ー 3つのステップで背景の違和感をなくして、 グッとプロ感アップ!すんなり目に入る画面を作ろう!ー
はじめに
漫画の背景を置いてみたけれど、何となくキャラになじんでいない気がする…背景が浮いている?なに?この違和感は。
そんなお悩みを持ったことがあるでしょう。
この教科書では、すんなりと目に入ってくる、違和感のない背景を目指すための、3つのポイントをお伝えします。どれも簡単に実践できるものばかりです。この3つをおさえるだけで、グッとプロ感が増しますよ。
爽やかなお庭を散歩する二人。キャラは素敵なんだけど、なんか変…?全体的に角度が合っていないような…色もなんかピンとこないし。でも……どこをどうしたらいい感じになじむのか分からない!
今回は、一つ一つポイントを挙げながら、このコマを改善していきます。
1.ん…?何だか斜めになっている気がするぞ…?キャラにパースを合わせよう!
イラストをパッと見たときに、背景と人物の角度があっていないような気がする、そんなときは「パースが合っていない」のかもしれません。では、どのように改善したら良いのかを見ていきましょう。
アイライン(カメラの高さ)を見極める
アイライン、という言葉は、イラスト界隈でよく使われますが、いまいちよく分からない!という方もいるかもしれません。アイラインは、カメラを構えた人の、カメラの高さだという認識で大丈夫です。パースという言葉とよく一緒に使われます。
ざっくり、キャラの顔の位置と同じ高さ、それより高い(高い位置の防犯カメラからの映像とか。床が見えている)、それより低い(子供が大人を見上げている状態とか。天井が見えている)、の3種類。
正直、パースは沼です。検索するとさまざまな技法が紹介されています。もちろんそれらの知識は役に立つのですが、3D空間を操る、という観点においては、とにかくカメラをどこで構えて、どの角度に向けてシャッターを切ろう、ということを考えたほうが手っ取り早いです。
では先ほどの背景のアイラインを、いい感じにそろえてみましょう。
まず、キャラはどんな感じでしょう。あなたがカメラマンとして、このキャラはどのようにシャッターを切っていそうですか?
細かいことは置いておいて、ざっくり3択です。
A.脚立に乗って上から撮っている
B.立ったまま、自分の目線と同じ高さから撮っている
C.しゃがんで、下から見上げて撮っている
正解は、Bです。キャラとカメラマンとの角度はほとんどない状態です。
しかし背景は、床が見えていて、上から見下ろしている感じですよね。ちょっと解説っぽく、バーチャル箱を用意してみました。
上の図、キャラのパースは、だいたい緑のボックスくらい。しかし、背景のパースは、グレーの床くらいの状態です。緑の箱は、グレーの床の上に乗っている感じがしないですよね。だから、違和感がでるのです。
改善の方向性としては、この緑のボックスが、いい感じに乗る床を用意してあげれば良いのです。
この例題だと、カメラはもう少し下、例えば地上から1.5~2メートルくらいの場所で構え、向く方向はほぼ地面と平行(見上げたり、見下ろしたりしない)でシャッターを切るといい感じにいけそうです。
うん!とりあえず、キャラが床に立ってくれました!
まとめると以下の感じです。
キャラがどの高さから、どんな角度で撮られているかを想像
カメラを構える場所は、ざっくり3種類。キャラより下、キャラの目線と同じ高さ、キャラより高い
カメラを構える角度もざっくり3種類。見上げる、地面と平行、見下ろす。
キャラを撮ったカメラと同じ高さ、角度になるように、3D上でシャッターを切る。
でもまだ何か違和感がありますよね。そう、大きさです。
背景の大きさに気をつけよう
キャラがかがまないと入れないドア、どんぶりサイズのコップに、小人の椅子。背景の大きさをキャラクターの大きさに合わせないと、あっという間に謎空間になってしまいます。
異世界であっても、椅子や机、ドアなど基本的なアイテムの大きさはそんなに変わりません。読者さんはそれらを日常的に使っているため、違和感が出やすいポイントです。
例えばこのコマ。ぱっと見いい気がします。けれど、この水色のドレスのキャラが、部屋を出ようとドアに近づいたらどんなサイズ感になるでしょう。ずいぶんと大きいドアのように感じますよね。
ちょっとだけ、背景を縮小してみましょう。このくらいなら、水色ドレスのキャラがドアに近づいたとき、いい感じになりそうです。
ドアを基準にするとき、ドアの大きさは、男性キャラの頭の上に、もう一つ頭を乗せたくらい(ロマンス系や異世界系だと、でかでか豪華ドアがあるので、一概には言えませんが)。ドアノブの位置は、女性キャラの肘か、少し下くらいです。おうちのドアを、改めてよく見てみましょう。
さて、先ほどのお庭。このお庭には、ドアや椅子など、分かりやすい目印はありません。けれど、なんとな~く、人を配置してみましょう。もちろん、心の中で大丈夫です。まあ、左の画像くらいかなあ。
そうして、キャラを乗せてみましょう。分かりやすいように半透明にして。
んんー!?なんか合わない!後ろのシルエット君たちと同じ世界にいる感じがしない!大きさが変なのか…?
ということで、背景をちょっと縮小してみましょう。下の画像くらいに。
これでキャラを乗せたらどうかな。
お!なんかいい感じです。背景に、ちゃんとキャラが乗っている気がします!後ろのシルエット君たちとも、世界観の連続性がありそうです。
これで、おかしかったカメラの位置や角度、そして拡大率が直せました!ビフォーアフターを並べるとこんな感じです。だいぶなじんできた気がします!
パースはとても基本的なもので、誤魔化しがききません。少しぐらい違っても後からの味付けでいい感じになじむから大丈夫!とはならないのです。
描かれた場面をカメラで撮る場合、立って撮るのか、脚立に乗って上から撮るのか、かがんで下から撮るのかを想像しながら3D空間を操ると良いでしょう。
また、日常的に使うものとの大きさ比較も大切です。ドアはキャラが通れる大きさ、椅子は膝くらいの高さ、ベッドはキャラが横たわれる長さ。分かりやすい基準がなかったら、心の目で、その空間にモブを立たせて、大きさ比較をしてみるのもいいですよね。
違和感のものとしっかりとつぶしていきましょう。
でもまだ、何となく「完成!」という感じではないですよね。もう少し、完成度を上げていきましょう。
2.背景が浮いている気がする…それ、3Dっぽさが消しきれていないせいかも
さて、さきほど頑張ってパースを合わせたコマです。
パースはしっかりと仕事をしている。けれども、なぜだか背景がキャラとなじまない…。背景だけ浮いている気がする。そう、作画が違う感じ。
それは、3Dっぽさが消しきれていないせいかもしれません。
3Dはさまざまなアングルを、とても正確に映し出してくれる便利な機能ですが、リアルすぎるために、キャラクターと合わない場合があります。キャラクターもCGで表現されているならなじむかもしれませんが、キャラクターはアニメ調で描かれています。ですので背景もアニメ調が良いでしょう。
主線は細めにはっきり、影はアニメ影
さて、一言で「アニメ調」と言っても、実際にどのようにしたら良いでしょうか。ポイントは、主線と影です。
現実の世界を見渡すと、「主線」なんていうものはどこにも引かれていません。あごの下にも、机のヘリにも、線なんてありませんよね。しかし漫画には、「主線」があります。境界線をラインで分かち、立体を表現しています。
ですので、背景もやはり主線があったほうが良いでしょう。スケッチアップは比較的簡単に主線を取り出せますので、ぜひその機能を使ってみましょう。キャラクターの主線より少し細めだと、いい感じになじみます。
さあ改めてこのコマ、主線はあるけれど、ちょっとキャラになじんでない感じがありますよね。
それはほわっとした影かもしれません。現実の球体につく影は、それはそれはきれいで無限階調ある正しいグラデーションです。しかしキャラクターには、比較的はっきりとしたアニメ調の影がついています。このコマの噴水は、とてもなめらかな影がついていますが、これをもう少しハッキリとした影にしてみましょう。
うんうん。いい感じになってきました。でもなんだかこう…このギラギラしていて、悪目立ちしているこの感じはなに……?
色彩はさっぱりめ
なんだか背景の主張が重い!そんなときは色の彩度に注目してみるといいでしょう。基本的に背景は、そっと静かに置くのが一番です。色も静かな感じが良いでしょう。
静か、という表現をもう少し具体的な対策例にしてみましょう。ずばり、明度を上げて彩度を下げる。これだけです。全体的に白っぽく、淡い色にするイメージです。やってみましょう。
いい感じです。背景の主張がちょっと静かになってきました。
3Dは自然物が苦手。思い切ってOFFにするのもあり
かなり良くなってきました!もう少しクオリティアップしたい気がしますよね。気になるところはどこですか?そう、噴水と木!気になりますよね。木だけに。
3Dは自然物が苦手です。どうしても違和感が出てしまいます。ここは思い切って、水を止めて森林伐採。3D空間から自然物を消し去りましょう。
消してみたら、これだけで悪目立ち感が減りました。でもちょっと寂しいので、加筆しましょう。
木々は2Dのブラシで、水は手書きで。
そうすると、キャラになじむいい感じの背景になりました!
比較的はっきりとした影や主線、そして色調補正で3D感を薄めると、かなりキャラになじむようになります。
自然物をオフにするのは良いのですが、大幅な加筆が必要になってしまうと、それはそれで大変です。加筆の手間とクオリティのバランスを見ながらがおすすめです。
次は、最後の小手先のようなテクニックです。
3.背景がうるさすぎてどこを見たらいいのか分からない!そんなときは思い切ってボカシちゃおう
正しいパース!はっきりとした主線にアニメ調の影。色はサッパリと静かに。そう実践したのに、まだ違和感がある。
例えばこちらのコマ。今、このキャラが良いことを言っている大事な場面なのに、背景がうるさくて耳に入ってこない!あの階段で2Fへ行けるんだーとか、戸棚には何が入っているんだろうとか、気が散ってしまうよー!
そんなときは、ぼかしと空気感です。
伝家の宝刀、ガウスぼかし
あなたが友人の写真を撮るとき、もちろん友人にピントを合わせますよね。そうすると、友人の後ろにある背景は、ピントが合わずボケます。その法則を、漫画にも適用するのです。
方法は簡単です。クリップスタジオの機能の「ガウスぼかし」を実行するだけ。
いい感じにボケました!これだけで、グッとキャラが際立ちます。先ほどの、ドアとベッドがある部屋も、サクッとボカシてみましょう。
左側の背景に、ガウスぼかしをかけると、右側のようになりました。
あれ?でもなんか変?奥はボケていい感じになりましたが、手前のベッドの柵まで一緒にボケてしまいました。この部分はキャラクターに近いので、ピントが合っていてボケないはずです。この部分だけよけて、もう一度やり直ししてみましょう。
いい感じになりました!
先ほどの、お庭の背景にも、ガウスぼかしをかけてみましょう。
キャラとの距離感がでて、いい感じになってきました!
もう一つ、キャラとの距離感を出す方法をご紹介します。
スクリーンレイヤーで空気感を演出
空気は透明に見えます。ですが本来は、さまざまなチリや水滴が無数に含まれています。見えないけれど、チリはある。
ですので、カメラから遠ざかれば遠ざかるほど、空気の層が厚くなり、ぼやっとしてきます。遠くの方のビルや山々は、霞がかかって見えにくいですよね。
と、理屈やイメージはこのあたりにしておいて、実際にはどのようにしたら空気感が出るのかをご紹介します。
ずばり、一番上のレイヤーの、遠ざかってほしい場所にふわーっと明るめな色を入れて、レイヤーモードをスクリーンにするだけ。明るめな色は、迷ったら白で大丈夫です。青っぽい色にしてもキレイです。また、空や壁の色など画面内にある明るい色をスポイトし、ごく薄くした色もなじみやすいです。
ちょっと強めに入ってしまって真っ白になりすぎた場合は、レイヤーの不透明度で調整。では、やってみましょう。
うん!これなら、キャラの邪魔をせずに、しっかりと背景がなじんでいます。
お庭もやってみましょう。
背景との距離感、空気感がでて、しっかりとキャラになじんでいます。キャラの顔の周りも少しだけふんわりとかけておくと、さらにキャラが際立ちます。
まとめ
今回は3つのステップで、いまいちだった背景を、キャラになじむようにしました。もう一度、ビフォーアフターを見てみましょう。
パースを直し、3D感を薄め、ぼかしたり空気感を出しました。
読者さんの多くは、ストーリーとセリフ、それにキャラを見たくて漫画を読んでいます。ですのでそれをサポートする背景は、悪目立ちしないことが一番です。
パースを合わせる、3D感を消して色を落ち着かせる、ぼかしやスクリーンで空気感を出す。どれも、すぐに実践できそうなものばかりでしたよね。それだけでキャラとなじみ、一体感のある画面を作り出せます。
ぜひやってみてください!
「スケッチアップマスター」担当講師 丹羽 四つ葉
使用作品:「殿下、運命は私が決めます」10話