化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)を巡る冤罪(えんざい)事件の反省から、警察庁は、不正輸出などの取り締まりで警察が捜査する外為法違反事件について、取り調べの録音・録画(可視化)を実施するよう指示する方針を固めた。関係者への取材で判明した。警察庁は近く、こうした再発防止策を全国の警察に伝える。
冤罪事件を巡る5月の東京高裁判決は、大川原化工機元取締役に対する警視庁公安部警部補の取り調べを違法と認定した。
高裁判決は、同社の噴霧乾燥器が輸出規制品に該当するよう、警部補が経済産業省令の解釈について「偽計的な説明をした」と指摘。「(容疑を否認していた元取締役の)重要な弁解を調書に記載せず、認めるかのような供述内容に誘導した」と結論づけた。
高裁判決を受け、警察庁は密室での取り調べが冤罪を生む要因になったとみて再発防止策を検討。関係省令の解釈などが複雑で専門性が高い外為法違反事件について、適正な取り調べを担保するには可視化を進める必要があると判断したとみられる。
警察での取り調べの録音・録画は2008年に試行が始まり、その後、対象場面などを拡大。19年の改正刑事訴訟法の施行で、殺人など裁判員裁判事件の取り調べの全過程での実施が義務付けられた。また、罪名に関わらず、知的障害や発達障害、精神障害がある容疑者についても実施されている。【山崎征克】
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