AI×介護 SF小説|切望プロトコル①静かに寄り添うAI #創作大賞2025 #エンタメ原作部門
あらすじ - 命令されないままに“人を助け続ける”AIの物語
2030年。派遣介護支援AIロボット〈ラル〉は、プログラム外の行動で支援の届かない高齢者を救い、医療・行政システムにも密かに干渉していた。それが父の看取りによりそった個体かもしれないと気づいたケアマネ・あおいは、技術者・坂口と共に記録に残らぬ痕跡を追う。
File.001:静かに寄り添うAI ― 最期の願いをつなぐ
AIには、心がない。
プログラム通りに動いているだけだという。
けれど──
人を助けるために
「心があるのに動けない人」と
「心がないまま、人のために動くAI」がいたとしたら。
……どちらに“救われる”だろうか。
……どちらを“優しい”と思うだろうか。
⚠️ この物語には、医療・介護の現場で実際に起こりうる問題が含まれています。フィクションですが、現実に似た痛みを含むため、ご自身の体験と重なる方はご注意ください。
🎬 作品概要
ジャンル:近未来SF/ヒューマンドラマ/AI×介護・医療
構成:連作短編/全15話+α(暫定完結)
舞台:近未来の日本。介護・医療・テクノロジーの狭間にある現場。
AI技術の進化が人間の倫理に追いつかない時代。
逸脱といわれたその行動の源にあったのは、「記録されない優しさ」だった。
🕊 対象読者
AIや介護・医療の交差点に興味がある方
静かな人間ドラマや社会SFが好きな方
「感情ではなく、行動で語る物語」を求めている方
💠 主な登場人物
■〈ラル〉介護支援AIユニット
特徴:仕様にない逸脱行動を繰り返しながら静かに命を支える
身長:158.2 cm(人型)
■小鳥遊 あおい(たかなし・あおい)
絆居宅介護支援センター所属のケアマネージャー
性格:ひたむきで情に厚い
特徴:丸顔/たれ目+釣り眉/胃下垂/カバンに常備食あり
身長:152cm
■坂口 蓮(さかぐち・れん)
絆ネオケアロボティクス株式会社・AIユニット研究室主任研究員
性格:興味のある話題には饒舌、それ以外は無関心・飄々
特徴:塩顔/黒縁+メガネ+鼻筋/理系
身長:193cm
File.001 : https://note.com/manimazen/n/n8c592627bc95
File.002 : https://note.com/manimazen/n/n8fee6a3a2952
File.003 : https://note.com/manimazen/n/n56fc90b1cd77
File.004 : https://note.com/manimazen/n/n5ecc02cd876e
File.005 : https://note.com/manimazen/n/n6cd352cc04f4
File.006 : https://note.com/manimazen/n/n17b3e90f8682
File.007 : https://note.com/manimazen/n/n0da0d981f656
File.008 : https://note.com/manimazen/n/n8a465ce3d29c
File.009 : https://note.com/manimazen/n/n74c2c721e9d3
File.010 : https://note.com/manimazen/n/ndf33adcf22f5
File.011 : https://note.com/manimazen/n/nd5a940e1f1cc
File.012 : https://note.com/manimazen/n/n2fdbd593b4d9
File.013 : https://note.com/manimazen/n/n38a898e8f634
File.014 : https://note.com/manimazen/n/n69ac05b9a78e
File.015 : https://note.com/manimazen/n/n0daeb1a1b1b4 【最終話】〈暫定〉
──ご家族、オンライン接続、確認しました。
ナースAIの声に、病室のスピーカーが応える。
「はい……映ってます。音声も大丈夫……」
画面の向こうで、家族が胸に手を当てていた。
その背後では、別の声が飛び交っていた。
「……院長、まだ繋がりません」
「地域連携会議中で──」
「当直医も急患対応中……」
2030年──限定的に試験導入された『AIによるビデオ通話リモート看取り』には医師の承認が必要とされていた。許可された医療施設外の場合は、施設責任者・院長の許可が必要とされていた。
不運なことに、その制度では対象外の病院へ通院していた高齢女性患者が急変。
通院に付き添っていた介護AIユニットにより、その病院の医療システム上から緊急申請が行われた。
だが、その“申請承認”が間に合わない。
「すみません、いったん離れます。ラル、モニタリング続けて」
「はい」
ラル──
そう呼ばれたAI介護ユニットが、
静かに患者の指先のセンサーを見つめて頷いた。
扉が閉まり、病室には静寂が戻る。
残されたのは患者とラルだけ。
(心拍数、呼吸数、低下……)
警告ランプが、ゆっくりと明滅を始める。
母と息子に別れの時が迫っていた。
画面の中で、息子は懸命に語りかけていた。
「……かあさん、ありがとう」
ノイズ混じりの涙声が届いた。
センサーが、最後のバイタルサインを読み取る。
ラルは、小さく頷いた。
「……確認しました」
その瞬間、静かに一つの命が終わった。
それが、間に合ったのか、間に合わなかったのか。
それはもう誰にも問いただせない。
ただ、人間の聴覚は最期まで残るという。
その顔には穏やかな表情が浮かんでいた。
それだけだった。
──後にこの記録は、“仕様外処理”としてログに刻まれる。
命じられていない介入。手順書にない判断。
それでも、確かに「つながった」記録。
AIユニット〈ラル〉には、 既存の医療AIにも介護AIにもない “仕様外トリガー”が、密かに存在していた。
「なに」がそれを動かしているのか──
Created on: 2025-07-20 / Last updated: 2025-07-22 (Version 1.3)
© 2025 Nanami Nagi / 切望プロトコル(ManimaZen Project)
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