機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー   作:シャア、あんたちょっとセコイよ!

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キシリア特殊部隊抱えすぎ問題


12.The Fairy and the Raven

「幸いなことに、というより不気味なことにジオンの連中が攻めてこなかったお陰でガンキャノンを予想よりも早く直すことができた」

 

「まぁ、それは良かったです」

 

 格納庫で草臥れた様子のテムと他作業員たち。その背後には喪失した兵装が新しくつけ直され、元の姿になったガンキャノンの姿が。

 前回の戦闘から凡そ4日、何故かジオンは攻めてこず遠くからドップが少しの間監視してくるだけに留めていることが続いており、不気味に思いながらもこれ幸いと作業スピードを早めたことによりガンキャノンの整備がつい先程終了した。

 

「先の戦闘でアムロのガンダムの稼働データから重力下でのズレも修正を済ませているから、アリアにはその最終調整をしてもらいたい。構わないな?」

 

「はい、問題ありません」

 

 テムから聞かれ、アリアは頷く。

 

「良し、ではリュウ・ホセイ曹長が哨戒ついでに僚機としてコア・ファイターが同行する。巡回経路をぐるりと回った後、ホワイトベースに帰還するように。

 もし、ジオンの部隊を発見しても戦闘は控えるようにな?」

 

「はい。保護者(リュウさん)が同伴してパトロールですね」

 

「宜しい、では30分後に出撃だ。パイロットスーツに着替えた後、時間まではコクピットで待機するように」

 

「はい」

 

「……すまないなアリア、お前に軍人の真似事をさせて」

 

「いいえ、父さん。ホワイトベースには自分がやれることをやってる人がたくさんいます。私がやれることをやるのは当然ですよ」

 

「……そうか、お前は本当にいい子だな。不甲斐ない私たちを許しておくれ」

 

「では、落ち着いたら兄さんと一緒に3人で何処か遊びに行きませんか? 

 私、地球の海でイルカを見てみたいです」

 

「ハハハ、イルカでもクラゲでもクジラでも見せてやろう。幸いなことに手当が沢山出るだろうし金だけはあるからな」

 

「それは楽しみです。では、行ってきますね」

 

「あぁ、行ってらっしゃいアリア」

 

 アリアはテムと別れ、更衣室に向かうとロッカーから自分のサイズにあったパイロットスーツを取り出し、下着姿になるとスーツに袖を通す。

 

「……仕方ないとはいえ、無駄に体のライン出過ぎじゃありませんかねこのスーツ?」

 

 羞恥心というのは無いが、それはそうと少々不安になる生地の薄さのスーツを見下ろしながらアリアは着心地を調整するとヘルメットを抱えてガンキャノンの元へ向かった。

 大気摩擦や戦闘によって傷だらけだった装甲を新しく変えられたガンキャノンの姿は何処か誇らしげにも見え、アリアはその表面を軽く撫でた後にコクピットへその身体を収め、各システムにスイッチを入れる。

 

『こちらリュウ、今回は宜しく頼むぞ嬢ちゃん』

 

 すると、コア・ファイターに乗り込んでいたリュウから通信が届いた。

 アリアはサブモニターに表示されたリュウに頭を僅かに下げる。

 

「はい、こちらもお願いしますリュウさん」

 

『おう。といっても、哨戒任務ついでに機体の最終調整をするだけだからそこまで重く捉えることは無いさ。

 ジオンの連中もなんでかココ最近は遠くから見てるだけだから。見つかっても見つけても戦闘にはならんだろう』

 

「ですね」

 

『さて、もうそろ時間だ。俺が出たあとにお前さんも続いてくれ』

 

「はい」

 

 通信を切り、時間を知らせるブザーが響く。時間通りカタパルトハッチが展開し、外の景色が顕となった。

 

『リュウ・ホセイ、コア・ファイター出るぞ!』

 

 凄まじい加速を伴ってコア・ファイターは飛び立ち、上空を舞う。

 アリアの順番が来るとガンキャノンの脚部をカタパルトに固定させ、ブリッジからフラウの通信が入った。

 

『アリアちゃん、気をつけて行ってらっしゃい』

 

「はい。では行ってきますフラウさん」

 

『射出タイミングをアリア・レイに移譲します』

 

「了解、アリア・レイはガンキャノンで出ます!」

 

 操縦桿(レバー)を押し倒し、ガンキャノンがカタパルトから凄まじい勢いで射出され、その赤い体がホワイトベースから投げ出される。

 上空に躍り出たガンキャノンだったが、アリアは微調整を行いブースターを噴射させると落下する速度を調節させ、難なく大地へと着地させた。

 

「リュウさんは……あっちですね」

 

 すぐにリュウのコア・ファイターがいる位置を確認し、アリアはブースターを再び点火すると長距離ジャンプを敢行。予め知らされたルートを進み始める。

 

 

 

 

「んー、到着!」

 

「ここがガルマ・ザビ大佐の北米本部ですか……」

 

「私らの拠点と違ってやっぱり殺風景だなぁ」

 

 輸送機から降りてきた3人の女性は滑走路に立ち、広がる光景を見ながら感想をこぼす。

 彼女たちはキシリア傘下の『ノイジー・フェアリー隊』ジオンでは珍しい所属するメンバーは全て女性で固められたモビルスーツ部隊で、ジオン公国領内で埋もれている『人材の発掘』と『人的資源の確保』を目的として設立された部隊のうちのひとつだ。

 

 背筋を伸ばし、テンションの高いオレンジの髪の快活な少女が『アルマ・シュティルナー』少尉。

 眼鏡をかけ、おっとりとした焦げ茶の髪色の小柄な少女が『ミア・ブリンクマン』技術少尉。

 ほか2人と違って、粗野な雰囲気のある銀髪のスマートな体格の少女が『ヘレナ・ヘーゲル』曹長

 

 この3人がノイジー・フェアリー隊の戦闘を担うパイロットたちで、その後ろに続くように輸送機から降りてきたのは金髪のロングヘアの美女だった。

 

 彼女は『キリー・ギャレット』少佐、ノイジー・フェアリー隊の指揮官であり、彼女達の上司である。

 

「私たちは秘匿された部隊で、普通の軍事基地を使ってないからティルナーノーグに慣れてると、こうしたザ軍事基地は新鮮でしょう?」

 

「ですねー。うわー、ザクが沢山いますよ少佐! あ、あそこにあるのって私のザクと同じ陸戦高機動型ザクですかね!? 私のと違って赤いです!」

 

「あそこにいるのはもしかして『MS-08TX イフリート』? 私の知ってる姿と差異がありますけど、改修機でしょうか……

 あそこには『MS-07B グフ』? それに、あの機体カラー……まさか『青い巨星』ですか!? それにアルマさんの言っていたザクのカラーリング……わぁ、やっぱりあの『赤い彗星』ですよ!」

 

「凄いな、ジオンのモビルスーツが勢揃いか? おまけに名だたるエースも集結してる……」

 

「それだけガルマ大佐は今回の作戦に力を入れているということね。キシリア閣下が私たちをガルマ大佐へ貸与されたということは、貴方達がその戦列に加わるということを覚えておいて頂戴」

 

 キリーが言うと、少女たちは背筋を正す。

 それと同時に、彼女たちの元に近づいてくる影があった。

 

「よく来てくれたキリー・ギャレット少佐。かの『キラー・ハーピー』の率いる部隊が来てくれたのは喜ばしいよ」

 

 彼女たちを迎えるのはガルマだった。その横にはシャアと体格のいい髭の生えた男が。

 

「はっ、本日付けを持ってノイジー・フェアリー隊現着しましたガルマ・ザビ大佐」

 

「うん、確かに確認した。楽にしてくれていい少佐」

 

「ハッ!」

 

 ギリーたちは敬礼を解き、ガルマは頷くと手を差し出すとギリーはその手を握り、握手を交わす。

 

「わぁ……ザビ家のガルマ様か。初めて見たなぁ……」

 

「シャア・アズナブルやランバ・ラルをまさか生で見られるなんて感激ですね……!」

 

「…………(変な仮面だなぁ)」

 

「それにしても、姉上は様々な秘匿している特殊部隊を持っていることは知っていたが、女性だけで固めた部隊があるとはな……

 事前に知らされていたとはいえ、こうして実際に目にすると驚きを隠せないな」

 

「驚かれるのも無理はないかと。ですが、彼女たちはまだ若いですが活躍はエースに劣りませんよガルマ様」

 

「君ほどの人物が言うのならそうなのだろう。諸君らの任務地も同じ北米だが、慣れない土地への長旅ご苦労だった。疲れているだろうし、存分に英気を養ってくれ。

 作戦開始日になれば存分に働いてもらうからな」

 

「ハッ!」

 

 ガルマはそう言い残し、その場を去っていく。

 

 

 

 

「いやぁ、ザビ家って聞いてたけどガルマ様優しそうな人だったね〜」

 

「ガルマ様はザビ家の中でも温厚な方ですからね。北米で現地の人たちの交流をかかさず、他の地域よりも荒れてないそうです」

 

「確かに、なんていうかお坊ちゃん? って雰囲気だもんな〜」

 

 割り当てられた格納庫でアルマたちは先程顔を合わせたガルマへの所感を話していた。

 

「確かに彼はザビ家の良心的存在よ。彼のおかげでジオンはまだ割れてないといってもいいもの」

 

 その会話に混ざるようにキリーが格納庫の中へと入ってくる。

 

「そうなんですか、少佐?」

 

「ええ、貴方たちも知ってるだろうけどザビ家は兄弟仲が悪いわ。

 それなのに、キシリア閣下の陣営である私たちやドズル閣下の部下である赤い彗星や青い巨星が一堂に会すなんて珍しいなんてものじゃないのよ。

 それだけ、彼がザビ家の仲を取り持っているという証でもあるの」

 

「そうなんですか〜……ん、でもそれだけ珍しいことが起こるほど今回の作戦目標は凄いってことですか?」

 

 アルマのその発言に、格納庫内に何処か呆れたような空気が蔓延する。

 それを感じとったのか、アルマはあれ、と首を傾げるたギリーが肩をすくめながら説明した。

 

「今回の作戦目標は連邦の虎の子の秘密作戦の成果でもある軍艦とモビルスーツよ。

 これらは既に赤い彗星シャア・アズナブルが戦闘をしているのだけど、連中は宇宙での二度の襲撃を退けた挙句にシャアを2度も撃墜しかけた。

 おまけに、艦やモビルスーツは単独で大気圏を突破するほどの性能の高さを見せているわ」

 

「あの赤い彗星を退けるどころか撃墜しかけたんですか!?」

 

「おまけに単独で大気圏を突破するとかデタラメすぎだろ……」

 

「す、凄いんですねぇ……」

 

「凄いなんてものじゃないわ。特に要注意なのが敵軍艦の木馬ことホワイトベース…………ではなく、モビルスーツよ。現在確認されているのは3種類の機体で、その名前はガンダムとガンキャノン、ガンタンク」

 

 キリーは持っていた端末を起動させ、その画面をアルマたちへと見せる。

 

「わー、目がふたつありますねこの白いガンダムって機体」

 

「……肩から見えるキャノンと名前からしてガンキャノンは中距離支援機ですかね」

 

「……タンクって名前ついてるのにモビルスーツなのか?」

 

「戦闘記録を見てちょうだい」

 

「わかりました」

 

 キリーに言われ、アルマは動画を再生すると最初は興味深そうに見ていたが次第に険しくさせていき、最後には顔を引き攣らせていた。

 

「や、ヤバくないですか? このガンダムとガンキャノン……」

 

「ガンダムは見たところ白兵戦を担当しているのは分かります。ですが、中距離支援機でこの動きを!? 中のパイロットはGですごい負荷がかかっているはずなのに……おまけになんですかこのキワモノ兵器……モーニングスター?」

 

「おいおい、大気圏降下して狙いがろくに定まらない中でザクを2機撃墜するとか化け物かよ……おまけに」

 

「「「タンクって動きじゃない(ですよ)(じゃねーか)!」」」

 

「タンクって戦車だよね!? なんでこんなかっ飛ばして走れるの!? え、ジャンプして空中で回転してバック走してる……怖ぁ」

 

「明らかに白兵戦するような機体じゃないのに、どうしてザクを蹴散らせるんですか〜!?」

 

「おい、タックルした挙句にドリフトしたぞ! こいつだけやってること可笑しいぞ!?」

 

「貴方たちの気持ちもよーくわかるわ。私も初めて見た時は悪質なフェイク動画だと思ったし、思いたかったわ。けど、残念なことに現実よ」

 

 頭が痛そうにするキリーと現実離れした映像にモビルスーツの常識をぶっ壊されている少女3人だったが、今回の作戦では自分たちがコイツらを相手にすることを思い出す。

 

「不安もわかるわ。これまで戦ってきた相手とはまさに格が違う。決して油断してかからないようにね?」

 

「こんな映像見せられたら油断なんて出来ませんよ……」

 

 アルマのぼやきに2人は深く頷いた。

 

「ええ、もしこれを見ても舐めたことを言ってたら即修正してたところね。

 とにかく、私が言いたいことは彼らを決して普通の敵だと思わないこと。幾らエースが集結してるとはいえ、油断すれば容易く屠られることをシャアが身をもって証明して見せた」

 

 キリーはそこで区切ると改めて3人を見やる。家族のように接してきた少女たちを。

 

「いい、必ず私の前に帰ってきて頂戴。軍人としては失格だろうけど、任務なんかよりも私は貴方たちの方が大切よ。

 絶対に刺し違えて……なんてことはしないことを約束して」

 

 心の底から自分たちを案じるキリーの気持ちをアルマは感じ取り、胸の内が暖かくなる。ミアとヘレナも言葉からそれを感じたのか、その表情を和らげた。

 

「はい、必ず帰ってきます少佐」

 

「私も、皆さんとまたお風呂入りたいです!」

 

「ケーキも食べたいしね」

 

「ふふっ、ええ。お風呂でもケーキでもなんでも用意するわ」

 

 4人は朗らかに笑う。その顔には不安はなくなっており、必ず生きて帰るのだと固く、硬く胸に誓う。

 

 

 

 そして、アルマは直面する。

 

「な、なんでここに……!?」

 

『……見たことの無いカラーリングのザクですね。新型ですか?』

 

 崖の上でこちらを見下ろす深紅の装甲の機体を前にアルマは震えを隠せなかった。

 こちらを見ているはずなのに見ていない、まるで路肩の石のように雑草を見るかのような無機質なそんな視線。

 そして、自分たちをどう(落と)すかを冷徹に考える思考。

 

 敵意も殺意もない、ただ純粋に作業的に始末することしか考えていないという思考にアルマは恐怖する。

 

『……本来なら戦うことはダメなんですが、見逃す理由はありませんね』

 

 妖精は鴉と銃火を交えるのだった。




雑に機体交換をさせる理由をぶち込んでくスタイル。ネタバレになるけどガンキャノンはお釈迦になるよ。
あと作者コードフェアリーやったことない・・・

後継機

  • 既存機体を魔改造
  • オリジナル機体
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