第203話 世論

渋谷のダンジョンマスターの配信によって、当然反対意見は巻き起こるんだけど、規模は小さいが賛成意見も生まれ、一部は狂信者化した。ちなみに配信内容として、最終的には以下の通り。


『女性の家庭内化を推進する』

『結婚可能年齢を男女共に義務教育終了時にまで引き下げる』

『R18みたいな年齢制限の全撤廃』

『風俗合法化。売春の許可』

『3人目の子供から1人当たり500万円の給付』


……極論は信者を産みやすい。傍から見ればただのアホ集団なヴィーガンも、自らの健康を投げ捨てて偏った食生活を送る。いつの時代も、左右に振りきった加減の知らない馬鹿は出て来る。


女性相手ならムカついたら殴って良い、みたいなことを言う輩まで現れ、実際に殴った後に私刑執行官に処される、なんて光景は日本全国で見られ始めた。なおその私刑執行官さんも「女は男より下だが人権はある。殴って良いのは人権のない奴隷だけだ」と言ってた。世論の中でも奴隷制賛成の声は増えて来たな。


ちなみに配信終了後、というか配信中に攻め込んだ勇者達だが開幕で数人が死んだ結果、12階にも行けずに即座に撤退している。「こんにちは!死ね!」システムを採用したのか11階に大量のモンスターを配置していた。まあ下手にモンスター倒されたら相手に稼がれるんだから初手全力は最適解の1つ。というかいくら外出るダンジョンマスター相手に痛手を受けたとはいえ、もう再建は完了しているから攻略は100%出来ないと分かって特攻しているのかなコイツら。


わりと貴重な勇者戦力は、数人が死んだことですぐに逃げ帰るのだが、渋谷のやべー奴のダンジョンを出た後、近くのホテルで休憩していたところをドッペルゲンガー達に奇襲されて全滅した。何でダンジョンから出ただけで安心したんだ。モンスターはダンジョン外に出るんだぞ。


まあドッペルゲンガーとか見た目ごく普通の人間になれるから、そこからの奇襲を防ぐのは中々に難しいのだが。背後から襲われて即座に対処できる人間はそう多くはないし、その手の専用のスキルは大体高い。


食事中に、追加の商品を持ってきた店員がドッペルゲンガーで、完全に油断し切っていたところをぐさりは中々にえげつない。……地味に、現時点で戦える勇者は最後の勇者を除いて払底したか?何だかんだで異世界側のゲート付近の攻防で一網打尽を食らったのが痛すぎる。あれから半年、戦える面子が揃ったところで起こった今回の事件だから戦いたいって言う人いなくなるんじゃないか。


そしてまた渋谷のやべー奴が強くなると。生半可な強さでダンジョンを本気で攻略しようとするもんじゃないな。逆に相手のダンジョンマスターを強化してしまう。


「……凄いな。渋谷のやべー奴に同調する意見が日に日に増えてる。

どんだけ鬱屈した感情が溜まってたんだ現代日本」

「……現状に思うところのない人の方が少なかったじゃろ。

あとそれ半分は工作なのじゃ」


反渋谷のやべー奴派のダンジョンマスター達はこれから何人か攻め込むだろうが、全部返り討ちだろうな。反渋谷のやべー奴派の一般人はもうどうしようもない。


男尊女卑。そのために渋谷のやべー奴が行った行動は、企業の女性割合が一定以上の場合に貰える助成金の廃止。男女の就業割合の公開停止。女性活躍推進法によって定められていた義務の廃止。また、スポーツの男女の枠を廃した。上手けりゃ男性の中でも女性が活躍出来るだろと。それならそれで文句言わないと。


とにかく女性の活躍の場を奪うことに余念がなかった。当然ながら反発というか反対意見はあるけどもうゴリ押すつもりだな。……女性スポーツなんてイメージアップを狙う数少ないスポンサーと補助金で成り立っているようなものだ。それがイメージアップにつながらない時代に入ろうとしているなら、即座に撤退するだろう。元々、興行としてギリギリだった所は多い。


あと大学等で、女子限定の定員を設けることには罰則すら用意するようになった。まあこの辺は完全に逆差別だったから仕方ない。この辺以外は大体狂ってるけど。


……インフレ対策としては、最低賃金を下げる、ね。男性の下限が時給950円、女性の下限が時給750円。人手不足の中、こんな条件で人が集まるのかと思ったらここ1年の混乱で倒産している企業も多く、働き口を失った人が多いから徐々に風向きが経営者側へ傾いている模様。


まあ労働者の権利については渋谷のやべー奴も五月蠅いだろうからこの最低賃金に関しては男女の格差付けのための設定だな。男性側ほとんど変わってないし。これ、男女の性差が諸に出る肉体労働だと嬉々として男性時給1500円、女性時給1000円みたいに差を付けるだろうな。それが許される社会になったのだから。『同一労働量同一賃金』とはなるほど。面白いスローガンだ。

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