機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
「まさか、タンクをお釈迦にするとはなぁ……」
テムは自分の娘が仕出かしたことに怒るよりも感心してしまうように呟いた。
先の襲撃で実の娘がひとりでガンタンクを動かし、ジオンの地上部隊を全滅した活躍は記憶に新しい。
「……アリアの動かし方だとこの先戦闘の度にオーバーホールをすることになりそうだな。最初はいいが、そんなことを続けていれば直ぐに機体も整備士も耐えられない……パーツもすぐに無くなるぞ?
だが、殺し合いの最中に機体を案じて手加減をしろ……なんて言えるわけが無いだろう。
せめてガンダムくらいの機体がもう1機いれば……いや、ないものねだりをしても仕方ないか」
幸いにもルナツーで限界まで武器弾薬、予備パーツは積み込まれている。だが、たったの2回の戦闘で予想よりも遥かに多くの消耗を確認し、テムは頭を悩ませる。
「あの子たちにこんな才能があったことに親として悲しむべきなのだろうな……」
そう言い、今なお整備中のガンキャノンへと視線を向けた。年若い少年少女が戦う必要がなくなるためにガンダム達を作ったはずが、今こうして自分の子供たちを乗せている現実にテムは自嘲するような笑みがこぼれた。
「だが、戦場へ送り出すならせめて万全の状態にしなければならない。それがせめてもの私がしてやれることだ」
両の頬を叩き、テムはガンキャノンの元へと歩く。
「アムロー、アリアー!」
戦闘を終えて機体から降りた2人が通路を歩いていると、そんな声が前方から聞こえてくる。
なんだと思いながらいると、食器等が積まれたカートを押す3人の子供を発見した。
「おや、カツさん、レツさん、キッカさんですか。どうしました?」
「走ると危ないぞー」
そんな声とともに、避難民のいつも一緒にいる3人の子供たちは2人の元へやってくる。
「はい、これ! みんなで急いで作ったのよ? お祝いなんだから!」
「そうそう。2人とも凄かったよ!」
「俺もモビルスーツに乗ってジオンの連中やっつけてやりたい!」
金髪の幼子、キッカは2人に皿に盛ったパイを渡すと、残りのカツとレツが興奮冷めやらない様子で語ったが、アムロは微妙そうな顔を浮かべてアリアは少しだけ小首を傾げた。
「危険ですからやめた方がいいですよお二人共、パイは有難く貰いますねキッカさん」
「遊びじゃないんだから危険なことはやるもんじゃないぞお前たち。……結構行けるな、美味しいよキッカ」
「はしたないですよ兄さん」
「いや、お腹が減ってる時にこのミートパイを見たら我慢できないよアリア」
キッカから渡されたパイをひとくち食べ、感想を言うアムロと窘めるアリア。丹精込めて作ったものを褒められたキッカはご満悦だが、残りのふたりはアムロの言葉に不満げに口を尖らせる。
「でしょー?」
「じゃあふたりはどうなのさー?」
「そーだそーだ」
「僕たちは例外だよ。父さんたちは今デスマーチ中だから整備員の誰かに言えば勝手に食べるだろうから邪魔にならないところに置いときな」
「では、失礼しますね3人とも。あまり艦内を走り回ってクルーの人たちを困らせてはいけませんよ?」
「「「はーい」」」
3人とは別れ、ふたりは一旦別れて汗を流した後に合流して向かったのはブリーフィングルームだった。
「やっぱり重力下だとビームの軌道だったり機体の動きが想定よりズレがあるな。事前にある程度の修正をしていたけど、実際に動かすとなると違うものだね」
「ですね。本来モビルスーツというのは陸戦兵器ですし、兄さんがやったのはあくまで高推力にものを言わせて強引に跳ばしてるだけですし」
「それもそうだね。やっぱり支援要員が欲しくなるなぁ。
ジオンの連中があれで終わりとは思えないし」
「ハヤトさんがシミュレーターをやっていましたし、リュウさんもパイロット候補なのですから次の戦闘では出番があるかもしれませんよ?」
「リュウさんなら正規の軍人だしわかるけど、ハヤトが?」
「はい。といっても戦力になるかは未知数ですが」
「でも、ガンタンクに乗って適当に弾幕を張ってくれるだけでも助かりはするかな。結局、僕らが敵を倒さなきゃいけないんだし余計な横槍を入れられないだけで楽になるかもしれないし」
「それもそうですね。雑兵程度なら蹴散らせますし」
「じゃあ、これを───」
「では、こうして───」
モニターに戦闘記録を映し出し、ふたりは次々と改善点を出し合っていく。どちらも年端もいかない少年と少女が互いに顔を突合せて議論を交わすというには物騒すぎる内容だが、それを指摘する存在は生憎ここにはいない。
結局、この会話が終わったのは2人の姿が見えないからとフラウが探しに来て強制的に中断されることと相成った。
『お前がこうして連絡を入れるのは珍しいなガルマ。あぁ、お前が見繕ってくれた玩具だが、ミネバがたいそう気に入ってくれてゼナも喜んでいたぞ?』
「それは良かったよ兄上、僕としても頭を悩ませた甲斐が有る。
けど、今は仕事の話をしたいんだが、別にいいかな?」
『おお、それもそうだな。俺としたことがうっかりしておったわ』
ガハハ、と豪快に笑う巨漢の映るモニターの名は『ドズル・ザビ』ジオンのトップザビ家の三男でジオンの宇宙攻撃軍総司令の肩書きを持つ実質的なジオン軍のトップであり、ガルマの兄にあたる人物だ。
ガルマは顔を引きしめてドズルへと告げる。
「兄上、単刀直入に言います。北米に戦力を貸してほしいのです」
『……ふぅむ』
その要求聞いてドズルは椅子の背もたれ体を預け、眉根を寄せた。
『お前がそういうことは木馬か?』
「はい。少し前に襲撃をかけたのですが、持ち込んだ航空戦力および地上戦力の全てを落とされました。それもたったのモビルスーツ2機が……ですよ?」
『なんだと……?』
「加えて、シャアが事前に提供された戦闘記録では奴らは地球に降りてくる前にも11機のザクを撃墜し、2度もシャアを落としかけています。
そして僕は奴らが地球に降りて来て1日と経たずに襲撃をかけました。奴らも疲労しているはずなのにですよ? それを奴らはまだ地球の重力に不慣れな筈なのに難なく切り抜けました。
詳しい内容は既に送ってあるデータファイルをご参照ください」
そうして添付された報告書のファイルをドズルは目を通し、流し読みをして目を見開く。
『凄まじいな……』
「でしょう? 僕自身、最初もシャアの話を半分程度にしか信じていませんでした。確かに凄いが、不慣れな環境に加えて連邦もまだモビルスーツには素人……金だけをつぎ込んだだけの性能だよりだと。
ですが、そんな考えなど実際に戦ってしまえば吹き飛んでしまいました」
『なるほどな。つまりは木馬を完璧に落とすために俺を頼ったというわけだな?』
「えぇ、はい。付け加えて言うのならキシリア姉様にも頼るつもりです」
『キシリアにもか?』
「はい。兄上からしたら面白い話ではないでしょうが、僕は……私は此処がジオンの分水嶺と判断しました。
ここで木馬たちを逃せば途轍もない厄災となってジオンを襲うと……故に、私は私のできることをしたいのです。
ここまでに犠牲となった兵たちに、これから死地へと送る兵たちの為に」
『そうか。そこまでの覚悟をお前はもったのか』
漢の顔をした末弟にドズルは感慨深く呟き、記憶していた可愛い弟は既に一人前の軍人に成長したのだと、寂しさを覚えながらも何処か誇らしげな気持ちを抱いた。
ドズルはその凶悪な人相を愉快げに歪め、ガルマの願いを快諾する。(なお、その笑顔を見て控えていた部下は悲鳴をあげた)
『わかった、お前には俺の部下のエースと部隊のいくつかを回す。だが、北米は現在安定しているからあまり数は回せないことを留意しておいてくれ。
キシリアには俺からも話を通しておこう。アイツが出し渋るのならカチ込むことも辞さんぞ?』
「それは頼もしいですね。ですが、血を分けた家族なのですから程々にお願いします。兄上達には私の恋人を紹介したいのですから」
『おぉ! お前にもそんな相手ができたのか!』
「はい! 彼女はとても素晴らしい女性です。それこそ彼女の為ならば私は連邦を打ち倒し、その残骸にジオンの旗を突き立てる覚悟を持つほどです」
ガルマが地球で出会ったニューヤーク市前市長の娘『イセリナ・エッシェンバッハ』はガルマとは相思相愛の仲だ。
それこそ、彼女の為ならばジオンすら捨てる覚悟もある。だが、今はその思いを蓋をしてガルマはジオンの軍人として、ザビ家の男としての役目を果たすためにこの場に立っていた。
ドズルはガルマと宣言を聞き、感極まったように目頭を抑える。
『そうか、そうか……! よもやそこまでお前は…………!』
「ハハハ、まだ泣くには早いですよ兄上。祝杯を上げるのは僕が勝ってからですよ?」
『あぁ、そうだな。……お前のために取っておきのワインをギレン兄に用意してもらおう。お前の成長を聞けば冷血漢のギレン兄も喜ぶだろう』
「はい、楽しみにしておきます。……では、ジークジオン」
『ジークジオン、ガルマ……死ぬなよ?』
ガルマはその言葉に返さなかった。
暗転したモニターを少しの間見つめ、ガルマは笑った後にザビ家唯一の女傑へ通信をするためにボタンへ手を伸ばす。
「ふむ、凄まじいなホワイトベースの活躍は……」
南米ジャブロー、一部の将校しか入れない空間で豪奢な椅子に座る老人は感嘆を隠せない様子で呟きが木霊する。
目を通しているのはルナツーで回収されたホワイトベースの戦闘記録で、異常ともいえる活躍に地球連邦軍最高指揮官『ヨハン・イブラヒム・レビル』大将は豊かな髭を蓄えた口角を上げた。
連邦の総力を上げたV作戦は確かな成果を上げており、途中正規のクルーたちが全滅した時はここまでかと思ったが、V作戦のモビルスーツの開発者テム・レイの2人の実子がモビルスーツを駆ることでジオン相手に正に獅子奮迅の活躍を見せる。
現在は訳あってジオン勢力下の北米にいるようだが、潜んでいる反ジオン勢力からの確かな情報によれば、地球降下前と地球降下時で煮え湯を飲まされたシャアの攻撃を蹴散らし、ガルマの襲撃を難なく撃退したらしい。
正規の軍人ではなく、ただの民間人が……である。
「ガンダムならまだしも、ガンキャノンとガンタンクでこの活躍か」
アムロ・レイも素晴らしいが、アリア・レイは凄まじいの一言に尽きる。
白兵戦用に他2機よりも遥かな高性能のガンダムではなく、コストはかかるがガンダムよりも性能が下のおまけに支援機でザクを鎧袖一触に蹴散らすのは正に鬼神の活躍だ。
「この少女にガンダムほどの機体を渡せばどうなるだろうな?」
レビルは思案する、本来ガンキャノンは前線を張るような機体ではない。だが、それをガンダム程の機体にすればどうなるか?
レビルは即座に電話へと手を伸ばすととある番号を入力し、コールを掛ける。一度二度なった後に回線が繋がった。
「私だ、例のジオンからの亡命した科学者が作った機体があるだろう? あぁ、それだ。それを北米のホワイトベースに届けて欲しい。彼女なら存分に使いこなすだろう。あぁ、届けるのはマチルダ中尉にさせるさ」
受話器を置き、レビルは通話を終わらせるとゆっくりと柔らかい椅子の背もたれへ体重を預け、宙を見上げる。
空調によって快適な空気に保たれたジャブローにおいて、レビルの内にあるのは確かな高揚感だ。
「勝てる、ホワイトベースがあればこの戦争、連邦の勝利だ」
凄惨な笑みを浮かべ、レビルは憎き宇宙の連中へと殺意を募らせる。
「これがレビル将軍の言っていたモビルスーツ?」
「はい。ガンダムの制作段階で弾かれたパーツを用いて建造した陸戦型のようですよ」
連邦軍が使用している輸送機、三脚のやぐらの上に胴体を乗せたような形状をしてそのやぐらの間にコンテナを格納した機体ミデアを前に二人の軍人が現在積み込み途中のモビルスーツを見て会話をしていた。
「なんでも北米にいるホワイトベースのガンキャノンのパイロットのために態々将軍が用意したみたいです」
「それだけ彼らに期待してるということね?」
「はい」
「それにしても、ガンダムって言う割には角がないのね?」
「なんでも特殊なシステムを積んでるみたいで、その頭部がジムのものだったのですが、試験中にジムが素体では耐えられなかったみたいで止むを得ず建造途中だった陸戦型ガンダムを素体にしたみたいです」
「なるほどね……えーと、機体名は……」
女の軍人、マチルダは端末に表示された機体の名前を見て僅かに眉を顰める。
「
「ハハハ、中尉も思いますか? ですが、性能は折り紙つきらしいです」
「まぁ、要求に満たないで弾かれたパーツとはいえガンダムのパーツを使ってるのだから、そりゃ性能はいいでしょうね。
何はともあれ、ジオン勢力下でこの機体をホワイトベースに届ける……責任重大だわ」
「マチルダ中尉ならできますよ。それに、ウッディ大尉との結婚も控えているんでしょう?」
「ええ、式には呼んであげるわよ?」
「そりゃ楽しみだ!」
マチルダと男は会話を終わらせ、マチルダは改めてその機体を見つめた後踵を返してその場を去るのだった。
そして、機体はミデアへ積み込まれジャブローの空を舞い北米へと飛んでいく。
暗いコンテナのなかで、
ネタバレになるけどマリオンちゃんはアリアに調教(意味深)されます。ついでにガルマは死ぬ。ガンキャノン?あいつは良い奴だった。
後継機
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既存機体を魔改造
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オリジナル機体