【8月集中連載】広島“街なかスタジアム”誕生秘話

なぜ広島の新スタジアム建設は20年以上を要したのか? 【8月集中連載】広島“街なかスタジアム”誕生秘話(03)

宇都宮徹壱

広島に地縁のないよそ者だからこその視点

Eピースでの初の公式戦。サンフレッチェ広島vs浦和レッズは、2024年2月23日に開催された。試合は2-0で広島が勝利している 【宇都宮徹壱】

 当連載は、2024年に開業したEピースの建設に関する、知られざる紆余曲折の物語である。書籍化(現時点で版元は決まっていない)を目標に昨年から取材を続け、スポーツナビでの連載が決まった今年1月からは、月1回のペースで広島を訪れて関係者への聞き取り取材を続けた。

 広島だけではない。都内でお会いできた人もいれば、大阪や福島、さらには熊本まで足を伸ばすこともあった。それなりのコストと時間はかかったが、自ら信条とする現場主義を貫き、オンラインではなく肉声に触れることを心がけた。

 もうひとつ、今回の連載で自らに課したことがある。それは前出の中野をはじめ、長年にわたりサンフレッチェと広島のサッカーを取材してきた同業者に頼らない、ということだ。私自身がこれまで、ビッグアーチ時代のサンフレッチェを取材したことは、たったの1回。3回のJ1優勝の場面にも、一度も現場で立ち会うことはなかった。

 そんなよそ者がズカズカと入り込んで、現地の同業者が積み重ねてきた取材の成果を譲り受けるのは道義に反する。広島に地縁のないよそ者ならば、あえてアウェイの状態から人脈を広げていき、埋もれた物語を掘り起こしていく。むしろそのほうが、きっと読み物として面白くなるだろう、と割り切ることにした。

 当連載ではEピースの建設のみならず、サンフレッチェ広島、さらには前身のマツダSCの歴史にも一部踏み込んでいる。古参のサポーターでも、ご存じないエピソードも出てくるだろう。いわんや、森保監督時代以前を知らない世代をや。平成生まれのファン・サポーターにも、よそ者視点でのクラブの物語を楽しんでいただければ幸いである。

 もちろん、サンフレッチェや広島とは直接関係のない人たちにとっても、当連載は意義あるものとするつもりだ。新スタジアム建設を目指す自治体やクラブ関係者、逆に「サッカースタジアムに税金を投入するなんてもってのほか!」という一般納税者にも、ぜひお読みいただきたいと考えている。

 最後に一言。Eピース建設の物語は、NHKの『プロジェクトX』のようなサクセスストーリーではない。むしろ、失敗と挫折と迷走の連続と言っていい。ただし、アンチ・サクセスストーリーにこそ、広く共有すべき教訓がある。

 というわけで、広島の街なかスタジアムをめぐる、知られざる物語。さっそく、語り始めることとしたい。

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※文中敬称略

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『異端のチェアマン 村井満、Jリーグ再建の真実』(集英社インターナショナル)。宇都宮徹壱ブックライター塾(徹壱塾)塾長。

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