機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー   作:シャア、あんたちょっとセコイよ!

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ぶっちゃけ序盤の避難民ってだいぶクソですよね


8.Discrepancies in perception

「ガンキャノンの全身の関節に変な負荷がかかっている。恐らく原因は大気圏を突破したことによる弊害だな……」

 

「つまり?」

 

「1週間くらいは出せないと思ってくれ」

 

「そんなにですか……」

 

 現在ホワイトベースはジオン勢力圏の北米大陸上空を飛行中なのだが、幸いにもジオンの襲撃はなく休息を終えたアリアはテムに呼ばれ格納庫に赴いていた。

 作業員たちが格納庫内を忙しなく走り、準備に追われているのを横目にそんな会話が響く。

 

 そこには装甲が外され、関節が剥き出しとなった寒々しい姿のガンキャノンとシートに座り、システムを立ち上げてモニターをのぞき込むアリアとコクピット付近のデッキに座り、端末を触るテムの姿が。

 

 機体の全体図と現在のコンデションを表すグラフと項目は明らかに不調を示しており、テムの報告にアリアは難しい顔を浮かべる。

 

「出来るだけ急ぐが、ジオンの連中が親切に待ってくれる訳では無いからな。次の戦闘は申し訳ないが、アムロだけになるかもしれん」

 

「……むぅ」

 

 テムが先に伝えたとおり、ガンキャノンはシャアの悪足掻きで止むを得ず大気圏を突破することになった。

 元々ガンキャノンやガンダムにはオプションで大気圏を突破できる装備が備えられてはいるが、それでもモビルスーツが単独で大気圏を突破するのは無茶もいいところで、現にこうした実害が出ている。

 

「ガンダムのほうはどうなんですか父さん?」

 

「ガンダムは比較的軽傷で、軽いメンテを行えば問題は無い。やはり、どちらも突発的とはいえガンキャノンが背後から撃たれたのが要因だろうな。

 正面からなら可動部を装甲が守ってくれるが、背後からだとどうしても可動部が晒されてしまう。

 オマケに爆風をもろに浴びたから破片が細かい隙間に入ってしまったようだ」

 

「まさかあそこで反撃に転じられるとは思いもしませんでした。欲をかいてブレードでトドメを刺そうとしたのがいけませんね」

 

 念には念を入れてという思いであの時はそうしたが、あとから思えばあそこで近接攻撃をするよりも射撃兵装で撃墜すれば良かったとアリアは思う。

 

「それは結果論だぞアリア。ワイヤーによって動きを封じられ、メインブースターも失い、殆ど死に体だったのだからな。誰だってあそこでやり返されるなんて思わんよ」

 

 テムは励ましの言葉を送り、父からの激励にアリアは薄く微笑む。

 

「よし、こんなものか。アリア、上がっていいぞ」

 

「はい。父さんはどうしますか?」

 

「ガンタンクの最終調整をしたら私も休むさ。はぁ、このまま何も無いと楽なんだが……」

 

「ええ、そうだといいのですが……」

 

 そんなぼやきにアリアも同意を示すように頷くが、2人とも思考の隅では冷静に次の戦闘が近いうちに起こることを察していた。

 

 

 

 なんとなしにアリアはシミュレーターのあるエリアへ足を運ぶと、複数ある筐体のうちのひとつが既に起動されていることに気がつく。

 足音を殺して近づき、中を覗くとそこには必死の形相で操縦桿を動かし続けるハヤトの姿がそこにあった。

 

「くっ、このっ……! あぁ!?」

 

 モニターに表示されるザクを相手に懸命に操作を行うが、敢え無く撃破判定と共にモニターが暗転。スコアの順位が表示される。

 1番上に『Aria Ray』の名があり、その下に『Amuro Ray』と来て、欄外に『Hayato Kobayashi』の名が。

 

「もう1回だ……!」

 

 ハヤトは直ぐにリトライを選択するとまた操縦桿を握り直してシミュレーションをし始める。

 ルナツーに寄港した時、アリアとアムロが興味本位で触って数回使用しただけで殆ど初見でクリアした為に詳しい内容は余り覚えていなかった。

 

 現在動かしているハヤトのその動きから彼は何度もこのシュミレーターをやっているのだとアリアは理解する。

 

「そこ、建物の影に敵が隠れてますよ」

 

「うわっ!?」

 

 だからか、ついさっき撃墜を貰ったところを通過した所でアリアが口を出すと驚いたように声を上げてハヤトは操作を誤り再びの撃墜判定を貰った。

 

「おや、落とされましたね」

 

「あぁ!? 折角山場を超えたと思ったのに!」

 

 言われて気が付きモニターを急いで見ると肩を落として項垂れるハヤトを見てアリアは元気だなこの人、と他人事のように思う。

 そのままハヤトはリトライすると思っていたが、やる気が削がれたのかシートに座り込んでしまった。

 

「リベンジしないのですか?」

 

「気が抜けちゃったからもういいかな。それで、君はなんでここに?」

 

 ハヤトに聞かれ、アリアは近くのパイプ椅子を持ってきてそれに座ると素直に答える。

 

「ガンキャノンが1週間ほどお休みになったので、私もやることがなく仕方なしに暇を潰すためにここに来ました」

 

「あのモビルスーツ、どこか調子悪いの?」

 

「背後から撃たれた挙句、プロペラントタンクの爆発をもろに受けて大気圏を突破したので幾ら頑丈でも限度があったみたいです」

 

「……そこまで受けて爆散しないのも凄いな」

 

「はい、父さんの作ったMSは凄いんです」

 

 自慢するように言うアリアだったが、何故かハヤトは気落ちしたようにため息をついた。

 

「はぁ、思ったようにいかないもんだな……アムロみたいに動かすのは」

 

「兄さんは外れ値なので参考にしない方がいいですよ」

 

「君がそれ言うのかい?」

 

 そう言われるが、アリアは言わば前世の記憶(ズル)を使ってるからあそこまで操縦できるのであって、それもなしにシャアと渡り合うアムロが可笑しいのだ。

 何でただの民間人だった兄はガンダムの性能ありきとはいえあんなに動かせるのだ? 訳が分からない。

 

 そう思っても、外から見ればどちらも可笑しいことに変わりない……が、それはそうと納得いかないのだ。

 そんなアリアの内心を知ってか知らずか、ハヤトはおかしなものを見るような目でアリアを見ると再びため息をこぼす。

 

「どうなさいました? 話くらいなら暇つぶし替わりに聞いてあげますよ」

 

「人の悩みを暇つぶし扱いはやめてくれないかな?」

 

 ハヤトはそう言いながらも1人で悩むよりは誰かに相談したかったのか、胸の内をアリアへ打ち明けた。

 

「なんというか、変なことで悩むのですね」

 

 その悩みを聞いてアリアはバッサリと切り捨て、ハヤトは肩を落とす。

 

「君が聞いたんじゃないか……はぁ、やっぱりアムロと同じで特別(スペシャル)は凡人の悩みなんて分かるわけないか」

 

「特別かどうかは置いておいて、貴方は私の考えが分かりますか?」

 

「変なことを聞くなぁ……そんなの分かるわけないじゃないか」

 

 呆れたように声を上げるハヤトに対して感情の見えない硝子玉のような瞳で見つめるアリア。

 その視線に気づいたのか、彼は何故か自分の内を見透かされたかのような居心地の悪さを覚える。

 

「な、なんだよ……」

 

「はい、貴方の考えを読もうとしました」

 

「……分かったの?」

 

「いいえ、まったく。分かったのは緊張による僅かなストレスと苛つきくらいでした。深呼吸をしてはどうですか?」

 

「誰のせいだと……」

 

「少なくとも、私が原因と言われるのは心外ですね。では、いい具合に時間を潰せたので失礼します」

 

 アリアは椅子から降りると振り向き、シミュレーター室の外へ向かう。

 

「あぁ、くだらないことを悩む貴方に私からアドバイスを」

 

「人の悩みをくだらないで片付けないでくれるかな!?」

 

 ハヤトが声を荒らげるが、振り返ることなくアリアは告げた。

 

「他人と比べ、妬む暇があるくらいなら少しは自己研鑽に時間を費やした方が得ですよ。貴方の習っている柔道では自他共栄というのがあるでしょう? 

 兄さんには兄さんにしかできないことが。私には私にしか出来ないことがあるように……貴方は貴方のできることをして兄さんを助けてあげてください」

 

 それだけを言い残し、その場にハヤトを残してアリアは通路の奥へと消えていってしまう。

 そして、1人残されたハヤトは呆気にとられたような顔で固まっていたが、アリアの言った言葉を少しずつ理解するように繰り返す。

 

「アムロにはアムロの……僕には僕のできることを、か……」

 

 伏せていた面を上げ、ハヤトはシートに座り直すと再びシミュレーターを起動した。

 

 

 

「おん、アムロんとこのオチビじゃねーの。何してんだ?」

 

「カイさんですか? 私はハヤトさんとついさっきまでシミュレータールームでお話をしてました。そういう貴方はタンクの整備では?」

 

「俺かい? 俺はタンクの整備を終わらせて暇だったんで適当にぶらついてたのさ」

 

「そうなんですか」

 

 アリアがそう言うと、なんとも言えない顔でカイは腕を組む。

 

「どうしたのですか?」

 

「いや、サボってることになんも言わないんだなって思ってな」

 

 カイのそんなセリフにアリアは小さく首を傾げた。

 

「言う必要、ありますか?」

 

「うんにゃ、俺からしたら楽ではあるな。いちいち小言がうるさいと面倒いし」

 

「そうですか。では」

 

 アリアは会釈し、その場を後にしようとするとカイの横を通ると。

 

「ちょっと待ちな」

 

 カイに呼び止められ、アリアは足を止めて視線を向けた。

 

「なんでしょうか?」

 

「あー……俺が聞くのもなんだが、ジオンと殺しあってんのに怖くないのか?」

 

「さぁ?」

 

「さぁ、ってお前……今もホワイトベースのケツを奴らが追ってるんだぞ? なんで平気なんだよ気味悪ぃな。死んじまうって思わないのかよ……」

 

 カイはそう言うが、アリアには何が言いたいんだコイツとしか思わなかった。

 

「死にませんよ私は」

 

「なんでそんなこと───」

 

 言えるんだ、とカイが続けようとしたところを被せるようにアリアが言ったことを聞いた瞬間、カイは絶句することになる。

 

「死ぬ前に敵を殺しますから」

 

「────は?」

 

 まるで日常の会話のような調子で言ってのけた目の前の少女にカイは無意識に後ずさった。

 

「聞きたいことは終わりですか? それなら失礼しますね。……あぁ、あとサボるのなら人目につかないところでお願いします」

 

 それを終わりと判断したのか、会話を打ち切りアリアがカイの傍を通り過ぎる。

 今度は呼び止められることは無かった。

 

 

 

「カイくん、貴方はタンクの整備の担当でしょう? 終わってたのなら今は第一戦闘配備なんだから待機してないと駄目でしょう」

 

 セイラは探していた人物の背をみつけ、強めに力を入れて呼びかけると肩を震わせてその顔を見せる。

 

「……あぁ、アンタか」

 

 その顔は何処か青白く、まるで幽霊に遭遇したかのような有様だった。

 その様子に怒りも消え、代わりに困惑したようにセイラは尋ねる。

 

「どうしたの、そんな顔をして……?」

 

「……なんでもないさ。待機ねりょーかい」

 

 カイはそう言ってセイラの横を通ろうとしたが、思わずセイラが呼び止めた。普段のおちゃらけた態度とはうってかわった彼の様子が酷く不気味だったからだ。

 

「カイくん、一体どうしたの? 体調が悪いのなら医務室で休んでてもらってもいいけど……」

 

「なんだよ、やけに親切だな……」

 

「だって、貴方酷い顔よ? そんな状態で戦場に出て落とされたら夢見が悪いもの」

 

「ひでぇな……」

 

 カイは徐に頭を掻いて重い息を吐き出すと、セイラに向き直る。

 

「アムロんとこのおチビ、知ってるよな?」

 

「ええ、アリアちゃんよね。あの子がどうしたの?」

 

 セイラの脳裏にとある少女の顔が思い浮かんだ。表情は乏しいが、皆を守るために小さな体でモビルスーツに乗り込んで兄のアムロと共に戦い、友人の少女との会話を楽しむ優しい女の子、というのがセイラが抱いた印章だった。

 

 だというのに、カイはまるで理解の及ばぬ存在を見たような表情を浮かべるではないか。

 

「アイツにとって、今の状態も普段と変わんないんだろうさ。敵を殺すことなんてなんとも思ってないぜ、アイツは」

 

「ッ!」

 

 セイラは反射的にカイの横っ面を引っぱたく。

 

「言うに事欠いてなんてことを言うの貴方は!? あんな小さい子をずっと前で戦わせて守ってもらってる身分でよくそんなことを言えたわね!?」

 

「……悪かったね」

 

 セイラの叫びにカイはそれだけ言うと、通路の奥へと消えていってしまうがセイラはその背を呼び止めることが出来ない。何故なら、思考の片隅でそれに同意してしまったからだ。

 

 思い出すのはサイド7での出来事、彼女はフラウと共に生存者を探しに行った時、コロニー内へ潜入したジオンの兵士を1人で制圧したことを。

 

 セイラはそれを知った時、彼女に思わず聞いたのだ。怖くなかったのか? と。それに対して彼女は人形のように整った顔で一切の変化もない表情で言ったのだ。

 

『いいえ、なにも』

 

 続けて、

 

『射殺すると服に着いた血の掃除が面倒なんですよね』

 

「…………」

 

 無意識に腕をさすり、セイラは不安を振り払うがそれと同時に。

 

『敵襲! 総員、戦闘準備! ブリッジクルーは至急集合されたし!』

 

 ホワイトベース内にけたたましくブザーが鳴り響く。




アリア「いちいち敵のことを気にするなんて面倒じゃないですか?」

後継機

  • 既存機体を魔改造
  • オリジナル機体
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