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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

鉄の釜で炭を焼く

2010-01-25 | Weblog

新方式の炭焼き、というのを見に行った。事の次第はこうである。例の「マノ川同盟」が、日本が提供した資金を使って、「国連工業開発機関(UNIDO)」と連携して、若者の雇用促進の案件として、職業訓練、小規模融資、就職斡旋などの活動を進めている。その成果を紹介するセミナーがあって、胴元の日本の代表として、私も呼ばれた。

そのセミナーで、新方式の炭焼きが紹介された。ある女性組合が、伝統的な炭焼きではなくて、鉄の釜を使って生産性を向上させるとともに、森林資源の保護につながる炭焼きを始めて、軌道に乗せているという。女性組合の発案に、日本の横浜に本部がある「国際熱帯木材機関(ITTO)」が、森林保護の案件として、資金を提供した。面白そうな話なので、現場に見に行くことにした。

アビジャンから北に300キロ、ディンボクロの町を抜けて、幹線道を折れて、突然未舗装の道に入る。灌木林の中、赤土剥き出しの道を半時間ばかり、埃まみれで悪戦苦闘したら、「サンバン保護林(Sanvan)」の看板があった。この保護林の中に、少し開けた広場があって、白い煙が漂って来た。そこに、小屋ほどの大きさがある真っ黒な鉄の釜が5つ並んでいた。ここが炭焼き場である。

こちらで炭焼きというと、伝統的には地面に穴を掘って行う。直径5メートルほど大きく掘り、その中に伐り出してきた材木を重ね合わせて並べる。上から土を被せて、小山のようにしたら、中にある木に火を付ける。何日か燃やし続けてから、上から水を掛けて火を消し、土を掘り返して、出来あがった炭を取り出すというものである。

この方式だと、穴を掘り、また埋め戻しと、大作業になる。それでいて、生産される木炭の量は、材料の材木の15%~20%くらいにしかならない。後の材木は、殆どが燃えてしまう。もっと合理的な炭焼きの方法はないものか。そこで、アビジャン工科大学が、鉄の釜を使うことを考案し、その釜を設計・製造した。

構造は、比較的単純である。鉄板で直径3メートル、高さ2メートルほどの円筒を作り、地面との間に少し隙間を開けて設置する。その円筒の中に、材木を丁寧に並べて積み上げる。釜の中が材木で埋まったら、その上に鉄板の蓋を被せる。蓋は円錐形で、頂点部からは排煙が逃げるように、煙突が出ている。蓋をしたら、上の頂点部から火を投げ入れる。下の隙間から入った空気が、材木を燃やし、その熱で周りの材木が炭になっていく。3~4日の燃焼の後、下の隙間を塞いで火を止める。釜の温度が下がるのを待って、釜の蓋を外すと、炭が出来あがっている。

この方式だと、力仕事は比較的少ない。鉄枠を組んだり外したりだけである。少人数で、簡単にこの作業をこなせる。また、燃料となる木材が効率的に燃えるので、出来あがる木炭は、原材料の40%~50%になり、生産効率がいい。それに、燃料の木材を完全燃焼させるので、悪質なガスが出ない。たしかに、燃やしている釜から出ている白い煙は、全く私の目にしみない。

この村で、鉄釜方式を導入することにしたのは、「マレビ」という、村の20人ほどの女性たちで構成する組合である。昨年の5月に、5つの釜を搬入・設置して、炭焼きを始めた。すでに半年ほどで、818袋の炭を出荷したという。一つの釜で、一回の火入れで、15袋ほどの炭が出来る。炭の袋は、アビジャンまで持っていくと、1袋8千フラン(1600円)で売れる。輸送費などの経費を差し引いても、十分に利益が出るのだという。

「村の女性たちは、ナスやトウモロコシなどの作物を、頭の上に載せて、ディンボクロの町まで持って行って、一日かけて売って、売上げが3百フランとか5百フラン(百円)とかですからね。この炭焼き事業が軌道に乗って、現金収入が飛躍的に増えたのですよ。」
この「マレビ」に鉄釜方式を提案して、ITTOの資金を引っ張ってきた、女性活動家のアウシさんが、私に語る。

村人たちは、周辺の森に入り、灌木を伐採する。それを50センチほどに切って、材木のかたちに整理、それを女性たちが頭の上に載せて、釜まで運んでくる。釜に丁寧に並べて、一杯になったところで蓋をして、火を入れる。5つの釜に、時期をずらして順次火入れをする。常に仕事を続けながら、炭もどんどん出来あがっていく、とこういう具合である。釜の並ぶ横には、休憩小屋もあって、女性たちが昼食の炊き出しをしていた。

効率はいいとしても、それはつまり、相当の量の木材が必要だということではないか。この調子で灌木を切って、炭を作っていけば、どんどん森が無くなるのではないか。やはり、木炭作りは、森林破壊のひとつの原因なのではないか。

「たしかに伝統的な炭焼きでは、森林の破壊に繋がっていました。でも、そういうことにならないように、森林資源をうまく管理すればいいのです。ここの炭焼きは、コートジボワール森林公社との共同事業で、森林保護の一環として行われているんです。」
アウシさんは、私にそう応えて、森の中に案内してくれた。

(続く)

 炭焼きキャンプ

 これが鉄製の釜

 釜の中に木を並べる。

 釜に蓋をして火を入れる。

 釜の下には隙間があって、火が回る。

 火が回ったら、土を掛けて3~4日間燃やす。

 火を消して、冷ましてから蓋を取る。

 蓋が外れた。

 釜の上半分も外す。

 炭が出来上がった。


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