機動戦士ガンダムーRavens descend on U.C.ー   作:シャア、あんたちょっとセコイよ!

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2.Departure

 コロニー内の騒ぎはアリアとその兄アムロの手によって侵入したザクを撃破した為、一時的な落ち着きを取り戻す。

 

「アリア、全くお前はアムロと揃って無茶をする!!」

 

「……でも、父さんを助けられましたよ?」

 

「それとこれとは話が別だバカモノ!」

 

「あぅ」

 

 アリアが無力化した2機のザクのコクピットから引きずり出されたパイロットたちが連行され、避難民たちが続々とホワイトベース内へ避難しているのを背景にアリアは父、テムからこっぴどく叱られていた。

 

 一応アリアは言い訳をするが、テムの言っていることも正しいのと心の底から自分たちを安じたからこその説教のため、アリアは大人しくその拳骨を受ける。

 

「ふぅ、一先ず説教はこれくらいにしておく。アムロもと言いたいところだが、アイツはパーツの回収に出張っているからな……

 仕方ない、アリア。お前はホワイトベースに行きなさい」

 

「父さんはどうするのですか?」

 

 痛む頭を擦りながらもアリアはテムへ問いかければ、彼は難しい顔をしながら答えた。

 

「私もできる限りガンダムのパーツを運んでおく。いいか、くれぐれもガンキャノンを操縦したことは話すんじゃないぞ?」

 

「……はい。父さん、気をつけてくださいね?」

 

「ああ、お前たちを残しては逝けないからな」

 

 アリアの頭を撫で、テムはそう言うと足早に駆け出していく。その背を見送り、アリアは避難民たちに沿ってホワイトベースのある港へと足を向ける。

 

 

 アリアがモビルスーツ、ガンキャノンを操縦したことはテムの一存で隠蔽することにした。理由は軍事機密の塊であるモビルスーツを民間人が、それもジュニアスクールに通うような子供が扱ったこと等公に出せないからだ。

 

 故に、アリアは肉親たるテムが軍人だったので何かあれば軍の施設に逃げるよう常日頃から言い含めていたので、混乱の中で逃げ込んできたところをテムが止むを得ずガンキャノンで保護をした……というカバーストーリーを用意。

 

 その過程でアリアが撃破したザクをテムが撃破したことになってしまうが、そこは開発に携わっていたということでごり押すことにしたらしい。

 

 アリアのほうはどうにかなったが、アムロはホワイトベースからの通信に応えてしまい誤魔化しが出来なくなったため、軍人の指示でガンダムのパーツを集めるために奔走することになる。

 

 施設内を歩いていれば、アリアは見知った背中を見つけ声をかけた。

 

「フラウさん」

 

 呼び掛けにその背中は微かに震えると立ち上がり、笑顔を浮かべたが次にアリアの様子を見て叫ぶ。

 

「アリアちゃん!? 無事だったのね! って、怪我してるじゃない! ほら、こっちに来て!」

 

「そんなに重大そうに見えますかね、この頭?」

 

「当たり前でしょう!? 頭から血を流してたら誰でも心配するわよ!」

 

 アムロのガールフレンド(予定)の少女、フラウ・ボウの本へ近寄ると彼女はアリアを座らせ、近くにあった救急箱から治療道具を取りだしてアリアの手当を始める。

 

「フラウさんがご無事で良かったです」

 

「アムロのおかげよ。彼が港に行くことを提案してなかったら今頃シェルターの中で潰されていたもの」

 

「不幸中の幸い……と言うやつですね。ご家族の方はどうでした?」

 

 アリアが何となく尋ねた瞬間フラウの顔は歪み、それだけでなにがあったかをアリアは察する。

 

「ッ……お父さんと、お母さんは……」

 

「……不用意な発言をしてしまい申し訳ありません」

 

「……年下の子に気を使わせちゃったわね。大丈夫よアリアちゃん、私は平気だから」

 

 フラウはそう言い、強引に笑顔の形を作ってみせる。アムロは良く彼女のことを強い女の子と言っていたのを思い出す。

 目の前で親族を亡くしても、こうしていられることが何よりも強さの証明なのだろう。

 

「フラウさん、私も何か出来ることってありますか?」

 

「そんな、来たばかりで疲れてるのに悪いわよアリアちゃん」

 

「大丈夫です。こう見えてスタミナには自信がありますから」

 

「……何を言っても無駄そうね。頑固なところはアムロと同じなんだから」

 

「はい、兄妹ですから」

 

 誇らしげに言うアリアの頭をフラウは撫で、仕方なく彼女を連れて生存者が取り残されていないか探しに街へ出ることにした。

 その途中、同行したセイラという女性が逃げ込んできたカイという青年を突然ビンタをするという事件が起きたがどうでもいいだろう。

 

「……そのまま手を上げ、ゆっくりと振り返りなさい」

 

「……わかった」

 

 そして、現在アリアは拳銃をジオンの兵士にむけて構えていた。

 ことの流れとしては生存者を探しながら、アリアの提案で必要となるであろう物資を店舗や民家から調達することをフラウが了承。

 二手に分かれたところをアリアが何やらコソコソと動く人影を発見し、尾行したところ破壊された連邦のモビルスーツの部品や破片を回収しているジオン兵を発見。道中連邦軍人の亡骸から拝借した拳銃でジオン兵に向けて今に至る。

 

 ジオン兵は手に持っていた部品を投げ捨て、両手を上げると立ち上がりゆっくりと振り返りアリアを見た瞬間に息を飲んだ。

 

「子供……!?」

 

「おや、随分な驚きようですね。ここは連邦の軍事施設はあってもその関係者の家族以外にも民間人がいるコロニーですよ? 

 ハッ、スペースノイドの代表面をしておいて、その同胞を毒ガスで殺してコロニーを地球に落とすような連中のオツムだとそんなものですか」

 

「ッ、君のような子供がそんな危険なものを持ってはいけない……すぐにここから離れなさい」

 

「警告もなしにコロニー内を戦場にした貴方々が今更言いますか?」

 

 ジオン兵の言った内容にアリアは僅かに眉根を寄せる。こちらを案じる声色のくせに自分たちの引き起こした騒乱の結果を考えてもいないダブスタを感じたからだ。

 

「……我々も本来ならこんなことをするはずではなかったのだ」

 

「言葉では幾らでも取り繕えますよ。……そのまま手を頭の後ろに跪きなさい。変なことをすれば脳天に風穴が開きますよ」

 

「…………わかった」

 

 アリアの命令通りジオン兵は両の手を起き、ゆっくりと膝をつく。アリアはジリジリと距離を詰めてジオン兵を無力化しようと────

 

「ッ!!」

 

「コイツッ!」

 

 ジオン兵は飛び上がり、アリアの左手首を掴みもう片方に握られた銃を奪い取るため手を伸ばそうと……した男の鳩尾に向けてアリアの足先が突き刺さる。

 

「ぐおっ!?!?」

 

「離しなさいッ!!」

 

「ガハァッ!?」

 

 内臓に響く痛みに動きが一瞬硬直し、拘束が緩んだ左手を振り解き右手に保持した拳銃のグリップから手を離す。

 重力に従い、落下した拳銃の重心部分を掴み銃床部分でジオン兵の顎下をヘルメットごとカチ上げた。

 

 小さい体ながらにかなりの力で振り上げられた威力はジオン兵の脳を揺さぶり、そのままアリアに覆い被さるように地面へと倒れ込む。

 

「おも、いっ……!」

 

 成人男性というのに加えて体を鍛えた軍人らしい体格も合わさり、同年代に比べて華奢な体格のアリアでは窒息して潰れないようにするので手一杯でどかすことが出来ない。

 今はまだ脳を揺さぶられたことにより満足に動くことが出来ないジオン兵だが、回復してしまえば今のアリアでは抵抗すら出来ずに拘束されるだろう。

 

 微かに焦りの表情を見せてどうにかジオン兵をどかそうと四苦八苦していた所で。

 

「アリアちゃん、なにか音が聞こえたけど……アリアちゃん!?」

 

「ふ、フラウさん……この人をどかしてください……潰れそうです」

 

「わ、わかったわ!!」

 

 両手に薬品や粉ミルクの缶、毛布を突っ込んだバッグを抱えたフラウが現れ、アリアの様子に気が付き血相を変えて駆け寄ってくる。

 アリアは助けを求め、フラウは荷物を地面に置いてアリアの体を覆い被さるジオン兵を重そうにどかすのだった。

 

「はぁ……フラウさんありがとうございます」

 

「別にいいわこれくらい。でも、なんでこんな所にジオンの兵隊が……?」

 

「恐らくはガンダムの部品やデータの回収でしょうね。フラウさん、なにか縛るものはありますか?」

 

「包帯でいいなら……それで、この人はアリアちゃんがやったの……?」

 

「ええ。不意を着いて跪かせたまでは良かったのですが、無力化しようと近づいたところを襲われました」

 

「えぇ……アリアちゃん、幾ら何でも無茶しすぎよ?」

 

「ジャンク品で敵の包囲網をくぐり抜けて脱出ポイントまで逃げて、助けが来るまで持ちこたえることに比べたらこの程度簡単ですよ」

 

「……どういう状況なのソレ?」

 

「こっちの話です。一先ずこの兵士も運びましょう。なにか情報があるなら吐かせたいですし、いざとなれば人質にして残りのジオン兵たちを引かせることも出来るでしょう」

 

「……時々思うけどアリアちゃんって人生二週目だったりしない?」

 

「私は私ですよフラウさん。足を持ってください」

 

 フラウとの会話も程々に受け取った包帯でジオン兵を縛り上げ、一緒にエレカの荷台に乗せ他の荷物も満載にして撤収をするのだった。

 

 

 尚、テムに1連のことを説明するとふたたび雷がアリアへと降り注ぐのは当然の流れとも言えるし、その内容を横で聞いていたほかの軍人もドン引きしていた。

 

 

 

「まさか短い時間の間に父さんから2回もお説教をされるなんて……しかも初めて父さんにゲンコツされましたね。2回も」

 

 テムのお説教を解放され、頭にできたタンコブを擦りながらホワイトベースへと乗り込み、割り当てられた大部屋へ入る。

 すると、彼女の顔を見るなり近づいて抱きつく存在がいた。

 

「アリアちゃん!」

 

「わぷ……ミアさん、無事に辿り着けたんですね」

 

 友人のミアはアリアの言葉に頷く。

 

「うん、アリアちゃんの言ったことを軍人さんに伝えたらすぐに入れてくれたの。

 でも、アリアちゃんがいなかったから心配だったんだよ?」

 

「少々野暮用を片付けてました。ミアさんのご家族はどうでした?」

 

「うん、パパとママも無事だよ。アリアちゃんのお陰ってことを伝えたらありがとうって言ってた」

 

「それは良かったです」

 

「アリアちゃんの方はどう?」

 

「はい、兄さんも馬車馬のように働いてますし父さんには先程叱られてゲンコツを食らったばかりです」

 

「えぇ……なにしたのアリアちゃん」

 

「偵察に来てたジオンの兵士の顎を殴って拘束しただけですよ。酷いですよね? おかげでタンコブができちゃいました」

 

「……アリアちゃんって時々命知らずだよね」

 

「そうでしょうか?」

 

 自分からしたらやれる事をやっただけなのだが、と少々ズレたことを考えるアリア。そんな様子の彼女に気が抜けたのかクスクスと笑うミアだった。

 

 そうしていると。

 

『高熱源反応確認!! 繰り返す高熱源反応確認!! ミサイル目標、ホワイトベース!』

 

「ヒッ……」

 

「……チッ、容赦なしですか」

 

 放送の内容を聞いてミアはアリアの腕に抱きつき、ジオンの猛攻に辟易とした様子のアリアは吐き捨てる。

 

『ホワイトベース出港する! ガンダムを迎撃に回せ!』

 

 だが、次の瞬間に聞こえてきた放送にアリアは目を見開いた。

 

「素人の兄さんに何をやらせる気ですか……!」

 

「アリアちゃん!?」

 

 咄嗟に駆け出し、大部屋から出た彼女にミアが声をかけるがそれに返すことなく格納庫へとアリアは走る。

 

 先のコロニー内は未だ2次元的な戦闘に留まっていた。けれど、先の話が確かなら宇宙空間でアムロの乗ったガンダムは宇宙空間で敵機の迎撃を行わせる気だ。

 重力下と違い、宇宙空間の三次元機動は素人のアムロでは無謀がすぎる。

 

「アムロはただの子供だぞ!? 宇宙で戦わせるなど死にに行かせるようなものだ!!」

 

『ならノコノコ出ていって落とされろというんですか!? ガンキャノンの方はどうなんです!?』

 

「無理だ!! ガンキャノンはパイロットがおらん!!」

 

『リュウ・ホセイ曹長ではダメなのですか!?』

 

「彼は戦闘機の候補生だぞ!? オマケにシミュレーターは2回しかやっとらん!!」

 

 格納庫ではテムが通信機片手にブリッジと怒鳴りながら指示を出しており、アリアは父に駆け寄り叫んだ。

 

「父さん、私がガンキャノンで出ます!」

 

「アリア!? バカを言うな! お前のような子供を戦場に出せるわけが無いだろう!」

 

 実の娘の言ったことに絶句しながらもすぐにテムは父として、良識ある大人として反対する。だが、アリアも引く訳にはいかなかった。

 

「兄さんは既にガンダムに乗って出ています! それに、父さんは既に私がやった事を見ているでしょう!?」

 

「それとこれとは話が別だ! これは我々軍人が、大人がやらねばならないのだ!!」

 

「それが出来ないから私が言っているんですよ! それに、このまま何もせずに兄さんが死んでしまったらどうするのですか!?」

 

「ッッ! それ、は……」

 

 アリアの叫びにテムは沈痛な面持ちで言葉を噛み殺す。テムは自分がなんのためにガンダムたちを作ったのか顔を歪め、血反吐を吐くように絞り出した。

 

「私はッ! お前たちのような子供が戦いに出て欲しくないからガンダムを作ったのだッ……!!」

 

「……わかってます。ですが、今だけは父さんの作ったモビルスーツ()が必要なんです。お願いします、父さん」

 

 テムの叫びにアリアは真っ直ぐに見据えた。1秒、2秒と待ちテムは実の娘の変わってしまった髪色と瞳を見て、やがてため息を零すと目線を合わせるためにしゃがみ、その小さな両肩へ手のひらを載せる。

 

「なら、ひとつ約束してくれ。必ず、必ずアムロと共に私の元へ帰ってきておくれアリア」

 

「……はい、必ず約束いたします。兄さんの横っ面を叩いても父さんの元へ帰ってくると」

 

「ならいい。…………話は聞いたな! この子に合うサイズの宇宙服を持ってこい!!」

 

 テムは近くの作業員へ声をかけ、アリアは用意された宇宙服を着るため邪魔な衣服をその場で脱ぎ捨てた。

 

「アリア! 前から思ってたが、お前は少しは恥じらいを持ちなさい!!」

 

「大事なところは隠れてます!!」

 

「そういう事じゃないわ! あぁ、もう! とにかく終わったらお前たちふたりは説教だ!! 

 今回のことでお前たちの問題が色々と判明したからな!」

 

「はい! あ、手持ち式のライフルと近接兵装の用意をお願いしますね!」

 

「わかった! おい、予備のライフルとサーベルを用意しろ! ……なに? ライフルはあるが、サーベルはコンテナから出さないと無いだと!? なら他の近接武器を用意しろ!! じゃなきゃお前を大砲に詰めて砲弾にするからな!」

 

 父親の叫びに淡く微笑みながらアリアは2度目となる赤い機体のコクピットへ入り、シートにその小さな体を収めた。

 

「大丈夫、ルビコンではこの程度日常茶飯事だ。あの時を思い出してやればいい」

 

 もう1人の自分の戦いに比べればこの程度なんともない。アリアは逸る鼓動を落ち着かせ、ゆっくりと操縦桿へ手を伸ばす。

 

『アリア! ライフルとハンマーの用意出来たぞ!』

 

「はい。ライフルとハンマーですね…………ハンマー?」

 

『そうだ! その壁にあるヤツを使え!!』

 

 アリアはモニターに映るテムの指さした方向を見て困惑を隠せない表情を浮かべ、これかー……と声なき声でいった。

 

「………………」

 

 

 ───それは長く、丸く、重く、殺意がある……

 ───そして、大雑把すぎた。

 ───それは、余りにもモーニングスター(正義の怒り)だった。

 

 

「……オールマインド(あのポンコツ)の武器よりマシだと考えよう」

 

 アリアはガンキャノンにビームライフルと正義の怒り(ガンダムハンマー)を装備させ、カタパルトへ脚部を固定させる。

 

『ガンキャノン発進用意! 必ず帰ってきなさい!』

 

「はい。……アリア・レイはガンキャノンで出ます!」

 

 脚部カタパルトは凄まじい勢いでガンキャノンを打ち出す。

 1秒に満たない時間で凄まじいGを小さな体に受けながらもアリアは目線を真っ直ぐに見据え、そしてガンキャノンは宇宙へとその身を飛び出した。

 

 ────鴉は再び、戦場で舞う。

後継機

  • 既存機体を魔改造
  • オリジナル機体
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