有権者を引き寄せた「実利」と「夢」 政治学者がみた新興政党の勝因

石田耕一郎

 参院選では国民民主党、参政党といった新興政党が躍進した。急増した両党の支持者はどこから来て、どんな特徴を持っているのか。既存政党が支持を取り戻すチャンスはあるのか。有権者が政党に抱くイメージと支持傾向を研究する関西大学の坂本治也教授に聞いた。

――国民民主、参政の支持者はどこから来たと思いますか。

 国民民主や参政の支持者の由来については、大阪大の三浦麻子教授と朝日新聞のネット意識調査や、横浜商科大の田中辰雄教授によるアンケートなどから、実態が見えてきました。国民民主も参政も保守的な政策が特徴的で、自民党の支持者の中でも保守的な考えを持つ人たちのほか、日本維新の会の支持者、旬の政党を支持しがちな無党派層の一部を取り込んだと考えられます。

 国民民主は有権者に対し、特定のイデオロギーではなく、自党が伸びれば金銭的、即物的なメリットを受けられるとアピールし、支持を得ました。一方の参政は、文化面で保守的な考えを持つ人たちを取り込んだと思います。

 過去にも政治スキャンダルなどで、有権者が与党や既成政党への不信を募らせた時に、旧みんなの党や維新といった第三極が伸びたことがあります。今回もその点での驚きはありません。

――自民は比例区で、前回2022年の参院選と比べて政党別で最多の545万票を失いました。一方、参政は前回比566万票増、国民民主は446万票増でした。自民支持層が参政、国民民主に流れたとみられますが、その理由をどう見ますか。

 保守層から支持を得てきた安倍政権が終わり、岸田、石破といった自民では比較的リベラルな政権が続いています。岸田政権はLGBT理解増進法を成立させ、石破政権は選択的夫婦別姓制度の議論を進めそうな雰囲気です。保守層は、かつてなら手がけないリベラルな政策を手がけるようになった自民に、愛想を尽かしているのだと思います。加えて、派閥の裏金問題も尾を引いており、自民不信を払拭(ふっしょく)できていません。

――日本維新の会も前回比で、政党別では2番目に多い347万の比例票を失いました。

 維新はかつて、伝統保守的な側面を持ちながら改革を唱える第三極の政党だと受け止められてきました。でも、吉村洋文代表の体制では、伝統保守色も、改革色も感じられません。伝統保守の考えを重んじる人々には、まったくおいしい選択肢ではなくなったのです。また、大阪都構想や政治家などの既得権益を減らす「身を切る改革」を唱えていた頃に比べ、改革イメージも薄れています。

 実績といえる大阪・関西万博もアピール不足で、大阪以外では、ほとんど票に結びつきませんでした。有権者から、何をやりたい政党かわからないと受け止められたのだと思います。

――国民民主、参政の支持者に共通する特徴はありますか。

 私が過去に分析した維新の支持者でも同様でしたが、国民民主も参政も、支持者の学歴や所得による目立った傾向はみられません。その半面、年齢による傾向は明らかです。両党とも40代以下の若い世代の支持が高く、60代以上の高齢世代の支持が厚い自民や立憲など既存政党とは対照的です。これまでで最も差が出ている気がします。

――その理由をどう分析していますか。

 年齢によって、情報を入手するツールが異なるからではないかと考えています。高齢世代はテレビや新聞を情報源にしますが、若い世代は主にネットから情報を得ます。30代以下では、テレビや新聞をほとんど見ない人も少なくありません。

 国民民主も参政もネットでの発信に非常に力を入れ、多くの閲覧数を得ていました。24年の東京都知事選や兵庫県知事選でもそうでしたが、有権者が普段どんなメディアを情報源とするかが、支持する政党選びに影響していると感じます。

――国民民主や参政が掲げた個別の政策や主張は、支持者の獲得に影響したと思いますか。

 まず、多くの有権者は各政党の公約をつぶさに比較しているわけではありません。有権者による個別の政策への反応は限定的だと思います。

 今回の参院選では、多くの野党が消費税の税率引き下げや廃止を唱えていました。消費税が不況の原因で、消費税さえなければ生活は改善されるという極端に単純化された主張が飛び交う「減税ポピュリズム」でした。

 また、外国人問題でも、与野党それぞれ政策を出していました。参政のスローガン「日本人ファースト」が話題になりましたが、かつて「在日特権を許さない市民の会」(在特会)を率いた男性が党首を務めた「日本第一党」は、過去の選挙で参政と似た主張をしたものの、ほとんど票を得られませんでした。

 有権者は日々の生活で忙しく、自分の投票が選挙結果に及ぼす影響も限定的だと考え、情報収集や思考を適当なところでやめる「合理的無知」の態度で、投票先を決めます。世論調査で日本人の排外意識は高くありません。参政を支持した人々も、参政の掲げた「日本人ファースト」や「外国人政策の見直し」を、自分たちの生活向上を重視してくれそうなイメージの象徴としてとらえたのだと思います。

――政党にとって、選挙で票を得るために必要な要素は何だと思いますか。

 三つあります。看板政策、魅力的なリーダー、実績です。

 今回の場合、国民民主は「手取りを増やす」ことを看板政策として掲げ、主食の米を含んだ物価高が進む中で、日本経済の長期停滞を嘆き、将来への不安を感じる有権者に「自分たちは現状を変えられる」とうまく訴えたと思います。

 一方、参政の神谷宗幣代表が演説で示す「熱意」には特徴がありました。有権者からすれば、「『日本人ファースト』を含め、言っていることの意味はよく分からないけれど、一生懸命話しているし、きっと大事なことで、何かと戦いたいんだろう」と感じ、「自分たちを助けてくれそうだ」というイメージを抱いたのでしょう。

 こういう現象を軽く見てはいけません。郵政民営化を唱えて衆院を解散し、05年に圧勝した小泉純一郎元首相も、今から考えると日本にとって何がよかったかを言うのは難しいですが、その熱意が有権者を熱狂させたことは確かです。

――「日本人ファースト」には、維新が唱えた「大阪都構想」と似て、「私たちは本来ならもっと発展できるのに……」と、人々が持つプライドに訴える効果があったのではないでしょうか。

 参政が維新の手法をまねたわけではないと思いますが、「大(だい)大阪」の夢を語った維新と同じく、「もう一度、あの豊かな日本に」という夢を語り、成功したと思います。金銭的な利益ではなく、国民が願う「上を向いて歩きたい」という思いに働きかけたのです。日本社会には、そうした夢を冷笑する雰囲気がありますが、夢に向かうエネルギー自体は否定するのではなく、どの政党もうまく使えばよいと思います。

――国民民主と参政が今回、比例区で積み増した計1千万票を、自民や立憲など他党はどうすれば奪えるでしょうか。

 参院選で、多くの有権者は、各党の実績ではなく、今後何をしてくれそうかという点を考慮し、投票先を決めたように思います。政治や既成政党への不信が強いときに起こる現象です。

 各党は、先ほど述べた三つの要素を強化する必要があります。特に魅力的なリーダー選びについて、これまで日本の政党は、党内をどうまとめるかという内向きの論理や力学で選んできました。でも、これからは選挙で勝てる看板としてのリーダーが必要です。魅力的なリーダーは自然にあらわれるわけではなく、各党には、若手の発掘や育成を含めた長期的な戦略が求められます。

――有権者は政治とどうつきあえばよいですか。

 選挙の時だけではなく、選挙後も長く政治ウォッチを続けて欲しいです。自分が票を投じた政党や候補者は、選挙の時に訴えた公約をどう実現しようとしているか、選挙戦の時と違う行動をしていないか、を見続けるのです。また、政権担当能力という観点から各党の動きを見ることも大切です。それらはきっと、次の選挙で候補者を選ぶときの参考材料になります。

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参院選2025

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