カムチャツカ地震、前回から70年あまりで発生の謎 研究者を悩ます
ロシア・カムチャツカ半島沖で7月30日に起きたマグニチュード(M)8.8の地震が研究者に謎を突きつけている。近い場所で1952年に発生したM9.0の地震との関係をどうみるか。日本の地震予測を考えるうえでも重要だという。
海洋研究開発機構の堀高峰上席研究員は米地質調査所(USGS)の余震データを見て驚いた。
地震は地下の岩盤がずれ動く現象で、余震の分布はずれ動いたおおよその範囲(震源域)を示す。今回は、52年の震源域と重なっているように見えた。73年後に同じ場所で巨大地震が起こったのか。
岩盤にたまったひずみをM9.0の巨大地震で解放した後、再びひずみをためて巨大地震が発生するまで数百年はかかりそうだが、この地域は特殊なのか。
堀さんは、過去の論文やUSGSが発表した今回の地震解析の速報をみて考えた。詳細な解析を待つ必要があるとしたうえで、「52年は海溝から沈みこむプレートの深い部分が大きくずれ、今回は浅い部分が大きくずれた。大きくずれた領域が分かれているのではないか」と話す。
震源域は一様にずれ動くわけではない。岩盤が大きくずれ動いた部分が前回と重ならず、いわば「相補的な地震」ではないかと推測する。
2011年の東日本大震災は、浅い場所も深い場所もいっしょに動き、ずれも大きかったので非常に高い津波になった。「1952年と今回はそれが分かれて起こったのではないか」という。
巨大地震のサイクルのひとつが、二つの領域に分かれて時間差で完結した可能性だ。ただ、この地域では巨大地震がたびたび発生している。正確な震源域は不明だが、1841年にもあった。100年余りで巨大地震が発生する場所なら、73年前の巨大地震と重なる領域の地震もありうるかもしれない。
北海道大の谷岡勇市郎名誉教授も相補的な地震を可能性の一つと考える。ただ、今回の津波の高さは5メートル程度とされ、1952年に記録された12メートルより低い。プレート境界の浅い領域の地震は高い津波を起こすと考えられており、相補的な地震で説明できるか、今後の解析を待ちたいという。
52年の地震は浅い部分もずれ動いたという解析結果の報告もある。東北大の福島洋准教授は現時点では、①相補的②同じところで繰り返した③その複合の可能性があると考えている。
京都大防災研究所の深畑幸俊教授も相補的な地震である可能性は否定しない。だが、海溝沿いのプレート境界の地震で、大きくずれ動くのは、ふだん強くくっついている領域だ。その領域は大地震のたびに繰り返しずれ動くという考えがあり、相補的だとすれば、その考えがあてはまらないことになる。まだ速報的な解析しか報告されていないので、今後、見極めていく必要があるという。
深畑さんはもう一つの考え方として、前回の巨大地震でたまったひずみエネルギーをすべて解放していない可能性をあげる。プレート境界にたまっているひずみエネルギーの絶対量はわかっていない。52年に残っていたひずみに、さらに73年間のひずみが加わり、重なる震源域で巨大地震が発生したのかもしれない。
国の南海トラフ巨大地震の予測では、地震規模が小さいほど次の地震までの間隔が短くなるという「時間予測モデル」という考え方も採用している。この考え方に疑問を示す例になるのか。
「地震の起こり方はこれまで考えてきたよりもっと多様で、発生予測は難しいということなのかもしれない」と深畑さんは話している。
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