機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー   作:シャア、あんたちょっとセコイよ!

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ぶっちゃけ北米大陸編での1番の被害者はイセリナのパパさん


17.On the eve of battle with scars

「ふーむ、まさかこうなるとは……」

 

 そこそこ広い独房の中でアリアは備え付けの硬めのマットレスの上に座りながら所在なさげに宙を見つめていた。

 ベッドの位置が成人男性に適した高さなので足は床につかず、プラプラと揺れているのに加えて彼女のきめ細かな白い肌には湿布が貼られていたりする。

 

「あのポンコツシステムめ。出撃するならカタパルトハッチを破壊しないでして欲しいものです」

 

 まだ記憶に新しい北米での決戦において、意識のないアリアの肉体を操った『EXAM』という特殊なシステムは彼女が意識を取り戻すまで相当好き勝手やったらしく、出撃する時は閉じられたカタパルトハッチを内側からミサイルをぶちかまして破壊したらしいのだ。

 着艦し、コクピットから降りて作業員たちから向けられた目は敵意や怒りといったもので、身に覚えのないものそんなものを向けられたアリアも流石に戸惑いを覚え、父であるテムへ事情を聞こうとしたらいきなり出会い頭に頬を張られてしまう。

 

 そして、出るわ出るわ説教の言葉と共にやらかしの数々。その時はEXAMが勝手にやった事とはいえ、傍目から見ればアリアが錯乱したようにも見えただろう。

 しかもそれを終えたと思えば後から来たブライトが幾ら死人がなかったとはいえ危険なことには変わらず、懲罰としてホワイトベースの独房へ入れられることとなったのだ。

 

「……これ完全にとばっちりですよね本当」

 

 湿布の貼られた頬を撫で、ヒリヒリと痛む感触に微かに眉を寄せてアリアは不満ありげに呟く。

 あの時は何も言わずにあんな視線の中に居たくないのも相まって素直に独房に入ったが、それはそうと自分がやったわけではないのにこんな殺風景な場所に詰められるのはあんまりだし、テムからぶたれたことも納得していない。

 

 けれど、言い訳するとしてもどうやって? 『システムに身体を操られてやりました』などとバカ正直にいうか? もしアリアがそんなこと聞かされる側の人間だったら『何言ってんだこいつ、イカれてんのか?』と判断する。というかせざるを得ない。

 

 だから言い訳もせず黙って独房に入ったのだ。途中アムロやミアが抗議してくれたが、アリアから止めるよう頼むことで2人は不承不承従ってくれ特に問題はなかった。

 

 しかし入ってから気がついたが、とにかくやることが無い。反省を促す為の懲罰だから仕方ないとはいえ。そもそも、反省のしようがない。だって、EXAM(ポンコツ)がやったのだから。

 

 本もなけりゃ絵を書くものも無い。眠気も無いので不貞寝したくてもできない。具体的にどれくらいの期間この独房に入れられるかも言われないままぶち込まれたのでどれ程待てばいいかも分からない。

 

「はぁ、暇ですね」

 

 窓もないので外がどうなってるかもわからない。分からないだらけの分からないずくしだ。

 膝を抱え、顔を埋めてアリアは早くこの時間が終わればいいな……と思いながら独り静かに終わりを待っていると。

 

 コツコツ

 

 独房の扉がノックされ、続けて。

 

『アリアちゃん、入っていい?』

 

 くぐもったミアの声が聞こえ、アリアは顔を埋めたまま口を開く。

 

「ご自由にどうぞ」

 

『お邪魔します』

 

 扉がスライドし、独房の中に籠を両手で持つミアが入ってきたがアリアは顔を上げず黙ったままだ。

 そんな彼女を見て薄く苦笑しつつ、ミアは彼女の隣へ座る。

 

「アリアちゃん、調子はどう?」

 

「……至って平常です」

 

「じゃあ、顔上げて?」

 

「……嫌です」

 

「拗ねてる?」

 

「拗ねてないです」

 

「やっぱり拗ねてるよ」

 

「拗ねてないです。ミアさん、なにか用事があったんじゃないんですか?」

 

「あ、そうだった。ご飯持ってきたんだよ、お腹すいてるでしょ?」

 

「空いてません」

 

 ミアが食事の入った容器を籠から取りだし聞いてくるが、アリアは即答した瞬間に彼女の腹へり虫は意地汚く鳴き声を上げて主張した。

 

「………………………………食べるので置いといてください」

 

「……すごい間があったね」

 

「……今日のミアさんはなんだか意地が悪いです」

 

 表情を見せないが、耳たぶが赤くなっているアリアの抗議をミアはクスクスと笑ってみせる。

 

「ご飯、ここに置いとくね。それと着替えとアリアちゃんが持ってた電子書籍だよ」

 

 ミアは籠の中から次々と荷物を取りだし、置いていくと空になった籠をもって用事は済んだようでベッドから降りようとした。

 しかし、なにか引っ張られるような感覚がして下を見ると服の裾をアリアが摘んでいるのが見える。

 

「…………」

 

「ふふっ、はいはい。ここにいるねアリアちゃん」

 

「……ありがとうございます」

 

 大人びてはいるが、アリアはまだ子供だ。平凡とは言い難い生い立ちだが、それでも幼い少女である。個人的に納得できない理由で謂れのない扱いを受ければ傷つくのだ。

 大して親しくもない連中の評価や言葉などどうでもいいが、尊敬する父であるテムからのそれが少しだけアリアには応えてしまった。

 

 だから、何も言わずに隣にいてくれる親友(ミア)には少しだけ今は助かった。

 

 

 

 

「───────」

 

「父さん、寝込むくらいなら今すぐ謝ってくれば? アリアだって悪気があった……いや、悪気がなくてもダメだけど」

 

「───────」

 

「はぁ、自分でやって自分にダメージ食らうならやらなきゃいいのに……なぁ、ハロ?」

 

『ソノトオリ、ソノトオリ』

 

 床に直に座り、手製のペットロボット『ハロ』を股の間に乗せながらアムロは呆れたように言うと続くようにハロの声が響く。

 

 テムはアリアの頬を張ったあと、ブライトが彼女を独房へ連行してすぐにその場で横になってしまう事態になってしまった。

 アムロ自身、テムに何度か叱られたことはあるが殴られたことは1度もない。アリアも同様で……いや、アリア自身はアムロが記録している限り怒られたことなど一度二度あるかくらいだ。

 

 ジオンに攻め込まれてからはその頻度は著しく増えたし、アリアが言うには初めてゲンコツされたらしい。

 だが、彼女が言うにはその時は非があるのは自分だと納得しており特に問題はなかった。

 

 けれど、今回はそれらとは場合が異なるらしい。恐らくだが、アリアにはカタパルトハッチを爆破した記憶は無いことをアムロは知っている。

 アリアが言っていたことだが、あの蒼い機体『ブルーディスティニー』のコクピットに気が付いたら乗っていたと彼女自身の口から聞いているからだ。

 

 加えて、ホワイトベースへ帰還した直後にテムに頬を張られた直後のアリアはずっと呆然としており、何故自分がぶたれたのか理解していない姿を見ている。

 

 ブリッジのクルーたちやテムは彼女がブルーのコクピットにいたことを映像で確認しているためにアリアのやったという事実を否定はできない。

 

 幾らあの決戦でアリアが活躍したといっても、著しくホワイトベースのクルーたちを害した事実には変わらない。もし、無罪放免となれば直接的な手段はしないだろうが彼女に間接的な害意をむける存在が出ないとは断言できなかった。

 だから、テムは衆人環視の前で実の娘を手加減せずに打つという選択肢をとる。

 

 口の端から血を流し、赤く染った頬を呆然とした目で己を見つめる娘をテムは矛先を向けられていない自分ですら胃を握り締められるような緊張感を持つほど、凄まじい剣幕で怒鳴り続ける様子は後から来たブライトが止むを得ず静止するまで続いていた。

 

 そしてブライトに独房へ連行される時に一瞬だけ見えたアリアの横顔には微かに涙が滲んでおり、それを見たテムは暫くの間その場で立ち尽くしており不意に自室へ行くと閉じこもってしまう。

 

 心配になったアムロが入ると、ベッドに横になったまま動かなくなってしまっているテムを見つけ今に至るというわけだ。

 

 アムロは父が自分たちを深く愛していることはガンダムに乗れば痛感していた。常に自分たちが戦場から無事に帰って来れるように夜遅くまで整備を行い、帰還すればなにか不具合がなかったかを事細かに聞いてくる。

 

 アムロとアリアが要望を出せば実現可能なラインで出来る限りそれを叶えてくれる。そんな父が止むを得ずとはいえ血を流すほどの強さでぶつなど、それこそ自分が殴られるよりも心が痛むだろうに。

 

 実際こうして寝込んでるのだからアムロは我が父ながら面倒な人だな、と思ってしまう。だが、そんな人が自分の親なのだから嬉しくも誇らしくもあるのだ。

 

「父さん、アリアは聡い子だよ。きちんと論理建てて事情をいえば納得してくれ……るかはわからないけど、少なくとも理解は示してくれるよ」

 

『シメス、シメス』

 

「それにアリアが言ってたけど、あのブルーディスティニーって機体はどこかオカシイらしい」

 

 アムロが何気なく言った言葉にベッドに伏せていたテムの肩が不意に揺れる。

 

「なんでも、気が付いたらあの機体のコクピットにいたらしいよ」

 

「それを早く言わんか!」

 

「うわっ!?」

 

『ウワー』

 

 ガバリと起き上がりってテムはアムロへと詰め寄り、突然のドアップにアムロはたじろぐ。ついでにハロは転がるのだった。

 

 それと同時に……

 

『総員、第一種戦闘配置!! 繰り返す、総員、第一種戦闘配置!!』

 

 サイレンとともにそんな放送がホワイトベース内に響き渡る。

 

 

 

「見えました、木馬です!」

 

 ガウ攻撃空母のブリッジで操縦士が言うと、その隣にいた金髪の美女が目付きを険しくさせた。

 その美女の身なりはほかのジオンの兵たちと違い、明らかに戦場には不釣合いな上品なブランド物の衣服で固めており、纏う雰囲気も何処かの令嬢を思わせるものだった。

 

 彼女の名前は『イセリナ・エッシェンバッハ』ニューヤーク前市長の一人娘であり、そして……ガルマ・ザビの恋人だった女性である。

 

 そんな人物がいるわけはガルマの仇討ちだ。自分の想い人を殺めたというモビルスーツとそのパイロットがいるという連邦の軍艦をガルマを慕っていた者たちが独断で弔い合戦に出るところを強引に同伴したのだ。

 

「あそこにガルマ様の仇が……」

 

 命からがら基地へと帰ってきたパイロットが見たという蒼いモビルスーツ。

 イセリナはその華奢な手を握り締め、瞳に憎悪の炎を宿して傷だらけの白亜の艦を睨みつける。

 

 たとえ刺し違えてでも、イセリナは想い人の無念を果たすために戦場へ立つのだ。

 




その頃のシャアは自室で引きこもってます。おら、どうした親の仇の一族の1人が消えたんだぞ。お前が望んだんだから喜べ。お前が始めた物語だぞ。

後継機

  • 既存機体を魔改造
  • オリジナル機体
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