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「堤防決壊」、トランプ大統領の兵糧攻めで米名門大学に和解のドミノ

  • コロンビアに続き、ブラウンも合意-ハーバードは訴訟検討との報道
  • 和解してもトランプ政権は資金の「兵器化」継続すると懸念する声も
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What Trump’s Fight With Harvard Is Really About
動画:トランプ政権による有名大学締め付けを報じるブルームバーグテレビジョン

米政府助成金を巡るトランプ政権との闘いで、財政難に突き落とされた名門大学が次々と白旗を掲げている。トランプ大統領との「ディール」に抵抗を続ける大学に、降伏への圧力がかかっている。

  コーネル大学とノースウェスタン大学はいずれも、政府との合意に近づいているとブルームバーグ・ニュースが7月に報じた。ブラウン大学とコロンビア大学、ペンシルベニア大学はすでに政府と合意した。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)やデューク大学も新たに標的となっている。大型の研究機関にとって、政府からの助成金打ち切りは生命線を断たれるに等しい。

  大学は負債を抱え、職員を解雇し、支出削減でやりくりを続けると同時に、新学期を前に政府との合意を急いでいる。「まるで堤防が決壊したかのようだ。これから政府との妥協が相次いで発表されても驚きではない」とミシガン州立大学のブレンダン・カントウェル教授は述べた。

  トランプ政権は大学キャンパスで起きた反戦運動において、反ユダヤ主義に対する大学側の措置が不十分だったと主張し、それを助成金打ち切りの大義にしている。政府は同時に、多様性に向けた大学の取り組みや政治的なバイアスも攻撃している。

  400人超の職員を削減するノースウェスタン大学では、この数カ月が174年の歴史で最も困難な時期だったと関係者らが表現している。同大学では4月、7億9000万ドル(約1200億円)の研究資金が凍結された。

  コーネル大学も数億ドル規模の契約停止により、抜本的な緊縮財務が必要になったと6月に警告。「高等教育の歴史上、前例を見ない春学期だった」と学生・教職員への書簡で述べた。

  デューク大学は7月末、連邦資金の20%に当たる1億800万ドルを凍結され、政府と交渉に入った。デューク大学の広報室は資金凍結や政府交渉について、コメントを控えた。コーネル大とノースウェスタン大も、政府交渉についてのコメントを差し控えた。

Cornell University Cancels Friday Classes After Student Federally Charged With Making Antisemitic Threats
コーネル大学のキャンパス
Photographer: Matt Burkhartt/Getty Images

  7月23日、コロンビア大学は2億2100万ドルを支払うことで政府と合意し、学問の自由を侵害するとの批判を浴びた。ブラウン大学は同月30日、地元ロードアイランド州の職業訓練団体に10年で5000万ドルを拠出することを条件に、同額の未払い助成金を受け取ることで交渉が妥結した。しかしその数日前に5億ドルを借り入れており、財務の苦境が浮き彫りになった。

  トランプ政権が最も目の敵にしているハーバード大学は、複数年にわたる助成金凍結と基金への課税強化により、年間約10億ドルのコストを見込んでいる。アラン・ガーバー学長は「前例のない困難により、有害な変更や心の痛む人員削減を余儀なくされた。将来の見通しは引き続き不鮮明だ」と書簡で述べた。学生新聞のハーバード・クリムゾンは4日、「政府との和解は差し迫っておらず、訴訟による解決を検討している」との学長コメントを報じた。

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ハーバードのアラン・ガーバー学長
Photographer: Rick Friedman/AFP/Getty Images

  ハーバード大学でかつて財務責任者を務め、現在は大学・学長理事協会のアドバイザーであるラリー・ラッド氏は、財務の困窮を思えばトランプ政権と和解に応じる大学を批判する気にはなれないと語る。「大学は本来なら学生支援に充てる基金や授業料を、研究費に流用するよう圧力を受けている」とラッド氏。「大学は学生支援を続けたいため、そんなことはしたくないだろう」と述べた。

  アメリカ大学協会のリン・パスクレラ会長も、大学は「追い詰められている」と述べた。和解に応じる大学が今後増えても、トランプ政権が連邦資金の「武器化」を継続する恐れがあると警告。「大学が和解に応じることで降参すれば、その分政府は現在の戦略を続ける自信を深めるのではないかと、心配している」と語った。

原題:Badly Bruised Universities Are Rushing to Cut Deals With Trump(抜粋)

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