それはワガドゥグ合意が元の木阿弥になるということを意味しかねない。つまり、これまで3年間にわたって積み重ねてきた、大統領選挙に向けての準備も、振り出しに戻るということになるのだろうか。これは大事な局面を迎えたようだ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。