機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
ガンタンクはV作戦において、長距離砲撃支援を目的とした支援機だ。
長射程を活かして敵の認識外からその巨砲を叩き込む……連邦の大艦巨砲主義を正しく表した機体とも言えるのがガンタンクの特色と言えよう。
そもそも、開発時期も連邦がMSの理論をよく理解してないうちに二足歩行システムの完成を待たずにして開発したのもあって分類上MSに分けられるが、実態はMSサイズに大型化させた戦車と言った方が正しい。
いや、厳密に戦車と言うにはコアブロックシステムを採用した為に砲塔にあたる上半身を旋回できないので、どちらかと言うなら自走砲といえる。
まかり間違っても前に出て戦うような機体ではないのだ。何故なら役割のとおり、本機には白兵戦をするような機能はなく自衛も殆ど僚機に任せるという割り切りっぷり。
だのに、現在ガンタンクは荒野を縦横無尽に駆け回っているでは無いか。
脚部にあたる下半身の履帯をフルスロットルで回し、機体後部のブースターも稼働させることでその巨体からは想像出来ない速度で地走しながら左右の腕のボップミサイルの砲門を構え、装填されたミサイルを発射。
『ひっ、誰かたすけ──
『この、重力に魂を引かれた連邦の犬め─────
ガンタンクを狙っていたマゼラアタックに突き刺さり、爆発。ついでに進路上にいたザクは引き潰された。
「んー……
ボップミサイルも戦車や戦闘機相手なら十分ですが、ザク相手だと牽制程度にしかなりません」
『これは避けれないだろ!?』
『死ね!』
背後から撃たれたマゼラアタックの砲弾を横方向にブースターを吹かすことで、強引に軌道を変更させすぐ側を砲弾が通り過ぎる。
お返しとばかりにアリアは機体下部に備えられたブースターを吹かすことで僅かな時間滞空し、空中で姿勢制御バーニアにより方向転換、履帯の動かす方向を反転させ着地。バック走行しながら主砲の120mm低反動キャノンを発射。
『戦車のくせしてデタラメすぎだろ!?』
『いいからさっさとアイツを落とせ!』
『『うわぁぁぁっ!?』』
飛んで行った砲弾はマゼラアタックとそばに居たザクを巻き込んで着弾し、大きな土煙と何かのパーツが空高く舞い上がる。
「オマケにマニュピレーターを武器にしてるからMSの利点である細かい動作ができないのと、ガンダムやガンキャノンの手持ち武器を使用できないのが痛いですね。
連邦がMSをよく分かってないうちに作ったのですから仕方ないとはいえ、せめてそこら辺はもう少しやりようがあったでしょうに……」
モニターとセンサーに細かく目を配りながらアリアはガンタンクを動かしてる最中に思ったことを喋り続け、作業のようにジオンの地上部隊の数を減らし続けた。
「おまけに下半身を履帯にするのはいいですが、せめて上部や可動部を装甲で隠すくらいはして欲しいですね。
むき出しのせいで敵の弾が当たったら動けなくなってしまいます。
ですが、MSサイズにしたお陰と武装は実弾なのでジェネレーターのエネルギーの殆どを推力などに回せるのは良いですね。エネルギー残量を気にせずブーストを使えるので。
でも、それなら普通に戦車でよくないか? と言われたらそれまでですね」
ヒートホークで勇敢にも切りかかってきたザクだったが、振り下ろし切るまえにガンタンクの履帯の動きを調整しつつブーストを吹かすとガンタンクの巨体が横滑りし大きな轍を作り出す。
『ど、どこにい─────』
ザクのパイロットの目には突然目の前にいたはずのガンタンクが消えたように見えただろう。そして、どこに行ったかを確認する前にパイロットの意識は背後からの衝撃によって途絶え、二度と覚めることはなかった。
「……良くも悪くも、モビルスーツという新兵器を手探りで想像が及ぶ範囲のもので作り出された結果、生まれた珍兵器ですねガンタンクというのは」
ガンタンクでドリフトを行いザクの背後をとり、ゼロ距離から主砲をぶっぱなしたという曲芸を披露したアリアだが、その表情は凪いでおり撃破したばかりのザクに一瞥すらせずに次の目標へガンタンクを走らせる。
『な、なんなんだよお前!?』
『俄仕込みのモビルスーツもどきが!!』
「威勢だけはいいですね」
オープン回線で聞こえてきたジオン兵の叫びに対するアリアの返答は主砲とボップミサイルだった。
程なくして地上部隊は数機のマゼラアタックを残し、敗走することとなる。
「こ、航空部隊並びに地上部隊……ぜ、全滅しました……」
ガウのブリッジに重い沈黙が訪れ、ガルマは出撃させた部隊のほとんどが帰ってこない事実に戦慄を隠せなかった。
事前にシャアからの戦闘記録から出来る限りの準備を行い、地球に降りてきた直後の相手が息をつく暇も与えずに襲撃をかけた……結果はどうだ? 母艦にはマトモなダメージすら与えられず、白いモビルスーツと戦車もどきのたった2機により投入した戦力全てを落とされる。
何かの悪い冗談だと思いたいが、ガルマの冷静な思考が事実だと目の前の現実を見せつけてきた。
「……至急、本国の2人に応援を頼め」
「は、ハッ!? ドズル閣下とキシリア閣下にですか!?」
「そうだ。お前たちも見ただろう? 木馬とモビルスーツの出鱈目な活躍を。あれは今この大陸にいる間に落とさなければジオンにとてつもない災いを齎す。
あんなのを前にすれば、私のつまらないプライドなど捨てた方がマシだ。
目先の利益よりも後のことを見据えなければ、我々ジオンは連邦に勝てないのだからな」
力無くシートに座り込み、ガルマは目を覆って宙を仰ぐ。
「すまないイセリナ、しばらく君の元には行けなさそうだ……」
地球で出会った最愛の女性の顔を思い浮かべ、ガルマはここが自分の死地になるかもしれないと何処か他人事のように思いながら呟き、木馬の攻略について思考を巡らせ始めるのだった。
「は、ハハハ! 凄いじゃないか連邦のモビルスーツの性能は!! 見てみろ、あのジオン星人がみっともなく敗走してるぞ!?
勝てる、勝てるぞ我々は!! ガンダムとホワイトベースがあれば、あんな宇宙人共など絶滅させることが出来る!!」
ブリッジ内に響き渡る熱の籠った叫びとは対照的にクルーたちの表情には戸惑いの色が滲んでいる。
「2人だけで、あれだけの数を……?」
誰が言ったかは分からない。だが、その言葉はクルーたち全員が同意を示した。
ガンダムが空でドップを叩き落とし、地上ではガンタンクがマゼラアタックとザクを蹂躙する。確かに頼もしいだろう。だが、それを成したのがどちらも遥かに若い少年と幼女という事実を知らなければ……という但し書きがつく。
「……ニュータイプだ」
ふと、誰かがこぼしたその名を聞いて何処かストンと胸に落ちたような感覚を覚えた。
ジオン共和国の名前の元となった指導者『ジオン・ズム・ダイクン』が提唱した人類の革新ともいえる存在をジオンは彼らを『ニュータイプ』と名付け、スペースノイドの中で広く知られたものをアリアとアムロに見出す。
そうでなければ、この活躍が説明できない。いや、説明したくない。
だって、あの二人が普通の人間だったら自分たちはなんなのだ? 彼らが特別でなければそれに劣る自分たちは?
人は理解の及ばないものに、どうにかして理解できる理由を求める。
だから、今回はニュータイプというレッテルを張りつけ、ここにいる者達は彼らを線引した。
今、ここにニュータイプは現れた……と。
「ふぅ、初めての地上での戦いでしたがこれなら上々でしょう」
ガンタンクのコクピットのシートに背中を預け、アリアはゆっくりと深呼吸を行う。
モニターに表示される荒野と無数のジオンの兵器の残骸をアリアは感慨もなく見つめていると。
『アリア、勝手に出ちゃダメじゃないか』
「緊急事態でしたので。それに、ブライトさんも許可を出しましたよ?」
『それとこれとは別だよ。それにしても初めて乗る機体で良くやるなぁ……
戦いながら見てたけどタンクでドリフトなんて曲芸披露するから驚いたよ』
「だってこの機体、砲塔を旋回できないんですよ? 苦肉の策というやつです。お陰で駆動系がオーバーヒートしましたが」
現在ガンタンクのコクピットの中は警告音が鳴り響き、機体コンディションは駆動系を中心に多数の不具合を確認していた。
そもそもガンタンクはあんなデタラメな戦闘機動を行うようなことを想定していないので今回はアリアが全面的に悪い。
『そりゃ飛んだり跳ねたり、ザクを轢いたり、ドリフトなんてしたらそうなるだろうさ』
呆れたようアムロが言うが、アリアからしたらこの程度の動きで悲鳴をあげるなんてガンタンクが悪いという認識だ。
「はぁ、キャノンが早く直って欲しいですね」
そう呟き、アリアは再びモニターに目を向ける。
人類が生まれ、育まれた母なる大地。スペースノイドが還ることを望む、水の星。
「……思ったより、汚いな」
アリアは目の前の光景にそんな感想を呟いたのだった。
タンク「そんな運用考えられてねぇから!!!そもそも白兵戦想定しねぇから!!!」
後継機
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既存機体を魔改造
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オリジナル機体