【私の失敗(1)】渡辺久信、忘れられないブライアントへのあの1球

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 降板してベンチ裏に引き揚げると、森監督が後を追いかけてきて配球を責めた。コースは少し真ん中に入ったけど、いつもなら空振りの高さ。「何で」と問われても答えようがない。相手が神がかっていたのだから。

 あの経験があるから、自分が監督になってからは、結果だけで選手を責めることはしないようになったんだ。そこに至るまでのプロセスがあるわけだから。さらに、選手を「怒らない」ことを心がけた。感情の起伏が激しかった現役時代を知る人には、意外と思われるかもしれないけど。今の選手は、僕たちの時代と比べ、怒られることが圧倒的に少なくなっている。怒ることで萎縮してしまい、実力を発揮できないと思うからね。

 後の現役引退会見で「一番思い出に残る1球」に、優勝を逃したこの1球をあげた。「1球の怖さ」と「言葉の大切さ」を学んだから。

 実はあの試合後、自宅に帰ると、留守番電話は「お前のせいだ!」「やめちまえ!!」というファンの罵声で、いっぱいだった。あのときほど「ファンは怖い」と思ったことはないよ(笑)。

■渡辺 久信(わたなべ・ひさのぶ)

 1965(昭和40)年8月2日生まれ、49歳。群馬県出身。84年に前橋工高からドラフト1位で西武に入団。最多勝を3度獲得するなど黄金時代を支えた。98年はヤクルトで、99-2001年は台湾プロ野球でプレー。日本での通算成績は125勝110敗27セーブ、防御率3・67。ノーヒットノーラン1度。04年にコーチとして西武に復帰し、監督1年目の08年にリーグ優勝と日本一。14年からシニアディレクター。右投げ右打ち。

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