愛がないから金を差し出す。
何度でも聖人になることにした私は熱海の家に篭って瞑想し「完全に整った」と悦に浸っていた。ら、突然家の玄関からストーカーが入って来た。家の鍵はかけていない。だから、こういうことが時折起こる。迷惑だから来ないでくださいと何度言っても奴は来る。幽霊のように佇み、何も言わずになめくじの速度で接近してくる。だが、今回は違った。着ていた服を脱ぎ、裸になった。下着も着ていない。完全に裸だ。警察を呼ぶなら呼べと言われて、あ、今回の奴は本気だと身構えた。
なめくじの速度で、全裸の奴が接近をしてくる。私は「ギターを武器にするか」とか「大きな声で威嚇をするか」など、いろいろなことを考えた。突然全裸の女に襲われるのは恐怖だが、少なくとも刃物は持っていないと言う安心感もある。真の強さとは人間の力ではなく神様の力だと思ったので、私は、禁断の秘技「ゴッズラブ」を使った。自分自身にキリスト意識を降臨させて、声を荒げるわけでもなく、腕力に頼るわけでもなく、すべてを受け入れて脱力し、脱力した上で「出て行ってください」と、相手の目を見て静かに告げた。
最初、奴は「自分でもおかしいことはわかっています」とか「自分でも止められない」とか、いろいろなことをごにょごにょ言いながら、私の方に接近して来た。その時は、私の顔を見なかった。私ではなく、自分の中にある私のイメージを凝視していた。だが、いよいよあと一歩で私に触れるという距離に来た時、はじめて私を見た。今だと思った私は、相手の目を見て出て行ってくださいと言った。病を治してくださいとキリストの元に集まってくる人に「お前の病は癒された。さあ、出て行きなさい」と言っている感覚に似ていた。
しばらくの沈黙の後、奴は「そうですよね」と言って身を翻し、服を着て、鞄を持ち、家を出た。嵐は過ぎた。私は「これで終わりだ」と思った。奴の中にある偏った私のイメージを粉砕して、現実を告げた。その瞬間、奴の顔が変わった。顔のパーツが溶け出してどろどろになっていたのが、形を伴った。目の奥に光が宿り、襲われている時に思うのも変だが、昔は綺麗な人だったんだろうなと思った。生き方が違えば友達になれていたのかもしれない。だが、今世は仕方がない。お前がやっていることは犯罪だ。警察は呼ばないが、俺の中のポリスメンが「出て行け」と言っていた。
ストーカーを笑うのは簡単だ。「サイコパスだ」と線を引き、自分とは関係のない人物として排除して、何もなかったことにすればいい。だが、彼らは時代の生贄になっているようにも感じる。付き合いを深めたいとは思わないが、一歩違えば、私が犯罪者になっていた可能性はおおいにある。他人事とは思わない。自分事のように感じる。私たちは、物質的には豊かになった。だが、精神的にはどうなのか。金があったら人を愛せるようになるとか言いながら、愛より金を優先する。愛がないから金を出す。金には清算の力がある。金で済ませる。手切れ金のように、愛を終わらせる。問題があるとすればただ一つ。愛がない。冷たい知性はもう要らない。必要なのはゴッズラブだ。
おおまかな予定
8月5日(火)静岡県熱海市界隈
以降、FREE!(呼ばれた場所に行きます)
連絡先・坂爪圭吾
LINE ID ibaya
keigosakatsume@gmail.com
SCHEDULE https://tinyurl.com/2y6ch66z
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ばっちこい人類!!うおおおおおおおおお!!


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