機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
「何とか間に合ったか」
シャア・アズナブルは姿を変えた己の機体を前に安堵の息をこぼす。
あの赤い砲撃機と白い機体に両腕をもがれた愛機を補給によって追加されたパーツと元々あったF型をバラして整備士が総出で修復と改修を行い、元々シャア以外まともに扱えなかった機体へさらに魔改造を施したのだ。
通常のザクの3倍とも評せる加速性を更に強化し、あの堅牢な装甲をぶち抜くためにヅダが使っていた対艦ライフルの銃身を切りつめ、右肩部後ろにアームを増設、キャノンのように装備。左肩にはミサイルポッドを。両腕にはザクバズーカを装備。
近接武器はヒートホークではなく、本国で開発中と言われているザクの後継機のヒートソード2本を両サイドアーマーへ。
両足には重力下で運用することを考えていない大型の増加ブースターを追加し、バックパックもより大型、大推力のものへと変更しその底面にはプロペラントタンクが取り付けられ、両側面にシュツルムファウストをマウント。
腰の後ろにはザクマシンガン2丁を格納したサブアームが増設されていた。
センサー類も強化し、頭部のブレードアンテナをより大型のものへ変更。ザクの特徴とも言えるモノアイをもうひとつ追加し擬似的なデュアルアイへ。
「……さしずめザク=オウル・イェーガーといったところか?」
この一戦の為だけに用意したまさに特注品。装甲すら削り、少しの被弾で即座に宇宙に爆炎の華を咲かす欠陥機を前にシャアの心の内にあるのは高揚感のみ。
「ふっ、借りを返させてもらうぞ連邦のパイロット」
赤と白、かつてない強敵を前にして今だけは復讐を忘れシャア・アズナブル……キャスバル・レム・ダイクンは戦いのときを待つのだった。
そして、
『少佐! 作戦開始時刻になりました!』
「了解した、ドレン。コムサイの準備をしておけ!」
『ハッ! 少佐、ご武運を!』
「あぁ、任せてくれ」
ブザーの音とともに機体のコクピットへ収まり、シャアはシートへと背中を預ける。
「シャア・アズナブル、ザク=オウル・イェーガー出るぞ!」
ジオンの赤い彗星は
「見せてやろう、ジオンの赤い彗星の底力を!!」
『高熱源反応確認! 敵影を確認しました!!』
『聞いたなお前たち!』
「はい」
『あぁ』
『ホワイトベースはこれより地球降下の準備を行う。連中はそれを狙ってきた、アムロとアリアはそれぞれ機体でこれを迎撃。
だが、降りすぎると重力に引っ張られるから戦闘可能時間はおよそ270秒弱程だ』
「およそ4分30秒くらいですか。ホワイトベースに戻る時間も考えれば3分もあればいいほうですね」
『その通りだ。連中は死に物狂いでやるだろうから気をつけるんだぞお前たち』
『流石に火達磨になって死にたくは無いからね。時間になったら直ぐに戻るよ父さん』
「一応降下用の装備はあるんでしたっけ?」
『耐熱フィルムのことか? シミュレーション上では問題ないと打ち出してはいるが、実際にやった訳では無いからな。
余り期待はするなアリア。時間になったら無理をしてでもホワイトベースにもどるんだぞ?』
「はい、肝に銘じます父さん」
『宜しい。では2人とも、時計を合わせろ』
「『はい』」
コクピット内に持ち込んだ時計の時間を設定する。
『……武運を祈る』
ホワイトベースの両方のカタパルトハッチが展開され、アリアはガンキャノンを。アムロはガンダムの脚部をカタパルトへ接続させた。
カタパルトの外には宇宙と地球のふたつが見え、白みがかった青い空が広がる。
「アリア・レイはガンキャノン重装型高機動カスタムで出ます!」
『アムロ・レイ、行きまーす!!』
とてつもない加速とともに機体は成層圏のすぐ近くの宇宙へと投げ飛ばされた。2人は慣れたように機体の全身のブースターで調整することでホワイトベースに立ち塞がるように飛翔し、敵を待つ。
「ひときわ早い機影がある……この短い間であの損傷をどうにかしたのか?
兄さん!」
『シャアだな!? わかった!』
短い会話で2人は即座に脅威の認定と役割を認識。
2人が記憶しているシャアのザクよりも現在のシャアは明らかに速度が違う。それに追いつけるのはアムロのガンダムのみ。
アリアはシャアをアムロに任せ、その後ろにいるただのザクたちを落とすことにした。
「落ちなさい!」
ビームライフルを構え、狙撃。桃色の光芒がザクの一機の胴体を円形にくり抜き、上半身と下半身が分かたれ爆散。
遠くから仲間を落とされたからか、既に自分たちがいるのは死地と悟り狙われないようにザクたちはランダム飛行を開始する。
だが、アリアは動きの甘いザクの動きを予測。偏差撃ちをすることで更にもうひとつ火球を生み出した。恐らくは新兵なのだろうが、それを見逃すほどアリアは甘くない。
「戦場なんです。覚悟は出来ているでしょう?」
誰に言うでもなくアリアは告げ、無慈悲にまたひとつ
「シャア!!」
『まずはお前か! 白いの!!』
姿を大きく変えた赤いザクを目の前にアムロは挨拶がわりにビームライフルを3連射。シャアは最小の動きでそれを交わし、お返しとばかりに両手のザクバズーカを放つ。
「チィッ!」
ザクバズーカは4発の弾頭を装填でき、シャアは一度に全ての計8発もの弾頭を放った。それらはいやらしいことにそれぞれ微妙な時間差で放たれ、迎撃しなければホワイトベースへと向かう軌道を描いていた。
アムロは舌を打ちながらサイドアーマーにマウントしていた実弾兵装の100mmマシンガンを装備し、頭部のバルカンも併用して撃ち落とす。
紅蓮の華が幾つも生み出され、アムロは残弾が空になったマシンガンをサイドアーマーへ戻すと同時に爆炎を突き破ってくるのは2発のシュツルムファスト。
アムロはそれを前に迎撃を選択しない。なぜなら、背後から2発のビームによって撃ち抜かれたからだ。
『えぇい、忌々しい!』
「僕の妹は頼もしいだろう!」
両の手に赤熱させたヒートブレードを構え、振り下ろすオウル・イェーガー。
アムロはビームサーベルを抜刀し、受け止めた。
鍔迫り合いによる膨大なメガ粒子と火花が飛び散り、ガンダムとオウル・イェーガーの装甲の表面を照らして互いのカメラアイが睨みつける。
『チィ! やはり単純なスペックではこちらが不利か!?』
「デヤァ!」
互いにブースターを全開にし、1歩も引かぬ様子を見せたがシャアは即座に機体のパワー負けを悟ると手首を動かし、傍を通り抜けるかのごとくガンダムの力を受け流した。
背後を取ったことにより、シャアはガンダムの背面へ逆手に持ち替えたヒートサーベルの切っ先を振り下ろそうと────
「させるか!」
『猪口才な!』
肩部後ろに増設されたビームライフルが跳ね上がり、銃口からビームが放たれる。
不意打ちの一撃をシャアは脚部のブースターを吹かすことで機体を跳ね上げることで間一髪機体表面を熱するに留めた。
仕切り直しとばかりに両者はブースターを点火、互いに弧を描くように加速し突撃。
丁度8の字の中心で両者は交差し、すれ違いざまに切りかかる。それを数度繰り返し、互いに背を向けてもそれぞれがアームによって保持したライフルとマシンガンを放つことで互いに牽制を行う。
高速で入れ替わる攻防の最中でシャアは戦慄を隠せなかった。初めてこの白い機体と戦った時は明らかに乗り慣れていない動きだったと言うのに、今はこうして強化した己の機体に食らいついてる事実に。
冷や汗がコクピットの中に舞うが、シャアの口角は自然と上へと歪み全身を武者震いが襲う。
『ハハハ、楽しんでいるのか私は!』
ミサイルポッド内のミサイルを放ち、ガンダムの動きを制限しシャアは爆炎を生み出すことでオウル・イェーガーは太陽を背にする位置へ誘導を行った。
「ッ、クソッ!」
太陽の光がアムロの目を眩ませ、堪らずビームライフルを放つと1つの爆炎があがる。
「やったか!?」
『いいや、こっちさ!』
そしてモニター全面に映し出されるザクの姿。立て続けに機体全体に衝撃が走った。
「ぐあ!?」
『ステゴロは赤いやつだけの専売特許ではないのさ!』
悲鳴をあげながらもモニターから目を離さず、アムロが目にしたのは足裏を掲げた体勢のザクが見えたことから、自分は蹴られたのだと察する。そして、先の爆発はプロペラントタンクをパージすることで、それにビームが当たり中の燃料に引火。ザクを撃墜したとアムロに思い込ませたのだ、
ガンダムの体勢が崩され、グルグルと回転し酷い揺れに顔を顰めながらブースターを逆噴射させ勢いを殺しながらサーベルを振り上げた。
『察しが良い奴め!』
「生憎、妹が見てるんでね!!」
挑発するように口角を上げ、アムロは不敵に告げる。
「それに僕だけを見てていいのかな?」
『なに……!?』
シャアは機体の面を上げさせ、モニターに表示された映像を見て舌打ちを漏らす。
ホワイトベースには目立った損傷はなく、大気圏に突入するまでに殆ど猶予がない。おまけに僚機のザクは大きく数を減らし、残りは3機……いや、丁度ガンキャノンがビームサーベルでコクピットを貫き無力化した事で残りは2機に減っていた。
『クソッ、夢中になりすぎたか!』
「ハハ、正規の軍人がいいようにやられていい気味だな!」
『チッ!』
「ぐぁ!?」
アムロの煽りにシャアは苛立たしげにガンダムを足蹴にし、叩き落とす。今は一分一秒が惜しい、千載一遇の機会だがガンダムにトドメを刺さずにシャアはホワイトベースに向けてオウル・イェーガーを飛翔させる。
「すまないアリア、あとは任せた……!!」
その背を忌々しく睨みながらアムロはガンダムの前面を地球へと向け、大気圏突入の準備へと入らせた。
「これで、5つ!」
『た、助けて母さ─────
断末魔の叫びがスピーカーを介して聞こえるが、無視して核を失ったザクを蹴落としアリアは前腕から発生させたビーム刃を消し去る。
残りのザクをさっさと片付けようとした所をアリアは咄嗟にその場から機体を後ろへ飛ばすと、先程までいた位置を砲弾が通過したでは無いか。
「……貴方ですか。兄さんと遊んでいればいいものを!」
『貴様には煮え湯を飲まされたのでな!!』
ガンダムが食い止めていたはずの赤いザクが両手に赤熱した剣を握り、アリアのガンキャノンへと突撃する。
「その色にお似合いの花火にしてあげます!」
アリアは右のキャノンを構え、装填していた砲弾をそんなセリフとともに放った。
『そんな狙い済ました一撃など!』
「バカ正直な砲撃なわけないでしょう?」
いつかの時のように最小限の動きで放たれた砲撃を交わそうとしたシャアだったが、次の瞬間に意表を突かれることとなる。
砲身から放たれたものは外へ飛び出た瞬間に拡散し、小さな榴弾となってシャアへと降り注いだのだ。
『クソッ!』
咄嗟に大きく飛び去ることで拡散榴弾をやり過ごすことに成功するが、大袈裟に避けたことにより咄嗟に立ち止まることや移動することが出来ずシャアは追撃を許すこととなる。
「フルハッチオープンファイア! 沈みなさい!!」
ガトリング砲、ミサイル、ビームライフル全てを解き放ち、シャアを完全に撃墜するための容赦ない弾幕を形成。
普通だったら即座に蜂の巣にされ火達磨となるだろう。しかし、相手は連邦とジオン両方に勇名を轟かせた赤い彗星シャア・アズナブル。この程度の弾幕など、あとルウム戦役に比べればただのシャワーでしかない!!
『舐めるなァァア!!』
「……知ってますよ、貴方の動きは。事前にルナツーから手に入れた戦闘記録を叩き込んでますから」
アリアは仕込んだ布石を発動させた。
弾幕の間を縫うように細かく各部の推進機関を動かし、飛来してきた前方を塞ぐミサイルをマシンガンで迎撃。
爆炎を突き破り、降り注ぐ弾丸とビームを交わしていると不意に機体各所にカンカンカンッという細かな音が響く。
「なんだ…………ッ!?」
ガクン! と急に機体の動きが悪くなり、立て続けに警告音が喧しく主張する。
急いでシャアはサブモニターへ視線を走らせようとした最中にメインモニターに微かな反射光が映ったことに気がついた。
「ワイヤーだと!!?」
そう、細いワイヤーが機体全体に絡まり動きを阻害しているのだ。
シャアは引きちぎろうと機体を動かすが、逆に動けば動くほどワイヤーが絡まり余計に動きを阻害させる。
「一体いつ……あのミサイルか!?」
シャアは思い出す、己が撃ち落としたミサイルを。おそらくはあの中にワイヤーを仕込んだものがあり、わざとシャアに撃ち落とさせるために逃げ道を塞ぐように前方へと飛ばしてきたのだ。
「まだだ、まだ終わらんよ!!」
まともなバランスも取れないコンディションでもシャアは機体を操作し、懸命に弾幕を交わしていく。
だが、それも長くは続かない。ワイヤーがブースターの可動部に絡まり動きを阻害。望んだ方向へ機体を動かすことが出来ず、アリアのガトリング砲の弾丸がオウル・イェーガーの135ミリ対艦ライフルの弾倉部分に突き刺さった。
中の弾薬に誘爆し、爆発。内部から発生した圧力が外へ向かって放出され、対艦ライフルの破片がオウル・イェーガーの左半身をズタズタに引き裂く。
左腕がちぎれ飛び、宇宙をデタラメな軌道を描きコクピットをシェイクされシャアは悲鳴をあげた。
「ぬぉおおおっ!!?」
三半規管がミキサーで直接かき混ぜられる中で反射的にバックパックをパージすることでプロペラントタンクや内部の推進剤に引火し、爆発するのを間一髪防ぎ被害を免れる。
『引導を渡してあげます、シャア・アズナブル!!』
そして、モニターにはこちらに向けて左腕からビームの刃を生やしたガンキャノンが突撃する姿が。
「(ここまでなのか私は……!?)」
刻一刻と迫る死の運命を前にシャアは声なき声で叫ぶ。脳裏に過ぎる無数の記憶、思い出、そして殺意。
「巫山戯るなぁぁあっ!!!」
まだ右手にはヒートサーベルが残っている。この程度の逆境をはねのけなければザビ家に復讐など出来るものか!!
「動け、オウル・イェーガァァアッ!!」
シャアの叫びとともにワイヤーを引きちぎり、オウル・イェーガーはガンキャノンの突撃を迎え撃つ!!
『なっ!? 往生際の悪いっっ!!』
まさかの反撃により、斬撃を受け止められるとは思わずガンキャノンの動きは僅かに鈍った。
「落ちろ!」
『キャア!?』
それを見逃さず、シャアは脚部ブースターを吹かし回り込むとガンキャノンへ勢いよくストンピングを行う。
蹴り落とされたガンキャノンに向けてシャアは残った射撃武器のザクマシンガンを掴み取り、引き金を引いた。
マガジン全ての弾丸を吐き出すが、狙いもろくに定まらない状態で打ったことにより命中は多くない。しかし、その数少ない弾丸がプロペラントタンクを撃ち抜く。
「不味ッ……!?」
アリアは素早くプロペラントタンクのパージを行い、離れたタンクが爆発。衝撃に煽られガンキャノンがさらに落ちた。
「クソッ、アイツ!!」
まさかの反撃により、一転して自分が窮地に追い込まれたことにより遠ざかる赤いザクがコムサイに回収される様を射殺さんばかりに睨みつけながら飛び上がろうとブースターを吹かす。だが、一向に高度が上がらない。
まさかと思い、高度計を見てアリアは顔を青く染めた。
「クソッ、重力に捕まった!!」
同時に時計のアラームが鳴り響いた。
「まだザクを落としきれてないのに……!」
ホワイトベースに群がるザクたちを見ながらアリアはビームライフルを構え、引き金を引く。
ビームが銃口から放たれ、ホワイトベースにバズーカを放とうとしたザクの胴体がぶち抜かれ、爆散した。
立て続けにブリッジにヒートホークを振り下ろそうとしたザクの右腕を撃ち抜いたところを艦の機銃が蜂の巣にする。
「ひとまずはこれで安心か……」
シャアは最早ホワイトベースを落とせるほどの力は残っていないため、捨ておくことにしてアリアはガンキャノンの向きを変えさせた。
『アリア! 早くホワイトベースに戻るんだ!! 聞こえているのかアリア!?』
「分かってます! クソッ、出力が上がらない!? 上がれガンキャノンッ! チッ、さっきの被弾でメインブースターがイカれたのか!」
テムの叫びが響き、アリアは懸命にホワイトベースへと戻ろうとするがシャアの最後っ屁の如くやられた銃撃によりメインブースターが損傷したらしく、ペダルを踏んでも望んだように動かない。
『アリア、戻ることが出来ないのなら耐熱フィルターを使え! 大気圏突破の仕方は覚えているな!?』
「はいっ!」
『ならばいい! いいか、絶対に戻ってこいアリア!』
「わかってます父さん!」
ノイズが酷くなり、それを最後にテムの声は聞こえなくなる。アリアは大気との摩擦でモニター内が赤く染まる中で急ぎながらも冷静に素早くコンソールを操作していく。
「姿勢制御をオートに変更、冷却シフト全回路接続。弾薬を全てパージ! 耐熱フィルムを────」
熱による誘爆を避けるためにミサイルポッド、ガトリング砲、ショットガンを全て捨て去る。
アームに接続していたシールドを回収し、熱を受け止める壁とするために掲げ耐熱フィルムを取り出そうしたところで気がついた。少し前の位置にコクピットが貫かれ大気圏を落下しているザクがいることに。
「───!」
落下する速度が段々と加速していき、内臓がひっくり返るような感覚の中でアリアはガンキャノンを前に進めショットガンを捨てたことにより空いた左手でザクを掴むと引き寄せた。
「よいしょ、っと!」
無事なブースターを稼働させ、ガンキャノンの体勢を整えるとアリアはガンキャノンの足裏の爪を展開させ勢いよくザクに向けて踏み落とす。
ガッシリと爪がザクにくい込んだことを確認したアリアは、シールドの基部に耐熱フィルムをねじ込み固定させる。シールドをザクの前に移動するように運び、しっかりと耐熱フィルムが広がっているのを確認。問題なく広がっていた。
「……あとは待つだけ」
ガタガタと揺れるコクピット中でアリアは目を閉じる。
時間にすれば短いかもしれない。だが、アリアにとって永遠とも感じられる中で不意にコクピット内のアラームが小さくなっていくことに気がつく。
「ふぅ……山場は超えたか」
視線を落とすと大気圏突入の盾に使ったシールドは完全に焼け溶け、ザクも辛うじて原型が留めている姿が見えた。
ガンキャノンの現在のコンディションも酷いもので、無事な部分が見えないほどでオーバーホールが必要だろう。
だが、今だけはアリアは生き残ったことに喜ぶことにした。
『アリア! 聞こえているかアリア! 聞こえているなら返事をしろ!!』
「……こちらアリア、聞こえてますよ父さん」
『ッ、そうか。そうか……! よく無事だったなアリア!』
「ええ、シールドと耐熱フィルムを被せたザクで大気圏突破の盾にすることで成功率を高めましたので」
『そうか。シールドの耐熱フィルムにザクを……ザク?』
「ええ、はい。ちょうどいい位置にザクがいたのでついでに盾にしました」
『そ、そうか……ンンッ! とにかくアムロもホワイトベースに回収した。お前も早く着艦しなさい!』
「はい、わかりました父さん」
アリアは足裏のザクを蹴り飛ばし、ブースターを吹かして少し離れた位置にいるホワイトベースに向けて滑空する。
レーザ誘導に従い、アリアはガンキャノンをホワイトベースの後部デッキへ着地した。
「…………ふぅ、何とか生き残れましたか」
操縦桿から手を離し、ヘルメットを脱いでアリアは熱された息を吐いて火照った体を冷ますためにスーツの前面をはだけさせる。
「……ここが地球」
モニターへと視線を向け、映し出された光景にアリアは呟いた。アリアは地球生まれだが、地球で過ごした記憶は酷く少ない。
物心着いた時には既にコロニーで父と兄と過ごしており、母はいなかった。
強化人間C4-621も地球のことは情報では知っていたが、実際に見たことは無い。
だから、この肩に乗りかかる重さが地球の重力なのだとアリアは思うのだった。
シャアザク「燃え尽きたぜ。真っ白にな・・・」
カンキャノン「死にかけたわ・・・。流石お嬢やわ、ザクを盾にするとか普通思いつかんで?」
ガンダム「あんな薄っすいフィルムで大気圏突破させるとか頭おかしいんちゃう?」
ザク「(死ーん)」
後継機
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既存機体を魔改造
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オリジナル機体