機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー 作:シャア、あんたちょっとセコイよ!
「2人とも、よく無事で戻ってきてくれた……!」
「父さん、他の人らが見てるよ……」
「それだけ心配をしてたということですよ兄さん」
ホワイトベースに着艦し、機体から降りた2人を迎えたのはテムの熱い抱擁だった。
アムロは気恥しそうにし、アリアは逆にテムの背中へと手を回す。
アムロもそれは分かっているからか、口ではそう言っても明確な拒否はせずに受け入れていた。
ようやくテムは満足したのか2人から離れ、自分の子供たちを守ってくれた自身の発明を見つめ言葉をなげかけた。
「お前たちも、ありがとう。2人を守ってくれて……」
天井のライトの光が反射し、2機の頭部のカメラ部分が光る。
機械に感情はない。けれど2機にとって父親ともいえる開発者の言葉ほど嬉しいものは無いはずだと感じられるものだった。
「テム大尉! パオロ艦長がガンダムおよびガンキャノンパイロットの両名をブリッジにお呼びです!」
すると、作業員のひとりがやってくるとテムに向けてそんなことを伝えてきた。
テムはその内容に顔をこわばらせるが、小さく息を吐いてアムロとアリアに声をかける。
「……そうか。疲れてるだろうにすまない、お前たちブリッジに行ってくれるか?
もちろん、私も事情説明の為に同行しよう。構わんか?」
「ハッ! 問題ないそうです!」
「わかったよ父さん。アリア、行けそうか?」
「はい、問題はありません」
「その前にアリア、お前は宇宙服から着替えて行きなさい」
「分かりました父さん」
「「待て待て待て!!」」
「? 何でしょうか……」
「この場で宇宙服を脱いでどうする!? その下は下着だっただろう!」
「この場で着替えた方が早いですよ?」
「何、さも当たり前みたいに言ってるんだアリア!? 小さくてもお前は女の子なんだから人前で下着姿になっちゃダメだろ!?」
「そうだぞアリア! そこの君! この子を着替えさせてくれ!!」
「は、はい!? い、いえ分かりました!! こっちに更衣室があるから着いてきてくれるかい?」
「はい、分かりました」
テムとアムロが突然目の前で宇宙服を脱ぎ出したアリアを止め、近くの作業員を呼びつけて彼女を近くの更衣室へと連れていくよう頼む。
彼女を見送り、疲れたように2人はため息をこぼした。
「……はぁ、良くも悪くも男所帯で育った弊害か。あの子は恥じらいが無さすぎるな」
「アリアは効率を求めすぎるときがあるからね……家でも僕が風呂に入ってると水道光熱費の節約って言って突撃してきた時はビビったよ……」
「やはり仕事とはいえ家を空けすぎたのがダメだったか……?」
「いやぁ、フラウや友達のミアって子がよくアリアを叱っていたから元からじゃないかなぁ?」
父と息子が共にレイ家の紅一点の有様に頭を悩ませていたが、着替え終えたアリアが作業員に頭を下げて2人の元に帰ってくる。
宇宙服に着替える前に着てきたワンピースは血で汚れ、スカートは破れてたので作業員が片付けたらしく、仕方なしに大人用の簡素なシャツと限界までベルトで腰を絞り、裾を折り曲げた作業着のズボンを履き、サンダルという服装になっていた。
「お待たせしました。……どうしたんですか2人とも?」
「……いや、子育ては難しいなと思ってな」
「はぁ……」
テムの発言に意図を図りかねたアリアは首を傾げつつもアムロと共にテムに連れられ、エレベーターに乗るとブリッジに上がる。
3人がブリッジに入ると、その姿に気づいた若い軍人の青年が近づきテムに向けて敬礼を行った。
「お疲れ様です、テム大尉!」
「ああ、君もお疲れブライト少尉。それで、パオロ艦長は?」
「ハッ、あちらに」
ブライトと呼ばれた青年は手を向けると、そこにはストレッチャーにベルトで固定された老人の男性がいた。恐らくは彼がこの艦の艦長なのだろうとアリアは思う。
「ゴホッ……テム大尉、その2人が……そうなの、かね?」
「はい、こちらが私の息子のアムロと娘のアリアです。ガンダムにはアムロが、ガンキャノンにはアリアが乗りました」
「なんと……!」
アムロの姿を見るよりもアリアの姿を見てパオロは一際驚きの感情を見せ、同じようにブリッジ内にいた人員が全員ザワついた。
「アムロならまだ分かるけど、アリアちゃんが!?」
「嘘でしょ、まだジュニアスクールくらいじゃないの……」
「やる子ではあったけど、そこまで……」
「マジか、アムロんとこのおチビ。アグレッシブすぎだろ?」
アムロに駆け寄ってきたフラウが口元に手を当て、操舵を握っていた女性が思わず振り返る。
カイの頬を張ったセイラという女性はアリアがジオン兵をひとりで拘束していたことを知っていたので驚きは少なく、引っぱたかれたカイは口笛を吹いた。
「……こんな姿で申し訳ない、私はこの艦の艦長を任されているパオロ・カシアス中佐だ。
……艦を代表して2人には避難民と艦の防衛、感謝する。ゴホッ、ゴホッ……!」
「い、いえ。これくらい……」
「私たちは自分の出来ることをしたまでです。それよりも、パオロ中佐、あまりご無理をなさらずに」
「ハハ、ハ……礼儀正しい、お子さんだな……大尉」
「は、ありがとうございます。……この2人なのですが、実は外部協力者なのです中佐」
「外部、協力者? V作戦……のか」
「ハッ! 我が家には私が持ち込んだシミュレーターがあり、2人にはガンダムやガンキャノンの動作シミュレーションをしてもらっていたのです。だな? アムロ、アリア」
「え、えぇ? いっ……!? は、はい。その通りです!」
「はい、父の言う通りです」
呆けた声を出すアムロの足を踏みつけ、痛みに呻きながらもアムロは頷く。足を踏みつけた当人アリアはいつも通りの表情で肯定した。
勿論、大嘘である。アムロは勝手にテムのパソコンを見てたりしたが、アリアはテムの職場に弁当などの食事を届けて軽く聞いた程度でしかない。
だが、テムは不敵に笑いながら言うので如何にも真実というように受け取ったのかパオロは小さく頷いた。
「そう、か……データ上とはいえ正規の軍人、よりも多くの時間を過ごしていればあれだけの、動きをできるのも……赤い彗星を退ける、のも、道理か……ぐ、ぬぅ……!?」
「ッ、誰か船医を!!」
「医者の卵ですが、私が!」
突如として苦しみ出したパオロにブライトが駆け寄り、呼びかけるとセイラが手を挙げてパオロの容態を確かめ始める。
「この方の容態は?」
「宇宙港攻撃時、敵の攻撃によって破片を胸や腹に受けてしまった!」
「破片は取り除きました?」
「いいや、軍医はみんなあの攻撃で全滅してしまったからテープと包帯で止血をしたくらいだ」
「そうですか……この艦の医療設備は?」
「使えるはずだ」
「分かりました。避難民の中に医師がいないか呼びかけてくれますか? ……いなければ私が手術を行います。患者を運ぶのを手伝ってください」
「わかった。ブライト、俺は艦長を運ぶから艦を頼む」
「あぁ。リュウ、セイラさん艦長を頼む」
リュウと呼ばれた体格のいい軍人はセイラと共にパオロの寝かせられたストレッチャーを運び、エレベーターに、消えていく。
彼らを見送るとブライトはテムに向き直った。
「テム大尉、ご子息たちはどうするのですか?」
「本来なら今すぐにでも下ろしたいが、この非常事態ではな……それに、正規のパイロットがいない事に加えてこの2人以上にガンダムとガンキャノンを扱える者がいない。
ルナツーに着くまでは2人を暫定的なパイロットをしてもらう。
ルナツーに着いたら外部協力を終了し、避難民ととも保護をしてもらい退艦してもらう」
「は……? 志願、させないのですか?」
「今、なんと言った少尉?」
「ハッ、志願をさせないかと言いました」
瞬間、テムの怒声が響く。
「ブライト・ノア少尉! 君は何を言っているか理解しているのか!? アムロは16歳でアリアは11歳だぞ!
アカデミーで軍規のことは習っているはずだが!? 連邦軍に志願できるのは高等学校卒業程度の学力、基準以上の身体能力を有する18歳以上の男女だったはずだろう!
2人がそれくらいの歳に見えるか!? 見えないだろう!」
「も、申し訳ありませんでした!!」
まくし立てるようなテムの言葉にブライトは顔を青くして頭を下げる。
父親の激怒した姿にアムロはたじろぎ、アリアは落ち着いた様子でなだめた。
「父さん、落ち着いてください。ブライトさんの気持ちも分かりますから」
「だがな……!」
「周りの人も怖がってますよ。兄さんも驚いてますし」
アリアのその言葉にようやく周りを見れる落ち着きを取り戻したのか、テムは怒りを深呼吸で鎮火させ重々しく口を開く。
「……君にはガンダムを作った理由を話していたはずだが、その意図が伝わってなくて残念だブライト君。
……行こう、2人とも。疲れているだろうから休むんだ」
「う、うん……」
「お騒がせしました皆さん」
テムに促され、アリアとアムロはテムの後ろに続いてエレベーターへと向かう。
乗り込む前にアリアはブリッジの面々に腰を曲げて謝罪の言葉を送り、その場を後にするのだった。
「父さん、あまりブライトさんを責めないであげてくださいね?」
「わかっている。だが、お前たちをまた戦わせようと思うとな……」
「……でも、敵はやってくるんだろ?」
「腹が立つことにな」
エレベーターの中で3人は会話を行う。あの時、あの場ではブライトとテムの主張はどちらも正しい。
片方は生き残るために、片方は倫理観が。どうしようもないが、現実は待ってくれない。
「ままなりませんね、本当に」
「はぁ、ジオンの連中は本当にクソだ」
「……それについては同意するよ」
親子はため息をこぼし、肩を落とした。
「……アリア、怖くなかったかい?」
「どうしたのですか兄さん?」
テムから少しでも休むように言われ、重い体でシャワーを浴び着替えた2人は個室で2段ベッドの上下に寝そべっていると不意に下の段のアムロがアリアへとそんなことを聞いてきた。
目を開き、アリアは顔をのぞかせてアムロの顔を見つめる。
「……ガンダムに乗っていた時はどうってこと無かったけど、今になってすごく怖くなってきた。またジオンがやってきたら死ぬんじゃないかって……」
毛布にくるまり、震えるアムロを見てアリアは少しだけ考えた。
今の彼女もそこら辺が鈍く、ガンキャノンに乗って戦っていた時も殆ど動じなかった。だから、アムロの気持ちを上手く理解できなかった。
けれど、これが普通の反応なのだろうとアリアは冷静に判断する。
「なら、次は私がガンダムに乗りましょうか? 私が前に出て、兄さんはガンキャノンに乗って支援に徹してもらえば危険はある程度下がりますが……」
「それだとお前が危ないじゃないか!」
「……私は平気なのですが」
「あれだけの事があったのに、お前は……どうしていつもと変わらないんだ?」
アムロはわけがわからないと言ったようにアリアを見つめ返す。
「私は……他の人とはズレてるんでしょうね」
ふたつの記憶が混ざり合い、死というものを他者よりも深く触れていたアリアにとって恐怖という感情はどうしても理解できないものだった。
兄の思いを理解できないから、アリアはせめてそんな兄がそんな気持ちにならないよう自分が出来る精一杯のことをしようとしただけ。
「……ごめん」
そんなアリアの気持ちをアムロは察したのか、気まずそうに目線を逸らして小さく謝罪の言葉を向ける。
「……兄さん」
「……なんだ?」
「一緒に寝ていいですか?」
「……仕方ないな」
アムロが言うとアリアは上のベッドから降り、アムロのベッドに潜り込んだ。
「……お前は体が細いな」
「兄さんと食事はおなじなんですがね」
久しぶりに同じベッドに寝たことにより、アムロは久しぶりに触れた妹の体の小ささに驚きの声をあげる。
「……アリア、僕頑張るよ」
「あまり無理をしては行けませんよ。父さんが悲しみますから」
「僕はお兄ちゃんだからいざって時は僕が守ってやるさ」
「その時が来ないことを願ってます」
「……そうだね」
2人はそれを最後に会話を終わらし、目を閉じる。そして暗い室内にふたつの寝息がたつのだった。
後継機
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